| 【発明の名称】 |
アルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金 |
| 【発明者】 |
【氏名】落合 敏正
【氏名】山田 裕
【氏名】星 雅巳
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| 【要約】 |
【課題】従来のAl−Si系合金と同等の強度および優れた塑性加工性を有すると共に、従来のAl−Be系合金に匹敵する比強度を有するAl−Be−Si系合金を提供する。
【解決手段】合金組成を、質量百分率でBe:5.0 〜30.0%、Si:0.1 〜15.0%およびMg:0.1 〜3.0 %を含有し、残部はAlおよび不可避的不純物の組成に調整する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】質量百分率でBe:5.0 〜30.0%、Si:0.1 〜15.0%およびMg:0.1 〜3.0 %を含有し、残部はAlおよび不可避的不純物の組成になることを特徴とするアルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金。 【請求項2】請求項1において、合金が、さらに質量百分率でCu:0.1 〜3.0 %、Ni:0.05〜1.5 %、Co:0.05〜1.5 %およびFe:0.05〜1.5 %のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とするアルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金。 【請求項3】請求項1または2において、合金が、さらに質量百分率でY:0.01〜0.8 %およびTi:0.01〜0.1 %を含有する組成になることを特徴とするアルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、自動車のエンジン部材等の用途に供して好適なアルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金に関するものである。 【0002】 【従来の技術】自動車用エンジン、特に高性能のエンジンは、高出力化のために高回転にすることが求められており、そのためには、より軽く高強度な材料すなわち比強度の高い材料が必要とされる。また、操縦性などを向上させるためには軽量化も重要で、薄肉化したり軽量材を使っても剛性を落とさないためには、軽くてヤング率の高い材料すなわち比剛性率の高い材料が必要とされる。加えて、温度変化に対してもクリアランスを一定に保ち出力を確保するという観点から、熱膨張率が小さく、かつ耐摩耗性および耐熱性に優れた材料が求められている。さらに、加工法から見ると、高性能エンジンの可動部品は、その合金のポテンシャルをフルに発揮させることができる鍛造品が主流であることから、塑性加工性に優れた材料が望まれている。また、薄肉で形状が複雑なケーシング類は鋳造でしかできないものが多いため、必然的に鋳造できる合金が望まれている。 【0003】上記のような背景から、エンジン部品にはAl−Si系のAl合金が一般に使用されていて、これらの合金の比強度を上げるために、急冷してSiの初晶を微細化したり、耐熱性の高い硬質成分を加える等の手段が講じられている。例えば、粉末冶金法により急冷して強度と靱性の向上を狙った材料が、「軽金属 第49巻 第4号 1999 P.178〜182 」に、またAl基地にセラミツク粒子または金属間化合物の粒子を分散させた複合材(MMC) が、「軽金属 第49巻 第9号1999 P.438〜442 」にそれぞれ報告されている。 【0004】しかしながら、これらの材料は、延性が低いため、従来の鍛造方法では成形しにくいだけでなく、鋳造部品への適用が難しいという問題があった。また、比重が、Alと同等かむしろ大きいため、比強度は上がらず、高出力化のための高回転化を図ることが難しいところにも問題を残していた。。 【0005】一方、比剛性の高い材料としては、古くからBeをAlの中に適当量添加したAl合金が知られている。このような例としては、US PAT 2,399,104およびUS PAT 5,578,146等に開示のAl合金がある。しかしながら、これらの材料はいずれも、製法として粉末冶金法を採用しているため、鍛造などで複雑な形状に塑性加工することは極めて難しかった。 【0006】他方、鋳造法を採用したものとしては、例えばUS PAT 5,417,778およびUS PAT5,667,600 等に開示のAl合金がある。しかしながら、この方法で得られたAl合金の引張強さは概ね 170〜320 MPa 程度であり、伸びも2%前後と低い。とはいえ、これらの欠点を補うために、押し出し加工等を施すと、Beの初晶が伸びて、異方性が増大するという問題が生じる。また、高濃度のBeを添加したものは、価格も高価になり易いため、限られた用途にしか使用できないという問題もあった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の実状に鑑み開発されたもので、軽量で比剛性および比強度が高いのはいうまでもなく、熱膨張率が小さく、耐摩耗性および耐熱性に優れ、さらには従来のAl合金に比べて遜色のない鋳造性および塑性加工性を具備する、アルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金を提案することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】以下、この発明の解明経緯について説明する。さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、まずベース金属であるAlについて、その耐磨耗性の向上および熱膨張係数の低減に有効な元素について検討したところ、かかる元素としてはSiが有用であり、0.1 mass%以上(好適には5mass%以上)含有させることによって優れた耐磨耗性と熱膨張係数の有利な低減が達成されることを見出した。 【0009】次に、発明者らは、上記したAl−Si合金において、比重を減少して比剛性率を向上させる元素について検討したところ、Beが有効であることの知見を得た。しかしながら、Beを添加した場合には、比剛性率が向上する反面、高温強度が低下することも併せて見出された。 【0010】そこで、次に発明者らは、比重を減少させた結果生じる高温強度の低下を防止すべく、鋭意検討を重ねた結果、上記の目的を達成するためには、Mgの添加が極めて有効であることの知見を得た。また、かかる高温強度改善成分としては、CuやNi, Co, Fe、さらには微量のYやTiなども有効であることが見出された。特にFeを添加すると、Beの結晶が粒状になり、押出しなどの加工が容易になることも併せて見出された。この発明は、上記の知見に立脚して完成されたものである。 【0011】すなわち、この発明の要旨構成は次のとおりである。 1.質量百分率でBe:5.0 〜30.0%、Si:0.1 〜15.0%およびMg:0.1 〜3.0 %を含有し、残部はAlおよび不可避的不純物の組成になることを特徴とするアルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金。 【0012】2.上記1において、合金が、さらに質量百分率でCu:0.1 〜3.0 %、Ni:0.05〜1.5 %、Co:0.05〜1.5 %およびFe:0.05〜1.5 %のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とするアルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金。 【0013】3.上記1または2において、合金が、さらに質量百分率でY:0.01〜0.8 %およびTi:0.01〜0.1 %を含有する組成になることを特徴とするアルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、この発明において、Al基合金の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。 Be:5.0 〜30.0mass%Beは、強度を高め、また比重を低減して比剛性率を向上させる有用元素であるが、含有量が 5.0mass%未満では比重の低減効果が少なく、一方30.0mass%を超えると押出し、鍛造などの塑性加工性が低下するだけでなく、Beの初晶が伸びて異方性を生じるようになるため、Be量は 5.0〜30.0mass%の範囲に限定した。 【0015】Si:0.1 〜15.0%mass%Siは、熱膨張係数の低減に有用なだけでなく、鋳造性、耐磨耗性および強度の向上にも寄与する有用元素であるが、含有量が 0.1mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方15.0mass%を超えると伸びが著しく低下し、塑性加工性が劣化するので、Siは 0.1〜15.0mass%好ましくは 5.0〜15.0 mass %の範囲に限定した。なお、Si含有量が比較的少ない場合(Si<5.0 mass%)には、上記したBe量は20.0mass%以上とすることが好ましい。 【0016】Mg:0.1 〜3.0 mass%Mgは、時効硬化によって高温強度を効果的に向上させる有用元素であるが、含有量が 0.1mass%未満では時効硬化性の影響が少なく、一方 3.0mass%を超えるとBeおよびSiと化合物を形成するため、Mgは 0.1〜3.0 mass%の範囲に限定した。なお、上記したSi量が比較的少ない場合(Si<5.0 mass%)には、Mg量は 1.0mass%以上とすることが好ましい。 【0017】以上、必須成分について説明したが、この発明ではさらに、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。 Cu:0.1 〜3.0 mass%Cuは、高温強度の向上に有効に寄与するが、0.1 mass%未満では強度の向上は認められず、一方 3.0mass%を超えると鋳造性が低下するので、Cuは 0.1〜3.0mass%の範囲に限定した。 【0018】Ni:0.05〜1.5 mass%、Co:0.05〜1.5 mass%、Fe:0.05〜1.5 mass%Ni, CoおよびFeはいずれも、Cuと同様、高温強度の向上に有効に寄与する元素であるが、含有量が0.05mass%未満では高温時の強度向上の効果がなく、一方、1.5 mass%を超えると比重が大きくなるので、それぞれ0.05〜1.5 mass%の範囲に限定した。また、Feには、Beの初晶を球状にする効果もある。なお、上記したSi量が比較的少ない場合(Si<5.0 mass%)には、Cuは 1.5mass%以上、またNi, CoおよびFeはそれぞれ 0.5mass%以上の範囲で含有させることが好ましい。 【0019】Y:0.01〜0.8 mass%、Ti:0.01〜0.1 mass%YおよびTiはいずれも、高温強度の向上に有効な元素であるが、いずれも含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、Yの場合は 0.8mass%を超えると、またTiの場合は 0.1mass%を超えると、それらの効果は飽和に達するので、それぞれY:0.01〜0.8 mass%、Ti:0.01〜0.1 mass%の範囲で含有させるものとした。 【0020】次に、この発明合金の製造方法について説明する。この発明において、製造方法は特に限定されるものではなく、従来から公知の製造条件に従って行えば良い。すなわち、鋳塊を所望の形状に成形したのち、 500〜545 ℃で溶体化処理を施し、ついで必要に応じて仕上げ加工を施したのち、 150〜250 ℃の温度で時効硬化処理を行えば良い。 【0021】 【実施例】実施例1表1に示す種々の成分組成になるAl基合金を、大気または真空中で溶解・鋳造したのち、鋳塊から円柱の素材を切り出し、 500℃の温度で、押出し比を種々に変化させて静水圧押出しを行った。ついで、試供材を切り出して溶体化−時効硬化処理(T6処理)を行ったのち、JIS 5号試験片を用い、室温から 350℃までの高温で引張り試験を行った。ここに、T6処理は、溶体化処理:515 ℃, 10時間、また時効硬化処理:160 ℃, 6時間の条件で行った。なお、従来材であるAl−Be2元系合金(合金記号R〜T)についてはT6処理を行わずに、そのまま高温引張り試験に供した。この理由は、Beを比較的多量に含有するいわゆるAl−Be合金では、相対的にAlマトリックスの割合が減少するので、T6処理による強度の向上が見込めないからである。かくして得られた製品(鋳造−押出し品)の機械的諸特性について調べた結果を整理して、表2に示す。また、図1には、Be含有量を変化させた場合の高温特性の変化を、さらに図2には、押出し比を変化させた場合の高温特性の変化をそれぞれ示す。 【0022】 【表1】
【0023】 【表2】
【0024】表2に示したとおり、この発明の成分組成範囲を満足するAl−Be−Si系合金はいずれも、従来のAl−Si系合金と同等の強度および優れた塑性加工性を有するだけでなく、従来のAl−Be系合金に匹敵する比強度を有していることが分かる。特に、 No.12〜14に示すように、合金中にFeを 0.5mass%含有させた合金記号Lを用いた場合には、 337〜363 MPa という優れた引張強さが得られただけでなく、比剛性も 40 GPa 前後と良好であり、さらには常温および 250℃における比強度もそれぞれ 136〜147 MPa 、87〜115 MPa と優れた値が得られている。 【0025】これに対し、Beを含有しない従来のAl−Si系合金(合金記号A,B)およびBe量がこの発明の下限に満たない比較例No.3(合金記号C)は、低い比剛性しか得られなかった。また、比較例No.8(合金記号H)は、Si量がこの発明の上限を超えたため、伸びが大幅に低下した。さらに、従来のAl−Be系合金では、Be量が30〜40mass%と低い場合(合金記号R,T)であっても、17〜20と高い押出し比で加工した場合には、強度とくに高温強度の著しい低下を余儀なくされた。この点、押出し比が4〜11と低い場合(No.22, 23)には、それほどでもなかったけれども、やはり高温での引張強さが大幅に低下した。 【0026】実施例2表3に示す種々の成分組成になるAl基合金を、大気中で溶解し金型に流し込むと同時に圧力をかけて鋳塊を作製し、採取した試供材について、実施例1と同様なT6処理を行ったのち、引張り試験を行った。かくして得られた製品(鋳造品)の機械的諸特性について調べた結果を、表4に示す。 【0027】 【表3】
【0028】 【表4】
【0029】表4に示したとおり、鋳造品の場合においても、この発明に従い得られた発明例はいずれも、良好な機械的諸特性が得られている。 【0030】なお、一部の試料については、熱膨張係数と熱伝導率についても計測したが、その結果を表5に示すとおり、この発明に従い得られたAl−Be−Si系合金は従来材に比べて熱膨張係数が大幅に低減している。 【0031】 【表5】
【0032】 【発明の効果】かくして、この発明によれば、軽量で、高い比剛性および比強度を有し、また熱膨張率が小さく、耐摩耗性および耐熱性に優れ、さらには従来のAl合金に比べて遜色のない鋳造性および塑性加工性を具備する、アルミニウム−ベリリウム−シリコン系合金を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004064 【氏名又は名称】日本碍子株式会社 【識別番号】000005326 【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年10月11日(2000.10.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072051 【弁理士】 【氏名又は名称】杉村 興作 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−115018(P2002−115018A) |
| 【公開日】 |
平成14年4月19日(2002.4.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−310108(P2000−310108) |
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