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【発明の名称】 コンクリート構造物の大組型枠工法
【発明者】 【氏名】小西 范男

【氏名】金子 時弘

【氏名】義原 孝文

【要約】 【課題】海工事等において護岸の下部コンクリートなどを型枠移動方式により場所打ちで築造するに際し、比較的小型の起重機により型枠の吊り込み作業を行え、セパレータ無しで型枠を組み立てられるようにする。

【解決手段】先行ブロック5aの打継端面と基礎面上に設置した平面視コ字状の型枠10とより形成される空間内へのコンクリートの打設と、型枠10の次打設位置への移動とを交互に繰り返して護岸下部コンクリート等を築造するに際し、型枠10を一対の側枠11と妻枠12に3分割して構成し、コンクリート打設位置における基礎面上に下部フレーム13を設置し、この下部フレーム13に一対の側枠・妻枠の下端部をそれぞれ固定し、一対の側枠・妻枠の上端部を上部フレームで連結一体化し、これら側枠・妻枠で囲まれた空間内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、上部フレーム・妻枠を取り外して一対の側枠をそれぞれ次打設位置へ移動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 先行打設コンクリートブロックの打継端面と基礎面上に設置した平面視コ字状の型枠とより形成される空間内へのコンクリートの打設と、型枠の次打設位置への移動とを交互に繰り返して長手方向に連続するコンクリート構造物を築造する工法において、型枠を一対の側枠と妻枠に3分割して構成し、コンクリート打設位置における基礎面上に下部フレームを設置し、この下部フレームに一対の側枠および妻枠の下端部をそれぞれ固定し、一対の側枠および妻枠の上端部を上部フレームで連結一体化し、これら側枠および妻枠で囲まれた空間内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、上部フレームおよび妻枠を取り外して一対の側枠をそれぞれ次打設位置へ移動させることを特徴とするコンクリート構造物の大組型枠工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、護岸などのコンクリート構造物を型枠移動方式により場所打ちで築造する場合に用いられる大組型枠工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4に示すように、海工事(港湾工事)において、海側に船が着桟する直杭式横桟橋形式の岸壁1を築造し、その背面に護岸3を有する捨石式傾斜堤2を築造し、この傾斜堤2の陸側のスペースを処理場等として利用することが行われている。
【0003】護岸3は、上部コンクリート4と下部コンクリート5からなり、下部コンクリート5を方塊ブロック(2段)から構成し、上部コンクリート4を場所打ちコンクリートとすることが考えられるが、この施工方法では、現場の施工条件から方塊ブロックを施工途中の岸壁1の仮設構台1b越しに据え付けなければならず、大型起重機船(例えば360t吊り)が必要となる。また、捨石・被覆石の投入・均し作業とも競合するため、工費・工期共に厳しくなることが予想される。
【0004】そのため、前述のような海工事においては、護岸3の下部コンクリート5の築造に場所打ちコンクリート工法を採用するのが望ましい。この場所打ちコンクリート工法は、図5に示すように、平面視コ字状の鋼製型枠50を先行打設コンクリートブロック5aの打継部に組付け、型枠50と先行ブロック5aで囲まれた空間内にコンクリートを打設し、コンクリートが硬化すると型枠50を次打設位置に移動させ、これらの工程を順次繰り返して長手方向に連続するコンクリート構造物を築造する工法であり、従来の型枠50においては、先行ブロック5aの打継部側面に基端部が固定された左右一対の側枠51,51の中間部をセパレータ53で連結一体化し、側枠51,51の先端部に取付けた妻枠52をセパレータ54で先行ブロック5aに固定している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述のような従来工法(セパレータによる型枠組)の場合、次のような問題がある。
【0006】(1) 海工事の場合、気象・海象条件が大きく作業に影響する。この影響を少しでも抑えるため、陸上においてセパレータ付きの型枠を組み立て、これを起重機船等で吊り込む必要があり、起重機船等が大きくなる。
【0007】(2) 型枠は平面視コ字状の形で吊り込むため、セパレータの取付け以外に形状保持用の鋼材が多数必要となる。
【0008】(3) 脱枠すると、組立は最初からとなり、型枠をスライド移動させることができず、作業効率が悪い。
【0009】本発明は、前述のような問題を解消すべくなされたもので、その目的は、海工事等において護岸の下部コンクリートなどを型枠移動方式により場所打ちで築造するに際し、比較的小型の起重機により型枠の吊り込み作業を行うことができると共に、セパレータ無しで型枠を組み立てることができるコンクリート構造物の大組型枠工法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のコンクリート構造物の大組型枠工法は、先行打設コンクリートブロックの打継端面と基礎面上に設置した平面視コ字状の型枠とより形成される空間内へのコンクリートの打設と、型枠の次打設位置への移動とを交互に繰り返して長手方向に連続するコンクリート構造物を築造する工法において、型枠を一対の側枠と妻枠に3分割して構成し、コンクリート打設位置における基礎面上に下部フレームを設置し、この下部フレームに一対の側枠および妻枠の下端部をそれぞれ固定し、一対の側枠および妻枠の上端部を上部フレームで連結一体化し、これら側枠および妻枠で囲まれた空間内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、上部フレームおよび妻枠を取り外して一対の側枠をそれぞれ次打設位置へ移動させることを特徴とする。
【0011】型枠の設置と移動は、次のように行うのが好ましい。即ち、一対の側枠は、先ず海側(泊地側)の側枠をコンクリート打設位置に設置し、その下端部を両側から挟持する一対の部材などで下部フレームに固定し、その上端部を前面にある岸壁の鋼管柱に連結材を介して連結し、自立させておく。次に、陸側(処理場側)の側枠をコンクリート打設位置に設置し、その下端部を前述と同様に下部フレームに固定し、その上端部を海側の側枠に仮連結材で仮連結して固定する。その後、上部フレームを載置し、両側枠の上端部を連結一体化する。次いで、陸上に仮置きしておいた妻枠を両側枠の前面に設置し、その下端部を前述と同様の方法で下部フレームに固定し、その上端部を上部フレームに連結固定する。脱枠に際しては、上部フレームを取外した後、妻枠をクレーンで先行して脱枠し陸上に仮置きし、その後、一対の側枠をクレーンでスライド移動させる。
【0012】コンクリートの打設は、型枠が水中型枠であるため、下部に水中コンクリートを用い、上部に気中コンクリートを用いる。さらに、水中コンクリートの打設量を低減する場合には、先行ブロックの打継端面と平面視コ字状型枠とより形成される空間の4隅部に水膨張性シール材を貼り付けて止水し、排水を行うことで、型枠内の水位を型枠外の水位より低くする。
【0013】以上のような構成において、型枠を一対の側枠と妻枠に3分割するため、岸壁の仮設構台に設置した小型のクレーンで型枠の吊り込み作業(型枠の組立・脱枠・移動)を行うことができる。また、型枠の下端と天端を下部フレームと上部フレームで連結一体化するため、従来工法のセパレータが不要となり、作業効率が向上し、水中作業も短縮され、安全性も向上する。さらに、セパレータ無しの分割型であるため、型枠外しも簡単となり、型枠のスライド移動も可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示する一実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、海工事において直杭式横桟橋形式の岸壁に近接して築造される捨石式傾斜堤の護岸の下部コンクリートに適用した例である。図1,図2は、本発明の大組型枠工法を実施するための移動型枠の1例を示す平面図, 横断面図である。図3は、本発明の施工フローである。図4は、本発明が適用される岸壁と護岸の例を示したものである。
【0015】図4(a),(b) に示すように、海側に直杭式横桟橋形式の岸壁1を築造し、その背面に護岸3を有する捨石式傾斜堤2を築造するに際し、図4(c) に示すように、岸壁1の築造と並行して、捨石式傾斜堤2の上に護岸3の下部コンクリート5を海中で築造する。護岸3の下部コンクリート5は、図4(a) に示すように、多数のスパンに分割されており、図1,図2に示す本発明の移動型枠10を用い場所打ちコンクリートで下部コンクリート5が1スパンずつ順次築造される。
【0016】図1に示すように、移動型枠10は、先行打設コンクリートブロック5aの打継端面と共に1スパン分のコンクリート打設空間を形成する平面視コ字状の型枠であり、本発明では、左右一対の鋼製の側枠11,11と鋼製の妻枠12とに3分割することで、図4(c) に示す施工途中の直杭式横桟橋形式の岸壁1の仮設構台1bから小型のクローラクレーン(例えば50t吊り)等により型枠の吊り込み作業(組立・脱枠・移動)を行えるようにし、かつ、図2に示すように、移動型枠10の下端と天端を下部フレーム13と上部フレーム14で連結一体化することで、従来工法のセパレータを不要としている。
【0017】側枠11は、図1,図2に示すように、鋼製の側板11aの外側をH形鋼の縦材11bと溝形鋼・H形鋼の横材11cで補強して構成されている。妻枠12も、側枠11と同様に、妻板12aと縦材12bと横材12cで構成されている(図2参照)。
【0018】下部フレーム13は、図1,図2に示すように、コンクリート打設位置における基礎面上に設置されて移動型枠10の下端部を固定する枠体であり、護岸幅方向に平行に護岸長手方向に間隔をおいて配置される鋼製の平板(フラットバー)13aと、この平板13aの両端部上に固定され一対の側枠11,11の下端部の内側への移動を阻止する一対のL形鋼の固定部材13b,13bと、この固定部材13b,13bの妻枠側の先端部同士を連結し妻枠12の下端部の内側への移動を阻止するL形鋼の固定部材13c(図1参照)と、固定部材13b,13bの反妻枠側の基端部同士を連結し先行ブロック5aの端面に当接されるL形鋼の連結部材13d(図1参照)から構成されている。
【0019】側枠11の固定部材13bは、複数の平板13aを連結一体化する部材としても働き、また、護岸幅に合わせて配置されており、側枠11の位置決めを行う。妻枠12の固定部材13cと連結部材13dは、側枠11の一対の固定部材13b,13bと共に、平面視四角形のフレームを構成し、これにより、1スパン分のコンクリート打設空間が設定される。固定部材13cは妻枠12の位置決めを行う。
【0020】平板13aは側枠11から外側に突出するような長さとされ、この突出部分に、設置台15を介してH形鋼の挟圧部材16と締付け部材17が設けられている。締付け部材17は、ねじで押圧板を進退移動させる一種の万力であり、設置台15上に載せられた挟圧部材16を側枠11に対して押圧する。側枠11は、固定部材13bと挟圧部材16により下端部が挟持され、下部フレーム13に強固に固定される。
【0021】妻枠12も、図1に示すように、L形鋼の固定部材13cとH形鋼の挟圧部材18により下端部が下部フレーム13に固定される。即ち、側枠11の固定後に、その一対の挟圧部材16,16の先端部の上に護岸幅方向の挟圧部材18の両端部を載せ、挟圧部材16の先端部上面と挟圧部材18の端部側面とをターンバックル19で連結し、挟圧部材18を側枠側に引き付けることで固定を行う。さらに、補強のために、側枠の締付け部材17と同様の締付け部材20を設けて挟圧部材18を妻枠側へ押圧する。
【0022】なお、下部フレーム13は打設されるコンクリートに埋設され、挟圧部材16や締付け部材17等の固定用の部材は取り外して次スパンに転用される。
【0023】上部フレーム14は、移動形枠10の上に載置されて側枠11および妻枠12の上端部を連結一体化する枠体であり、平面視四角形の枠部材21を縦横の梁部材と角部斜材で補強して構成されている(図2参照、図1には図示せず)。この上部フレーム14は、平面視で側枠11および妻枠12から外側に突出するような大きさであり、図2に示すように、枠部材21の下に締付け部材17と同様の締付け部材22を設け、この締付け部材22で側枠11および妻枠12を内側に押圧し、側枠11および妻枠12の上端部を連結一体化すると共に、打設されるコンクリート側圧に対向できるようにする。
【0024】図1に示すように、側枠11の側板11aは先行ブロック5aの打継部における側面に当接するように延長されており、この延長部分が前記側面に埋設された埋め込みボルト23とナット24により固定される。また、海側(泊地側)の側枠11の上端部は、前面にある直杭式横桟橋形式の岸壁1の鋼管杭1aに連結材を用いて連結し、補強するのが好ましい。
【0025】コンクリート打設については、組み立てられた移動型枠10は水中型枠であるため、図2に示すように、下部を水中(不分離)コンクリート25、上部を気中コンクリート26とする。ここで、水中コンクリートの打設量を極力減らし、コストの削減を図るため、側枠11と妻枠12の接合部、先行ブロック5aと側枠11の取合い部に水膨張性シール材27を貼り付けて止水を行い、ポンプで型枠内の排水を行い、内外水位差1m(型枠外が1m高い)程度から気中コンクリートの打設が行えるようにする。
【0026】以上のような構成の移動型枠10を用い、以下に示す手順で護岸3の下部コンクリート5が築造される(図1,図2および図3の施工フロー参照)。
【0027】(1) 捨石式傾斜堤2の基礎捨石30の本均し作業が完了した状態から、基礎面上に目つぶし用の砕石を投入し、レベル調整を行う。その上に、水中コンクリートの食い込みを抑えるため、金網31を敷設する。
【0028】(2) 陸上において、下部フレーム13の製作を行う。製作した下部フレーム13を次打設位置における金網31の上に法線・水平レベルを確認しながら設置する。
【0029】(3) 先行ブロック5aの打継面にある妻枠12を仮設構台1b上のクローラクレーン等により先行脱枠して、陸上に仮置きする。
【0030】(4) 先行ブロック5aの側面にある海側(泊地側)の側枠11をクローラクレーン等により移動させ、次打設位置に設置する。この側枠11の下端部を下部フレーム13の固定部材13bと挟圧部材16で挟み、締付け部材17で締付け固定する。側枠11の上端部は、前面にある岸壁1の鋼管杭1aに連結材を用いて連結し、側枠11を自立させる。
【0031】(5) 先行ブロック5aの側面にある山側(処理場側)の側枠11をクローラクレーン等により移動させ、次打設位置に設置する。この側枠11の下端部は泊地側の側枠11と同様に固定する。また、上端部は、仮連結材を用いて自立している泊地側の側枠11に仮連結して固定する。なお、両側枠とも先行ブロック5aとの取合い部は埋め込みボルト23とナット24により固定しておく。
【0032】(6) 両側枠11,11のセットが終了すると、その上に上部フレーム14を載置し、両側枠11,11の上端部同士を締付け部材22により連結固定し一体化する。
【0033】(7) 最後に、陸上仮置きしていた妻枠12を設置する。妻枠12の下端部は、ターンバックル19で引き付けにより、固定部材13cと挟圧部材18で挟んで固定し、さらに締付け部材20により補強を行う。上端部は、上部フレーム14に連結し固定する。
【0034】(8) 上部フレームの上に設置したコンクリート打設時足場32を用いて、一対の側枠11,11と妻枠12に囲まれた空間の下部に水中コンクリートを打設する。
【0035】(9) 水中コンクリート上面の打継目処理を行う。
(10)水中コンクリートの上に気中コクリートを打設する。
【0036】(11)コンクリートの養生後、上部フレーム14を取外し、下部フレーム13の固定用の機材を取外し、(1) の砕石投入・金網敷設工程に戻る。
【0037】以上のような工程をスパン毎に順次繰り返すことにより、護岸1の下部コンクリート5が築造される。
【0038】なお、以上は護岸の下部コンクリートに築造について説明したが、これに限らず、港湾工事等におけるコンクリート構造物の築造にも本発明を適用することができる。
【0039】
【発明の効果】本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果を奏することができる。
【0040】(1) 型枠を一対の側枠と妻枠に3分割するため、岸壁の仮設構台に設置した小型のクレーンで型枠の吊り込み作業(組立・脱枠・移動)を行うことができ、コストの低減が図られる。
【0041】(2) 型枠の下端と天端を下部フレームと上部フレームで連結一体化するため、従来工法のセパレータが不要となり、作業効率が向上し、水中作業も短縮され、安全性も向上する。
【0042】(3) セパレータ無しの分割型であるため、型枠外しも簡単となり、型枠のスライド移動も可能となり、工期の短縮が図られる。
【出願人】 【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100070091
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 知 (外1名)
【公開番号】 特開2002−54118(P2002−54118A)
【公開日】 平成14年2月20日(2002.2.20)
【出願番号】 特願2000−242962(P2000−242962)