トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り




【発明の名称】 カバリング糸
【発明者】 【氏名】薗田 健二

【要約】 【課題】ソックス、ストッキング、肌着等の使用において着用時のフィット感、透明感、外観、風合い、同色性、などに優れたカバリング糸を提供する。

【解決手段】弾性繊維にポリトリメチレンテレフタレート繊維を巻き付けてなるカバリング糸であって、該ポリトリメチレンテレフタレート繊維のカバリング糸添係数C(=A/B)が、下記式を満足することを特徴とするカバリング糸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 弾性繊維にポリトリメチレンテレフタレート繊維を巻き付けてなるカバリング糸であって、該ポリトリメチレンテレフタレート繊維のカバリング糸添係数C(=A/B)が、下記式を満足することを特徴とするカバリング糸。
1.17≦C≦1.50ここで、A:カバリング糸に4.41×10-2cN/dtexの荷重をかけた状態での繊維面積B:カバリング糸に8.82×10-1cN/dtexの荷重をかけた状態での繊維面積C:カバリング糸添係数【請求項2】 請求項1記載のカバリング糸をレッグ部に用いたストッキングであって、レッグ部の繊維面積率Cf(=Mf/Mt)が下記式を満足することを特徴とするストッキング。
ゾッキタイプ 20%≦Cf≦35%交編タイプ 25%≦Cf≦40%ここで、Mf:人体足型マネキンに着用させた状態で太腿部の写真撮影を行った時の繊維占有面積Mt:上記写真撮影時の撮影総面積Cf:繊維面積率(%)
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリウレタン等の弾性繊維に非弾性繊維を巻き付けてなるカバリング糸に関するものであり、更に詳しくはストッキング、ソックス又は肌着等の素材として有用なカバリング糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般的にストッキングに用いられている素材はナイロン6、ナイロン66等の長繊維の延伸糸および仮撚加工糸が主流である。これらを用いたストッキングは着用時のフィット感、透明感、摩耗耐久性、膝部・踵部の抜け、風合い、同色性、などの点で総合的に完成されていないと言う問題がある。特に近年、ポリウレタン等の弾性繊維の回りにナイロン6、ナイロン66等の長繊維を一重(シングルカバリング)或いは二重(ダブルカバリング)に巻き付けることによって、弾性繊維の欠点である染色特性、機械的強度、耐摩擦性などを解消すべく上記カバリング糸を用いるサポートタイプのストッキングがフィット性の良さ、透明感からストッキングの主流となっており、ソックス、ストッキング、肌着等の用途に広範囲に用いられている。
【0003】このソックス、ストッキング、肌着等の外観、風合いはカバリング糸における巻き付け糸の物性に大きく左右されるものであり、いままで外観、風合いともに十分なものは得られておらず、これまでに巻き付け糸の物性の改良は種々試みられている。例えば、巻き付け糸のナイロン繊維のヤング率に着目しカバリング糸のトルクを低くしたもの(特開昭62−263339号公報)があるが、外観、風合いを十分満足出来るものではなかった。
【0004】ストッキングのレッグ部の透明感は、編地のカバーファクター及びカバリング糸のカバリング性の良・不良によるところが大きく、従来、ナイロン6、ナイロン66等の長繊維の原糸および仮撚加工糸、カバリング糸を用いたストッキングでは編地のカバーファクターを下げる手段として弾性繊維やナイロン糸のデニールを小さくしたり、ナイロン糸の単糸デニールを下げることによるマルチフィラメント化するなどを行なってきたが、これらは製品の強度面及び着用時の引きつれなどにより充分満足するものが得られておらず、カバーファクターを下げることが困難であった。しかも、弾性繊維にナイロン6、ナイロン66等の長繊維を巻き付けたカバリング糸のカバリング性が特に優れているとは言えない現状にあった。
【0005】一方、ストッキングのレッグ部各部位への締め付け力は、そのレッグ部各部位に相当する編地の伸長率により決定される。ここで、編地の伸長率は、レッグ部を構成する糸の種類、デニールなどの糸の要因、編組織要因などにより決定される。これらの問題を改良すべく、素材の改質、使用する糸の組み合わせの検討、編み目組織の検討などの対策が取られているのが現状であるが充分に満足できる物にはなりきっていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ストッキング、ソックス、又は肌着等の使用において上記の実現困難と考えられてきた着用時のフィット感、透明感、外観、風合い、同色性、などに優れたカバリング糸を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来のストッキング、ソックス、又は肌着等の素材として着用時のフィット感、透明感、外観、風合い、同色性、などに優れた巻き付け糸について種々検討した結果本発明に至った。すなわち、製品の外観、風合いが不良となる原因は編立て工程に於ける編立て時並びに編立て後の弾性繊維と非弾性繊維の反発力(引張抵抗力)と回復性が違いすぎるためであり、弾性繊維が具有する高伸度、高瞬間回復性によって発生する編立張力斑に基づいて起こる不揃いの編目が、弾性繊維のみであればその優れた弾性力で元に戻り、均一なる編目と成りうるが、弾性繊維の回りを被覆する初期引っ張り抵抗応力の高い巻き付け糸が回復力を保有する弾性繊維を圧迫するためバランスがとれず、不揃いの編目を残す結果となり、目面不良を誘発する。すなわち、弾性繊維と巻き付け糸両者間の上記物性差に基づくものであることに起因するものである。本発明者は、従来ストッキング、ソックス、又は肌着等の素材として着用時のフィット感、透明感、外観、風合い、同色性、などについて検討した結果、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用い、かつ特定のカバリング状態となすことにより上記欠点が改善されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】すなわち本発明は、弾性繊維にポリトリメチレンテレフタレート繊維が巻き付けてなるカバリング糸であって、該ポリトリメチレンテレフタレート繊維のカバリング糸添係数C(=A/B)が、下記式を満足することを特徴とするカバリング糸、である。
1.17≦C≦1.50ここで、A:カバリング糸に4.41×10-2cN/dtexの荷重をかけた状態での繊維面積B:カバリング糸に8.82×10-1cN/dtexの荷重をかけた状態での繊維面積C:カバリング糸添係数【0009】更に、係るカバリング糸をレッグ部に用いたストッキングであって、レッグ部の繊維面積率Cf(=Mf/Mt)が下記式を満足することを特徴とするストッキングである。
ゾッキタイプ 20%≦Cf≦35%交編タイプ 25%≦Cf≦40%ここで、Mf:人体足型マネキンに着用させた状態で太腿部の写真撮影を行った時の繊維占有面積Mt:上記写真撮影時の撮影総面積Cf:繊維面積率(%)
【0010】また、本発明のストッキングとしては、レッグ部が原糸、レッグ部以外が加工糸で構成されており、該原糸並びに該加工糸が共にポリトリメチレンテレフタレートで構成されていることが好ましい。ここでいうポリトリメチレンテレフタレート繊維で構成されているとは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維のみを用いる場合以外に、ポリトリメチレンテレフタレート繊維と他の繊維が複合されている場合を含んでいる。ここでいう他の繊維とは、ストッキング、ソックス、又は肌着等の素材として好適に用いられる繊維であれば何ら限定されるものではないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66等のナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維、ポリウレタン等の弾性繊維や天然繊維などが挙げられる。
【0011】本発明のストッキングとは、一般的に扱われている原糸、仮撚加工糸、及びポリウレタン弾性繊維にこれらの糸を巻き付けた(シングル又はダブルカバリング)カバリング糸を用いた通常のストッキング、ウェルト部パンティ部を有するパンティストッキング、タイツ、ヒザ上ストッキング、ハイソックス、ショートソックスなどを含むものである。本発明で、ストッキングのレッグ部の良好な透明感及びフィット感を得るために、レッグ部に用いられるカバリング糸のカバリング糸添係数Cが、1.17以上1.50以下であれば良く、より好ましくは1.20以上1.40以下で良好な透明感及びフィット感を得ることができる。
【0012】カバリング糸添係数が1.17より小さい場合は透明感は満足されるものの、着用時のフィット性が低下し着用しづらいものになり、1.50より大きいと、後述のレッグ部の編地の繊維面積率がゾッキタイプでは35%、交編タイプでは40%より大きくなり、レッグ部が地厚なものとなり透明感は低下し、外観の美しいストッキングとなり得ないのみならず、肌への接触面積が大きく、通気性、清涼性に劣るためはき心地の悪いものとなり好ましくない。同様に、ストッキングのレッグ部の良好な透明感を得るために、レッグ部の編地の繊維面積率は製品の突き破り、引きつれなどによる損傷が起こらなければより小さいことが望ましいが、ゾッキタイプで20%以上35%以下がよく、好ましくは22%以上30%以下であり、交編タイプで25%以上40%以下が良く、より好ましくは27%以上35%以下である。繊維面積率がゾッキタイプで20%、交編タイプで25%より小さいと、製品の着脱時或いは着用中に突き破れやひきつれ、ラン等の損傷が生じ、耐久性が非常に劣るものとなる。一方、繊維面積率がゾッキタイプで35%、交編タイプで40%より大きくなると地厚なものとなり透明感は低下し、外観の美しいストッキングとなり得ないのみならず、肌への接触面積が大きく、通気性、清涼性に劣るためはき心地の悪いものとなり好ましくない。
【0013】本発明において用いる加工糸とは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を仮撚加工(POYの延伸仮撚糸を含む)した糸であり、仮撚加工の方法としては、一般に用いられるピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エア加撚タイプ等、いかなる方法によるものでもよい。又、本発明の目的を損なわない範囲内において、交絡混繊、撚糸、さらには、本発明の目的を損なわない範囲内でセルロース繊維等他の繊維との、カバリング、交絡混繊、交撚、複合仮撚(伸度差仮撚等)などによる複合加工を施したものを用いてもよい。また、他の繊維との複合方法として、交編も好適に用いられる。
【0014】本発明のカバリング糸に用いられる弾性繊維としては、9〜110デシテックス(以下「dtex」と表示する。)、好ましくは11〜44dtexのポリウレタン繊維が用いられ、カバリングの巻き付け糸に用いられるフィラメント糸には、6〜100dtex、好ましくは、8〜72dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維で構成されることが望ましい。フィラメント糸が6dtex未満では強度の面から破れが生じやすく、又、100dtexを越えると地厚になり、透明感などが低下しやすい。
【0015】カバリング加工の条件は特に限定するものではないが、シングルカバリングの場合は、弾性繊維のドラフト率を2.5〜3.5倍に伸長し、カバリング撚数は後述するシングルカバリング撚係数(Ks=Ts/√Ds)が5500≦Ks≦8500になるように設定する必要があり、好ましくは6000≦Ks≦8000の範囲になるように設定するとフィット性、透明感、風合い、耐久性、編立操業性等が良好なシングルカバリング糸を得ることができる。
ここで、Ts:シングルカバリング撚数(T/M)
Ds:巻き付け糸に用いられるフィラメント糸の糸条デシテックスKs:シングルカバリング撚係数【0016】シングルカバリング撚係数が5500未満の場合は、芯糸の弾性繊維に巻き付けられる非弾性繊維の単繊維がばらけて透明性が低下したり、単繊維が引掛かり、いわゆるツレが発生しやすく、又、8500を超えると編成時にビリが発生し、ビリが部分的に編み地のループに編み込まれ、外観を著しく損ない風合いも好ましくない。又、カバリング糸を使用することで編み地が斜行する場合には、S撚、Z撚のカバリング糸を1本交互に編成すればよい。
【0017】同様にダブルカバリングの場合は、弾性繊維のドラフト率を2.5〜3.5倍に伸長し、上撚のカバリング撚数を下撚のカバリング撚数に対し80〜90%になるように更にカバリング撚数としては後述するダブルカバリング撚係数(Ks=Ts/√Ds)が5500≦Kd≦8500に設定になるようにすることが好ましく、特に好ましくは6000≦Kd≦8000の範囲になるように設定するとにより、フィット性、透明感、風合い、耐久性、編立操業性等が良好なダブルカバリング糸を得ることができる。
ここで Td:ダブルカバリング撚数 (上撚+下撚)/2(T/M)
Dd:巻き付け糸に用いられるフィラメント糸の糸条デシテックスKd:ダブルカバリング撚係数【0018】ダブルカバリング撚係数が5500未満の場合は、芯糸の弾性繊維に巻き付ける非弾性繊維の単繊維がばらけて透明感が低下したり、単繊維が引掛かり、いわゆるツレが発生しやすく、又、8500を超えると出来上がるダブルカバリング糸が硬くなり編成時や仕上げセット時に不具合が発生し、生地が地厚で硬いものとなり外観、透明感を損ない風合いも好ましくない。これらの糸条を用いてストッキングを製造する方法は、特に限定されないが、例えば一般にいうストッキング用丸編機を用いることが出来る。この場合、針本数は300本から600本、釜径(釜の直径)は3インチから5インチが好ましい。
【0019】本発明におけるストッキングの編組織は特に限定されず、ニット、タック、ウエルトの組織、または、これらの組合せであって、これにより柄が表現されていてもよい。又、ストッキングを構成するループの大きさも特に限定されず、例えば、コース方向に編針の引き込み深さである度目を変えて編成を行う、いわゆるファッショニングや、交編ストッキングの場合などで用いられるカバリング糸と原糸又は仮撚加工糸などいわゆる伴糸のループの大きさを変えてもよい。ストッキングのプレセット条件、縫製条件、染色条件、仕上剤条件、ファイナルセット条件は特に限定されず、適宜選択すればよい。
【0020】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明で用いるポリトリメチレンテレフタレート繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0021】ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に縮合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンドしたり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイド等)してもよい。
【0022】添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
【0023】さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。本発明においてポリトリメチレンテレフタレート繊維の紡糸については、1500m/分程度の巻取り速度で紡糸して未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻き取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。又、繊維の形態は長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0024】単糸の繊度は、0.1〜4dtex、好ましくは0.5〜3dtexがよく、ヤーンとしてのデシテックスは、6〜100dtex、好ましくは8〜72dtexがよい。本発明でレッグ部に用いる糸の構成、糸の種類、繊度については、糸の構成が、そのサポート力、フィット性から、本発明の目的である、ポリウレタン弾性繊維に原糸および仮撚加工糸をシングル又はダブルカバリングしたカバリング糸を用いたサポートタイプであること以外は、特に限定されるものではない。本発明でレッグ部に用いる編組織は、ニット、タック、ウェルトの組み合わせで編成される組織であって、特に限定されない。
【0025】先に述べたように、一般に、ストッキングのレッグ部各部位への締め付け力は、ストッキングを構成する糸の種類、繊度など糸の要因、編組織要因が除かれた同一糸使い、同一編組織であるならば、編目長によって決定されストッキングの締め付け力は、編目長が大きいほどその締め付け力は小さくなる。以上より、本発明は、ポリウレタン弾性繊維を芯糸にし、そのまわりに非弾性繊維を巻き付けた、ストッキング、ソックス、ストッキング又は肌着等の素材に好適なカバリング糸を提供できる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例などを用いて具体的に説明する。尚、実施例に示した特性の測定方法は下記の通りである。
(1) ポリウレタン弾性繊維のデシテックスの測定方法20℃、相対湿度65%雰囲気下でポリウレタン弾性糸を無緊張かつ無荷重で直線状に静置し24時間放置し放縮させる。この後、試料を1000mmの長さで切断したものを10本合わせて秤量し、10000mあたりの重量に換算し、その値をデシテックスとする。
(2) カバリング糸のデシテックスポリウレタン弾性繊維のデシテックスをDp、ポリウレタン弾性繊維のドラフト率をDf、ポリウレタン弾性繊維を芯糸にしそのまわりに巻き付ける非弾性繊維のデシテックスをDhとすると、カバリング糸のデシテックスDkは次式で算出する。
Dk=Dp/Df+Dh【0027】(3) カバリング糸添係数カバリング糸に、カバリング糸のデシテックスに対して4.41×10-2cN/dtexの荷重をかけた状態での糸形態写真をスカラ社製ビデオマイクロスコープVMS−1000を用い、100倍率にて撮影し、さらにカバリング糸のデシテックスに対してに8.82×10-1cN/dtexの荷重をかけた状態での糸形態写真を上記と同様に100倍率にて撮影し、旭化成工業社製IP−1000画像解析処理装置にてそれぞれの荷重下での写真中の繊維の面積を測定しカバリング糸添係数(C=A/B)を算出した。
ここで、A:カバリング糸に4.41×10-2cN/dtexの荷重をかけた状態での繊維面積B:カバリング糸に8.82×10-1cN/dtexの荷重をかけた状態での繊維面積C:カバリング糸添係数【0028】(4) レッグ部編地の繊維面積率ストッキングをナイガイ社製M寸人体足型マネキンにストッキングの太股部(ストッキングをフリーの状態で平面に置いたときのストッキング置き寸においてパンティー部と足部の境目から足部下方に10cmの位置であり、太股部位の度目が一定に編成された位置)がマネキンの足部付け根から足部へ下方15cmの位置にくるようにストッキングを着用させた状態をスカラ社製ビデオマイクロスコープVMS−1000を用い、100倍率にて写真撮影し、旭化成工業社製IP−1000画像解析処理装置にて写真中の繊維が占める面積を求め繊維面積率(Cf=Mf/Mt)を測定した。
ここで、Mf:人体足型マネキンに着用させた状態で太腿部の写真撮影を行った時の繊維占有面積Mt:上記写真撮影時の撮影総面積Cf:繊維面積率(%)
【0029】(5) フィット性パネラー10名による官能テストを行い、着用時のフィット性について評価した。フィット性について、非常に良好を5、良好を4、どちらともいえないを3、やや不良を2、不良を1とした5段階評価を行い、10名の平均値を評価値とした。
(6) レッグ部透明感パネラー10名による官能テストを行い、着用時のレッグ部の透明感について評価した。レッグ部の透明感について、非常に良好を5、良好を4、どちらともいえないを3、やや不良を2、不良を1とした5段階評価を行い、10名の平均値を評価値とした。
(7) 摩耗耐久性パネラー10名による着用評価後のものについて摩耗耐久性について評価した。摩耗耐久性について、非常に良好を5、良好を4、どちらともいえないを3、やや不良を2、不良を1とした5段階評価を行い、10名の平均値を評価値とした。
【0030】(8) 風合い(ソフト感)
パネラー10名による官能テストを行い、着用時のソフト感について評価した。ソフト感について、非常に柔らかいを5、柔らかいを4、どちらともいえないを3、やや硬いを2、硬いを1とした5段階評価を行い、10名の平均値を評価値とした。
(9) 風合い(ドライ感)
パネラー10名による官能テストを行い、着用時のドライ感について評価した。ドライ感について、非常にドライであるを5、ドライであるを4、どちらともいえないを3、ややヌメッているを2、ヌメッテているを1とした5段階評価を行い、10名の平均値を評価値とした。
【0031】(10) 膝部及び踵部の抜けパネラーは10名による着用評価を行った。パネラーがパンティストッキングを8時間着用し、脱着後、20℃、65%RHの環境下に1時間放置した後、形態を評価した。着用前の状態に比べて、膝部及び踵部の抜けが、全くないを5、若干抜けるを4、抜けているを3、かなり抜けているを2、抜けて着用困難を1とした5段階評価を行い、10名の平均値を評価値とした。
(11) 同色性着用する前と着用時におけるレッグ部を基準にしてレッグ部以外の部位例えばウエルト部、パンティ部、トウ部との同色性について官能テストを行った。パネラーは10名とし、同色性について、非常に良好を5、良好を4、どちらともいえないを3、やや不良を2、不良を1とした5段階評価を行い、10名の平均値を評価値とした。尚、評価はパネラーが着用して自身で評価した。
【0032】
【実施例1】以下の製法によりポリトリメチレンテレフタレート繊維を製造した。ηsp/c=0.8のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で未延伸糸を得、次いで、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して、55dtex/36f、33dtex/10f、13dtex/3f、9dtex/3fの延伸糸を得た。延伸糸の強度、伸度、弾性率並びに10%伸長時の弾性回復率は表−1に示すとおりである。
【0033】尚、10%伸長時の弾性回復率は、試料に8.82×10-2cN/dtexの初荷重をかけ、毎分20%の伸びの一定割合の速度で伸ばし、伸度10%になったところで今度は逆に同じ速度で収縮させて、応力−歪曲線を画く。収縮中、応力が初荷重と等しい8.82×10-2cN/dtexにまで低下した時の残留伸度をLとし、下記式で算出した。
10%伸長時の弾性回復率=〔(10−L)/10〕×100(%)
又、ηsp/cはポリマーを90℃でo−クロロフェノールの1g/デシリットルの濃度で溶解し、その後、得られた溶液をオストワルド粘度管に移し35℃で測定し、下記式により算出した。
ηsp/c=〔(T/T0)−1〕/CT:試料溶液の落下時間(秒)
T0:溶剤の落下時間(秒)
C:溶液濃度(g/デシリットル)
【0034】得られた延伸糸を、石川製作所(株)製IVF338仮撚加工機(第1ヒーターは接触式、第2ヒーターは未使用、加撚機構はピン方式)を用いて、スピンドル回転数600,000rpm、仮撚数は各延伸糸に適した条件、第1フィード率は±0%の条件でヒーター仮撚加工を行い、S、Zそれぞれに加撚した1ヒーターの仮撚加工糸を得た。仮撚加工の条件および得られた加工糸の物性は表−2に示すとおりである。上記の製法で得られたポリトリメチレンテレフタレート繊維13dtex/3fの延伸糸を被覆用糸とし片岡機械(株)製カバリング機を用い、ポリウレタン弾性糸繊維(旭化成社製;商品名ロイカ)17dtex/3fをドラフト率3.0倍に伸長しつつS撚、Z撚それぞれ1800T/Mでカバリングしたシングルカバリング糸(a)を作成した。得られたカバリング糸のカバリング糸添係数は1.37であった。
【0035】続いて釜径4インチ、針本数400本のLONATI(社)製パンティストッキング用丸編機L−416Rを用いて、ウエルト部は155dtexのポリウレタン弾性繊維、56dtex/36fのポリトリメチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸(b)、片岡機械(株)製カバリング機を用い33dtexのポリウレタン弾性繊維をドラフト3.0で延伸し、33dtex/10fのポリトリメチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をS、Zそれぞれ600T/Mでシングルカバリングしたカバリング糸(c)を用いて交編し(1:1タックの組織にて編成)、パンティ部及びトウ部は、仮撚加工糸(b)とカバリング糸(c)を用いて交編し(天竺組織にて編成;尚、パンティ部の一部にランガードとして同一の糸使いで1:1タックの組織にて編成)、レッグ部は、上記のシングルカバリング糸(a)で編成し(天竺組織にて編成)、パンティストッキングの生機を得た。
【0036】次いで、通常の方法でプレセットを行った後、得られたパンティストッキングの生機を縫製糸(33dtex/10fのポリトリメチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を2本合撚したもの)を用いて股部及びトウ部を縫製した。次いで通常の方法でパンティストッキングの一般色である茶色に分散染料で染色、仕上剤処理、ファイナルセットを行い製品とした。着用の状態での評価結果は表−3に示すとおりであり、フィット性、透明感、風合い、膝部及び踵部の抜け、同色性に優れたものであった。
【0037】
【実施例2】実施例1において、レッグ部に、シングルカバリング糸(a)と13dtex/3fのポリトリメチレンテレフタレート繊維の延伸糸(e)を1:1の糸使いで交編した以外は実施例1と同様にしてパンティストッキングを作成した。着用の状態での評価結果は表−3に示すとおりであり、フィット性、透明感、風合い、膝部及び踵部の抜け、同色性に優れたものであった。
【0038】
【実施例3】実施例1において、レッグ部に17dtex/3fのポリウレタン弾性繊維をドラフト3.0で延伸し、に13dtex/3fのポリトリメチレンテレフタレート繊維の延伸糸を用い片岡機械(株)製カバリング機でS、Zそれぞれ2200T/Mでシングルカバリングしたカバリング糸(g)を作成した。得られたカバリング糸のカバリング糸添係数は1.28であった。レッグ部を(g)のみで編成した以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作成した。着用の状態での評価結果は表−3に示すとおりであり、フィット性、透明感、風合い、膝部及び踵部の抜け、同色性に優れたものであった。
【0039】
【実施例4】実施例1において、レッグ部に22dtex/3fのポリウレタン弾性繊維をドラフト3.0で延伸し、に13dtex/3fのポリトリメチレンテレフタレート繊維の延伸糸を用い片岡機械(株)製カバリング機で上撚りとしてS方向に2300T/M、下撚りとしてZ方向に2050T/Mでダブルカバリングしたカバリング糸(h)を作成した。得られたカバリング糸のカバリング糸添係数は1.21であった。レッグ部を(h)のみで編成した以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作成した。着用の状態での評価結果は表−3に示すとおりであり、フィット性、透明感、風合い、膝部及び踵部の抜け、同色性に優れたものであった。
【0040】
【比較例1】実施例1において、ポリトリメチレンテレフタレート繊維に代えてナイロン6を用いた以外は、実施例1と同様にしてカバリング糸を得た。得られたカバリング糸のカバリング糸添係数は1.65であった。更に実施例1と同様にしてパンティストッキングを得た。但し、仮撚加工糸(a)は56dtex/40fのナイロン6の仮撚加工糸を用い、縫製糸は33dtex/13fのナイロン6仮撚加工糸を用いた。着用の状態での評価結果は表−3に示すとおりであり、フィット性、透明感、風合い、膝部及び踵部の抜け、同色性に問題があるものであった。
【0041】
【比較例2】実施例2において、ポリトリメチレンテレフタレート繊維に代えてナイロン6を用いた以外は、実施例2と同様にパンティストッキングを得た。但し、仮撚加工糸(a)は56dtex/40fのナイロン6の仮撚加工糸を用い、縫製糸は33dtex/13fのナイロン6仮撚加工糸を用いた。着用の状態での評価結果は表−3に示すとおりであり、フィット性、透明感、風合い、膝部及び踵部の抜けに問題があるものであった。
【0042】
【比較例3】実施例1において、レッグ部に17dtex/3fのポリウレタン弾性繊維をドラフト3.0で延伸し、13dtex/3fのポリトリメチレンテレフタレート繊維の延伸糸を用い片岡機械(株)製カバリング機でSZそれぞれ1350T/Mでシングルカバリングしたカバリング糸(i)を作成した。得られたカバリング糸のカバリング糸添係数は1.58であった。レッグ部を(i)のみで編成した以外は、実施例3と同様にしてパンティストッキングを作成した。着用の状態での評価結果は表−3に示すとおりであり、フィット性、透明感、風合い、膝部及び踵部の抜けに問題があるものであった。
【0043】
【比較例4】実施例4において、レッグ部に22dtex/3fのポリウレタン弾性繊維をドラフト3.0で延伸し、13dtex/3fのポリトリメチレンテレフタレート繊維の延伸糸を用い片岡機械(株)製カバリング機で上撚りとしてS方向に2800T/M、下撚りとしてZ方向に2500T/Mでダブルカバリングしたカバリング糸(j)を作成した。得られたカバリング糸のカバリング糸添係数は1.13であった。レッグ部を(j)のみで編成した以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作成した。着用の状態での評価結果は表−3に示すとおりであり、フィット性、透明感、風合い、膝部及び踵部の抜けに問題があるものであった。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【発明の効果】本発明のカバリング糸を用いることで、従来のものに比較して、フィット性、透明感、摩耗耐久性、膝部・踵部の抜け、風合い、同色性、に優れたストッキングが得られる。また本発明のカバリング糸は、スポーツ用ストッキング、或いはストッキングのみならず手袋などに用いることができる。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【出願日】 平成12年6月26日(2000.6.26)
【代理人】 【識別番号】100103436
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 英夫 (外3名)
【公開番号】 特開2002−13036(P2002−13036A)
【公開日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【出願番号】 特願2000−190606(P2000−190606)