トップ :: C 化学 冶金 :: C21 鉄冶金




【発明の名称】 無方向性電磁鋼板の製造方法
【発明者】 【氏名】熊野 知二

【氏名】村上 健一

【氏名】村上 英邦

【氏名】竹下 哲郎

【要約】 【課題】介在物制御、集合組織制御の適正化により、磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板を得る手段を提案する。

【解決手段】溶鋼を直接連続鋳造して30〜140mm厚の薄スラブとし、引き続き熱間で圧延して0.7〜4.5mmの鋼帯とし、この鋼帯を焼鈍しもしくは焼鈍せず、引き続き1回もしくは中間焼鈍を挾む2回以上の冷間圧延を行って最終板厚とし、続いて仕上げ焼鈍する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶鋼を直接連続鋳造して30〜140mm厚の薄スラブとし、引き続き熱間で圧延して0.7〜4.5mmの鋼帯とし、この鋼帯を焼鈍しもしくは焼鈍せず、引き続き1回もしくは中間焼鈍を挾む2回以上の冷間圧延を行って最終板厚とし、続いて仕上げ焼鈍することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項2】 質量%で、C :0.010%以下、Si:4.00%以下、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる溶鋼を用いて鋳造することを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項3】 前記溶鋼の成分として、さらに、Al:2.50質量%以下を含有することを特徴とする請求項2に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項4】 前記溶鋼の成分として、さらに、Sn,Sb,Pの少なくとも1種を0.01〜0.30質量%含有することを特徴とする請求項2または3に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項5】 前記溶鋼の成分として、さらに、Crを0.02〜6.50質量%含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかの項に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項6】 溶鋼から薄スラブとした後、熱間圧延までの間に、1回以上の加熱・保定を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の一方向性珪素鋼板の製造方法。
【請求項7】 上記1回以上の加熱・保定が900℃〜1100℃で5分以上行うものであることを特徴とする請求項6に記載の無方向性電磁鋼板製造方法。
【請求項8】 熱間圧延の巻き取り温度を800〜900℃とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項9】 最終の冷間圧延における冷延率を30〜85%とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に回転機等の鉄芯として使用される無方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】無方向性電磁鋼板の特性で特に重要なことは、鉄損が低く、磁束密度が高いことである。このうち鉄損は、履歴損と渦電流損とに大別される。このうち、履歴損を低減する方法としては、1)一次再結晶粒径を大きくする、2)不純物量、即ち、一次再結晶粒成長を阻害する物質であるAlN,MnS,NbC,NdN,TiN等の析出物を形成する元素の量を減らす、3)鉄の磁化容易軸<100>が板面上に多い、{100}<0vw>集合組織を形成させる、などの方法が知られている。
【0003】また、渦電流損を減じる方法としては、製品板厚を減じる、Si,Alを含有せしめて固有抵抗を増大せしめる、などの方法が知られている。一方、磁束密度を上げる方法としては、1)鉄の磁化容易軸<100>が板面上に多い、{100}<0vw>集合組織を形成させる、2)Si,Al等、飽和磁束密度を下げる合金成分を減じ、鉄の含有量を増加させる、3)Co等、鉄の飽和磁束密度を上げる元素を添加する、などの方法がある。
【0004】これらのうち、渦電流損については既に工業的な限界近くまで低減が図られていることから、近年の無方向性電磁鋼板における磁気特性向上は、主に履歴損の改善と磁束密度の向上を目的として研究がなされている。このうち、履歴損低減の方法である不純物量の低減としては、その絶対量を低減する方法と、析出物を粗大化することで、鋼板の結晶粒成長に対する抑制力を無害化する方法とがある。
【0005】前者については、具体的にはN,S,C,Ti,Nb,V,Zr等の溶鋼中での含有量をそれぞれ0.0010質量%以下とするか、もしくは一般的な不純物元素であるC,S,N,Tiを合計で0.0030質量%以下とすることでほぼ実現できる。しかし、このレベルまで不純物を除去することは工業的には非常なコストアップとなるため、限られた製品にのみ適用されているのが現実である。
【0006】また、後者の方法としては、通常の連続鋳造スラブを1100℃以下望ましくは1050℃以下の低温度に再加熱して熱間圧延する方法により、析出物を粗大化する技術や、特開昭55−24942号公報のように、Ca等のSとの化合物を作りやすい元素の添加して粗大化して無害化する技術が知られている。一方、鉄の容易磁化軸を板面に揃える集合組織制御の効果的な方法としては、冷間圧延前粒径の粗大化、冷間圧延率の適正化、特開平2−11728号公報に記載のような一次再結晶焼鈍時の昇温速度高速化、が良く知られている。また、特開平5−306438号公報には、移動更新する冷却体表面によって凝固せしめて鋳造鋼帯とした後、冷間圧延を冷延率5〜40%とすることで、{100}面強度を対ランダムで2倍以上とする技術が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】通常、成分調整された溶鋼は連続鋳造法によるか、または鋳型に鋳込んだ後にブレイクダウン法(分塊法)により、厚さ150〜300mmのスラブとし、このスラブを再加熱し熱間圧延して0.7〜4.5mmの熱延鋼帯とする。この方法による無方向性電磁鋼板の製造において、前記スラブ再加熱温度の低温化技術を用いようとすると、150mm以上の厚みから0.7〜4.5mmまで圧延するには、熱間圧延機のパウアーに困難性が生じ、また板厚偏差が大きくなるので品質的に劣り、また歩留まり低下を来すという課題がある。
【0008】また、通常溶鋼を急速に凝固せしめるとその組織はいわゆる柱状晶が増える。この柱状晶には{100}面が多く生成するため、その後の熱間圧延での低圧延率と組み合わせることで、良好な集合組織を得ることができる。冷間圧延前の集合組織に{100}<0VW>方位を多く有すると、たとえ冷間圧延・再結晶焼鈍を施しても集合組織が改善されることは周知である(JMEPEG (1995) 4 : 401-412)。このため出来るだけ多い{100}<0VW>方位粒を冷間圧延前に有せしめることが重要である。
【0009】しかしながら、前記のように通常のスラブから製造する方法では、圧延率が大きく、柱状晶のほとんどは破壊されてしまう。特開平5−306438号公報の技術はこれに対して、溶鋼から急速凝固により直接鋼帯を製造する技術であるが、急速凝固のため析出物は微細分散しやすく、また設備技術的に見て工業的に実現するのは難しい。加えてスラブの大きさのため、加熱時にスラブを支える所謂スキッド部に接する部分や、板厚中心部などは必然的に温度が低くなり、一方これらの部分の温度を確保するため、端部や表面の温度を高くせざるを得ないなど、スラブ全体では温度が不均一になり、その結果、析出物の分布も不均一となり磁気特性が変動するという課題がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決し、無方向性電磁鋼板の磁気特性向上のために析出物の無害化と冷間圧延前集合組織の改善を効果的に且つ低コストで行わせしめる方法を提供するものである。本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)溶鋼を直接連続鋳造して30〜140mm厚の薄スラブとし、引き続き熱間で圧延して0.7〜4.5mmの鋼帯とし、この鋼帯を焼鈍しもしくは焼鈍せず、引き続き1回もしくは中間焼鈍を挾む2回以上の冷間圧延を行って最終板厚とし、続いて仕上げ焼鈍することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
(2)質量%で、C :0.010%以下、Si:4.00%以下、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる溶鋼を用いて鋳造することを特徴とする(1)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)前記溶鋼の成分として、さらに、Al:2.50質量%以下を含有することを特徴とする(2)に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
(4)前記溶鋼の成分としてさらに、Sn,Sb,Pの少なくとも1種を0.01〜0.30質量%含有することを特徴とする(2)または(3)に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
(5)前記溶鋼の成分としてさらに、Crを0.02〜6.50質量%含有することを特徴とする(2)〜(4)の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
(6)溶鋼から薄スラブとした後、熱間圧延までの間に、1回以上の加熱・保定を行うことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの項に記載の一方向性珪素鋼板の製造方法。
(7)上記1回以上の加熱・保定が900℃〜1100℃で5分以上行うものであることを特徴とする(6)に記載の無方向性電磁鋼板製造方法。
(8)熱間圧延の巻き取り温度を800〜900℃とすることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの項に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
(9)最終の冷間圧延における冷延率を30〜85%とすることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの項に記載の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の特徴は、まず、無方向性電磁鋼板の製造に関して通常の熱延鋼帯に対応する鋼帯を製造する時に30〜140mmの薄スラブを直接もしくは加熱・保定後に熱間圧延を行うことである。この方法によれば、熱間圧延での圧延率を低くできるので、凝固時に生成した柱状晶の残存率を高めることができ、また低温スラブ加熱でも通常の圧延機で実施可能であるため、より望ましい集合組織の形成が可能となる。また、溶鋼を鋳込み始めてから巻き取りの間では、どの時点でも鋼帯または途中段階の鋼帯または、止まることなく各部位はほとんど同じ温度履歴を有するため、鋼板の品質を安定にすることができる。
【0012】加えて、薄スラブで鋼帯を製造する方法は、設備投資が安価で済むことは広く知られている(例えば、stahl und eisen 120 (2000) Nr. 1, p23)。次に本発明におけるスラブの成分範囲の限定理由について述べる。なお、単位は質量%である。Cは、0.010%より多いと磁気時効を起こすので0.010%を上限とする。望ましくは0.005%以下である。
【0013】Siは、固有抵抗を上げる元素として鉄損改善に寄与するが4.00%を超えると冷延が極めて困難となり工業生産に適していない。Alは、Siと同様に固有抵抗を上げる元素として鉄損改善に寄与するが2.50%を超えると冷間圧延に困難性が生じる。また特公昭48−3055号公報に記載のように、0.15%以上のAlの含有は、AlNを無害化するのにも有効である。
【0014】Sn,Sb,Pは一次再結晶集合組織の改善に有効であり、1種以上を0.01%以上含有することで効果があるが、0.30%を超えると一次再結晶粒成長を阻害するため好ましくない。また、Pは硬度を低減し、打ち抜き性改善にも有効である。Crは0.02%以上添加すると集合組織の改善に効果があるが、6.50%を超えると飽和磁束密度が低下して磁気特性が劣化する。
【0015】その他不可避元素であるS,Nは、望ましくは0.005%以下とすべきであるが、本発明の方法によれば0.010%まで含有しても実質的に無害化できる。次に本発明における製造工程の限定理由について述べる。前記の成分からなる溶鋼は薄スラブ鋳造により30〜140mmの厚さに鋳造される。厚さが30mm未満では板厚中心部に介在物が偏析しやすくなり板厚や温度に不均一が生じやすく、一方、140mmを超えると集合組織が劣化して、良好な磁気特性を得ることができない。
【0016】鋳造された薄スラブは引き続き連続して、もしくは最終熱延までの間途中で1回以上加熱・保定した後、熱間圧延して0.7〜4.5mmの鋼帯にする。加熱・保定を行う理由は、熱延鋼帯内でのインヒビター物質の析出・成長(粗大化)を促進することである。この場合、900℃以上の温度に5分以上保定するとインヒビター物質はその温度の平衡状態に落ち着くので5分以上で良い。しかし、望ましくは薄スラブでの成分偏析をより取り除くためには10分以上である。温度は、1100℃を超えると不純物がある程度再固溶するので温度は1100℃以下が望ましい。一方、900℃未満であると熱延の負荷が大きくなるし析出物の粗大化が困難になる。熱間圧延の巻き取り温度は800〜900℃とすることで、磁気特性改善に効果がある。また、熱延鋼帯の焼鈍は、主に、熱延時に生じた鋼帯内の圧延組織の再結晶及び粒成長、および、析出物の更なる粗大化のために行われる。
【0017】無方向性電磁鋼板の最終製品の板厚は通常、0.1〜0.5mmであるが、熱間圧延で最終製品とすると、板厚精度や表面性状が良好でないので、冷間圧延により最終板厚にする。この冷延の圧延率は30%以上が望ましい。一方圧延率が85%を超えると、{110}<001>集合組織が少なくなり、磁束密度が低下する。このような圧延率にするよう、熱間圧延後の板厚と、最終板厚とを決定する。
【0018】
【実施例】<実施例1>表1に示す成分の溶鋼から出発して、表2に示す条件にて高Si無方向性電磁鋼板を製造した。なお比較例の通常スラブの場合は、厚み250mmに鋳込み、1100℃で再加熱して通常の熱間圧延を施した。
【0019】得られた熱延鋼帯は、熱延板焼鈍を施しもしくは省略して、引き続き酸洗をし、その後0.35mmの厚みに冷間圧延し、最終焼鈍を施した。磁気特性はエプシュタイン法で測定した。結果を表2に示す。本発明法によれば、従来の方法と比べ鉄損・磁束密度共に優れた最高級の無方向性電磁鋼板の製造が可能になった。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】<実施例2>表3に示す成分の溶鋼から出発して、表4に示す条件にて高Si無方向性電磁鋼板を製造した。なお比較例の通常スラブの場合は、厚み250mmに鋳込み、1100℃で再加熱して通常の熱間圧延を施した。得られた熱延鋼帯は、熱延板焼鈍を施しもしくは省略して、引き続き酸洗をし、その後0.35mmの厚みに冷間圧延し、最終焼鈍を施した。
【0023】磁気特性はエプシュタイン法で測定した。結果を表4に示す。本発明法によれば、従来の方法と比べ鉄損・磁束密度共に優れた最高級の無方向性電磁鋼板の製造が可能になった。
【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】<実施例3>表5に示す成分の溶鋼から出発して、表6に示す条件にて中Si無方向性電磁鋼板を製造した。なお比較例の通常スラブの場合は、厚み250mmに鋳込み、1100℃で再加熱して通常の熱間圧延を施した。得られた熱延鋼帯は、熱延板焼鈍を施しもしくは省略して、引き続き酸洗をし、その後0.35mmの厚みに冷間圧延し、最終焼鈍を施した。
【0027】磁気特性はエプシュタイン法で測定した。結果を表6に示す。本発明法によれば、従来の方法と比べ鉄損・磁束密度共に優れた最高級の無方向性電磁鋼板の製造が可能になった。
【0028】
【表5】

【0029】
【表6】

【0030】<実施例4>表7に示す成分の溶鋼から出発して、表8に示す条件にて高Si無方向性電磁鋼板を製造した。なお比較例の通常スラブの場合は、厚み250mmに鋳込み、1100℃で再加熱して通常の熱間圧延を施した。得られた熱延鋼帯は、熱延板焼鈍を施しもしくは省略して、引き続き酸洗をし、その後0.50mmの厚みに冷間圧延し、最終焼鈍を施した。
【0031】磁気特性はエプシュタイン法で測定した。結果を表8に示す。本発明法によれば、従来の方法と比べ鉄損・磁束密度共に優れた最高級の無方向性電磁鋼板の製造が可能になった。
【0032】
【表7】

【0033】
【表8】

【0034】<実施例5>表9に示す成分の溶鋼から出発して、表10に示す条件にて高Si無方向性電磁鋼板を製造した。なお比較例の通常スラブの場合は、厚み250mmに鋳込み、1100℃で再加熱して通常の熱間圧延を施した。得られた熱延鋼帯は、熱延板焼鈍を施しもしくは省略して、引き続き酸洗をし、その後0.50mmの厚みに冷間圧延し、最終焼鈍を施した。
【0035】磁気特性はエプシュタイン法で測定した。結果を表10に示す。本発明法によれば、従来の方法と比べ鉄損・磁束密度共に優れた最高級の無方向性電磁鋼板の製造が可能になった。
【0036】
【表9】

【0037】
【表10】

【0038】
【発明の効果】以上述べたように、30〜140mm厚の薄鋼スラブから出発し、引き続き直ちにもしくは加熱・保定後に熱間で圧延する無方向性電磁鋼板の製造方法によれば、従来のスラブから出発する製造方法では実現できなかった、介在物制御、集合組織制御の適正化により、磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成12年12月28日(2000.12.28)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外2名)
【公開番号】 特開2002−206114(P2002−206114A)
【公開日】 平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願番号】 特願2000−403149(P2000−403149)