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【発明の名称】 熱可塑性合成繊維の製造方法
【発明者】 【氏名】黒田 正人

【氏名】船津 義嗣

【氏名】福原 基忠

【要約】 【課題】本発明の課題は、上記した従来技術の問題点を解決し、高速化したワンステッププロセスにおいて、省スペースで均一に且つ効率が良い加熱延伸プロセスを提供することにある。

【解決手段】熱可塑性樹脂を溶融吐出した後、引き続いてレーザ光を照射し、延伸しつつ引き取ることを特徴とする熱可塑性合成繊維の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】熱可塑性樹脂を溶融吐出した後、引き続いてレーザ光を照射し、延伸しつつ引き取ることを特徴とする熱可塑性合成繊維の製造方法。
【請求項2】熱可塑性樹脂の紡出糸を一旦ガラス転移点以下に冷却固化した後、レーザ光を照射する請求項1記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
【請求項3】レーザ光として炭酸ガスレーザを用いることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
【請求項4】3000m/min以上の速度で糸条を引き取ることを特徴とする請求項1,2,または3記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱可塑性合成繊維の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、従来のワンステッププロセスでの製造方法より省スペースでエネルギー効率が良好で、同時に高い生産性且つ安定に熱可塑性合成繊維を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、熱可塑性合成繊維の溶融紡糸においては高速化したワンステッププロセス(例えば「最新の紡糸技術」1992年高分子刊行会発行 第2章など)が一般的に普及している。その中でも紡糸線上で走行糸を加熱することで繊維の力学的特性を改善する試みがなされている。
【0003】例えば、特開昭47−35216号公報、特開昭55−11767号公報、特開昭62−223314号公報などに「吐出糸条を一旦冷却固化し、加熱帯中で再加熱、延伸、熱処理した後、巻き取る方法」が示されている。しかしながらこれらはいずれも長大な加熱領域を必要とするため、設備的に簡易化されたものではない。また、高紡速領域(6000m/min以上)に適用した場合、糸物性低下を起こすため、生産性の向上は望めない。
【0004】走行糸条に対する熱効率が良好な加熱方法を取り入れ、生産の均一性及び加熱帯の省スペース化を目的とした技術として、例えば特開昭51−88724号公報が挙げられる。 該公報では、紡糸口金より溶融吐出されたポリエステル紡出糸を(該ポリエステルのガラス転移温度+40℃)より低い温度まで冷却し、引き続き遠赤外線加熱による長さ20〜50cmの熱処理ゾーンを走行せしめて熱処理したのち、該紡出糸を1500〜4500m/分の速度で引き取ることを特徴とする延伸仮撚加工に適したポリエステル繊維の製造方法について述べられている。該公報では、「遠赤外線投射によるポリエステル糸条の熱吸収率がきわめて良い」ことを利用して、生産の安定化及び熱処理ゾーンの省スペース化が可能であると開示している。該公報の技術では確かに加熱帯が比較的短くなっているが、それでも20〜50cm必要とされ、且つ該技術は延伸仮撚加工用のいわゆる高配向未延伸糸を製造する方法であり、延伸糸に相当する繊維をワンステップで得ることはできない。
【0005】一方、走行する繊維を加熱延伸する際、レーザを加熱源として用い走行糸条を均一加熱し、延伸する技術も公知である。
【0006】レーザ光を延伸手段とした公知例としては、例えば特開昭48−45612号公報、特開昭60−94619号公報及び特開昭61−75811号公報が挙げらる。該公報は供給ロールと延伸ロールの間でレーザ光を照射することで延伸点を固定する技術に関するものであり、延伸点を固定することや熱ピンとの摩擦による繊維の損傷をなくすことでより均一な糸を製造できると開示している。確かに、該公報の技術による均一加熱延伸は可能であるものの、この技術では紡糸−延伸の工程を2工程に分け、低速で実施する必要があるため、極めて生産性が悪い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記した従来技術の問題点を解決し、高速化したワンステッププロセスにおいて、省スペースで均一に且つ効率が良い加熱延伸プロセスを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこのような高速紡糸におけるワンステッププロセスでの加熱延伸プロセスについて鋭意研究した結果、本発明に到達したものである。
【0009】すなわち本発明は、 熱可塑性樹脂を溶融吐出した後、引き続いてレーザ光を照射し、延伸しつつ引き取ることを特徴とする熱可塑性合成繊維の製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、熱可塑性樹脂を溶融吐出した後、引き続いてレーザ光を照射し、延伸しつつ引き取ることを特徴とする熱可塑性合成繊維の製造方法である。
【0011】本発明における熱可塑性樹脂は特に限定するものではないが、耐熱性などの問題から好ましくはポリエステル、ポリアミドであり、更に好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンアジパミドまたはポリカプラミドである。実施可能な熱可塑性樹脂の重合度は特に限定されない。例えば、ポリエステルであれば固有粘度0.5以上、ポリアミドであれば硫酸相対粘度2.4以上が好ましい。
【0012】本発明における紡糸工程は、常法によって溶融、計量された前記の熱可塑性樹脂を紡糸口金より吐出する。糸条は、引き続きレーザ光を照射され、引き取られる。紡糸口金は特に限定されるものでなく、製品の用途によって変更可能である。熱可塑性樹脂を紡糸口金から吐出した後、引き続き冷却ゾーンを設け、強制的にガラス転移点以下まで冷却するのが好ましい。この時紡糸口金直下で遅延冷却処理(例えば保温筒のようなものを設ける)を行っても良い。引取ローラは一対のゴデットローラ又は直接ワインダーによって少なくとも3000m/min以上で引き取られることが好ましく、更に好ましくは4000m/min以上である。
【0013】尚、本発明を実施するに当たり巻き取り前に糸条に交絡撚りを付与したり、必要に応じてオイリングローラ等により適当な仕上げ剤(油剤)を付与した後巻き取られることが好ましい。
【0014】本発明のレーザ光の種類は特に限定されないが、連続発振することや長時間の使用が可能なこと、大出力が得られること、安価なことから、炭酸ガスレーザを用いるのが好ましい。レーザ光照射条件としては引取速度等によっても異なるが、その強度は照射位置で延伸が生じるのに十分なエネルギー密度とする必要がある。延伸点の存在は照射位置前後での糸速度や繊維径を測定することによって確認することができる。尚、レーザ光照射は、鏡による反射で照射効率を良くしたり、種々のレンズ(例えばシリドリカルレンズ)を組み合わせることによって集光させたりすることも可能である。また、設置スペースを削減するために光ファイバ等によりレーザ発振機を糸条から離れた場所に設置することも可能である。また、レーザ光は片面照射であっても良いが、均一延伸や照射効率を考えると多方面からの照射であるとより好ましい。
【0015】既述したように高速紡糸過程で紡糸線上に加熱帯域を設けることにより、延伸が可能なことはよく知られている。しかしながら従来技術では長大な加熱装置を必要としていた。加熱帯域が長いということはその長さに沿って徐々に昇温されることになり、昇温勾配が緩やかなため、延伸点を固定することが困難である。これに対してレーザ光はエネルギー密度を高めることが可能で、直接照射される糸条を加熱するので照射位置に延伸点を固定することができる。従って、長大な加熱装置を必要とせず省スペースであり、装置表面からの放熱も極端に小さくできるので省エネルギー化も可能となる。
【0016】更により高い紡糸速度(超高紡速)になると、糸条は加熱されなくとも紡糸張力によりネック状の変形を伴い、自動的に延伸されることもよく知られている(例えば前記の「最新の紡糸技術」)。紡糸速度の増大に伴い、ネック状延伸の生じる位置はより上流に移動し、口金に近づく。この時ネック延伸倍率も大きくなる。ネック延伸倍率が大きくなると、得られる繊維の強度が低下する傾向が認められ、通常6000〜7000m/分の紡糸速度が好適である。これに対し、レーザ光を照射すると、延伸点が照射部に固定されるので、延伸点の上流への移動を制御することが可能となり、ネック延伸倍率も紡糸速度の割には低く抑えることができるので6000m/分以上の超高速紡糸領域での強度低下を抑制することが可能である。
【0017】本発明では、高い生産性で且つ安定に熱可塑性合成繊維を得ることが可能となり、更には設備の省スペース化且つ省エネルギー化が可能になる。なお、本発明の延伸に引き続いて、所望する繊維の性質によっては加熱ロールやその他の加熱手段を用いて緊張や弛緩の熱処理を必要に応じて施すことも可能である。
【0018】
【実施例】以下実施例により、本発明を具体的かつより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の物性値は以下の方法によって測定した。
【0019】A.固有粘度(IV)
オルソクロロフェノール中25℃で測定した。
【0020】B.強度・伸度オリエンテック社製テンシロン引張試験機を用い、未延伸糸の場合には初期試料長50mm、引張速度400mm/分、延伸糸の場合には初期試料長200mm、引張速度200mm/分で測定し求めた。
【0021】C.沸水収縮JIS−L1031に基づき測定した。
【0022】D.ウースター斑(U%値)
チェルベガーウスター社製ウースター斑試験機を用いて、糸速100m/分、測定タイプノーマルで測定し、U%値を求めた。
【0023】E.糸速度測定TSI社製レーザドップラー速度計LS−50を用い、測定した。それぞれ加熱帯の前後10mmでの糸速度を測定した。
【0024】実施例1ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.63)を295℃で孔数24個の紡糸口金から吐出し、口金下1700mmで炭酸ガスレーザ(出力30W)を紡糸線に沿って5mmの幅で照射し、給油ガイド、第1ゴデットローラ、第2ゴデットローラ、交絡処理装置を経由して5000m/minの速度で巻き取り56dtex/24fの糸条を得た。なお糸速度測定は加熱帯上10mm(糸速度1)および加熱帯下10mm(糸速度2)で行った。紡糸、延伸、糸物性結果を表1に示す。
【0025】加熱帯前後での延伸比(糸速度2/糸速度1)は2.14となり、レーザ加熱帯中で延伸が行われていることが確認され、得られた繊維のウースター斑は小さく、強度も大きく、その他の物性も十分な特性を有していることがわかる。
【0026】
【表1】

比較例1炭酸ガスレーザを照射せず、口金下1400mmで150℃の加熱筒(長さ2000mm)に導入して加熱延伸する以外は、実施例1にある方法と同様に紡糸を行った。なお糸速度測定は加熱筒上10mm(糸速度1)および加熱筒下10mm(糸速度2)で行った。紡糸、延伸、糸物性結果を表1に示す。
【0027】加熱筒前後での延伸比は2.21であり、加熱筒を用いても加熱帯中で延伸が行われているものの、2000mmの長さが必要であることがわかる。実施例1に比べ加熱方法の違いにより得られた繊維の強度は低下し、ウースター斑も大きくなることがわかる。
【0028】実施例2ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.61)を295℃で孔数36個の紡糸口金から吐出し、口金下500mmで炭酸ガスレーザ(出力60W)を紡糸線に沿って5mmの幅で照射し、給油ガイド、第1ゴデットローラ、第2ゴデットローラ、交絡処理装置を経由して8000m/minの速度で巻き取り80dtex/36fの糸条を得た。なお糸速度測定は加熱帯上10mm(糸速度1)および加熱帯下10mm(糸速度2)で行った。紡糸、延伸、糸物性結果を表1に示す。
【0029】加熱帯前後での延伸比は3.50となり、紡糸速度8000m/minでもレーザ加熱帯中で延伸が行われていることが確認され、得られる繊維物性も十分な特性を有していることがわかる。
【0030】比較例2レーザ光照射を行わない以外は実施例2にある方法と同様に紡糸を行った。この場合、実施例2と同様の位置(口金下490mm)で糸速度測定を行ったところ、糸速度がほぼ8000m/minであった。さらに紡糸線上流で糸速度測定を行ったところ、口金下200mmの位置で速度の急激な上昇が見られたため、この位置の10mm上流(糸速度1)および10mm下流(糸速度2)で糸速度測定を行った。紡糸、延伸、糸物性結果を表1に示す。
【0031】このように実施例2に比べ、レーザ加熱帯を用いないと、紡糸線上流で高倍率(延伸比8.55)で延伸されてしまい、得られる繊維も低強度となることがわかる。
【0032】実施例3ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:1.10)を295℃で孔数24個の紡糸口金から吐出し、70℃以下に一旦冷却した後、口金下1700mmで炭酸ガスレーザ(出力30.0W)を紡糸線に沿って5mmの幅で照射し、給油ガイド、第1ゴデットローラ、第2ゴデットローラ、交絡処理装置を経由して3000m/minの速度で巻き取り56dtex/24fの糸条を得た。なお糸速度測定は加熱帯上10mm(糸速度1)および加熱帯下10mm(糸速度2)で行った。紡糸、延伸、糸物性結果を表1に示す。
【0033】加熱帯前後での糸速度の比は2.06となり、紡糸速度3000m/minでもレーザ加熱帯中で延伸が行われていることが確認され、得られる繊維物性も十分な特性を有していることがわかる。
【0034】
【発明の効果】本発明では、高い生産性で且つ安定に熱可塑性合成繊維を得ることが可能となり、更には設備の省スペース化且つ省エネルギー化が可能になる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成12年6月28日(2000.6.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−13021(P2002−13021A)
【公開日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【出願番号】 特願2000−194761(P2000−194761)