| 【発明の名称】 |
ポリエステル織編物 |
| 【発明者】 |
【氏名】田口 節男
【氏名】下山 悟
【氏名】太田 隆司
|
| 【要約】 |
【課題】ふくらみがあって透けが少なく、伸縮性、反発性に富み、さらには発色性と染色堅牢度が良好であるポリエステル織編物を提供する。
【解決手段】非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が4000N/mm2 以下、荷重伸長曲線におけるX0 /Y0 値が0.04〜1.4で、かつβ/α値が0.15〜2.2であるポリエステル繊維P1を少なくとも有するポリエステル複合糸からなり、ヨコ軸が目付χ(g/m2 )でタテ軸が空孔率y(%)のグラフにおいて、下記一次式S1の直線より下部領域に存在することを特徴とするポリエステル織編物。ここで、(1) 荷重伸張曲線において、X0 :第1次変曲点4までの伸度Y0 :第2次変曲点5と切断伸度6の伸度差α :第2次変曲点5と第1次変曲点4の強度差β :切断強度6と第2次変曲点5の強度差) |
【特許請求の範囲】
【請求項1】非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が4000N/mm2以下、荷重伸長曲線におけるX0 /Y0 値が0.04〜1.4で、かつβ/α値が0.15〜2.2であるポリエステル繊維糸P1を少なくとも有するポリエステル複合糸からなり、ヨコ軸が目付χ(g/m2 )でタテ軸が空孔率y(%)のグラフにおいて、下記一次式S1の直線より下部領域に存在することを特徴とするポリエステル織編物。ここで、(1) 荷重伸張曲線において、X0 :第1次変曲点4までの伸度Y0 :第2次変曲点5と切断伸度6の伸度差α :第2次変曲点5と第1次変曲点4の強度差β :切断強度6と第2次変曲点5の強度差) (2) S1: y=−0.16χ+43【請求項2】、ポリエステル複合糸が、少なくとも前記ポリエステル繊維糸P1と、非晶配向度が0.45以上および/または見掛ヤング率が3000N/mm2 以上であるポリエステル繊維P2とを有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル織編物。 【請求項3】ポリエステル複合糸が、前記ポリエステル繊維糸P1と、綿、ウール、アセテート、レーヨンあるいは麻から選ばれた少なくとも一種の繊維P2からなることを特徴とする請求項1記載のポリエステル織編物。 【請求項4】ポリエステル複合糸形態が、カバードヤーン、コアスパンヤーン、合撚糸、あるいはエアー交絡糸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【請求項5】前記ポリエステル繊維糸P1を構成する繊維が、中空繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【請求項6】前記ポリエステル繊維糸P1を構成する繊維が、粘度の異なる2種のポリエステルポリマが接合されたポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【請求項7】前記ポリエステル繊維糸P1を構成する繊維が、0.4デシテックス以下の極細繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【請求項8】前記ポリエステル繊維糸P1を構成する繊維が、芯にポリスチレンポリマを配する芯鞘複合繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【請求項9】前記ポリエステル繊維糸P1が、フィラメント糸および/またはステープル糸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【請求項10】請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステル織編物が織物であって、該織物の組織が平織、綾織、朱子織、またはからみ織のいずれかであることを特徴とするポリエステル織物。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ふくらみがあって透けが少なく、かつ良好な伸縮性と反発性を有し、発色性および染色堅牢度の優れたポリエステル織物または編物(以下これらを総称して織編物という場合がある)に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、ポリエステル系繊維と他の繊維を混用したポリエステル複合糸およびそれからなる布帛は、その両方の特徴を活かし有用な繊維素材として市場に多く出回っている。 【0003】例えば、ポリエステル繊維とウールの混用としては、ポリエステル短繊維糸とウールの混紡糸を使用した短繊維混紡布帛や、仮撚加工捲縮加工が施されたポリエステル繊維糸とウールとの混紡または混撚糸を使用した布帛があるが、反発性や伸縮性が不足していること、高温染色を要するためウールの品位や物性を損なういう問題があった。 【0004】特開平10−226938号公報では、相対粘度の異なる2種類のポリエチレンテレスタレートを主体とするポリマーが接合された複合繊維と自発伸長を有するポリエチレンテレフタレートを主体とするポリマー繊維と交絡または混撚した繊維糸条をタテ糸またはヨコ糸の一方に使用し、他方のヨコ糸またはタテ糸にウールを含む糸条を使用して製織し、仕上げ加工し、伸縮性に富む布帛の製造方法が開示されているが、製造工程が複雑であり、生産性が低く高コストとなってしまう欠点があった。 【0005】また、ウール紡績糸にスパンテックスを交撚させたものもよく知られているが、発色性や染色堅牢度が十分でない欠点があった。 【0006】また、ウールと水溶性ポリビニルアルコールとの混用紡績糸を用いて形成した布帛を、常温水溶液中に浸せきし、昇温して水溶液ポリビニルアルコール繊維を収縮した後に溶解除去し、次いでウール繊維のみの布帛にセット処理を行い伸縮性ウール布帛を得る方法も知られているが、一成分を除去するため生産性が低いという問題があった。 【0007】また、アセテートとの混用としては、特開平12−34635号公報には、熱収縮性の異なる2成分のポリエステル重合体を複合紡糸したポリエステル複合繊維とアセテート繊維との合撚糸であって、該アセテート繊維が35%以上80%以下の混率である合撚複合糸が開示されているが、高温染色を要するため物性が低下するという問題があった。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従来技術では限界とされていた、ふくらみがあって透けが少なく、かつ伸縮性、反発性に富み、良好な発色性と染色堅牢度を有するポリエステル織編物を提供するものである。また、さらには、本発明は、複雑な工程を必要とせず、従来技術に比べて低価格で省エネルギー化、省人化を図る製造法によって得ることが可能なポリエステル織編物を提供するものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するため、次のとおりの構成をとるものである。すなわち、(1)非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が4000N/mm2 以下、荷重伸長曲線におけるX0 /Y0 値が0.04〜1.4で、かつβ/α値が0.15〜2.2であるポリエステル繊維糸P1を少なくとも有するポリエステル複合糸からなり、ヨコ軸が目付χ(g/m2 )でタテ軸が空孔率y(%)のグラフにおいて、下記一次式S1の直線より下部領域に存在することを特徴とするポリエステル織編物。 【0010】ここで、(1) 荷重伸張曲線において、X0 :第1次変曲点4までの伸度Y0 :第2次変曲点5と切断伸度6の伸度差α :第2次変曲点5と第1次変曲点4の強度差β :切断強度6と第2次変曲点5の強度差) (2) S1: y=−0.16χ+43(2)、ポリエステル複合糸が、少なくとも前記ポリエステル繊維糸P1と、非晶配向度が0.45以上および/または見掛ヤング率が3000N/mm2 以上であるポリエステル繊維P2とを有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル織編物。 【0011】(3)ポリエステル複合糸が、前記ポリエステル繊維糸P1と、綿、ウール、アセテート、レーヨンあるいは麻から選ばれた少なくとも一種の繊維P2からなることを特徴とする前記(1)記載のポリエステル織編物。 【0012】(4)ポリエステル複合糸形態が、カバードヤーン、コアスパンヤーン、合撚糸、あるいはエアー交絡糸であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【0013】(5)前記ポリエステル繊維糸P1を構成する繊維が、中空繊維であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【0014】(6)前記ポリエステル繊維糸P1を構成する繊維が、粘度の異なる2種のポリエステルポリマが接合されたポリエステル繊維であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【0015】(7)前記ポリエステル繊維糸P1を構成する繊維が、0.4デシテックス以下の極細繊維であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【0016】(8)前記ポリエステル繊維糸P1を構成する繊維が、芯にポリスチレンポリマを配する芯鞘複合繊維であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【0017】(9)前記ポリエステル繊維糸P1が、フィラメントおよび/またはステープル糸であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル織編物。 【0018】(10)前記(1)〜(9)のいずれかに記載のポリエステル織編物が織物であって、該織物の組織が平織、綾織、朱子織、またはからみ織のいずれかであることを特徴とするポリエステル織物。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、さらに詳しく本発明について説明をする。 【0020】本発明は、従来のポリエステル繊維に比べて、非晶配向度が0.35以下と低く、見掛ヤング率が4000N/mm2 以下と低く、かつ荷重伸長曲線におけるX0 /Y0 値が0.04〜1.4で、かつβ/α値が0.15〜2.2であるという特有値を有するポリエステル繊維糸P1を少なくとも有するポリエステル複合糸からなるものであり、かかるポリエステル複合糸を用いてなる織編物は、ヨコ軸が目付でタテ軸が空孔率からなるグラフにおいて、下記式S1の直線より下の領域に存在することを特徴とするポリエステル織編物である。 【0021】かかる構成により、従来のポリエステル複合糸ではなし得なかった、ふくらみがあって透けが少なく、かつ伸縮性と反発性に優れ、深みのある発色性と良好な染色堅牢度を有するポリエステル織編物とすることができる。 【0022】ここで、X0 、Y0 、αおよびβの値は、図1に示した荷重伸長曲線における値である。 【0023】すなわち、X0 :図1における第1次変曲点4までの伸度Y0 :図1における第2次変曲点5と切断伸度6の伸度差α :図1における第2次変曲点5と第1次変曲点4の強度差β :切断強度6と第2次変曲点5の強度差) また、下記S1式におけるχは織編物の目付(g/m2 )、yは織編物の空孔率(%)であり、そのグラフは図2に示した。 【0024】S1: y=−1.0χ+43 である。 【0025】その作用は、必ずしも明らかではないが、本発明者らは次のように考えている。 すなわち、非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が4000N/mm2以下と、共に従来ポリエステル繊維にはない低い特性値を有し、また、さらに、荷重伸長曲線におけるX0 /Y0 値が0.04〜1.4で、かつβ/α値が0.15〜2.2であるという特性値を有するポリエステル繊維糸P1を複合糸の少なくとも一成分に用いることにより、他の繊維糸P2との混繊糸形態において、織編物となし、その後の染色仕上げ加工において、その特有の収縮と伸長作用により、ポリエステル繊維糸P1自身がふくらみ構造となし、また、P2繊維との間においてもふくらみ構造となし得る。また、同時に上記した特定ポリエステル繊維糸P1の微細構造に起因して110℃以下の低温でも濃色に染色可能であるという効果をもたらすと推定している。 【0026】ポリエステル繊維糸P1において、その非晶配向度は、従来ポリエステル繊維に比べて低く0.35以下、好ましくは0.30以下である。見掛ヤング率もまた従来ポリエステル繊維に比べて低く4000N/mm2 以下、好ましくは3500N/mm2 以下、特に好ましくは3000N/mm2 以下である。 【0027】また、荷重伸長曲線において、X0 /Y0 が0.04〜1.4、好ましくは0.04〜1.0、より好ましくは0.045〜0.8、特に好ましくは0.05〜0.5であり、かつβ/αが0.15〜2.2、好ましくは0.25〜2、より好ましくは0.35〜1.8、特に好ましくは0.45〜1.6である。 【0028】ポリエステル繊維糸P1を形成するポリエステルポリマは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルが好ましく適用でき、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく適用できる。また、ポリエチレンテレフタレートにポリアルキレングリコールが共重合された共重合体や、ポリエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸が共重合された共重合体も好ましく適用できる。 【0029】ポリエステル繊維糸P1の繊度は30〜250デシテックスが好ましく、特に50〜200デシテックスが好ましい。繊度が30デシテックス未満では、本発明の特徴である伸縮性や反発性が発揮しずらく、繊度が250デシテックスを越えるとポリエステル繊維P2を含めた繊度が大きくなり重く、厚い布帛となり好ましくない。 【0030】ポリエステル繊維糸P1は繊維の断面形状や表面形状など特に限定するものではないが、中空繊維として用いることは、本発明において布帛の軽量化、柔軟性や保温性を高めるのに好ましい態様である。また、多葉状断面繊維(マルチローバル断面繊維)を用いることは、吸水性、保温性、嵩高性、表面品位や感触を高めるのに好ましい態様である。また、ポリエステル繊維糸P1として粘度の異なる2種のポリエステルポリマが接合されポリエステル繊維を用いることは、その繊維が有する潜在捲縮性能と本発明との相乗効果により伸縮性やふくらみを高めるのに好ましい態様である。 【0031】また、ポリエステル繊維糸P1として、0.4デシテックス以下、好ましくは0.1デシテックス以下の極細繊維を用いることにより、柔軟で薄く、軽い布帛とすることができ好ましい態様である。その極細繊維を得る手段は特に限定がなく、海島型複合繊維に代表される溶出型複合繊維や異成分が接合した分割型複合繊維が好ましく適用される。さらに、かかる織編物に撥水剤、抗菌剤、制電剤、吸水剤などの機能処理剤を付加することも、その機能をより高めることができ好ましい態様である。 【0032】また、ポリエステル繊維糸P1が芯にポリスチレンポリマを有する芯鞘複合繊維を有するものであれば、5000m/minを超える高速紡糸においても本発明のポリエステル繊維糸P1とする原糸を得ることができ、生産性が高く、低コストで製造することができ好ましい態様である。さらに、また、上述したようにポリエステル繊維P1糸は織編物形態での熱履歴を受ける加工において、特異な収縮および伸張挙動を示すが、トータルとしては収縮サイドにある収縮繊維である。 【0033】また、ポリエステル繊維糸P1はフィラメントであってもステープル糸であっても構わないし、それらの複合糸例えばカバーリング糸、合撚糸、交撚糸、引き揃え糸であっても構わない。 【0034】一方、ポリエステル繊維糸P1と複合して複合糸形態となす他方の繊維P2としては、繊維の状態あるいは糸の状態で前記ポリエステル繊維糸P1と複合して複合糸形態となすものである。 【0035】他方の繊維P2としては、一つには、非晶配向度が0.45以上、好ましくは0.48以上および/または見掛ヤング率が3000N/mm2 以上、好ましくは3500N/mm2 以上のポリエステル繊維である。 【0036】このポリエステル繊維P2は、上述特性以外は、特に限定がなく中空繊維、粘度の異なる2種のポリエステルポリマが接合されたポリエステル繊維、0.4デシテックス以下の極細繊維、断面がマルチローバル形状とした繊維として用いることは好ましい態様である。 【0037】また、ポリエステル繊維糸P1と複合する他の繊維P2としては、ウール、綿、レーヨン、アセテート、麻の繊維状あるいは糸状の中から選ばれた少なくとも一種であって、特に限定がなく従来公知の原糸および原料糸が適用でき、それぞれの特徴を活かして用途、目的に応じて適宜選択される。 【0038】他方の繊維P2の糸の状態での繊度は20〜250デシテックスが好ましく、50〜200デシテックスが特に好ましい。繊度が20デシテックス未満では、複合糸としてのP2の特徴が発揮しずらく、繊度が250デシテックスを超えるとP1を含めた繊度が大きくなり重く、厚い布帛となって好ましくない。 【0039】P1とP2の複合糸形態は、特に限定がなく従来公知の方法が適用できる。すなわち、カバードヤーン、コアスパンヤーン、合撚糸、あるいはエアー交絡糸などの複合糸形態が好ましく適用でき、用途、目的によって適宜選択される。 【0040】本発明のポリエステル複合糸におけるP1とP2の配置は特に限定するものではないが、P1が糸表面の全面あるいは主体的に外部を被覆していることが好ましく、さらにP2が部分的に外部に露出し、P1とP2が混在して糸表面を構成することが特に好ましい態様である。P2が外部に露出する程度としては、5〜40%であることが好ましく、10〜30%が特に好ましい。これは、糸形態で電子顕微鏡写真を撮影し、写真の上にトレース紙を被せP1とP2と色分けしてその面積を測り求められる。また、かかる布帛を分散染料のみあるいは酸性染料のみで染色を行い、布帛表面の染着差により判定される。例えば、P2にウールを用いた場合を例にとると、分散染料のみの染色により表面の染着が不十分で白っぽくなり、酸性染料のみによる染色で表面を濃色に染色できればウールであるP2が主体となって布帛の表面を形成しているといえる。その逆の場合はP1が主体となって布帛の表面を形成しているといえる。 【0041】また、さらにP1において、単繊維間が密着することなく、できる限り間隙を有し、単位重量当たりの糸体積が大きいことが好ましい態様である。また、P1とP2においても、その間隙は大きいことが好ましく、本発明はそれを実現するものである。P1とP2が密着することなく複合糸構造をなしていることを検証する方法は、糸あるは織物断面を電子顕微鏡で写真撮影し、芯と鞘間の隙間の有無を調べることにより行われる。 【0042】かかる構造により、従来のポリエステル複合糸では得られなかった、ふくらみとそれによる透け難さ、さらには良好な反発性、伸縮性、さらには深みのある発色性と良好な染色堅牢度が得られる。 【0043】上述した本発明のポリエステル複合糸構造となすこと、およびその効果を発現するには、その織編物においてヨコ軸が目付、タテ軸が空孔率からなるグラフにおいて、直線式S1により表される特定領域に存在することが要件とされる。すなわち、本発明のポリエステル織編物は、下記式S1の直線より下部領域に存在するものである。 【0044】ここで、χは目付であり、yは空孔率(%)である。さらに、S2の直線より下部領域に存在することがさらにより好ましい。さらに、目付は150〜230g/m2 にあることが好ましく、さらには、織編物の伸縮性、反発性の観点からは、S1とS3の直線に挟まれた領域に存在することが特に好ましい。式S1、S2およびS3は次のとおりである。また、そのグラフは図2に示した。 【0045】 S1: y=−0.16χ+43S2: y=−0.15χ+40S3: y=−0.08χ+20本発明のポリエステル複合糸は、織物あるいは編物として活用される。織物の場合、タテ糸および/またはヨコ糸に用いられ、織物組織としては特に限定するものではないが、平織、綾織、朱子織、またはからみ織として用いられる。特に、目の粗い組織としては、目ずれし難い紗や絽などのからみ織とするのが好ましい態様である。編物の場合、トリコット、丸編、ラッセルなどの従来公知の組織が適用できる。 【0046】また、本発明の特筆すべきもう一つの効果は、従来のポリエステル繊維は120〜135℃の高温加圧染色を必要とするが、P1糸は110℃以下でも十分に濃色に染色できることである。これは、P2として用いるウール糸、綿糸、麻など高温で染色すると物性や品位が低下する繊維素材との複合において、そのような問題を起こすことが少ないないという利点を有するものである。また、低温での染色加工が可能であることは、設備面、エネルギー、生産性、安全性の点でも大きな利点である。 【0047】次に本発明の複合糸を製造する代表例を挙げ説明を加える。 【0048】P1は、2500〜3500m/minの紡糸速度で引き取られた複屈折率Δnが0.02〜0.08の高配向未延伸糸が好ましく用いられる。また、5000m/minや6000m/minを超える引き取り速度であっても、芯成分にポリスチレンを配し鞘成分であるポリエステルの配向を抑制した芯鞘複合繊維であっても好ましく適用される。 【0049】かかる高配向未延伸糸は、延伸せずに無撚あるいはそのまま加撚して用いられる方法と、延伸することなく400〜600℃の非接触ヒータ内を弛緩しつつ通して収縮と熱処理を行い、5〜40%収縮した中間体糸としてから無撚あるいは加撚して用いられる方法がある。いずれの方法でも構わない。 【0050】また、P1をステープル糸で用いる場合は、従来公知の方法によりポリエステル高配向未延伸糸トウを作り、このトウを延伸することなく、湿式あるいは乾式法で5〜50%弛緩熱処理を行い、その後120〜200℃で熱処理を行ってから捲縮付与、所定の繊維長にカットして原綿を作製する。この原綿を用いて従来公知のステープル糸(紡績糸)作製方法にて作ることができる。 【0051】P2は、製造方法に特に限定がなく、従来公知の方法および原糸または原料糸が適用できる。必要に応じて無撚あるいは加撚される。 【0052】次いで、P1とP2を合わせて方法は、上述したように従来公知の方法が適用でき、従来公知の複合糸形態として用いられる。 【0053】得られた複合糸は、タテ糸および/またはヨコ糸に用い製織あるいは製編され生機とされる。 【0054】次いで、P2がウールの場合を例に説明を加えると、ウールの通常の加工工程である単独煮絨機を用いて、綿布に挟んで約95℃熱水中で15〜20分処理する。この場合、生機が10%程度収縮するように張力を調整しつつ加工することが好ましい。次いで、通常のリラックス精練、中間セット、液流染色、剪毛加工、毛焼き加工、風合い加工、仕上げセット、蒸絨処理を行う。 【0055】この加工工程において、特に限定はないが、単独煮絨機あるいはそれに相当する装置で収縮することが重要であること、およびP1が十分に熱結晶化するように温度と時間が必要とされる。 【0056】本発明で述べた特性値は次の方法にて測定された値である。 (1)ポリエステル繊維の非晶配向度測定法:偏光蛍光法装 置:日本分光工業製FOM−1光学系:透過法(励起光波長:365nm、蛍光波長:420nm) 測定系:偏光子‖検光子、および偏光子〓検光子で回転して、面内の偏光蛍光強度(I‖、I〓)の角度分布を得た。ここで、‖は平行を示し、〓は垂直を示す。非晶配向度は下記式からの一軸配向係数f2 で求めた。 【0057】f2 =3/2[{I‖(0)+2I〓(0)}/K−1/3] 但し、K={I‖(0)+4I〓(0)+8/3I‖(90)} I‖(0) :‖測定での軸方向の相対偏光蛍光強度I‖(90):‖測定での上記と直交方向の相対偏光蛍光強度I〓(0) :〓測定での軸方向の相対偏光蛍光強度(2)見掛ヤング率JIS−L−1013、7.10に準じて測定された値である。 (3)荷重伸張曲線JIS−L1013 7.5(引張強さ及び伸び率)の試験法に準じて測定した。 【0058】試験機:低速伸張型引張試験器試長(つかみ間隔):5cm初期荷重:8.82mN/tex引張速度:100mm/分チャート速度:100mm/分温度:20±2℃湿度:65±5%RH(4)第1次変曲点、第2次変曲点図1に示すように、得られた荷重伸長曲線に沿って引いた3本の接線(接線1、接線2、接線3)において、接線1と接線2の交点を第1次変曲点4とした。また、接線2と接線3の交点を第2次変曲点5とした。 (5)切断強度および切断伸度図1に示すように、得られた荷重伸長曲線の切断点6における強度および伸度とした。 (6)目付織編物からタテ10cmヨコ10cmの正方形サンプルを5枚採取し、その重量を測って平均を出し、平方メートル当たりの重量(g/m2 )で表す。 (7)空孔率織編物を拡大装置で50〜100倍程度(真上からの陰影と、陰影のない部分)に拡大して繊維が存在しない部分の面積の割合、空孔率(%)=(繊維の存在しない部分の面積)/全体の面積)×100、の値を測定する。具体的には、スカラ株式会社製ビデオマイクロスコープ(VMS−1000型)を用いて拡大写真をとり、拡大写真の空孔部分の面積と全体の面積を測定することにより求めた。 【0059】本発明のポリエステル複合糸およびそれを用いた布帛はその特性を活かして、スーツ、パンツ、シャツ、コート、下着、スポーツ衣料、作業着、ブラウス、ジャケットなどに好ましく適用できる。特に、軽くて、透け難さを要求される夏季用のフォーマルウエア、スーツ、ジャケット、パンツに好適である。 【0060】 【実施例】実施例1、比較例1P2として下撚Z700T/M、165デシテックスのウール糸を用い、P1として138デシテックス、36フィラメントのポリエチレンテレフタレート高配向未延伸糸の無撚糸を用い、両者を合わせて上撚Z800T/Mを掛け、90℃で30分間撚止めセットを行いポリエステル複合糸とした。 【0061】このポリエステル複合糸を用いて、タテ53本/2.54cm、ヨコ53本/2.54cmの密度の生機を製織した。 【0062】比較例1として、A糸は実施例1と同じウール糸(下撚数Z700)を用い、B糸にポリエチレンテレフタレート延伸糸の無撚糸138デシテックス、36フィラメントを用い、両者を合わせて上撚Z800T/Mを掛け、90℃で30分間撚止めセットを行いポリエステル複合糸とした。この糸を用いて、タテ47本/2.54cm、ヨコ44本/2.54cmの密度の生機を作製した。 【0063】実施例1および比較例1とも、95℃×20分の単独煮絨処理を行い、タテ、ヨコとも10%収縮させた。次いで98℃×3分のリラックス精練、120℃×3分の乾燥、170℃×40秒の乾熱中間セット、分散染料1.5%、酸性染料1.5%の染料濃度で110℃×40分の液流染色を行い濃紺に染めた。次いで通常の剪毛加工と毛焼き加工を行い、また柔軟・制電加工処理を行い、160℃×35秒の仕上げセットと110℃×10分の蒸絨処理を行った。 【0064】得られた染色生地は、図2示すように実施例1が目付199g/m2 であり、空孔率7.2%であり、本発明の要件を満たすものであった。一方、比較例1は、目付211g/m2 であり、空孔率15.6%であり、本発明の要件から外れるものであった。 【0065】実施例1は、発色性および染色堅牢度(JIS−L0849、JIS−L0842、JIS−L0844に準ずる試験法において乾湿摩擦堅牢度、耐光堅牢度、各種洗濯堅牢度が3級以上)とも良好であった。また、柔軟で、表面がスムースであり、好ましい伸縮性と反発性を有するものであった。一方、比較例1は、P1側の濃色部分とP2側の淡色によるメランジ調となり発色性が不良であった。風合いは硬めであり、表面がざらざらとした感触があり、伸縮性はほとんど有しないものであった。また、透けが目立つものであった。 【0066】両方の織物から糸を抜き出し、電子顕微鏡にて糸構造を調べたところ、実施例1はウールが芯、ポリエステル繊維が鞘の芯鞘構造をなしており、芯鞘間および鞘間に隙間を有するものであった。一方、比較例1はウールとポリエステル繊維が交互に露出し、両成分間およびポリエステル間に隙間が少なくふくらみのない構造であった。両者の生地から糸を抜き出してP1のみの特性を調べた結果を次の表1に示した。表1の結果のとおり、実施例1は本発明の要件を満たすものであった。 【0067】実施例2P2糸として下撚Z800T/M(撚係数9750)、165デシテックスのウールを用い、P1糸としてポリエチレンテレフタレート(IV=0.68)を溶融紡糸し、引取速度3100m/分、139デシテックス、36フィラメントのPOYを得た。この原糸を延伸することなく500℃雰囲気中の非接触ヒータ(長さ1m)内を張力付加しつつ、速度500m/分で通して処理し11%収縮させ152デシテックス、36フィラメントのポリエステル収縮糸を得た。 【0068】かかるA糸とB糸を合わせて加撚し上撚Z700T/M(撚係数11830)のポリエステル複合糸としさらに85℃で10分間撚止めセットを行った。これをタテ糸とヨコ糸に用い平織物に製織した。織密度は、タテ54本/2.54cm、ヨコ56本/2.54cmであった。 【0069】次いで、実施例1と同様の処理を行って染色生地を作製した。得られたものは、図2に示すように目付が207g/m2 であり、空孔率が5.3%であり、本発明の要件を満たすものであった。また、濃色であり、柔軟で、透けが少なく、表面がスムースであり、好ましい伸縮性を有するものであった。生地から糸を抜き出して特性を調べた結果を次の表1に示した。表1の結果のとおり、実施例2は本発明の要件を満たすものであった。 【0070】実施例3P1糸としてポリエチレンテレフタレート(IV=0.68)を溶融紡糸し、引取速度3100m/分、4000デシテックス、1000フィラメントのPOYを得た。この原糸を合糸して8万デシテックス、2万フィラメントのトウを作製し、延伸することなく95℃の液浴中で、速度50m/分で通して処理し25%収縮させ、10万デシテックスのポリエステル収縮トウを得た。このポリエステルトウを170℃で10分間の熱処理を行った後、51mmにカットして原綿を作製した。この原綿を用いて従来公知の方法であるカード機、練条機、粗紡機、精紡機、撚糸機を通して150デシテックス、撚数365T/Mの紡績糸を作製した。P2糸として下撚Z800T/M、165デシテックスのウールを用いた。 【0071】かかるP1糸とP2糸を合わせて加撚し、上撚Z700T/Mのポリエステル複合糸とし、さらに85℃で10分間撚止めセットを行った。これをタテ糸とヨコ糸に用いて平織物に製織した。 【0072】次いで、実施例1と同様の処理を行って染色生地を作製した。得られたものは、図2に示すように、目付が195g/m2 、空孔率が7.5%であり本発明の要件を満たすものであった。また、濃色で、柔軟で、透けが少なく、表面がスムースで感触がよく、好ましい伸縮性を有するものであった。 この織物から糸を抜き出し、電子顕微鏡にて糸構造を調べたところ、ウールが芯、ポリエステル繊維が鞘の芯鞘構造をなしており、芯鞘間および鞘間に隙間を有するものであった。 【0073】 【表1】
【0074】 【発明の効果】本発明のポリエステル織編物は、ふくらみがあって透けがすくなく、表面タッチが良好で、さらには伸縮性、反発性に富み、深みのある発色性と良好な染色堅牢度を有する特徴を有するものである。また、さらには、本発明は、従来より低温での染色が可能であり、加工による品位および物性の低下を大幅に改善することができる。また、複雑な製造工程を必要とせず、従来技術に比べて低価格で省エネルギー化、省人化を図ることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
|
| 【出願日】 |
平成13年4月5日(2001.4.5) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2002−13043(P2002−13043A) |
| 【公開日】 |
平成14年1月18日(2002.1.18) |
| 【出願番号】 |
特願2001−106968(P2001−106968) |
|