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【発明の名称】 アルミニウム合金溶湯処理用フラックス
【発明者】 【氏名】藤本 日出男

【氏名】正田 良治

【氏名】小川 淑子

【氏名】万谷 正

【氏名】目黒 忠雄

【要約】 【課題】自動車ボディ外装材の塗装下地処理としてのリン酸塩処理時に大量に発生する弗化アルミを主成分とするスラッジを利用した、アルミニウム合金溶湯処理用フラックスを提供する。

【解決手段】金属のハロゲン化物を30〜90質量%と、無機塩49重量%以下と、金属リン酸塩を1.0〜10質量%(Pとしての含有量で0.2〜2.0質量%)を含有し、無機塩と金属リン酸塩とを合計で50質量%以下に制限し、残部が不可避不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金溶湯処理用フラックス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属のハロゲン化物を30〜90質量%と、無機塩49質量%以下と、金属リン酸塩を1.0〜10質量%(Pとしての含有量で0.2〜2.0質量%)を含有し、無機塩と金属リン酸塩とを合計で50質量%以下に制限し、残部が不可避不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金溶湯処理用フラックス。
【請求項2】 更に、無機酸化物及び又は炭素質物質を合計で50質量%以下含有することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金溶湯処理用フラックス。
【請求項3】 上記金属リン酸塩がFe、Zn、Mn、Ni、Al、Na、Kより選択された金属のリン酸塩の1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1乃至2に記載のアルミニウム合金溶湯処理用フラックス。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム合金材料のリサイクルに際し、回収されたスクラップを溶解して有用な二次合金や鋳物合金に再製する工程での溶湯処理において使用されるアルミニウム合金溶湯処理用フラックスに関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム乃至アルミニウム合金(以下アルミ合金と言う)は、省資源化の観点と低コスト化の観点とからリサイクルされることが一般的となって来た。しかしながら、合金種によって添加元素の含有量が異なることから、成分組成の調整が容易な二次合金や鋳物合金としてリサイクルされている。
【0003】具体的には、回収されたスクラップを溶解・溶湯精錬・除滓・鋳造等の工程を経て二次合金や鋳物合金とされるが、溶解から除滓までの工程について詳述する。即ち、溶解炉に投入された原料が加熱溶融されて溶湯となる。次いで脱ガス処理及び介在物処理を行った後、ハロゲン系の精錬剤、例えば塩素ガスやフラックスを溶湯に吹き込む。この精錬工程では、溶解工程での原料スクラップに付着していた有機物他が、溶解時に生じた酸化物と共に各種介在物となり、これらが精錬剤の作用によりメタル分との混合状態で滓として浮上する。この滓は製品欠陥の大きな原因となるので除去すべきであるが、多量のメタル分が含まれておりそのまま排除するとメタルロスとなるため、除滓に当たってはメタル分を出来る限り溶湯中へ戻し、介在物のみを効率良く排除する必要がある。
【0004】そのための代表的な方法として、ハロゲン系のフラックスを溶湯湯面に散布し、滓と共に混合することにより滓中の微細なAlと反応せしめて、その際の発熱を利用して滓を加熱することにより、メタル分の流動性を高めて溶湯中に戻す方法が知られている。尚、前記脱ガス処理時に溶湯中に不活性ガス、例えば窒素やアルゴンガスと共にこの種フラックスを吹込むことも周知である。
【0005】このような溶湯からの脱ガス・除滓は、溶湯を清浄化して製品品質を向上するための溶湯処理として極めて重要であり、各種のフラックスが提案されている。就中、アルミニウム合金溶湯処理用フラックスとしては例えば、特開平7−207376号公報、特開平11−80851号公報等が挙げられる。
【0006】一方、自動車産業においては軽量化の観点から各種部材にアルミニウム合金が多用されており、殊に自動車ボディ外装材(パネル材)は鋼板部分とアルミ合金板部分とで構成されるものが多い。そして、このような外装部分は塗装されるが、その下地処理として一般的にリン酸亜鉛処理が施される。ところが、このリン酸亜鉛処理の際に鋼板部分とアルミ合金板部分とが同時に処理されることから、処理液中にアルミニウムイオンが徐々に増加し、鋼板に対する処理性が劣化することからこれを防止する為に、フッ素イオン添加によりアルミニウムイオンを沈殿させることが一般的手法として知られている。
【0007】しかしながら、この手法によればリン酸亜鉛処理性能が良くなるものの沈殿された弗化アルミを主成分とするスラッジが大量に発生してしまうと言う問題がある。また、このスラッジはフッ素含有量が多い為に再利用が困難であり、現状では廃棄物として埋立処分するしかないと言う問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等はこのスラッジを有効活用すべく、その成分組成を調べたところアルミニウム合金溶湯処理用フラックスの主成分であるクリオライト(NaAlF6)と共通する元素が多量に含有されていることを知見し、フラックス原料としての使用可能性について各種実験を行った。
【0009】即ち、実験例では、鋼材:アルミニウム合金材の面積比が2:1の割合の試験片をフリーフッ素400ppmにてリン酸塩処理して発生したスラッジから水分除去したものを、既存のフラックスに混合して溶湯処理用フラックスとして用いた。このスラッジの成分組成は、表1の通りであった。尚、成分分析に当たっては、スラッジを105℃で2時間乾燥後、0.5g採取し、濃塩酸30cc中で加熱溶解したものを100ccにメスアップさせて試料とし、金属成分は原子吸光法で、その他の成分はイオンクロマトで行った。既存のフラックスは、例えば、株式会社ファウンテックのフラックス−Aを例として、その成分組成を示すと表2の通りである。
【0010】これらの表の成分組成から理解できるように、スラッジがフラックスにおける弗化物と金属リン酸塩の成分原料の一部として使用可能である。
【0011】

【0012】

【0013】そこで、スラッジ添加によるフラックス特性への影響を調べる為に、上記フラックス−Aにスラッジを5%、10%、15%、20%、25%添加した5水準で、融点の変化と流動性について調べたところ、表3に示す結果となった。この結果から、スラッジの添加量が増加するに伴いフラックスの融点が上昇し、流動性が低下し、スラグ化が悪化する傾向となることが理解でき、スラグ化の極端な劣化を生じない20%までは添加できるものと判断した。即ち、流動性に関しては供給方法の工夫で対処可能であるが、スラグ化が悪化してはフラックス本来の機能を果たすことができないからである。
【0014】

次に、スラッジ添加によるスラッジ中の不純物金属による溶湯汚染への影響をFe、Zn、Naの含有量の変化を調べたが、表4に示す通り溶湯汚染は殆ど無く、無視できる程度であった。
【0015】

この試験条件は以下の通りであった。
【0016】フラックス:スラッジ添加無しとスラッジ20%添加の2水準使用地金 :99.99%純度のアルミ地金試験条件 :溶湯量 5Kg、溶湯温度 740℃フラックス添加方法:高純度アルミ箔に包んで溶湯中に浸漬分析方法 :フラックス添加前後の溶湯の一部を採取して、発光分析により不純物元素を分析した。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成した本発明の構成は次の通りである。即ち、第1の発明は、金属のハロゲン化物を30〜90質量%と、無機塩を49質量%以下と、金属リン酸塩を1.0〜10質量%(Pとしての含有量で0.2〜2.0質量%)を含有し、無機塩と金属リン酸塩とを合計で50質量%以下に制限し、残部が不可避不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金溶湯処理用フラックスである。
【0018】第2の発明は、上記成分に加えて、無機酸化物及び又は炭素質物質を50質量%以下含有することを特徴とするアルミニウム合金溶湯処理用フラックスである。
【0019】第3の発明は、上記第1乃至第2の発明における、金属リン酸塩をFe、Zn、Mn、Ni、Al、Na、Kより選択された金属のリン酸塩の1種又は2種以上からなるものとしたものである。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明のアルミニウム合金溶湯処理用フラックスにおいて、金属のハロゲン化物は、溶湯中で分解してガス化し、水素ガスを気泡内に拡散させて浮上除去したり、滓との発熱反応によって滓と溶湯との分離を容易にする作用を果たし、例えば、LiF、NaF、KF、SrF、CaF、MgF、AlF3、NaAlF4、NaAlF6、KAlF4 、KAlF 等のフッ素系ハロゲンや、NaCl、KCl、SrCl、CaCl、MgCl、BaCl、AlCl等の塩素系ハロゲンが挙げられる。
【0021】無機塩及び金属リン酸塩は溶湯処理中にフラックスを発熱させる助燃剤として作用し、無機塩としては例えば、金属炭酸塩(NaCO3、KCO3、MgCO3等)、金属硫酸塩(NaSO4、KSO4、MgSO4等)、金属硝酸塩(NaNO3、KNO3、Ca(NO3等が挙げられる。また、金属リン酸塩は例えば、FePO、Zn3 (PO)2、Mn3(PO)2、Ni3(PO)2等)が挙げられる。
【0022】尚、無機塩及び金属リン酸塩は過剰に含有すると生成される滓が過多となるので両者を併せて50%以下とし、金属リン酸塩はフラックスの吹込み抵抗を考慮して10%以下とした。
【0023】無機酸化物は上述の組成物に対して、溶湯処理中の反応を適宜に制御する調整剤乃至は増量剤として使用され、例えば、MgO、SiO、Al3等が挙げられる。
【0024】炭素質物質は上記無機塩と同様助燃剤として任意に使用し得るものであり、コークスや微粉炭等が使用できる。
【0025】上述のフラックス組成物は、使用に際して、粉体として溶湯表面に散布するか押込む方法、吹込管によって窒素等の不活性ガスと共に溶湯内に吹込む方法、或いは成形固体として溶湯内に押込む方法等を炉の種類、容量によって適宜選択するのが好ましい。これらの使用方法に適合させるべく、粉体の場合には適宜粒度調整され、固体の場合は適宜形状、サイズに加圧成形される。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0027】

前記表5の組成及び性状を有するスラッジ・フラックスとの混合物を用い、実炉での吹込み試験を実施し、吹込み性・スラグ分離性・スラグ性状を調べた。その結果を表6に示す。尚、フラックスはスラッジと混合してフィーダーを用いて15ton溶解炉に窒素ガスと共に吹込みした。
【0028】

この結果から、スラッジはフラックス量に対して20%まで使用可能であることが確認できた。
【0029】そこで、この既存フラックスにスラッジを20%添加して混合したものを、全フラックス量とし、これをベースに他の既存フラックスでも試みたが同様の結果であった。
【0030】次に、溶湯の脱ガス効果及び不純物質の汚染状況を調べたが、表7に示す通り従来品のフラックスとほとんど差異が無く、無視できる値であった。
【0031】

本発明は上記実験結果に基づき創出されたものであり、その目的は、鋼材とアルミニウム合金材とを同時にリン酸亜鉛処理した際に発生するスラッジを原料の一部として用いても、従来品と変わりない性能を有するアルミニウム合金溶湯処理用フラックスを提供しようとするものである。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、溶湯処理用フラックスとしてアルミニウム合金のリン酸塩処理で発生したスラッジを利用することができ、しかも従来既存のフラックスとその性能において大差なく、十分実用できるものである。その結果、これまで殆ど有効に利用されることが無かったスラッジのリサイクルが達成できる。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【識別番号】500578087
【氏名又は名称】株式会社ファウンテック
【出願日】 平成13年4月11日(2001.4.11)
【代理人】 【識別番号】100066452
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 茂 (外2名)
【公開番号】 特開2002−309320(P2002−309320A)
【公開日】 平成14年10月23日(2002.10.23)
【出願番号】 特願2001−112301(P2001−112301)