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【発明の名称】 ポリエステル繊維の製造方法
【発明者】 【氏名】川上 大輔

【氏名】本田 圭介

【氏名】福原 基忠

【要約】 【課題】口金汚れ、濾圧上昇、糸切れなどの問題が解消されたポリエステル繊維の製造方法。

【解決手段】実質的に重縮合触媒を含有しないポリエステル組成物を繊維状に成型するポリエステル繊維の製造方法。さらには、重縮合触媒として固体触媒を用い、固液不均一系にて重合反応を行った後、固体触媒を実質的に除去したポリエステル組成物を繊維状に成型するポリエステル繊維の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】重縮合触媒の金属元素換算での含有率が2ppm以下であるポリエステル組成物を、繊維状に成型することを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
【請求項2】重合触媒としてポリエステル溶融体に不溶な触媒を用いることを特徴とする請求項1記載のポリエステル繊維の製造方法。
【請求項3】ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は製糸安定性に優れ、工程安定化に貢献するポリエステル繊維の製造方法に関する。詳しくは、触媒残査に起因する製糸時に糸切れがなく、長時間の連続操業が可能となるポリエステル繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維は、その優れた性質のゆえに、衣料用途、ゴム補強用途、建築資材用途、運輸包装用途、フィルター用途をはじめ広く種々の分野で用いられている。なかでもポリエチレンテレフタレ−ト繊維は機械的強度、化学特性、寸法安定性などに優れ、好適に使用されている。
【0003】一般にポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールとのエステル化反応あるいはエステル交換反応、及び重縮合反応により製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造される。一般にポリエステルは、重合反応速度が遅いため、これらポリエステルの高分子量ポリマーを製造する商業的なプロセスでは、製造を効率化するために重縮合触媒を用い、特定の金属化合物が触媒として広く用いられている。
【0004】重縮合触媒はポリエステルの重縮合反応を促進するために用いられるが、同時に熱分解反応も促進するのが一般的である。熱劣化したPETは分子鎖が切れて短くなったり、炭化異物を生成する他、ジエチレングリコール成分を多量に生成・含有するため結晶性が低下し、耐熱性が低下することが知られている。このようなポリマーを用いて溶融紡糸して得られた繊維は、強度に代表される機械的特性が低く、捲縮加工や製織加工の安定性が劣るほか、最終製品の品位も劣ったものとなる。さらに、色調が黄色くなり、耐光性や耐薬品性が低下するなど化学的性質も劣ったものとなる。これらのことから、PETの重縮合触媒としては重合触媒能に優れるが、熱劣化を促進しない化合物を選択することが重要であり、このことからアンチモン化合物やゲルマニウム化合物が使用され、中でもその価格の安さからアンチモン化合物が好適に使用される。しかしながら、なおこれらの触媒でも熱劣化の抑制が不十分であるため、リン化合物に代表されるポリマーの耐熱性向上剤の添加を必要とするのが一般的である。
【0005】上記アンチモン化合物を含有するPET繊維を製造する場合、以下に述べるような幾つかの問題点が指摘されている。
【0006】アンチモン触媒を使用して得られたポリエステルを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、アンチモンがポリマー中でアンチモングリコラートの形で存在しており、これが口金近傍で変成を受け、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。このような口金は定期的な清掃が必要となるが、清掃を行う場合には製品の巻き取りを中止する必要が生じ、その間のポリマーは製品となることなく廃棄されるため、環境面・コスト面で問題となっていた。また、清掃作業は機械化することが困難で、高温下での手作業となるため、作業員の安全確保や人件費の観点から改善が望まれていた。
【0007】また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、紡糸パック内のフィルターに捕捉されて濾圧上昇を引き起こし、パック交換を頻繁に行う必要が生じるなど連続作業を阻む原因となっている。
【0008】上記フィルターで捕捉することができなかったアンチモン触媒残渣は、ポリマーに混入して口金から吐出される。紡糸・延伸・高次加工時には繊維に張力がかかるが、触媒残渣はその張力が集中する因子となり易く、糸切れや毛羽発生の原因となって製糸安定性や高次加工通過性を阻んでいる。また、最終製品においても同様に、張力に対する応力集中の因子となるため、繊維の最も基本的な特性である強度を低下させるなど、好ましくない特性を有している。
【0009】上記のような背景からアンチモン含有量が極めて少ないか、あるいは含有しないポリエステル繊維が求められている。
【0010】上記のような課題に対して、アンチモン化合物に代わる重縮合触媒の検討例が幾つかなされている。
【0011】例えば特開平10−324741号公報には、アルミニウム化合物を重縮合触媒として使用してポリエステル組成物を製造する技術が開示されている。該技術は、アンチモン化合物に代わってアルミニウム化合物を触媒として使用するというものである。確かに該公報に開示されている方法によってアンチモン化合物を使用せずに高重合度のポリエステルを得ることが可能であるが、該化合物を重縮合触媒として用いたPETは紡糸機内での熱劣化が大きいため、製糸安定性に劣る。さらに溶融紡糸された繊維は機械強度が低く、色調は黄色みが強いという問題点がある。
【0012】また、系に溶解して触媒活性能を発現するアンチモン、ゲルマニウム、アルミニウムなどの化合物と異なり、系に不溶解な不均一触媒を用いる技術として、WO90/03408等を挙げることができる。これらの技術は、重縮合触媒としての活性を有する結晶質ナトリウムアルミノシリケートモレキュラーシーブ(ゼオライト)をスリップ添加剤及び触媒の両者として用いることにより、重縮合反応における反応性が高まり、反応時間が短くなることが提案されている。しかしながら、該化合物による反応性の改善は行われているものの、最終的に得られるポリマー中に該ゼオライト触媒が系に不溶解のまま多量に残留することにより、色調の悪化による透明度の損失等を招くほか、繊維の機械強度・製糸安定性ともに低く、十分な改善がなされているとは言い難い。
【0013】ポリエステル組成物の安定性を向上する手段としては、触媒を残存させないポリエステル組成物の製造技術がUSP−4、150、214号公報に開示されている。該技術は、IVが0.1〜0.4の低重合体PETを高温で揮発するエステル化触媒を用いて準備し、これを固相重合して所望の重合度のPETを得るものである。しかしながら、このような低重合度PETを溶融紡糸可能な重合度にするためには、長時間の固相重合が必要となり、工業的な方法としては適当でない。また、一般に固相重合中はペレットが固体状態で攪拌混合されるため多くの粉末がペレットから脱落して発生するが、上記技術で必要な長時間の固相重合では大量の粉末が発生して、ペレットの搬送などそのハンドリングを著しく阻害する。さらに、この粉末中ではエチレングリコールの拡散速度がペレットより速くなるため、一般に粉末の重合度はペレットの重合度より高くなる。したがって上記技術で必要な長時間の固相重合を行うと、発生した粉末の重合度が著しく高くなる。このようなポリエステル組成物を用いて溶融紡糸を行うと、高結晶化物が紡糸時に十分溶融せずに異物になるなど、工程安定化を大きく悪化させる。また、異物となった高結晶化物は欠陥となって繊維の強度や伸度を低下させ、最終製品の品位もかえって低いものとなってしまう。したがって該公報に述べられるような低重合度のポリエステル組成物から固相重合によって重合度をあげたポリエステル組成物を繊維原料として用いることは、繊維製造時の工程安定化や製造効率、また製品の品位という面から好ましくない。また、該公報には、該ポリエステル組成物を繊維原料として用いることについて記載されていない。
【0014】また、系に不溶な触媒を用いてエステル化合物を合成する技術は、例えば特開平11−140026号公報に述べられており、該公報にはエステル化触媒として固体触媒を用い、固液不均一系にて反応を行う技術が開示されている。該公報には、カルボン酸及び/またはその無水物とアルコールとを反応させてカルボン酸エステルを製造する方法において、メソポーラス構造のチタノシリケート触媒を用いることにより、エステル化反応性の向上及び、触媒の回収・再使用の利点が提案されている。しかしながら、上記技術はエステル化反応に固体触媒を用いた技術であり、ポリエステル製造における重縮合反応性や繊維製造工程への寄与は述べられていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来のポリエステル繊維の製造方法では繊維に含まれる金属化合物に起因する製糸安定性の低下が避けられなかった。本発明はかかる従来技術の欠点を改良し、重縮合触媒である金属化合物を実質的に含有しないポリエステル組成物を繊維状に成型することにより、工程安定化に寄与するポリエステル繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、重縮合触媒の金属元素換算での含有率が2ppm以下であるポリエステル組成物を、繊維状に成型することを特徴とするポリエステル繊維の製造方法によって達成される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のポリエステルはジカルボン酸及びジオールから合成されるポリマーであって、特に限定はない。
【0018】このようなポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレートなどが挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル共重合体において好適である。
【0019】また、これらのポリエステルには、共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などのジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などを共重合してもよい。
【0020】また、本発明においては必要に応じて公知の化合物、例えば各種のリン化合物等の着色防止剤や粒子等を添加、含有しても良い。なお、本発明のポリエステル繊維は含有される触媒が極めて少ないため、熱劣化を起こしにくく、着色防止剤や酸化防止剤を従来より減らせるというメリットがある。
【0021】本発明におけるポリエステル繊維は、低重合度ポリエステルから重縮合反応によって得られた高重合度のポリエステル組成物を繊維状に成型することによって得られるが、該ポリエステル組成物として重合触媒を金属元素換算で2ppm以下含有するものが用いられる。
【0022】上記低重合度ポリエステルは、常法のエステル化反応によって、ジカルボン酸とジオールを触媒を添加することなく反応させて得ることが好ましい。この際、ジカルボン酸のエステル誘導体とジオールから低重合度ポリエステルを得る方法を使用しても構わないが、一般にエステル交換触媒を使用しないと十分な反応速度を得ることができないため、実質的に触媒をポリマーに残存させないという本発明の主旨から、触媒を添加せずに直接ジカルボン酸とジオールを反応させる方法をとることが好ましい。
【0023】上記低重合度ポリエステルは重縮合反応によって高重合度化されるが、この際重縮合反応を促進するために、重縮合触媒を用いることが好ましい。ここでいう重縮合反応とは、ジカルボン酸またはそのエステル系生成誘導体とジオールのエステル化反応あるいはエステル交換反応によって得られた低重合度ポリエステルから、脱エチレングリコールによって高分子量ポリエステルを得る重縮合反応を指す。
【0024】また、本発明における重縮合触媒とは、ポリエステル溶融物に添加することでその重縮合速度を上昇させるものをすべて含み、具体的な化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコラートなどのアンチモン化合物、チタンイソプロピレート、チタンエチレートまたはチタン−tert−ブチレートなどのチタン化合物、酢酸ゲルマニウム、三酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0025】しかしながら、本発明で使用される重縮合触媒としてはポリエステル溶融物に不溶な触媒を用いることが好ましい。ここでポリエステル溶融物に不溶な触媒とは、触媒が重縮合反応を促進する能力を発揮する段階で系に不溶解で、固体状態にあるものを指す。したがって本発明の重縮合反応系は液体状態のポリエステル溶融体と、固体状態の触媒が共存する不均一系となる。このようなポリエステル溶融体に不溶解な状態で重縮合触媒能力を有するものを用いれば、反応終了後に触媒を系から除去することが可能であり、最終的に触媒の含有量が少ないポリマーを得ることができる。一方、触媒そのものがポリエステル溶融体に可溶である場合はもちろん、ポリエステル溶融物に添加された後に反応を起こす結果、ポリエステル溶融体に溶解して触媒能を発揮するものは、ポリエステル溶融体に可溶な触媒である。このような触媒を用いた場合には系が均一となるため触媒を分離することが困難であり、最終的に得られるポリマーの中には触媒が残存することとなる。例えば従来PETの重縮合触媒として用いられる三酸化アンチモンは、ポリエステル溶融体に添加される段階では固体状態であるが、系の中でエチレングリコールと反応してグリコラートとなる結果溶解し、重縮合触媒としての能力を発揮することになるが、このような触媒はポリエステル溶融体に可溶な触媒であり、重縮合反応の終了後に系から分離することが困難となる。
【0026】該ポリエステル溶融体に不溶な触媒の組成や形状、添加量は適宜調整されれば良く、特に限定されるものではない。しかしながら、その重合触媒能力や熱に対する安定性から、チタンが表面に存在するメゾもしくはミクロポーラスな物質が好ましい。該触媒としては、例えばその基本構造にチタンが含有されるものが挙げられ、Ti−HMS、Ti−MCM41、Ti−MSU−1などに代表されるメゾポーラスな構造を持つチタノシリケートまたはTS−1に代表されるミクロポーラスな構造を持つチタノシリケート化合物を挙げることができる(フジテクノシステム発行 多孔質体の性質とその応用技術 1999)。チタノシリケートを用いる場合は重縮合活性を高くするために、チタンのモル比が0.1%以上であるものを使用することが好ましい。また、チタン化合物を担持する場合には、例えばアルミノシリケートなどのゼオライトと、塩化チタノセンのジクロロメタン溶液を拡散させ、トリエチルアミンによるシラノール基の活性化を行うことによって、ゼオライトの内壁にチタン錯体を担持させることができる。使用する担体はゼオライトが好ましいがこれらに限定されず、炭素繊維、グラファイトなど任意のメゾもしくはミクロポーラスな物質を利用することができ、その微細孔の大きさは5nm以上の平均値を持つことが好ましい。
【0027】該ポリエステル溶融体に不溶な触媒の形態は特に限定されないが、その生産性から、打錠成型されたものが好ましい。打錠成型するに際しては、ポリマーに悪影響をおよぼさない範囲でバインダーを使用することも差し支えない。また、固体触媒の大きさについても特に限定はないが、小さすぎるとポリマーとの分離が困難となり、一方大きすぎると、重縮合反応の活性部分となっている触媒表面積の低下を招くため、平均粒径は球相当径として0.1〜10mmの範囲が好ましい。
【0028】該ポリエステル溶融体に不溶な触媒の添加量は、十分な重縮合触媒能を得るために適宜調整されるが、例えばチタノシリケートであれば、含有されるチタンの量が最終的に得られるポリエステルに対して、0.001重量%以上となるように添加することが好ましい。0.001重量%未満であると、十分な触媒活性を得ることが難しくなる。また同様に、例えばミクロまたはメゾポーラスな物質にチタン化合物を担持させる場合でも、表面におけるチタンの比が担体骨格の構成元素に対して0.001重量%以上となるよう調整されることが好ましい。
【0029】本発明のポリエステル組成物は、ポリエステル溶融体に不溶な重縮合触媒を用いて十分に高重合度化させた後、該触媒をポリマーから取り除くことによって得ることが好ましい。重縮合触媒としてポリエステルに可溶なものを使用すると、反応終了後にポリエステルから触媒を取り除くことが困難となる。また、無触媒下で重縮合を行う場合には、十分な重合度のポリマーを得るために長時間の反応を行う必要があり、熱によってポリマーが劣化を起こして製品の品位を低下させるほか、生産効率が悪くなるため好ましくない。
【0030】ポリエステル溶融体から重縮合触媒を取り除く方法は特に限定されないが、例えばバッチ重合の場合は、反応器からポリマーを吐出する部分に触媒を取り除くフィルターを設置すればよい。また、連続重合装置の場合であっても、装置を構成する反応器のポリマー出口に触媒の流出を防ぐフィルターを設けるなどすればよい。また、必要であれば流路や反応機内を複数の小部屋に区切り、部屋の出口部にフィルターを設置しても良い。触媒が存在する容器内は、攪拌して反応の均一性を高めることが好ましい。この際、重縮合触媒としてポリエステル溶融体に可溶な触媒を用いると触媒の分離が困難となり、触媒残存量の少ないポリエステル組成物を得ることが困難となる。一方、ポリエステル溶融物に不溶な触媒を用いれば容易にポリマーから触媒を分離することが可能となる。
【0031】本発明のポリエステル組成物は、重縮合触媒の金属元素換算での含有率が2ppm以下である。重縮合触媒が金属元素換算での含有率が2ppmを越える場合には、触媒によって紡糸機内部でポリエステルの熱劣化が生じ、それが紡糸や延伸時の糸切れの原因となる。また、口金面には触媒残渣に起因する汚れが付着し易くなり、定期的洗浄を行う必要性が生じるため、連続操業に支障をきたす。本発明のポリエステル組成物を得るための方法には特に限定はないが、上記したように、低重合度ポリエステルから重縮合反応によって高重合度のポリエステル組成物を得る際に、重合触媒としてポリエステル溶融体に不溶な触媒を用いて重縮合反応を行い、反応終了後に該触媒を除去することが好ましい。
【0032】上記重縮合反応の結果得られるポリエステル組成物の重合度は紡糸可能な領域であればよく、例えばPETであれば固有粘度0.5以上0.9以下である。高強度の繊維などを製造する場合には、必要に応じて該ポリエステル組成物を固相重合しても良い。
【0033】本発明の方法で得られたポリエステル組成物は、一旦吐出・冷却してチップ化するかまたはチップ化することなく溶融紡糸機に導入され、常法により計量、濾過された後、口金より吐出される。吐出されたポリマーは、用途に応じて不織布やステープルファイバー、フィラメントなどに成型される。フィラメントの場合には、吐出されたポリマーは冷却・固化され、給油されて用途に応じた紡糸速度で引き取られ、巻き取られるか、または巻き取られることなく直接紡糸延伸される。この際、必要であれば加熱筒によって遅延冷却が行われたり、口金から引き取りローラーの間で延伸されたり、交絡を掛けられるなどすることがある。巻き取られた糸はそのまま製品とすることもできるし、延伸や捲縮加工など、用途に応じた加工を受け、織・編物、ロープ、コード、網など、各種衣料用、産業用繊維として使用される。
【0034】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリエステル繊維の固有粘度[η]
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)ポリエステル繊維中の金属含有量繊維をアセトンで洗浄・乾燥した後IPC発光分光分析装置により求めた。検出下限は0.1ppmであった。
(3)ポリエステル繊維の色調スガ試験機(株)社製の色差計(SMカラーコンピュータ型式SM−3)を用いて、ハンター値(L、a、b値)として測定した。
(4)ポリエステル繊維のカルボキシル末端基量Mauriceらの方法[Anal.Chim.Acta,22,p363(1960)]によった。
(5)ポリエステル繊維のジエチレングリコール量ポリエステル繊維をアルカリ溶解し、溶液を液体クロマトグラフィーにてジエチレングリコール量(DEG量)を測定した。
(6)ポリエステル繊維の強伸度東洋ボールドウイン(株)社製テンシロン引張り試験器により、試長250mm、引張り速度300mm/分でS−S曲線を求め強伸度を算出した。
(7)口金の堆積物の観察繊維の紡出から72時間後の口金孔周辺の堆積物量を、長焦点顕微鏡を用いて観察した。堆積物がほとんど認められない状態を○、堆積物は認められるものの操業可能な状態を△、堆積物が認められ頻繁に糸切れが発生する状態を×として判定した。
(8)パック内圧紡糸機に設置された圧力計にて、パック取付から21日後のパック内部の圧力を測定し、パック取付直後のパック内圧との差圧を示した。
(9)糸切れ吐出ポリマー1t当たりの紡糸時糸切れ回数を測定した。
【0035】実施例1(チタノシリケートの調整)WO/29297号公報記載の方法に従い、調整した。窒素雰囲気下でテトラエトキシシラン62.5g(300ミリモル)およびエタノール115ミリリットルをフラスコ(500ミリリットル)に秤量し室温下300rpmで攪拌した。これにテトラ−i−プロピルチタネート2.56g(9ミリモル)とイソプロピルアルコール46ミリリットルの混合物を室温下10分間かけて添加した。ついでこの混合物を70℃まで加熱し3時間保持した後、室温まで冷却した。
【0036】水115ミリリットル及びドデシルアミン15.0gをセパラブルフラスコに秤量し400rpmで攪拌した中に、上記調整したバイメタリックアルコキサイド溶液を約1時間かけて添加した。ついで4時間攪拌を継続させた後に約1日静置した。得られた沈殿物を濾別し、水で1回洗浄した後、80℃で減圧乾燥した。得られた固体を窒素雰囲気下500℃で1時間焼成した後、引き続き空気流通下650℃で4時間焼成し、チタノシリケート17.5gを得た。
【0037】上記チタノシリケートを、円筒形の金型にセットして10t/cm2の圧力を5分間かけた後、円筒状の成型体を粉砕した。粉砕されたチタノシリケートの粒状物をふるいにかけ、約1mmの粒径のペレットを集めた。
【0038】(ポリエステルの合成)高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造した、触媒を含有しないオリゴマーを250℃で溶融し、該溶融物に上記チタノシリケートのペレットを0.5wt%添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリエステルのペレットを得た。なお、反応容器底面には50メッシュの金網が設置されており、ポリマー吐出時には該金網によって固体触媒ペレットを回収した。
【0039】(溶融紡糸)このペレットを乾燥した後、エクストルーダ型紡糸機に供給し、紡糸温度295℃で溶融紡糸した。このときフィルターとして絶対濾過精度10μmの金属不織布を使用し、0.3mmφの丸孔を48備えた口金を用いた。口金から吐出した糸をチムニー冷却風を当てて冷却固化し、給油した後、引き取り速度3000m/分で引き取った。
【0040】表1に示すように、得られた繊維の化学・物理的特性は良好であり、溶融紡糸工程においても比較例1、2に比べて優れた製糸安定性を有していた。
【0041】実施例2〜3チタノシリケートの添加量を変更してPETを重縮合する以外は実施例1と同様の方法によった。実施例2、3は良好な繊維の化学・物理的特性を有し、比較例1、2に比べて優れた製糸安定性を有していた。
【0042】実施例4〜5チタノシリケートの粒状物の大きさを変更する以外は実施例1と同様の方法によった。実施例4、5は良好な繊維の化学・物理的特性を有し、溶融紡糸工程においても比較例1、2に比べて優れた製糸安定性を有していた。
【0043】実施例6〜7チタノシリケートを調整する際、実施例6ではテトラ−i−プロピルチタネートを0.17g(0.6ミリモル)、実施例7では4.27g(15ミリモル)を使用する以外は、実施例1と同様の方法によった。実施例6、7は良好な繊維の化学・物理的特性を有し、溶融紡糸工程においても比較例1、2に比べて優れた製糸安定性を有していた。
【0044】実施例8、9製糸の際の紡糸速度を変更する以外は、実施例1と同様の方法によった。実施例8、9は良好な繊維の化学・物理的特性を有し、溶融紡糸工程においても優れた製糸安定性を有していた。
【0045】実施例10室温にてCp2 TiCl2 (Cp=シクロペンタジエニル配位子)のジクロロメタン溶液にトリメチルアミンを添加し、更にモービル社製MCM41ゼオライトを加え、攪拌した。18時間後に不溶物を分離し、ジクロロメタンで洗浄した。この方法で得られたチタン化合物担持ゼオライトを用いる以外は実施例1と同様の方法によった。実施例10は良好な繊維の化学・物理的特性を有し、溶融紡糸工程においても優れた製糸安定性を有していた。
【0046】比較例1、2チタノシリケートの変わりに、三酸化アンチモン、三酸化ゲルマニウムの所定量を添加した以外は、実施例1と同様の方法によった。比較例1、2はカルボキシル末端基量やDEG量が多く、繊維の強度・伸度ともに低いものとなり、満足のいく化学・物理的特性の繊維を得ることができなかった。また、溶融紡糸工程においてもパック圧の上昇が大きく、口金堆積物も多いなどに起因して製糸安定性は悪かった。
【0047】
【表1】

【0048】
【発明の効果】本発明のポリエステル繊維の製造方法によれば、ポリマー中に実質的に触媒を含有しないため、従来より優れた製糸安定性を達成するポリエステル繊維を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成12年6月28日(2000.6.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−13025(P2002−13025A)
【公開日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【出願番号】 特願2000−194759(P2000−194759)