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【発明の名称】 炭素材料の黒鉛化方法及びその装置
【発明者】 【氏名】山本 哲也

【要約】 【課題】炭素繊維や炭素繊維織物を3000℃以上に加熱しても、効率的に、安定して黒鉛化できる方法、及び小規模な装置構成で、作業負荷やメンテナンス負荷が少なく、装置寿命の長い黒鉛化装置を提供する。

【解決手段】炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を高密度エネルギービームで加熱する炭素材料の黒鉛化方法であって、前記炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を保護管を介して前記高密度エネルギービームで加熱することを特徴とする炭素材料の黒鉛化方法、及び炭素繊維及び/又は炭素繊維織物の連続加熱装置であって、高密度エネルギービーム照射装置、炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を搬送する搬送装置、前記炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を高密度エネルギービームから保護する保護管を有することを特徴とする炭素材料の黒鉛化装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を保護管を介して高密度エネルギービームで加熱することを特徴とする炭素材料の黒鉛化方法。
【請求項2】 前記高密度エネルギービームは、電子ビーム、レーザー光、プラズマ及びアークから選ばれる1種である請求項1に記載の炭素材料の黒鉛化方法。
【請求項3】 前記保護管は黒鉛製である請求項1又は2に記載の炭素材料の黒鉛化方法。
【請求項4】 炭素繊維及び/又は炭素繊維織物の連続加熱装置であって、高密度エネルギービーム照射装置、炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を搬送する搬送装置、前記炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を高密度エネルギービームから保護する保護管を有することを特徴とする炭素材料の黒鉛化装置。
【請求項5】 前記保護管の局所加熱部位の移動機構を有する請求項4に記載の炭素材料の黒鉛化装置。
【請求項6】 前記保護管の自動交換機構を有する請求項4又は5に記載の炭素材料の黒鉛化装置。
【請求項7】 前記保護管は黒鉛製である請求項4〜6のいずれか一項に記載の炭素材料の黒鉛化装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素繊維や炭素繊維織物などの炭素材料を黒鉛化するための方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素材料の中で、炭素繊維や炭素繊維織物は、その高い比強度や比弾性率の特徴を活かして、鉄筋コンクリートの鉄筋代替、金属ケーブル代替、樹脂と複合した繊維強化樹脂複合ロールとして金属ロール代替などの用途に適用されており、今後もその用途拡大が期待されている。
【0003】従来、このような炭素材料は、例えば特開平6−129778号公報に開示されているように、電気抵抗加熱炉、誘導加熱炉、直接通電加熱炉などの大型加熱炉内に装入して、バッチ式あるいは連続式で2000〜3000℃程度に加熱し、黒鉛化して製造されていた。
【0004】また、特公昭47−37217号公報に開示されているように、高周波誘導式無電極型放電プラズマトーチの炎中に炭素繊維を延伸しつつ又は無延伸で接触せしめることで黒鉛質繊維を製造する方法がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平6−129778号公報に開示される加熱炉を用いる場合、炭素繊維を加熱して黒鉛化するに際し、従来使用される電気抵抗加熱炉、誘導加熱炉、直接通電加熱炉などは、大規模な設備であって、準備や加熱作業に多大な労力や時間を要するばかりでなく、通常の断熱材や炉殻、加熱体を使用したのでは、前記部材が燃焼、溶融、昇華などの損傷を受けることが多く、メンテナンスのための負荷も多大となり、しかも設備寿命が短命であるなどの問題があった。
【0006】特に、炭素繊維の弾性率や熱伝導性などの特性をさらに向上させるためには、3000℃以上の熱処理を必要とするが、従来の加熱炉では、上述の部材が早期に甚大な損傷を受けるために、中でもヒータ部分の損耗が特にはげしく、頻繁にヒータ部の取り替え及び炉体のメンテナンスをしなければならず、製造コストがかかり過ぎ、高性能炭素繊維の大量生産を阻害していた。
【0007】また、特公昭47−37217号公報に開示される黒鉛化方法では、炭素繊維に対し、発生したプラズマガスによる毛羽立ちや断線が発生し易くて繊維への損失が大きいこと、プラズマのエネルギーが大きすぎるため炭素繊維が昇華し易く断線の原因となること、炭素繊維の極表面しかプラズマで加熱されず、炭素繊維の黒鉛化が径方向に不均一になり易いこと、さらにはプラズマガス内の温度分布を一様にする制御をし難いために、製品品質のバラツキが激しく、高性能炭素繊維の高品質、安定製造の面で、非常に大きな問題点を有していた。
【0008】そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、炭素繊維や炭素繊維織物を3000℃以上に加熱しても、効率的に、安定して黒鉛化できる方法、及び小規模な装置構成で、作業負荷やメンテナンス負荷が少なく、装置寿命の長い黒鉛化装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を鑑み、鋭意検討した結果、完成したものであって、(1) 炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を保護管を介して高密度エネルギービームで加熱することを特徴とする炭素材料の黒鉛化方法、(2) 前記高密度エネルギービームは、電子ビーム、レーザー光、プラズマ及びアークから選ばれる1種である(1)記載の炭素材料の黒鉛化方法、(3) 前記保護管は黒鉛製である(1)又は(2)に記載の炭素材料の黒鉛化方法、(4) 炭素繊維及び/又は炭素繊維織物の連続加熱装置であって、高密度エネルギービーム照射装置、炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を搬送する搬送装置、前記炭素繊維及び/又は炭素繊維織物を高密度エネルギービームから保護する保護管を有することを特徴とする炭素材料の黒鉛化装置、(5) 前記保護管の局所加熱部位の移動機構を有する(4)記載の炭素材料の黒鉛化装置、(6) 前記保護管の自動交換機構を有する(4)又は(5)に記載の炭素材料の黒鉛化装置、(7) 前記保護管が黒鉛製である(4)〜(6)の何れか一項に記載の炭素材料の黒鉛化装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】本発明の炭素材料の黒鉛化方法によれば、高密度エネルギービームで加熱された保護管の輻射熱により炭素繊維や炭素繊維織物などの炭素材料を黒鉛化するため、高密度エネルギービームの風圧や圧力差、該ビームの急激な投入熱量などの高密度エネルギービームに起因する前記炭素材料の毛羽立ち、断線、昇華消耗などの損傷原因を保護管で防止し、保護管内の輻射熱で前記炭素材料を均一に加熱するため、高性能な黒鉛化材料を得ることができる。
【0012】また、前記高密度エネルギービームは、加熱位置や加熱温度などの制御性の観点から、電子ビーム、レーザー光、プラズマ及びアークから選ばれる1種であることが好ましい。
【0013】また、保護管は、高密度エネルギービームへの耐久性があれば、特にその材質を限定するものではないが、管への加工容易性、安価であることなどの観点から、黒鉛製であることが好ましい。そしてそれらの形状は黒鉛化する対象物にあわせて様々な形を取りうる。ハンドリング性、管内均熱性の観点から、保護管の形状は円筒管であることが好ましい。またこれらの保護管は、必要に応じて黒鉛化に影響しない範囲で切り溝または穴をあけることにより、不活性ガスを保護管内部に循環させることもできる。
【0014】本発明の炭素材料の黒鉛化装置は、高密度エネルギービーム照射装置で局所的に集中して保護管のみを加熱できるため、装置内部全体に分厚い断熱材を設置する必要が無くなると共に、炉殻への熱的負荷も著しく軽減される。また本発明の黒鉛化装置は、このように装置全体の熱的損傷が著しく減少するため、メンテナンスを頻繁に行なう必要はなく、作業負荷やメンテナンス負荷が少なく、装置寿命が長いという利点を有する。
【0015】また、前記保護管は、高密度エネルギービームを直接局所的に受けるため、損耗し易く、保護管の局所加熱部位を損耗度合に応じて移動できる機構を有することが望ましい。具体的な機構としては、高密度エネルギービームを移動させることでも良いが、保護管を一定速度で移動させる機構が簡便で操作性が良いため、好ましい。保護管を移動させる機構の場合、保護管を自動交換する機構を有すると、操業を止めずに一定条件のまま新しい保護管に置き換えられるため、生産性を著しく向上できる。
【0016】さらに、保護管の酸化消耗を防止するために、黒鉛化装置内部、保護管内部の雰囲気を、酸素の含有率が10%以下の低酸素雰囲気または減圧雰囲気とし、より好ましくは無酸素雰囲気とするのが望ましく、具体的にはArガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中でビーム照射することで保護管の酸化消耗を抑制できる。また、保護管が黒鉛製であれば、たとえ昇華して炭素繊維などの炭素材料上に付着しても、同じ炭素材料であるため、品質に及ぼす悪影響は極めて少なくなるため、最も好ましい。
【0017】本発明により黒鉛化される炭素材料は、炭素繊維及び/又は炭素繊維織物である。ここで、炭素繊維とは、ピッチを原料としたピッチ系炭素繊維やポリアクリロニトリルを原料としたPAN系炭素繊維などの種類があるが、炭素繊維であれば良く、その形状も長繊維であっても短繊維であっても、繊維束でも単繊維でも構わない。また、炭素繊維織物とは、上記の炭素繊維からなる織物であり、平織、綾織、三軸織物、三次元織物などや不織布などの整形物など、各種織物に適用できる。これら各種の織物に本発明の黒鉛化装置を適用する場合、例えば帯状の織物の場合、平板状の保護管を用いることにより実施可能である。また上述の三次元織物の場合、熱が十分に内部まで伝わるように考慮しながら熱量と照射時間を決定し、黒鉛化する対象物の周りを三次元的に移動しながらビーム照射することも可能である。
【0018】
【実施例】図1は、本発明の黒鉛化装置の具体的な実施態様の一例である。黒鉛化装置の筐体である容器2の中に、高密度エネルギービーム照射装置としてプラズマガン1と黒鉛製の保護管3を設置し、保護管3のほぼ中央部位をプラズマガン1により加熱できるように配置する。炭素材料としての炭素繊維5は、搬送装置である送出装置4、巻取装置6によって、容器2の外部から導入され、保護管3内部を通過し、容器2の外部へ一定速度で排出される。また、保護管3内で炭素繊維5は高温に加熱されるので、無酸素雰囲気又は稀薄酸素雰囲気で処理を施さないと燃焼してしまう恐れがある。そのため、容器2中に不活性ガスを導入して、無酸素雰囲気又は稀薄酸素雰囲気にして炭素繊維5を搬送するのが好ましい。不活性ガスは、例えば不活性ガス導入口7から導入することができる。導入された不活性ガスを容器2に設置した炭素繊維5の搬入口及び搬出口から排出すれば、炭素繊維の搬送に伴う容器2内への空気の巻き込みを防止することもできる。プラズマガン1のプラズマジェットによる保護管3の加熱部位の温度は、温度計8によりその表面温度を測温し、そのデータはプラズマガンの出力制御に利用できる。
【0019】この黒鉛化装置を用いて、炭素繊維を黒鉛化した。平均繊維径8μmの炭素繊維を6000本束ねた長さ4kmの炭素繊維束を用いた。容器2内は不活性ガス導入口7から窒素ガスを導入して、窒素雰囲気とした。プラズマガン1のプラズマジェット10としては、キャリアガスにArを、アークガスにAr+H2及びAr+Heを使用した。保護管3のプラズマジェット10での局所加熱部位の表面温度は3500℃であった。また、炭素繊維5の搬送速度は1〜2m/minとした。
【0020】得られた黒鉛化炭素繊維は、毛羽立ち、断線や繊維の異常焼き細りなどの欠陥は殆ど認められず、良好な外観品位を示していた。また、X線回折の結果から、該炭素繊維は、従来の電気抵抗加熱炉で2000〜3000℃で黒鉛化した炭素繊維よりも黒鉛の結晶構造が発達しており、より黒鉛化度が向上していることが確認できた。さらに、該炭素繊維は、高弾性率で、高熱伝導性であり、従来の炭素繊維の性能を凌駕する優れた特性を有することも確認した。
【0021】また、別の実施態様として、図2に示すような黒鉛化装置も例示できる。これは、図1の装置と基本的構造は同じであるが、保護管3を容器2よりも長くし、図示していない保護管移動機構により、一定速度で保護管を移動させ、プラズマジェットによる保護管の損耗を低減するものである。また、図示していない保護管自動交換機構を用いて、保護管3を連続的に供給すれば、炭素繊維5を連続して長時間黒鉛化処理することができ、生産性が飛躍的に向上する。この場合、図2に示したように保護管3の一部に切欠き11を設けることにより、保護管内へ不活性ガスを循環させることができる。
【0022】そして、図1の装置と同様に、図2の装置でも優れた特性を有する黒鉛化炭素繊維が得られた。
【0023】また、炭素繊維束に代えて、炭素繊維織物を黒鉛化処理しても同様に優れた黒鉛化炭素繊維織物が得られた。さらに、高密度エネルギービームを電子ビーム、レーザー光、及びアークに代えても同様の結果が得られた。
【0024】
【発明の効果】本発明の方法により、炭素繊維や炭素繊維織物などの炭素材料を短時間で3000℃以上の高温に加熱でき、従来の加熱炉による黒鉛化処理に比べ、容易にしかも極めて効率的に高性能の黒鉛化炭素材料を得ることができる。しかも、得られた黒鉛化炭素材料は、優れた熱伝導性を有するため、放熱機や離間部署間の伝熱用設備などの新たな用途拡大も期待される。
【0025】また、本発明の装置は、コンパクトな設備であるため、作業負荷が軽くなり、さらに高熱に曝されるのは保護管だけであるため、装置全体のメンテナンス負荷が極めて軽減されると共に、装置自体の長寿命化も図れる効果を有する。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成12年6月28日(2000.6.28)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄 (外4名)
【公開番号】 特開2002−13031(P2002−13031A)
【公開日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【出願番号】 特願2000−195159(P2000−195159)