| 【発明の名称】 |
鋼板部材の製造方法及びその方法で製造された鋼板部材 |
| 【発明者】 |
【氏名】花川 勝則
【氏名】石田 恭聡
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| 【要約】 |
【課題】焼入れ時の酸化皮膜の形成やメッキの散失を抑えることができ、且つ焼入れ時に均一な冷却を行うことができる鋼板部材の製造方法を提供する。
【解決手段】鋼板により形成された鋼板部材の製造方法を、鋼板を準備する準備ステップと、その準備した鋼板を所定形状にプレスしてプレス成形品Wを成形するプレス成形ステップと、そのプレス成形品Wを、昇温する部位に液状冷媒を接触させた状態で内部発熱させることにより950℃以下の所定の焼入れ温度で焼入れする焼入れステップとを備えたものとし、0.1〜0.2質量%の炭素(C)と複数の金属とを含有してなると共に、上記焼入れ温度で金属組織がオーステナイトに急変態するA3変態点を有し且つ引張強度が550MPa以下である鋼板を用いる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼板により形成された鋼板部材の製造方法であって、鋼板を準備する準備ステップと、上記準備した鋼板を所定形状にプレスしてプレス成形品を成形するプレス成形ステップと、上記プレス成形品を、昇温する部位に液状冷媒を接触させた状態で内部発熱させることにより950℃以下の所定の焼入れ温度で焼入れする焼入れステップと、を備え、上記鋼板は、0.1〜0.2質量%の炭素(C)と複数の金属とを含有してなると共に、上記焼入れ温度で金属組織がオーステナイトに急変態するA3変態点を有し且つ引張強度が550MPa以下であることを特徴とする鋼板部材の製造方法。 【請求項2】 請求項1に記載された鋼板部材の製造方法において、上記鋼板に含有される複数の金属は、該鋼板の質量に対する質量含有率が0.5〜2.0質量%のマンガン(Mn)を有することを特徴とする鋼板部材の製造方法。 【請求項3】 請求項1又は2に記載された鋼板部材の製造方法において、上記鋼板は、目付量が30〜90g/m2の亜鉛(Zn)を含むメッキが施されていることを特徴とする鋼板部材の製造方法。 【請求項4】 鋼板により形成された鋼板部材であって、鋼板を所定形状にプレス成形したプレス成形品を、昇温する部位に液状冷媒を接触させた状態で内部発熱させることにより950℃以下の所定の焼入れ温度で焼入れて形成され、上記鋼板は、0.1〜0.2質量%の炭素(C)と複数の金属とを含有してなると共に、上記焼入れ温度で金属組織がオーステナイトに急変態するA3変態点を有し且つ引張強度が550MPa以下であることを特徴とする鋼板部材。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板部材の製造方法及びその方法で製造された鋼板部材に関する。 【0002】 【従来の技術】自動車の車体フレームは、自動車の骨格を構成するものであることから、物体への衝突時に容易に変形することがないように高い強度が要求される。その一方、かかる車体フレームを構成する車体フレーム部材は、例えば、鋼板をプレス成形により断面略台形のハット状に成形したもので構成されることから、鋼板の構成材料特性として変形容易でプレス成形性が優れることも要求される。 【0003】これら両方の要求を満足する鋼板部材の製造方法として、変形容易な鋼板を所定形状にプレス成形した後、そのプレス成形品を焼入れして強度を高めるものが知られている。これは、プレス成形品を加熱することによりその金属組織をオーステナイト化し、それを急冷することにより金属組織を硬いマルテンサイトに変態させて強化を図るものである。 【0004】例えば、特開平6−116630号公報には、ロボット装置のアーム先端に装着した高周波焼き入れ用コイルを用いて自動車ボデーの強度必要部分のみを局部的に焼き入れ処理することが開示されており、それによって、リインホースメントの廃止や取付箇所の減少が可能となるので、自動車ボデーの軽量化及び生産コストの低減を図ることができ、また、自動車ボデーを構成する鋼板の薄膜化が可能となるので、鋼板のプレス成形性がきわめて良好となり、さらに、高周波焼き入れ用コイルを用いているので、設備投資を低く抑えることができる、との内容が記載されている。 【0005】また、特開平10−17933号公報には、0.07〜0.2質量%のカーボン(C)を含む鋼で形成されたプレス成形品が所望の強度分布に対応した硬度変化を呈する硬度分布を備えるように、そのプレス成形品を高周波電流に基づく加熱手段により焼き入れすると共に水等の冷却剤を接触させる冷却手段により冷却することが開示されており、このようにして得られるプレス成形品は、焼入領域により強度を確保することができ、また、他の物体が衝突した際には焼入領域の硬度の高い部分で変形阻止性を確保することができると共に、硬度の低い部分で衝撃エネルギー吸収性を確保することができる、との内容が記載されている。 【0006】そして、車体フレーム部材の場合のように、プレス成形品が大きいために全体的に一括した焼入れをすることができないような場合、焼入れは、図11に示すように、加熱用コイル21a及び冷却水パイプ31をプレス成形品Wの長手方向に沿って移動させ、加熱用コイル21aに高周波電流を流すことによりプレス成形品Wの通過箇所を誘導加熱により急激に内部発熱させると共に、冷却水パイプ31により冷却水32を噴射してその箇所を急冷することにより行われる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】ところで、加熱炉に鋳鉄品を所定時間保持して焼入れを行う場合、通常、焼入れ温度は900〜950℃に設定される。一方、上記のように高周波による誘導加熱により肉厚の薄い鋼板のプレス成形品を急激に加熱し且つ急激に冷却して焼入れを行う場合、金属組織を十分にオーステナイト化することができない虞があることから、焼入れ温度は950℃より高く、約1000℃程度の高温に設定される。このように焼入れ温度が高く設定されると、表面にメッキが施されていないプレス成形品では、表面が酸化して厚い酸化皮膜が形成され、酸化皮膜の上に耐食性を向上させるための電着塗装等を施しても、酸化皮膜が密着性に乏しいことから塗装が酸化皮膜ごと剥がれてしまうことがある。一方、表面にメッキが施されたプレス成形品では、メッキが蒸発して散失してしまう虞がある。しかも、加熱用コイルの通過箇所が最も強く誘導加熱されるものの、それ以外の広い範囲もその影響を受けて弱いながらも誘導加熱されることから、各部分が長時間に亘って加熱されることとなり、これによってプレス成形品への酸化皮膜の形成又はメッキの蒸発による散失が助長されることとなる。従って、このような事情から、得られる鋼板部材は耐食性が著しく悪く、そのためにアンダー系の車体フレーム部材をかかる鋼板部材で構成することができないという問題がある。 【0008】また、焼入れでは、均一な加熱及び冷却が必要とされ、例えば、それらが不均一であることによって熱歪みによる変形が生じることもある。とりわけ、冷却速度の制御は重要であり、冷却速度が遅いと所望とする鋼板部材の硬さ及び強度を得ることができない。上記のように高周波による誘導加熱により焼入れを行う場合、冷却水パイプからの冷却水によって冷却が行われるが、図12に示すように、冷却水32がプレス成形品Wと加熱用コイル21aとの間に保持されてしまうことがあり、それによって冷却水32の接触具合が不均一となって焼入れ具合も不均一となるという問題がある。 【0009】本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、焼入れ時の酸化皮膜の形成やメッキの散失を抑えることができ、且つ焼入れ時に均一な冷却を行うことができる鋼板部材の製造方法を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、A3変態点が低く且つ低強度の鋼板をプレス成形し、そのプレス成形品を昇温部位全体に液状冷媒を接触させた状態で内部発熱させることにより950℃以下の所定の焼入れ温度で焼入れするようにしたものである。 【0011】具体的には、本発明は、鋼板により形成された鋼板部材の製造方法であって、鋼板を準備する準備ステップと、上記準備した鋼板を所定形状にプレスしてプレス成形品を成形するプレス成形ステップと、上記プレス成形品を、昇温する部位に液状冷媒を接触させた状態で内部発熱させることにより950℃以下の所定の焼入れ温度で焼入れする焼入れステップと、を備え、上記鋼板は、0.1〜0.2質量%の炭素(C)と複数の金属とを含有してなると共に、上記焼入れ温度で金属組織がオーステナイトに急変態するA3変態点を有し且つ引張強度が550MPa以下であることを特徴とする。 【0012】上記のようにすれば、炭素(C)を0.1〜0.2質量%有し、引張強度が550MPa以下である鋼板が使用されるので、鋼板のプレス成形性が良好であると共に焼入れ後には極めて高強度の鋼板部材が得られる。 【0013】また、鋼板が950℃以下の焼入れ温度で金属組織がオーステナイトに急変態するA3変態点を有するものとされ、焼入れ温度が950℃以下に設定されているので、焼入れ時の酸化皮膜の形成やメッキの散失が抑止される。 【0014】さらに、昇温する部位に液状冷媒を接触させた状態で内部発熱させることにより焼入れするようにしているので、プレス成形品の昇温する部位が常時冷却された状態となり、加熱された直後に冷却が行われることから焼入れ具合の均一化が図られると共に、焼入れ箇所以外の部分で生じる熱の影響により酸化皮膜の形成やメッキの散失が助長されるのが抑止される。 【0015】ここで、鋼板を形成する材料の炭素(C)含有量が多いほど焼入れ後に得られる鋼板部材の強度が高くなるが、これが0.1質量%よりも低い場合、焼入れ後の強度が1000MPa以上である高強度の鋼板部材を得にくくなり、これが0.2質量%よりも高い場合、焼入れ前の強度が550MPa以下となり難く、プレス成形性が劣るものとなり、また、得られるプレス成形品が脆いものとなる。なお、自動車の車体フレーム部材においては、焼入れ後に1000MPa以上の強度が得られれば、板厚削減及び補強削減の効果を十分に得ることができる。 【0016】また、内部発熱させることにより焼入れする方法とは、外部熱源に接触させる方法ではなく、例えば、高周波を用いた誘導加熱、電子ビーム、レーザー等を照射することによる加熱等の方法を挙げることができる。 【0017】鋼板に含有される複数の金属は、鋼板の質量に対する質量含有率が0.5〜2.0質量%のマンガン(Mn)を有する構成であってもよい。 【0018】鋼板を形成する材料のA3変態点は、主として炭素(C)の含有量とマンガン(Mn)の含有量とによって影響を受けるが、上記の如く炭素(C)の含有量が焼入れ前後の強度による制約を受ける。しかしながら、上記のようにすれば、マンガン(Mn)の含有量が0.5〜2.0質量%とされているので、鋼板の強度が高くなりすぎない範囲で、A3変態点が低いものとなり、それによって焼入れ温度を低く設定することができ、焼入れ時の酸化皮膜の形成やメッキの散失がより一層有効に抑止されることとなる。 【0019】ここで、マンガン(Mn)の含有量が0.5質量%より低い場合、マンガン(Mn)によるA3変態点を低める効果を十分に得ることができず、マンガン(Mn)の含有量が2.0質量%より高い場合、マンガン(Mn)が固溶強化元素であることから鋼板の強度が高くなり、鋼板のプレス成形性が劣るものとなる。 【0020】鋼板は、亜鉛(Zn)を含むメッキが30〜90g/m2施されている構成であってもよい。 【0021】焼入れ温度を低く設定することによりメッキの散失抑制は図られるものの、それの完全な防止は図ることができないが、上記のようにすれば、メッキの付着量が30〜90g/m2とされているので、メッキの散失が生じたとしてもメッキによる耐食性が維持された鋼板部材が低コストで得られることとなる。 【0022】ここで、メッキの付着量が30g/m2よりも少ない場合、メッキの散失による影響によって鋼板部材の耐食性が劣るものとなり、メッキの付着量が90g/m2よりも多い場合、必要以上にメッキが施されることとなってコストが高くなると共に肉厚のメッキ層を形成させる必要があることから生産性が低くなる。 【0023】また、メッキとしては、溶融亜鉛メッキ(Zn、Zn−Fe、Fe−Zn)であっても電気亜鉛メッキ(Zn、Zn−Ni、Zn−Fe、Fe−Zn)であってもよい。 【0024】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、鋼板のプレス成形性を良好なものとすることができると共に焼入れ後には極めて高強度の鋼板部材を得ることができる。また、焼入れ時の酸化皮膜の形成やメッキの散失を抑止することができる。さらに、焼入れ具合の均一化を図ることができると共に、酸化皮膜の形成やメッキの散失が助長されるのを抑止することができる。 【0025】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 【0026】(実施形態1)本発明の実施形態1に係る車体フレーム部材(鋼板部材)の製造方法についてステップを追って説明する。 【0027】<準備ステップ>0.1〜0.2質量%の炭素(C)と、0.5〜2.0質量%のマンガン(Mn)及び主成分であるFeを含む複数の金属とからなり、後述の950℃以下の所定の焼入れ温度で金属組織がオーステナイトに急変態するA3変態点を有し且つ引張強度が550MPa以下であり、表面に亜鉛(Zn)を含むメッキが30〜90g/m2施された鋼板を準備する。亜鉛(Zn)を含むメッキは、溶融亜鉛メッキ(Zn、Zn−Fe、Fe−Zn)であっても、また、電気亜鉛メッキ(Zn、Zn−Ni、Zn−Fe、Fe−Zn)であってもよい。 【0028】<プレス成形ステップ>準備した鋼板をプレス成形機にセットし、鋼板を断面略台形のハット形状のプレス成形品Wにプレス成形する。 【0029】<焼入れステップ>プレス成形品Wの焼入れ装置は、図1及び2に示すように、水や防錆液等の液状冷媒11が溜められた水槽10と、高周波発生器20とにより構成されている。 【0030】高周波発生器20の加熱用コイル21は、コの字状に形成されており、水槽10内にセットされたプレス成形品Wの頂面及び両傾斜面上部を囲うように配置され、また、セットされたプレス成形品Wの長手方向に沿って移動することができる構成となっている。また、加熱用コイル21は、コイル制御用ケーブル22を介して制御部(図示せず)に接続されている。 【0031】この焼入れ装置を用いたプレス成形品Wの焼入れでは、まず、成形したプレス成形品Wを水槽10の液状冷媒11中にハット状の頂面が上側となるように浸漬してセットする。 【0032】次いで、高周波発生器20の制御部のスイッチを入れることにより加熱用コイル21に高周波電流を流すと共に、加熱用コイル21をプレス成形品Wの長手方向に沿って図中の矢印の向きに移動させる。このとき、プレス成形品Wの加熱用コイル21の通過箇所が誘導加熱により急激に950℃以下の所定の焼入れ温度に昇温して金属組織がオーステナイト化し、加熱用コイル21の通過後は直ちにその箇所が周囲の液状冷媒11に吸熱・急冷されて金属組織がマルテンサイト化して硬化する。なお、焼入れ温度の設定は、この高周波電流の強さ及び加熱用コイル21の移動速度が制御部で調整されることにより行われる。 【0033】以上の本発明の実施形態1に係る車体フレーム部材の製造方法によれば、炭素(C)を0.1〜0.2質量%有し、引張強度が550MPa以下である鋼板が使用されているので、鋼板のプレス成形性を良好なものとすることができると共にプレス成形品Wの焼入れ後には極めて高強度の鋼板部材を得ることができる。 【0034】また、鋼板は、0.5〜2.0質量%のマンガン(Mn)が含まれ、その強度が高くなりすぎない範囲でA3変態点が低められて950℃以下の焼入れ温度でも金属組織がオーステナイトに急変態するものとされ、焼入れ温度が950℃以下に設定されているので、焼入れ時のメッキの散失を抑止することができる。 【0035】ところで、従来のプレス成形品Wの焼入れ方法は、図3(a)に示すように、加熱用コイル21a及び冷却水パイプ31をプレス成形品Wの長手方向に沿って移動させ、図3(b)に示すように、加熱用コイル21aに高周波電流を流すことによりプレス成形品Wの通過箇所を誘導加熱により急激に内部発熱させると共に、冷却水パイプ31により冷却水32を噴射してその箇所を急冷することにより行うものであるが、この方法では、図3(c)に示すように、冷却水32が加熱用コイル21aとプレス成形品Wとの間に保持されてしまい、それによって冷却水32の接触具合が不均一となって焼入れ具合が不均一となるという問題や、加熱用コイル21aによる誘導加熱はその通過箇所が最も強く生じるが、その通過箇所以外でも弱いながらも誘導加熱が生じるために加熱領域が広く、その結果、過剰な熱履歴を受けることによってメッキの蒸発による散失が著しいという問題がある。 【0036】また、別の従来のプレス成形の焼入れは、図4(a)に示すように、加熱用コイル21aをプレス成形品Wの長手方向に沿って移動させると共にプレス成形品Wを介して反対側に配置された冷却水パイプ31をも加熱用コイル21aの後を追うように移動させ、図4(b)に示すように、加熱用コイル21aに高周波電流を流すことによりプレス成形品Wの通過箇所を誘導加熱により急激に内部発熱させると共に、冷却水パイプ31により冷却水32を噴射してその箇所を急冷することにより行うものであるが、この方法では、焼入れ具合の均一性は改善されるものの、過剰な熱履歴を受けることによってメッキの蒸発による散失が著しいという問題が依然として残る。 【0037】しかしながら、この本発明の車体フレーム部材の製造方法によれば、図5に示すように、プレス成形品Wを液状冷媒11中に浸漬し、昇温する部位に液状冷媒11を接触させた状態で誘導加熱による内部発熱により焼入れするようにしているので、プレス成形品Wが常時冷却された状態となり、加熱用コイル21の通過時に加熱されてもその加熱箇所が加熱用コイル21の通過直後には急冷され、また、加熱用コイル21の通過箇所以外で生じる誘導加熱も液状冷媒11によって縮小されることから加熱領域が従来の焼入れ方法に比べて狭く(図3(b)及び(c)、図4(b)及び図5参照)、それによって均一な加熱及び冷却が行われることから焼入れ具合の均一化を図ることができ、加えて、加熱用コイル21の通過箇所以外で生じる誘導加熱の影響によりメッキの散失が助長されるのを抑止することができる。 【0038】また、焼入れ温度を低く設定することによりメッキの散失抑制は図られるものの、その完全な防止は図ることができないが、メッキの目付量が30〜90g/m2とされているので、メッキの散失が生じたとしてもメッキによる耐食性を維持することができる。 【0039】さらに、加熱用コイル21を液状冷媒11中に配置しているので、加熱用コイル21が高温となることが防止され、その寿命化を図ることができる。 【0040】以上より、この車体フレーム部材の製造方法は、均一な焼入れが行われると共に耐食性に優れる車体フレーム部材を得ることができることから、アンダー系の車体フレーム部材の製造にも十分適用することができるものである。 【0041】(実施形態2)本発明の実施形態2に係る車体フレーム部材の製造方法について説明する。なお、準備ステップ及びプレス成形ステップは実施形態1と同一であるので説明を省略する。 【0042】実施形態2に係る車体フレーム部材の製造方法は、衝突傾向を制御するためにフレームの一部を脆弱化しておく場合のように、プレス成形品Wを部分的に焼入れして車体フレーム部材を製造するものである。 【0043】<焼入れステップ>プレス成形品Wの焼入れ装置は、図6及び7に示すように、高周波発生器40と、車体フレーム部材をセットするためのクランプ台50と、車体フレーム部材の焼入れ予定部分をカバーするための水槽60とにより構成されている。 【0044】高周波発生器40の加熱用コイル41は、図6に示すように、実施形態1の場合と同様にコの字状に形成され、ロボット44のアーム44aの先端に取り付けられてその長手方向に垂直な方向への移動が可能となるように構成されている。また、加熱用コイル41は、コイル制御用ケーブル42を介して制御部43に接続されている。制御部43には、電源に延びる電源ケーブル43aが設けられている。 【0045】クランプ台50は、プレス成形品Wをハット状の頂面が上側となるようにセットできるように上面が平坦に形成され、プレス成形品Wの鍔部を係止固定するためのクランプ治具51が複数設けられている。 【0046】水槽60は、クランプ台50にセットされたプレス成形品Wの焼入れ予定部分を上から被せるように覆うことができるように下方に開口しており、上面からロボット44に取り付けられた加熱用コイル41が挿入されている(図6では水槽60を図示していない)。また、一対の対向した側面にはプレス成形品Wの断面形状と略等しい台形状の切り込みが形成されており、それらにプレス成形品Wを嵌め入れるようになっている。さらに、別の側面には水槽60内に液状冷媒61を供給する冷媒供給管62とそれを排出するための冷媒排出管63がそれぞれ上下に並んで設けられている。そして、水槽60の開口周縁には、漏水防止のためのシールゴム64が設けられている。 【0047】この焼入れ装置を用いたプレス成形品Wの焼入れでは、まず、成形したプレス成形品Wをハット状の頂面が上側となるようにクランプ台50に載置してクランプ治具51でその鍔部を係止固定する。 【0048】次に、図7に示すように、プレス成形品Wの焼入れ予定部分の上から水槽60を被せる。このとき、加熱用コイル41は、プレス成形品Wの頂面及び両斜面上部を囲うように配置される。また、図8に示すように、プレス成形品Wと水槽60の開口端との間はシールゴム64で密封され、また同様に、クランプ台50と水槽60の開口端との間もシールゴム64で密封され、その結果、水槽60内に密閉空間が形成される。 【0049】次いで、冷媒供給管62から水槽60内に水や防錆液等の液状冷媒61を供給し、水槽60内を液状冷媒61で満たす。このとき、図9に示すように、プレス成形品Wの焼入れ予定部分が液状冷媒61に接触した状態となる。 【0050】続いて、高周波発生器40の制御部43のスイッチを入れることにより加熱用コイル41に高周波電流を流すと共に、加熱用コイル41をプレス成形品Wの焼入れ予定部分を長手方向に沿って移動させる。このとき、プレス成形品Wの加熱用コイル41の通過箇所が誘導加熱により急激に所定の焼入れ温度(例えば950℃)に昇温して金属組織がオーステナイト化し、加熱用コイル41の通過後は直ちにその箇所が周囲の液状冷媒61に吸熱・急冷されて金属組織がマルテンサイト化して硬化する。なお、焼入れ温度の設定は、この高周波電流の強さ及び加熱用コイル41の移動速度が制御部43で調整されることにより行われる。 【0051】そして、冷媒排出管63から液状冷媒61を排出し、水槽60をプレス成形品Wから外した後、プレス成形品Wをクランプ台50から外す。 【0052】以上の焼入れを脆弱に形成する部分を残してプレス成形品Wの全ての部分について繰り返し行う。 【0053】作用・効果は、実施形態1と同一である。 【0054】(その他の実施形態)上記実施形態1及び2では、表面にメッキを施した鋼板を用いたが、特にこれに限定されるものではなく、メッキが施されていない鋼板であってもよい。かかるメッキが施されていない鋼板の場合には、本発明によって酸化皮膜の形成が抑制されるという効果を享受することができる。 【0055】また、上記実施形態1及び2では、高周波誘導加熱により内部発熱させることにより焼入れすることとしたが、特にこれに限定されるものではなく、電子ビーム、レーザー等を照射することにより内部発熱させるもの等であってもよい。 【0056】 【実施例】(試験評価サンプル)表1に示す材料組成を有する例1〜15の各鋼板を試験評価サンプルとした。 【0057】 【表1】
【0058】(試験評価方法) <焼入れ前後の引張強度>例1〜15の各鋼板について、焼入れ前後の引張強度を測定した。測定は、各鋼板からJIS5号試験片を切り出し、その試験片を10mm/minの速度で引張試験することにより行った。試験片の焼入れは、防錆液に浸漬した各試験片を高周波により950℃に誘導加熱することにより行った。焼入れ後の引張強度は、1000MPa以上のものを「○」、1000MPa未満のものを「×」として評価した。 【0059】<A3変態点>例1〜15の各鋼板について、測定質量を約30g及び加熱速度を0.033℃/secとして変態時の吸熱を示差熱分析により観測し、そのときの温度をA3変態点とした。 【0060】<塗膜密着性>例14の鋼板について、大気中で高周波により誘導加熱(焼入れ温度1000℃)して冷却水を当てる方法で焼入れ(大気中焼入れ)を行ったものと、防錆液に浸漬して高周波により誘導加熱(焼入れ温度1000℃)する方法で焼入れ(液中焼入れ)を行ったものとを準備した。次いで、それぞれを化成処理、電着、中塗り及び上塗りした後、カッターナイフで板表面に縦横それぞれに11本ずつの傷を5mm間隔で入れて100個のマスをつくった試験片を作成した。そして、それぞれの試験片について、その上に粘着テープを貼付して剥離し、そのとき粘着テープによって剥がされずに残ったマスの残存量で塗膜密着性を評価した。 【0061】<耐食性>例14の鋼板に目付量60g/m2で溶融亜鉛メッキを施行したものを大気中で高周波により誘導加熱(焼入れ温度1000℃)して冷却水を当てる方法で焼入れを行った試験片1を作成した。また、例10の鋼板に目付量60g/m2で溶融亜鉛メッキを施行したもの、例14の鋼板に目付量20g/m2で溶融亜鉛メッキを施行したもの、例14の鋼板に目付量30g/m2で溶融亜鉛メッキを施行したもの及び例14の鋼板に目付量60g/m2で溶融亜鉛メッキを施行したものをそれぞれ防錆液に浸漬して高周波により誘導加熱(焼入れ温度1000℃)する方法で焼入れを行った4種の試験片2〜5を準備した。そして、以上の試験片1〜5のそれぞれについて、上記と同様の引張試験及び塩水噴霧試験JIS Z2371に準じた条件で耐食性試験を行った。引張強度は、1000MPa以上のものを「○」、1000MPa未満のものを「×」として評価した。耐食性は、塩水により表面性状に影響がないものを「○」、影響があるものを「×」として評価した。 【0062】(試験評価結果) <焼入れ前後の引張強度>例1〜15の各鋼板の焼入れ前の引張強度及び焼入れ後の引張強度評価を表2に示す。 【0063】 【表2】
【0064】同表によれば、焼入れ後の引張強度が鋼板材料に含まれる炭素(C)の含有量に依存していることが分かる。すなわち、例1〜8及び10は、炭素(C)の含有量が0.1質量%未満であり、1000MPa以上の引張強度が得られていないのに対し、例9及び11〜15は、炭素(C)の含有量が0.1質量%以上であり、1000MPa以上の引張強度が得られている。また、良好なプレス成形性を得るためには、焼入れ前の引張強度が550MPa以下であることが必要であるが、例9を除いては全てこの条件を満足している。従って、焼入れ後の引張強度が1000MPa以上であり、しかも、焼入れ前のプレス成形性が優れるのは、炭素(C)の含有量が0.1質量%以上であり且つ焼入れ前の引張強度が550MPa以下である例11〜15である。 【0065】<A3変態点>例1〜15の各鋼板のA3変態点を表2に示す。 【0066】従来のように大気中で高周波により誘導加熱して冷却水を当てる焼入れ方法では、焼入れ温度を950℃として均一な焼入れを行うためにA3変態点が900℃以下であることが要求されていたが、表2によれば、例14及び15のようにA3変態点が900℃よりも高く且つ920℃以下であるものでも焼入れ後の引張強度が1000MPa以上となっていることから、昇温する部位に冷却水を接触させた状態で高周波により誘導加熱する本発明の焼入れ方法によればA3変態点が920℃以下であれば焼入れ温度を950℃としても均一な焼入れを行うことができると考えられる。 【0067】図10は、マンガン(Mn)の含有量とA3変態点との関係を示す。 【0068】同図によれば、マンガン(Mn)の含有量が多くなるに従ってA3変態点が低下しているのが分かる。従来は、A3変態点を900℃以下とするためにマンガン(Mn)の含有量として最低1.0質量%以上が必要とされていたが、本発明による焼入れではA3変態点が920℃以下であればよく、図10によれば、そのために必要とされるマンガン(Mn)の含有量としては0.5質量%以上である。 【0069】<塗膜密着性>大気中で焼入れしたものは、ほとんどのマスが粘着テープにより剥がれてしまったが、液中で焼入れしたものは、95%のマスが剥がれずに残存した。これは、大気中で焼入れした場合には鋼板表面に肉厚の酸化皮膜が形成され、それが剥がれ易いのに対し、液中で焼入れした場合には鋼板表面に薄肉の酸化皮膜しか形成されず、それが鋼板側への密着性が高いためではないかと考えられる。 【0070】<耐食性>試験片1〜5それぞれの引張強度及び耐食性の評価結果を表3に示す。 【0071】 【表3】
【0072】同表によれば、試験片1と試験片5とは、焼入れの方法のみが異なるにもかかわらず、耐食性の評価に差が生じているのが分かる。これは、大気中で焼入れした場合には、メッキの蒸発による散失が著しいのに対しく残存するメッキ層が薄くなるのに対し、同じ焼入れ温度であっても液中で焼入れした場合にはメッキの散失が抑制されるためメッキ層が十分に残存するためであると考えられる。 【0073】試験片2は、試験片5と同様にメッキが残存することにより耐食性が良好となっているが、上記評価結果(例10の焼入れ後の引張強度)でもあるように焼入れ後の強度が1000MPaに満たない。 【0074】試験片3は、液中で焼入れしたものであるにもかかわらず、耐食性が劣るものとなっている。これは、液中での焼入れであっても若干はメッキの散失が生じ、メッキの目付量が20g/m2では焼入れ後に十分なメッキ層が残存しないためであると考えられる。 【0075】試験片4は、メッキの目付量が30g/m2であるが耐食性が良好である。 【0076】従って、以上より、メッキの散失を抑止して耐食性を良好なものとするためには、大気中で焼き入れするよりも液中で焼き入れする方がよい。また、液中で焼き入れする場合であってもメッキの散失を完全には防止できないことから、メッキの目付量は30g/m2以上とする必要がある。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003137 【氏名又は名称】マツダ株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年6月19日(2001.6.19) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077931 【弁理士】 【氏名又は名称】前田 弘 (外7名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−371319(P2002−371319A) |
| 【公開日】 |
平成14年12月26日(2002.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2001−184576(P2001−184576) |
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