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【発明の名称】 鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法及び脱炭焼鈍炉
【発明者】 【氏名】牛神 義行

【氏名】中村 修一

【氏名】藤井 浩康

【氏名】村上 健一

【要約】 【課題】脱炭焼鈍の操業安定化または一次再結晶組織の適正化により、方向性珪素鋼板の磁気特性を改善する。

【解決手段】脱炭焼鈍炉の加熱帯と均熱帯の間をシールしてこれらの雰囲気を分離し、更に加熱帯の雰囲気ガスをシリカが形成されない酸化度(P H2 O /PH2 )に、また均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度に制御して焼鈍することを特徴とする鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。また、方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍炉において、加熱帯と均熱帯の間に雰囲気シール装置を配設したことを特徴とする脱炭焼鈍炉。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量で、Si:0.8〜4.8%、C :0.003〜0.1%含有する珪素鋼帯を冷延・脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し仕上げ焼鈍を施す方向性珪素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍炉の加熱帯と均熱帯の間をシールしてこれらの雰囲気を分離し、更に加熱帯の雰囲気ガスをシリカが形成されない酸化度(P H2 O /P H2 )に、また均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度に制御して焼鈍することを特徴とする鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。
【請求項2】 脱炭焼鈍において、加熱帯の雰囲気ガスの酸化度(P H2 O/P H2 )を実質的にシリカが形成されない0.0005以下とし、均熱帯の雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 )を、鉄系酸化物が形成されない0.01以上0.15以下として焼鈍することを特徴とする請求項1記載の鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。
【請求項3】 焼鈍分離剤として、アルミナを主成分として使用する請求項1または2記載の鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。
【請求項4】 焼鈍分離剤として、マグネシアを主成分として使用する請求項1または2記載の鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。
【請求項5】 方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍炉において、加熱帯と均熱帯の間に雰囲気シール装置を配設したことを特徴とする脱炭焼鈍炉。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として変圧器その他の電気機器等の鉄心として利用される一方向性珪素鋼板の製造方法及び脱炭焼鈍炉に関するものである。特に、その表面を効果的に仕上げることにより、鉄損特性の向上を図るものである。
【0002】
【従来の技術】一方向性珪素鋼板は、磁気鉄心として多くの電気機器に用いられている。一方向性珪素鋼板は、Siを0.8〜4.8%含有し、製品の結晶粒の方位を{110}<001>方位に高度に集積させた鋼板である。その磁気特性として磁束密度が高く(B8値で代表される)、鉄損が低い(W17/50 値で代表される)ことが要求される。特に最近では、省エネルギーの見地から電力損失の低減に対する要求が高まっている。この要求にこたえ、一方向性珪素鋼板の鉄損を低減させる手段として磁区を細分化する技術が開発された。
【0003】積み鉄心の場合、仕上げ焼鈍後の鋼板にレーザービームを照射して局部的な微少歪を与えることにより磁区を細分化して鉄損を低減させる方法が、例えば特開昭58−26405号公報に開示されている。しかしながらこれらの磁区の動きを観察すると、鋼板表面のグラス皮膜の凹凸によりピン止めされ、動かない磁区も存在していることが分かった。従って、方向性電磁鋼板の鉄損値を更に低減させるためには、磁区細分化と合わせて磁区の動きを阻害する鋼板表面のグラス皮膜の凹凸によるピン止め効果をなくすことが重要であると考えられる。
【0004】そのためには、磁区の動きを阻害する鋼板表面のグラス皮膜を形成させない事が有効であると考えられ、その手段として、焼鈍分離剤として粗大高純アルミナを用いることによりグラス皮膜を形成させない方法が、例えば米国特許第3785882号に提示されている。しかしながら、この方法では表面直下の介在物をなくすことができず、その介在物によるピニング効果のため、鉄損の向上代はW15/60 で高々2%に過ぎない。
【0005】この表面直下の介在物を制御し、かつ表面の鏡面化を達成する方法として、仕上げ焼鈍後に表面酸化層を除去した後に化学研磨或いは電解研磨を行う方法が、例えば特開昭49−96920号公報、特開昭64−83620号公報に開示されている。しかしながら、化学研磨・電解研磨等の方法は、研究室レベルでの少試料の材料を加工することは可能であるが、工業的規模で行うには薬液の濃度管理、温度管理、公害設備の付与等の点で大きな問題があり、いまだ実用化されるに至っていない。
【0006】本発明者等は、上記課題を解決するために種々の実験を行い、脱炭焼鈍の露点を制御し、脱炭焼鈍時に形成される酸化層においてFe系酸化物(Fe2 SiO4 、FeO等)を形成させないことが、表面の介在物を消去することに有効であること(特開平7−118750号公報)、またこのような酸化層の制御と脱炭を両立させるためには、脱炭焼鈍工程において加熱速度を9℃/秒以上で770〜860℃の温度域まで加熱し、Fe系酸化物(Fe2 SiO4 、FeO等)を形成させない雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 )を0.01〜0.15で焼鈍を行えば良いこと(特開平7−278668号公報)を開示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】脱炭焼鈍のヒートサイクルは、例えば特開平1−290716号公報、特開平6−212262号公報、特公平8−32929号公報、特開平9−256051号公報等に開示されるように、製品の磁気特性に影響を及ぼす一次再結晶組織を調整するうえで重要な制御因子である。本発明は、脱炭焼鈍の雰囲気ガスを加熱帯と均熱帯で分離制御することにより、特開平7−278668号公報に開示されたヒートサイクルの適正範囲を更に広げる方法を提供するものである。この方法により、脱炭焼鈍の操業安定化または一次再結晶組織の適正化により製品の磁気特性を一層改善することができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するために種々の実験を行い、脱炭焼鈍炉の加熱帯と均熱帯の間をシールし、これらの炉帯の雰囲気を分離すること、更に加熱帯の雰囲気ガスをシリカが形成されない酸化度(P H2 O /P H2 )、また均熱帯の雰囲気ガスを、鉄系酸化物が形成されない酸化度に制御して焼鈍することにより、加熱帯、均熱帯のヒートサイクルの適正領域が広い範囲で鋼板表面の酸化層制御と脱炭が両立できることを見いだした。
【0009】すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 質量で、Si:0.8〜4.8%、C :0.003〜0.1%含有する珪素鋼帯を冷延・脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し仕上げ焼鈍を施す方向性珪素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍炉の加熱帯と均熱帯の間をシールしてこれらの雰囲気を分離し、更に加熱帯の雰囲気ガスをシリカが形成されない酸化度(P H2 O /P H2 )に、また均熱帯の雰囲気ガスを鉄系酸化物が形成されない酸化度に制御して焼鈍することを特徴とする鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。
(2) 脱炭焼鈍において、加熱帯の雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2)を実質的にシリカが形成されない0.0005以下とし、均熱帯の雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 )を、鉄系酸化物が形成されない0.01以上0.15以下として焼鈍することを特徴とする前記(1)記載の鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。
(3) 焼鈍分離剤として、アルミナを主成分として使用する前記(1)または(2)記載の鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。
(4) 焼鈍分離剤として、マグネシアを主成分として使用する前記(1)または(2)記載の鉄損の低い方向性珪素鋼板の製造方法。
(5) 方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍炉において、加熱帯と均熱帯の間に雰囲気シール装置を配設したことを特徴とする脱炭焼鈍炉。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明者等は、珪素鋼板の脱炭挙動に対し、脱炭焼鈍初期(加熱過程)で形成される酸化層が以降の脱炭挙動に大きな影響を及ぼすものと考え、これに関連した種々の実験を行った。
【0011】質量で、Si:3.3%、Mn:0.14%、C:0.05%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%の珪素鋼スラブを1150℃で加熱した後、板厚1.6mmに熱延した。この熱延板を1120℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.15mmに冷延した。この冷延板に脱炭焼鈍を施した。その際、脱炭設備の加熱帯と均熱帯の間をシールし、これらの炉帯の雰囲気を分離した。
【0012】加熱帯の雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 ):(1)0.06及び(2)0.0005の湿潤ガス中で830℃まで加熱し、830℃で90秒間、酸化度(P H2 O /P H2 ):0.06の雰囲気ガス中で脱炭焼鈍を施した。ここで、脱炭焼鈍の加熱時間として、(1)30秒(28℃/秒)、(2)60秒(14℃/秒)、(3)90秒(9℃/秒)、(4)120秒(7℃/秒)、(5)180秒(5℃/秒)の条件で焼鈍を行った。
【0013】焼鈍後の炭素量を図1に示す。図1より、雰囲気ガスの酸化度が0.06の場合は、加熱速度9℃/秒以上で鋼中炭素量が0.003%以下になるが、雰囲気ガスの酸化度が0.0005の場合には、全ての加熱速度で鋼中炭素量が0.003%以下になることが分かる。
【0014】この原因は、加熱過程で鋼板表面に形成されるシリカに依存するものと考えられる。即ち、脱炭焼鈍の表面においては、一般に脱炭(鋼中炭素の酸化)反応とシリカ形成(鋼中シリコンの酸化)反応が雰囲気の水分に対して競合して行われている。鉄系酸化物が形成しないような低酸化度雰囲気ガス中で焼鈍すると、一般にシリカは稠密な膜状で生成し脱炭を阻害するが、加熱速度を高めこのシリカ膜が全面を覆わないうちに脱炭反応を開始させることにより、脱炭反応のサイトでのシリカ形成が抑制され、引き続いて脱炭反応が起こるものと考えられる。
【0015】本発明は、加熱過程におけるシリカの形成反応を雰囲気ガスの酸化度を下げることにより抑制し、均熱過程に移行し脱炭反応を開始するものである。本実験試料を加熱直後に引き出して、GDS(glow discharge spectroscopy )等で表面分析を行った結果、雰囲気ガスの酸化度が0.06の場合には表面にシリカ層が形成しているが、雰囲気の酸化度が0.0005と低い場合には表面のシリカ層が認められないことを確認した。
【0016】この結果を基に、脱炭焼鈍温度の影響を調べた。即ち、先述の冷延板を雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 ):(1)0.06及び(2)0.0005の湿潤ガス中で、加熱速度28℃/秒で740〜920℃の温度範囲で焼鈍を行った。焼鈍後の炭素量を図2に示す。図2より、雰囲気ガスの酸化度が0.06の場合は焼鈍温度770〜860℃の範囲で鋼中炭素量が0.003%以下になるが、雰囲気ガスの酸化度が0.0005の場合には、全ての焼鈍温度で鋼中炭素量が0.003%以下になることが分かる。
【0017】以上の結果より、脱炭焼鈍炉の加熱帯と均熱帯の間をシールし、これらの各炉帯の雰囲気ガスを分離すること、更に加熱帯の雰囲気ガスをシリカが形成されない酸化度(P H2 O /P H2 )、また均熱帯の雰囲気ガスを、鉄系酸化物が形成されない酸化度に制御して焼鈍することにより、鋼板表面の酸化層制御と脱炭を両立可能な加熱帯、均熱帯のヒートサイクルの適正領域を広げることが可能となった。
【0018】この様に、脱炭焼鈍の加熱帯で形成されるシリカの形成を雰囲気ガスの酸化度を制御して抑制することにより、加熱帯、均熱帯のヒートサイクルの適正領域が広い範囲で鋼板表面の酸化層と脱炭が両立できる。加熱帯の雰囲気ガスの酸化度は、通常連続焼鈍で行う脱炭焼鈍の加熱速度範囲(1℃/秒以上)においてシリカが実質的に形成されない0.0005以下とすれば良い。また均熱帯の雰囲気ガスは酸化度は、特開平7−278668号号公報に記載があるような、0.01以上0.15以下として焼鈍すれば良い。酸化度が0.15を超えた場合、製品の表面下に介在物が生成し、鉄損低下の障害となる。また、酸化度が0.01より低いと脱炭速度が遅くなり、工業的に問題となる。
【0019】以下、本発明の実施の形態を説明する。基本的な製造法としては、磁束密度B8 が高い製品を製造できる田口・坂倉等によるAlNとMnSを主インヒビターとして用いる製造法(例えば特公昭40−15644号公報)、または小松等による(Al,Si)Nを主インヒビターとして用いる製造法(例えば特公昭62−45285号公報)を適用すれば良い。
【0020】次に、成分の限定理由について説明する。Siは電気抵抗を高め、鉄損を下げる上で重要な元素である。含有量が4.8%を超えると、冷間圧延時に材料が割れ易くなり圧延不可能となる。一方、Si量を下げると仕上げ焼鈍時にα→γ変態を生じ、結晶の方向性が損なわれるので、実質的に結晶の方向性に影響を及ぼさない0.8%を下限とする。
【0021】酸可溶性Alは、Nと結合してAlNまたは(Al、Si)Nとしてインヒビターとして機能するために必須の元素である。磁束密度が高くなる0.012〜0.050%を限定範囲とする。
【0022】Nは、製鋼時に0.01%以上添加すると、ブリスターとよばれる鋼板中の空孔を生じるので、0.01%を上限とする.
【0023】他のインヒビター構成元素として、B,Bi,Se,Pb,Sn,Ti等を添加することもできる。
【0024】Cは、残留すると製品特性(鉄損)の低下を引き起こすので、0.003%以下に抑えることが必要とされている。しかしながら、製鋼段階でC量を低くすると熱延板の結晶組織に粗大な{100}伸長粒が存在し、二次再結晶に悪影響を及ぼす。また、析出物や一次再結晶集合組織制御の観点からも、Cはある程度製鋼段階で添加することが必要である。従って、製鋼段階では0.003%以上、好ましくはα/γ変態が生じる0.02%以上添加することが望ましい。一方、0.1%より多く添加しても、上述の結晶組織、析出物等への影響はほぼ飽和し、脱炭に必要な時間が長くなるので、0.1%を上限とする。
【0025】上記成分の溶鋼は、通常の工程により熱延板とされるか、もしくは溶鋼を連続鋳造して薄帯とする。前記熱延板または連続鋳造薄帯は、直ちにもしくは短時間焼鈍を経て冷間圧延される。上記焼鈍は750〜1200℃の温度域で30秒〜30分間行われ、この焼鈍は製品の磁気特性を高めるために有効である。望む製品の特性レベルとコストを勘案して採否を決めるとよい。冷間圧延は、基本的には特公昭40−15644号公報に開示されているように、最終冷延圧下率80%以上とすれば良い。
【0026】冷間圧延後の材料は、鋼中に含まれる炭素を除去するために湿水素雰囲気中で脱炭焼鈍を行う。脱炭設備の加熱帯と均熱帯の間をシールし、これらの雰囲気を分離すること、更に加熱帯の雰囲気ガスをシリカの形成しない酸化度(P H2 O /P H2 )、また均熱帯の雰囲気ガスを、鉄系酸化物(Fe2 SiO4 、FeO等)の形成しない酸化度に制御して焼鈍すること、が本発明のポイントである。
【0027】この温度域での脱炭終了後に、粒径調整のために更に高温で焼鈍する場合もある。この脱炭焼鈍板に(Al,Si)Nを主インヒビターとして用いる製造法(例えば特公昭62−45285号公報)においては、窒化処理を施す。この窒化処理の方法は特に限定するものではなく、アンモニア等の窒化能のある雰囲気ガス中で行う方法等がある。量的には0.005%以上、望ましくは全窒素量として鋼中のAl当量以上に窒化すれば良い。
【0028】これらの脱炭焼鈍板を積層する際に、シリカと反応し難いアルミナを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーもしくは静電塗布法等により塗布することにより、仕上げ焼鈍後の表面を鏡面状に仕上げ、鉄損を大きく低下させることができる。また、従来のようにマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーで塗布するか、もしくは静電塗布法等によりドライ・コートすることも有効である。この場合は、焼鈍分離剤としてアルミナを用いた場合のように表面は鏡面にならないが、表面グラス被膜の凸凹を低減し、鉄損を従来製品よりも低下させることができる。
【0029】この積層した脱炭焼鈍板を仕上げ焼鈍して、二次再結晶と窒化物等の純化を行う。二次再結晶は特開平2−258929号公報に開示される様に、一定の温度で保持する等の手段により所定の温度域で行うことは、磁束密度を上げるうえで有効である。二次再結晶完了後、窒化物等の純化を行うために、100%水素で1100℃以上の温度で焼鈍する。仕上げ焼鈍後、表面に張力コーテイング処理を行い、必要に応じてレーザー照射等の磁区細分化処理を施せば良い。
【0030】
【実施例】(実施例1)質量で、Si:3.3%、Mn:0.14%、C:0.05%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%含有する珪素鋼スラブを1150℃で加熱した後、板厚2.0mmに熱延した。この熱延板を1120℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.14mmに冷延した。この冷延板に脱炭焼鈍を施した。その際、脱炭設備の加熱帯と均熱帯の間をシールし、これらの炉帯の雰囲気を分離した。
【0031】加熱帯の雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 )を、(1)0.0002、(2)0.0005、(3)0.0014、(4)0.008、(5)0.06と変化させた湿潤ガス中で、5℃/秒の加熱速度で830℃まで加熱し、均熱帯では830℃で110秒間、酸化度(P H2 O /P H2 ):0.12の雰囲気ガス中で脱炭焼鈍を施した。焼鈍後の炭素量を表1に示す。表1から、加熱帯の酸化度が0.0005以下で30ppm 以下の炭素量になっていることが分かる。
【0032】
【表1】

【0033】(実施例2)質量で、Si:3.3%、Mn:0.1%、C:0.06%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.03%、N:0.008%、Sn:0.05%含有する珪素鋼スラブを1150℃で加熱した後、板厚2.0mmの熱延板とした。この熱延板を1100℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.22mmに冷延した。この冷延板を(1)加熱帯酸化度(P H2 O /P H2 ):0.0005で820℃まで加熱速度28℃/秒で加熱し、均熱帯では830℃で酸化度(P H2 O/P H2 ):0.12で110秒間焼鈍した。また比較例として、(2)加熱帯及び均熱帯の酸化度(P H2 O /P H2 ):0.33(従来法)で加熱速度28℃/秒で加熱し、830℃で110秒間焼鈍した。
【0034】これらの鋼板をその後、一部はアルミナ(Al2 3 )を、一部は従来のようにマグネシア(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーで塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。これらの試料を張力コーテイング処理を施した後、レーザー照射して磁区細分化した。得られた製品の磁気特性を表2に示す。表2から、本発明例は優れた磁気特性を有していることが分かる。
【0035】
【表2】

【0036】(実施例3)質量で、Si:3.2%、Mn:0.07%、C:0.08%、S:0.025%、酸可溶性Al:0.026%、N:0.008%、Sn:0.12%、Cu:0.1%含有する珪素鋼スラブを1350℃で加熱した後、板厚2.3mmの熱延板とした。この熱延板を1120℃で2分間焼鈍した後、最終板厚0.22mmに冷延した。この冷延板に脱炭焼鈍を施した。その際、脱炭設備の加熱帯と均熱帯の間をシールし、これらの炉帯の雰囲気を分離した。
【0037】加熱帯の雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 )を、(1)0.0002、(2)0.0005、(3)0.0014、(4)0.008、(5)0.06と変化させた湿潤ガス中で、5℃/秒の加熱速度で830℃まで加熱し、均熱帯では830℃で150秒間、酸化度(P H2 O /P H2 ):0.14の雰囲気ガス中で脱炭焼鈍を施した。焼鈍後の炭素量を表3に示す。表3から、加熱帯の酸化度が0.0005以下で30ppm 以下の炭素量になっていることが分かる。
【0038】
【表3】

【0039】(実施例4)実施例3の脱炭板にアルミナを主成分とする焼鈍分離剤を、水スラリー状で塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。これらの試料を張力コーテイング処理を施した後、レーザー照射して磁区細分化した。得られた製品の磁気特性を表4に示す。本発明の条件範囲において低鉄損化が達成されることが分かる。
【0040】
【表4】

【0041】
【発明の効果】本発明により、製品の表面を効果的に仕上げることで、従来製品よりも低い鉄損の方向性電磁鋼板をコストアップすることなく製造することができる。即ち脱炭焼鈍工程において、鋼板表面の酸化層制御と脱炭が広い範囲のヒートサイクルで両立でき、脱炭焼鈍の操業安定化または一次再結晶組織の適正化により、製品の磁気特性を顕著に改善することができる。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成12年12月1日(2000.12.1)
【代理人】 【識別番号】100062421
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弘明 (外1名)
【公開番号】 特開2002−173715(P2002−173715A)
【公開日】 平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願番号】 特願2000−366918(P2000−366918)