トップ :: E 固定構造物 :: E02 水工;基礎;土砂の移送




【発明の名称】 コンクリートトラフおよび当該コンクリートトラフの目地の補強方法および構造
【発明者】 【氏名】西森 敏彦

【要約】 【課題】水路のコンクリートトラフの目地部分の破損を防止し、経年劣化を抑える。

【解決手段】コンクリートトラフの左右端縁に、一般面より肉薄となる棚部を形成する。このトラフを用いるに際しては、隣接する棚部に肉薄のシール材を掛け渡し、シール材の上から目地接続部の全体領域にプライマを塗布し、プライマの上に弾性のある樹脂材を一定肉厚で塗布した後、その上に低伸縮性の素材で作ったメッシュシートを配置し、当該メッシュシートの上に、弾性のある樹脂材を一定肉厚で塗布する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】コンクリートトラフの左右端縁に、一般面より肉薄となる棚部を形成したことを特徴とするコンクリートトラフ。
【請求項2】コンクリートトラフの左右端縁に一般面より肉薄となる棚部を形成し、隣接する棚部に肉薄のシール材を掛け渡す一方、このシール材の上から棚部の全体にプライマを塗布し、プライマの上に弾性のある樹脂材を一定肉厚で塗布した後、その上に低伸縮性の素材で作ったメッシュシートを配置し、当該メッシュシートの上に、弾性のある樹脂材を一定肉厚で塗布することを特徴とする請求項1記載のコンクリートトラフを用いた目地の補強方法。
【請求項3】隣接するコンクリートトラフの目地が凹構造をなし、コンクリートトラフの左右両端に形成した棚部の最下端層に肉薄のシール材を備える一方、棚部の全体に、弾性樹脂からなる補強材を備え、当該補強材の内部に、低伸縮性の素材で作ったメッシュシート材が挟み込まれていることを特徴とする請求項1記載のコンクリートトラフを用いた目地の補強構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農業用水路の目地の補強技術に係り、とくに新設したコンクリートトラフ水路の目地の劣化および破損を防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】農業用水路は、各種のコンクリートトラフやブロック状の石材を用いて構築される。図9はコンクリートトラフ1を用いた構造例であり、図10はコンクリート等のブロック石材2を用いた構造例である。符号3は構築部材の接合部、すなわち目地である。
【0003】目地3には、表面からの水の侵入を防止するため、例えば図11に示すように、モルタル等、適宜の充填材4を施す。かかる技術は公知であり、充填材4として使用できる材料も各種知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、農業用水路に使用されるような各種のコンクリート製品は、その寿命が45年程度はあると説明され、実際にその通りであるが、構築物としての農業用水路は20〜30年程度で寿命をむかえ、改修されるのが実状である。
【0005】コンクリート製品の寿命と構築物の寿命とが食い違う大きな理由は、目地の劣化や破損に伴う漏水の問題にある。農業用水路6は、例えば図12に示すように、田畑7の一般面よりも上に作られることが少なくなく、その場合には漏水が生ずると田畑7が水浸しになり甚大な被害を惹起する虞れがある。また田畑7の一般面より掘り下げて農業用水路6を作った場合も、目地からの漏水が起こると田畑7の地面下に大量の水が蓄えられ、根腐れなど作物の成長や収穫量、品質に大きなダメージを与えかねない。
【0006】目地の劣化は、主に充填材の経年劣化であり、劣化前に生ずる破損は主として地震や車両振動に起因する亀裂として顕在化する。
【0007】そこで本発明の目的は、目地の破損(とくに亀裂の発生)を確実に防止するとともに、目地の経年劣化を可能な限り抑止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係るコンクリートトラフは、目地部分の強化のために左右の端縁に、一般面より肉薄となる目地接続部(棚部)を形成してなる。このコンクリートトラフを用いるに際しては、隣接する棚部に肉薄のシール材を掛け渡す一方、このシール材の上から目地接続部の全体領域にプライマを塗布し、プライマの上に弾性のある樹脂材を一定肉厚で塗布した後、その上に低伸縮性の素材で作ったメッシュシートを配置し、当該メッシュシートの上に、弾性のある樹脂材を一定肉厚で塗布する。
【0009】かかる補強方法によれば、隣接するコンクリートトラフの目地接続部が凹構造をなし、最下端層に肉薄のシール材を備える一方、凹構造をなす目地接続部の全体に、弾性樹脂からなる補強材を備え、当該補強材の内部に、低伸縮性の素材で作ったメッシュシート材が挟み込まれている構造を呈する。
【0010】
【作用】本発明に係るコンクリートトラフによれば、隣接する目地接続部は略凹形状となり、凹部に補強用の弾性樹脂材を充填しても、弾性樹脂材はトラフの一般面より突出しない構造をとり得る。この結果、水路の流速や浮遊ゴミの衝突による補強用弾性樹脂材の劣化を確実に食い止めることが出来る。
【0011】目地接続部は略凹形状であるため、基底部だけでなく側壁部分にもプライマ(接着剤)の塗布が可能となり、補強材(弾性樹脂材)の接着構造を強化することが出来る。視認も容易である。また接着面積が従来の工法よりも大幅に広く採ることが可能となり、その場所毎の伸縮可能面積も自由に設定できる。
【0012】本発明に係る目地の補強方法および補強構造は、略凹形状の接続補強部を弾性樹脂材によって被覆すること、および弾性樹脂材の内部に低伸縮性の素材で作ったメッシュシートを配する点に特徴がある。
【0013】目地接続部を弾性樹脂材によって被覆する作用効果としては、第一に漏水防止効果の向上、第二に弾性樹脂材が目地部分の動き(とくに振動)を吸収しつつ全体の動きを緩和して構造の損傷を最小限に抑える点が挙げられる。
【0014】弾性樹脂材の内部に低伸縮性の素材で作ったメッシュシートを配する作用効果としては、第一に弾性樹脂材からなる補強材それ自体の構造を強化できること、第二に地震や車両振動に伴う弾性樹脂材の動きを一体化して目地部分に加わる外力をより確実に低減できることにある。
【0015】弾性樹脂材からなる補強材の内部に配置するシート材をメッシュ構造とするのは、シート材を挟み込む上下の弾性樹脂材が格子の隙間(間隙)を通して確実に連結しあい両者が一体化すること、つまり弾性樹脂材が上下で分離されず一体化して強い構造を呈すること、第二に、低伸縮性の強い素材(樹脂/金属)を用いてもメッシュの隙間が動きを許容する働きをするため、シート材は上下左右および斜め方向に若干の伸縮する性質をもつことが出来る。この結果としてメッシュシートの素材自体は強い外力を受けても破損する可能性が殆どなく、一方で、外力に応じてある程度の伸縮性を発揮して補強材の振動を全体として受け止め、目地に対する外力を極力緩和する働きをみせる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明に係るコンクリートトラフは、図2に示すように、例えばコンクリートトラフ10の内壁面に目地接続部15を形成するよう、コンクリートトラフ10の左右両端部に、一般面11より肉薄となる棚部20を形成し、目地接続部15が全体として段差のある略凹形状を呈するようにしてある。
【0017】図1は、コンクリートトラフ10の一端に形成した棚部20の概略を示すものである。この図では、構造を明瞭にするため、棚部20の横幅を実際のスケールより大きく示してある。実際のスケールでは、例えば、一般面11の肉厚が50〜100mm程度、深さが80〜150cm程度、棚部20の肉厚が25〜50mm程度、棚部20の横方向突出量が20〜80mm程度である。勿論、これらの数値は使用環境および各種条件によって適宜設計変更できる。
【0018】棚部20を形成する結果、コンクリートトラフ10の左右両端部には、トラフ端面21と、棚部段差壁22とが形成される。棚部段差壁22は、棚部20と一般面11との間に形成される壁面であり、トラフの左右内壁と床面に略同一の寸法をもって形成される。
【0019】かかる構造のコンクリートトラフ10の目地接続部15は、図3に示すような凹形状の構造を呈する。この目地部分を補強するため、本発明では以下のような方法をとる。第一に、隣接する二つの棚部20を最下層で確実に連絡するよう、図3に示すように、まず肉薄のシール材30を両棚部20に掛け渡す。
【0020】シール材30は、例えば粘着繊維テープ、粘着紙テープなど、最低限の引っ張り強度を保証できる素材を用いる。粘着テープに限らず適当なシール素材を接着剤を介して貼着配設しても良い。このシール材30は、その上に配する弾性樹脂材の定着を確実にするため、目地の隙間19を埋める目的で配するものである。
【0021】隙間19は、各種事情に基づいて適宜設計されるものであり、温暖な地域では隙間19を生じさせずに水路を造ることも可能であるが、例えば寒冷地では地面凍結に起因する土圧の影響を吸収する等の目的で、予め5〜10mmの隙間19を設計数値に組み込む場合も少なくない。このような事情で生じた隙間19が存在すると、弾性樹脂材が流動する等、せっかくの補強構造が機能しない懸念がある。そこで隙間19の影響を解消できるよう、最下層にシール材30を配し、隙間19を閉塞する。従って、粘着テープを用いる場合は、隙間19を掛け渡すに十分な横幅をもつものを使用し、隙間19に沿って帯状に配する。
【0022】次に、シール材30の上から、図4に太線で示すように、凹形状をなす目地接続部15の全体にプライマPを塗布する。但し、棚部段差壁22の上部は必ずしもこの段階でプライマPを塗布する必要はない。当該部分の処理は時間的に遅くなるときがあるからである。また図4は断面で示してあるが、目地接続部15の距離は長いので、いっぺんに全部にプライマPを施すのではなく、トラフの内壁や床面を適当画数に分割して、処理を施す長さの単位でプライマPを施しても良いことは当然である。図4において示すプライマPは、最終段階において下面及び側壁(棚部段差壁22)に必要な適当量のプライマPが施されることが望ましいことを意味する。
【0023】プライマPの塗布後、その上から弾性樹脂材40を塗布する(図5)。一回目に塗布する弾性樹脂材(下塗り材)40の肉厚は、例えば2〜10mm程度である。下塗り材(40)は目地部分を平滑に均し、次段の処理を容易にするものであるから大きな肉厚にする必要はない。
【0024】下塗り材(40)の塗布後、直ちにその上からメッシュシート46を配する(図6)。下塗り材(40)が乾燥する前にメッシュシート46を配すれば、メッシュシート46は弾性樹脂材40の表面に貼り付いて固定が確実になる。メッシュシート46は、例えば、図7に示すようにナイロンや塩化ビニル等の樹脂或いはアルミ等の金属泊を打ち抜いたメッシュ地を用いることが望ましい。符号47は肉薄のシート地、48は打ち抜いた網目空隙である。シート地47に殆ど伸縮性がなくても多数の網目空隙48がある結果として、前後左右方向および斜め方向の外力に追従して形状を変えることが出来る。網状のもの(例えば金網)でも良いのであるが、編み込んだものは表面に微小な凹凸ができるほか、金網の場合は外力が加わると元の形状に復元しない可能性があり、実際の使用においては好ましい手段ではない。むしろシート状のものを打ち抜いて表面略平滑になっている素材の方が復元力もあり、目地構造の長期保全の観点からは優れている。また凹凸もないので施工が容易である(とくに定着と上塗り材の塗布)。
【0025】次に、図8に示すように、メッシュシート46の上から弾性樹脂材(上塗り材)44を塗布する。上塗り材(44)と下塗り材(40)は同一の樹脂剤を用いて構わない。例えばモルタル配合樹脂であるハイトラフロン(商標名;株式会社共栄)などである。勿論、上塗り材(44)と下塗り材(40)とを変えても良いが、全体を一体化させるという点では好ましくない。上塗り材(44)の塗布後、これを所定時間養生させて工事を完了する。養生の時間は3時間程度、せいぜい44時間を見込めばよい。乾燥により弾性樹脂材40,44の肉厚が減少するので、上塗り材(44)はやや厚めに塗布することが望ましい。結果として、上塗り材(44)の表面がコンクリートトラフ10の一般面11と0.5mm前後の誤差内でほぼ同一平面を形成すれば良い。上塗り材(44)を塗布する場合は、ゴムベラで施工すると中央が凹む虞れがあるので、木ベラ、金ベラ、プラスチックベラのように硬質のヘラを用いることが望ましい。
【0026】このようにして施工した目地まわりは、外力に応じてメッシュシート46と弾性樹脂材40,44が外力によるコンクリートトラフ10の動きを抑えつつ追従して動くため、目地の動きは最小限に抑えられ、また弾性樹脂材40,44は可撓性であるから亀裂も生じない。この結果、目地まわりは長期に渡って初期状態を維持し、漏水を確実に防止する。
【0027】尚、本発明は前記説明に限定されるものではない。例えば、棚部20は、コンクリートトラフ10の外側面に形成しても良い。トラフの上部を土中から露出して水路を構築する場合もあり、そのような場合における耐震強度を保証するためである。またメッシュシート(46)の空隙(22)の形状は方形に限定されない。円や楕円でも良い。素材との相関で必要な伸縮率を呈すれば良いからである。また空隙の大きさも限定されない。
【0028】本発明においては隙間19に充填材を配する必要はない。隙間19によってコンクリートトラフ10が動くことがあっても、目地回りの漏水/亀裂は生じないからである。
【0029】また本発明においては、棚部段差の形状に基づき、目地補強用の弾性材の使用量を予め算出することが可能となり、施工コストの見積もり計算がきわめて正確になるという利点がある。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、目地の破損(とくに亀裂)を確実に防止でき、経年劣化を可能な限り抑えることが出来る。
【出願人】 【識別番号】500132867
【氏名又は名称】株式会社 共栄
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100099014
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 滿茂
【公開番号】 特開2002−54121(P2002−54121A)
【公開日】 平成14年2月20日(2002.2.20)
【出願番号】 特願2000−243478(P2000−243478)