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【発明の名称】 無杼織機における絡耳形成装置
【発明者】 【氏名】吉田 久紀

【要約】 【課題】織機本体を高速回転させても美麗な絡耳を形成できるようにする。

【解決手段】地耳糸を案内するニードル14を備えたニードルレバー7と、絡耳糸を案内するヤーンフィンガー20を左右回同可能に備えたフィンガーレバー8と、ヤーンフィンガー20の左右運動を司るチェンジレバー9とをそれぞれ上下に回動可能に機枠1に支持し、織機本体に同期して駆動される回転軸3に各レバー7、8、9に対応させて各レバー7、8、9を回動駆動する偏芯ブッシュ5(5a、5b、5c)を設けるとともに、チェンジレバー9とヤーンフィンガー20を連結機構としてのピローボールロッド22にて連結した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 耳糸を地耳糸と絡耳糸に分け、地耳糸に対して絡耳糸の糸経路を左右運動並びに上下に出没運動させ、絡耳を織成する無杼織機における絡耳形成装置であって、地耳糸を案内するニードルを備えたニードルレバーと、絡耳糸を案内するヤーンフィンガーを左右に回動可能に備えたフィンガーレバーと、ヤーンフィンガーの左右運動を司るチェンジレバーとをそれぞれ上下に回動可能に機枠に支持し、織機本体に同期して駆動される回転軸に各レバーに対応させて各レバーを回動駆動する偏芯ブッシュを設けるとともに、チェンジレバーとヤーンフィンガーを連結機構にて連結したことを特徴とする無杼織機における絡耳形成装置。
【請求項2】 ニードルレバーとフィンガーレバーが逆位相で上下運動するようにそれぞれに対応する偏芯ブッシュを位相をずらせて回転軸に取付けるとともに、フィンガーレバーとチェンジレバーに対応する偏芯ブッシュはほぼ同位相で適宜位相を異ならせて回転軸に取付け、ヤーンフィンガーとチェンジレバーをリンク機構を介して連結したことを特徴とする請求項1記載の無杼織機における絡耳形成装置。
【請求項3】 絡耳を、少なくとも2本の地耳糸と少なくとも2本の絡耳糸から成る少なくとも4本の耳糸にて織成することを特徴とする請求項1又は2記載の無杼織機における絡耳形成装置。
【請求項4】 回転軸は、織機本体に回転数を1/2に減速して連動させたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の無杼織機における絡耳形成装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は無杼織機における絡耳形成装置に関し、特に少なくとも4本の耳糸を、2本の地耳糸と2本の絡耳糸を用いて絡耳を織成する絡耳形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本出願人は、先に特公平3−1414号公報において、絡耳の織成に際して、地耳糸を挿通するニードルと絡耳糸を挿通するヤーンフィンガーの上下運動及びヤーンフィンガーの左右運動の駆動源として、従来のカムを使用せずに、偏芯ブッシュにて回転運動を往復上下運動に変換し、傾斜回転ブッシュにて回転運動を左右運動に変換し、ニードルとヤーンフィンガーに所定の相対運動をさせて絡耳を織成するようにした絡耳形成装置を開示した。
【0003】この絡耳形成装置によれば、カムとカムフォロアを用いず、回転運動を直接上下・左右運動に変換することにより、回転数350rpm以上の高速の織機に対しても適応可能となり、生産性の向上に多大の貢献をした。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、更なる生産性向上のため、織機回転速度の高速化が要望されるようになった。そこで、織機回転数を500rpm以上に上昇させたところ、絡耳糸を挿通したヤーンフィンガーの左右運動に問題が発生し、上記絡耳形成装置の構成では適応範囲に限界が出てきた。
【0005】即ち、織機本位回転数を500〜600rpmに高速化すると、ヤーンフィンガーの往復運動中に運動方向変換点で慣性によるオーバーランが発生し、そのため、糸の種類、繊度等の製織条件によっては美麗な絡耳を織成することができないという問題が浮上してきた。
【0006】本発明は、上記従来の問題点に鑑み、織機回転速度を高速化しても美麗な絡耳を織成することができ、生産性の向上を図れる無杼織機における絡耳形成装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の無杼織機における絡耳形成装置は、耳糸を地耳糸と絡耳糸に分け、地耳糸に対して絡耳糸の糸経路を左右運動並びに上下に出没運動させ、絡耳を織成する無杼織機における絡耳形成装置であって、地耳糸を案内するニードルを備えたニードルレバーと、絡耳糸を案内するヤーンフィンガーを左右に回動可能に備えたフィンガーレバーと、ヤーンフィンガーの左右運動を司るチェンジレバーとをそれぞれ上下に回動可能に機枠に支持し、織機本体に同期して駆動される回転軸に各レバーに対応させて各レバーを回動駆動する偏芯ブッシュを設けるとともに、チェンジレバーとヤーンフィンガーを連結機構にて連結したものであり、高速化してもヤーンフィンガーの往復運動中に運動方向変換点で慣性によるオーバーランが発生せず、また偏芯ブッシュの取付位相の調整によってヤーンフィンガーの左右運動のストロークを容易に調整できるので製織条件が変化しても常に美麗な絡耳を織成することができる。
【0008】また、ニードルレバーとフィンガーレバーが逆位相で上下運動するようにそれぞれに対応する偏芯ブッシュを位相をずらせて回転軸に取付けるとともに、ニードルレバーとチェンジレバーに対応する偏芯ブッシュはほぼ同位相で適宜位相を異ならせて回転軸に取付け、ヤーンフィンガーとチェンジレバーをリンク機構を介して連結すると、簡潔な機構にてニードルとヤーンフィンガーに所定の上下及び左右運動を行わせることができ、高速化しても安定した動作が得られる。
【0009】また、絡耳を、少なくとも2本の地耳糸と少なくとも2本の絡耳糸から成る少なくとも4本の耳糸にて織成すると、少なくとも4本の耳糸にて強くかつ美麗な絡耳を形成することができる。
【0010】また、回転軸を、織機本体に回転数を1/2に減速して連動させると、別途に回転軸の駆動手段を設ける必要がなく、簡単な構成にて織機本体と高精度に同期した安定的な動作を確保できる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の無杼織機における絡耳形成装置の一実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。
【0012】図1、図2において、織機本体の機枠1に、絡耳形成装置の全体を支持するL字形状のブラケット2が取付けられ、このブラケット2にて回転軸3の中央部が回転自在に支持されている。回転軸3の一端部にはプーリ4が固定され、他端部には回転軸3の軸芯に対して偏芯した外周面を有する3つの偏芯ブッシュ5(5a、5b、5c)が固定されている。これら3つの偏芯ブッシュ5は、それぞれ独立して偏芯位相を調整できるように、ボルト3aにて締結固定されている。
【0013】また、ブラケット2に固定された第1のベアリング付スタッド6にて、ニードルレバー7、フィンガーレバー8、チェンジレバー9が上下に回動自在に支持されている。
【0014】各偏芯ブッシュ5(5a、5b、5c)の外周には、クランクアーム10(10a、10b、10c)の一端の大径部がベアリングを介して回転自在に嵌合されている。クランクアーム10(10a、10b、10c)の他端の小径部には、それぞれ第2のベアリング付スタッド11(11a、11b、11c)が固定され、これら第2のベアリング付スタッド11(11a、11b、11c)を介してニードルレバー7、フィンガーレバー8、チェンジレバー9と連結されている。
【0015】ニードルレバー7は、地耳糸を挿通させるニードル14の上下運動を司るものであり、図3に示すように、その基部7aから一方向に長レバー7bが延出されるとともに他方向に短レバー7cが延出されている。基部7aは第1のベアリング付スタッド6にて回動自在に支持されている。長レバー7bの先端部には、図4に示すように、ヘルドフック12を介してニードルガイド13、ニードル14及びヤーンガイド15が取付けられている。短レバー7cの先端部は上述の第2のベアリング付スタッド11aに回転自在に嵌合されている。
【0016】フィンガーレバー8は、絡耳糸が挿通されるヤーンフィンガー18の上下運動を司るものであり、図5に示すように、その基部8aから一方向に長レバー8bが延出されるとともに他方向に短レバー8cが延出されている。基部8aは第1のベアリング付スタッド6にて回動自在に支持されている。長レバー8bの先端部には、図6、図7に示すようにフィンガーホルダ16が取付けられている。フィンガーホルダ16には、ピン17を介してベアリングホルダ18が回動可能に軸支されている。即ち、ベアリングホルダ18はコ字状でフィンガーホルダ16を挟んだ状態でピン17によって図7にA矢印で示すように左右方向に回動可能に支持されている。ベアリングホルダ18には、一対のボルト19によってヤーンフィンガー20が取付けられている。短レバー8cの先端部は上述の第2のベアリング付スタッド11bに回転自在に嵌合されている。
【0017】なお、絡耳糸を挿通する案内孔20aをヤーンフィンガー18は、図6に示すように、上下一対対称的に取付けられているが、その動きは上側のヤーンフィンガー20と下側のヤーンフィンガー20とは逆位相で左右運動するように構成されている。また、ベアリングホルダ18にはフィンガーアーム21の基部が固定されている。
【0018】チェンジレバー9は、ヤーンフィンガー20の左右の運動を司るものであり、図8に示すように、その基部9aから一方向に長レバー9bが延出されるとともに他方向に短レバー9cが延出されている。基部9aは第1のベアリング付スタッド6にて回動自在に支持されている。長レバー9bの先端部には、図6、図7に示すように、両端部に一対のピローボール22aを有するピローボールロッド22の一端部が連結され、その他端部がフィンガーアーム21に連結されている。ピローボールロッド22は連結機構の一例としてのリンク機構を構成している。短レバー9cの先端部は上述の第2のベアリング付スタッド11cに回転自在に嵌合されている。
【0019】なお、図1において、23は織機本体より適宜伝導手段(図示せず)を介して駆動される軸、24はこの軸23に取付けられたプーリ、25はプーリ4とプーリ24間に巻き掛けられたタイミングベルトであり、プーリ4はプーリ24の2倍の外径に形成され、軸23の回転速度を1/2に減速して回転軸3に伝達するように構成されている。
【0020】次に、以上の構成における作動状態を説明する。図1、図2において、今、織機本体駆動部より適宜の伝導手段を介して軸23が駆動されて回転すると、軸23に固定されたプーリ24、タイミングベルト25を介してプーリ4が駆動される。プーリ4が回転すると、プーリ4を固定した回転軸3が回転するが、この時その回転数は織機本体の回転数の1/2に減速されて駆動される。回転軸3が駆動されると、この回転軸3に固定された偏芯ブッシュ5(5a、5b、5c)が回転する。
【0021】偏芯ブッシュ5aが駆動されると、この偏芯ブッシュ5aに嵌合されたクランクアーム10aが駆動され、このクランクアーム10aに取付けられた第2のベアリング付スタッド11aを介してニードルレバー7が駆動される。ニードルレバー7は、第1のベアリング付スタッド6を支点として回動運動する。このため、ニードルレバー7の長レバー7bの先端に取付けたニードル14が上下方向に運動する。
【0022】一方、偏芯ブッシュ5bが駆動されると、この偏芯ブッシュ5bに嵌合されたクランクアーム10bが駆動され、このクランクアーム10bに取付けられた第2のベアリング付スタッド11bを介してフィンガーレバー8が駆動される。フィンガーレバー8は、第1のベアリング付スタッド6を支点として回動運動する。このため、フィンガーレバー8の長レバー8bの先端にフィンガーホルダー16、ベアリングホルダー18を介して取付けたヤーンフィンガー20が上下方向に運動する。
【0023】このとき、偏芯ブッシュ5aと偏芯ブッシュ5bの偏芯量の位相を適宜選択してずらせて設定しておくと、ニードル14とヤーンフィンガー20とは逆位相で上下方向に運動することになる。即ち、ニードル14が下降運動するとき、ヤーンフィンガー20は上昇運動し、ニードル14が上昇運動するとき、ヤーンフィンガー20は下降運動する。
【0024】また、同時に偏芯ブッシュ5cが駆動されると、この偏芯ブッシュ5cに嵌合されたクランクアーム10cが駆動され、このクランクアーム10cに取付けられた第2のベアリング付スタッド11cを介してチェンジレバー9が駆動される。チェンジレバー9は、第1のベアリング付スタッド6を支点として回動運動する。このため、チェンジレバー9の長レバー9bの先端に取付けたリンク機構としてのピローボールロッド22が上下方向に運動する。
【0025】このとき、フィンガーレバー8とチェンジレバー9とは、ほぼ同期して上下方向に運動させるが、フィンガーレバー8とチェンジレバー9に運動の差異を生じさせることにより、図7において、チェンジレバー9の先端の上下運動に伴い、ピローボールロッド22が矢印Bに示すように相対的に上下運動することになり、フィンガーアーム21がピン17を支点として回動し、この結果絡耳糸を挿通した案内孔20aを有するヤーンフィンガー20もベアリングホルダ18を介してピン17を支点として矢印Aに示すように左右方向に運動をする。
【0026】次に、図9、図10を参照して絡耳の形成運動について説明する。図9、図10(a)は、ニードル14が下降行程の下死点から上昇行程へ移行する直前の状態で、このときヤーンフィンガー20は逆に上昇行程の上死点から下降行程へ移行する直前の状態であり、ここでは2本の地耳糸Y1、Y2に対して絡耳糸S1、S2が上口開口し、ここで緯糸Xを挿通する緯入れがされる。
【0027】次に、図10(a)に矢印で示すように、絡耳糸S1は地耳糸Y2の右側から、また絡耳糸S2は左側から、互いに逆方向へ、ヤーンフィンガー20の下降行程と同期して移動する。この結果、絡耳糸S1は、地耳糸Y2の下側を、地耳糸Y1の上側を通って左側へ下降することになり、また絡耳糸S2は、地耳糸Y2の下側を、地耳糸Y1の上側を通って右側へ下降し、下口開口となる。同時に、地耳糸Y1、Y2もニードル14の上昇により上口開口となり、図10(b)に示す状態となり、ここで緯入れがされる。
【0028】次に、図10(b)に矢印で示すように、絡耳糸S1は地耳糸Y1の左側から、また絡耳糸S2は右側から、互いに逆方向へ、ヤーンフィンガー20の上昇行程と同期して移動する。その結果、絡耳糸S1は地耳糸Y1の上側を通り、地耳糸Y2の下側を通って右側へ上昇する。また、絡耳糸S2は地耳糸Y1の上側を通り、地耳糸Y2の下側を通って左側へ上昇して上口開口となり、図9、図10(a)の状態に戻る。
【0029】かくして、4本の耳糸のうち、2本の地耳糸と2本の絡耳糸に分けて開口させ、2本の絡耳糸の糸経路を2本の地耳糸に対して左右の運動と上下の出没運動をさせて絡耳Zが形成される。
【0030】
【発明の効果】本発明の無杼織機における絡耳形成装置によれば、以上のように地耳糸を案内するニードルを備えたニードルレバーと、絡耳糸を案内するヤーンフィンガーを左右に回動可能に備えたフィンガーレバーと、ヤーンフィンガーの左右運動を司るチェンジレバーとをそれぞれ上下に回動可能に機枠に支持し、織機本体に同期して駆動される回転軸に各レバーに対応させて各レバーを回動駆動する偏芯ブッシュを設けるとともに、チェンジレバーとヤーンフィンガーを連結機構にて連結したものであり、高速化してもヤーンフィンガーの往復運動中に運動方向変換点で慣性によるオーバーランが発生せず、また偏芯ブッシュの取付位相の調整によってヤーンフィンガーの左右運動のストロークを容易に調整できるので製織条件が変化しても常に美麗な絡耳を織成することができる。
【出願人】 【識別番号】000147774
【氏名又は名称】株式会社石川製作所
【出願日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【代理人】 【識別番号】100080827
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 勝
【公開番号】 特開2002−13039(P2002−13039A)
【公開日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【出願番号】 特願2001−18856(P2001−18856)