| 【発明の名称】 |
酸洗性に優れた鋼材の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】後藤 邦夫
【氏名】林 昭久
【氏名】福本 茂樹
|
| 【要約】 |
【課題】剥離性が良く、酸溶解性の良好なスケ−ルを鋼材表面に均一に形成させるための酸洗性に優れた鋼材の製造方法を提供する。
【解決手段】熱間圧延された鋼材の冷却過程で、表面温度が580℃以上の前記鋼材の表面に、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物の中の1種または2種以上の粉末と無機系粘結剤と水とを含有する粘性組成物を塗布する。粉末の平均粒子径が0.02〜10μmで、無機系粘結剤の主成分がベントナイトで、粘性組成物中の粉末、無機系粘結剤および水の含有量が、質量%で、それぞれ40〜95.5%、0.5〜40.0%、0.5〜60.0%で、粘性組成物の動粘度が40℃において50〜1000mm2 /sであることが望ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱間圧延された鋼材の冷却過程で、表面温度が580℃以上の前記鋼材の表面に、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物の中の1種または2種以上の粉末と無機系粘結剤と水とを含有する粘性組成物を塗布することを特徴とする酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【請求項2】 前記粘性組成物中の粉末、無機系粘結剤および水の含有量は、質量%で、それぞれ、40〜95.5%、0.5〜40.0%、0.5〜60.0%であることを特徴とする請求項1に記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【請求項3】 前記無機系粘結剤の主成分がベントナイトであることを特徴とする請求項1または2に記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【請求項4】 前記粉末の平均粒子径が0.02〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【請求項5】 前記粘性組成物の動粘度が40℃において50〜1000mm2 /sであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【請求項6】 前記鋼材が線材または条鋼であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、酸洗性に優れた鋼材の製造方法、詳しくは、高温に加熱された鋼材に発生する酸化スケ−ルを剥離性と酸溶解性の良好なスケ−ルに改質することによって得られる酸洗性に優れた鋼材の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】周知のように、熱間圧延により製造された鋼帯、鋼管、形鋼、条鋼および線材等の鋼材の表面には酸化物からなるスケ−ルが生成される。このスケールは、一般的に、鋼材を例えば塩酸や硫酸などの酸洗液に浸漬させる酸洗を行うことによって除去される。 【0003】ところで、鋼材を約560℃以上の高温で酸化するとFeO (ウスタイト)、Fe3O4 (マグネタイト)、Fe2O3 (ヘマタイト)の各スケ−ルがそれぞれおよそ95:4:1の割合で生成し、冷却過程の560℃以下でFeO は、αFeとFe3O4 とに共析変態することが知られている。このように、冷却過程で、酸に対する溶解性の良いFeO の大部分が、酸に対する溶解性の悪いFe3O4 に変態し、スケールの酸洗性を著しく低下させることによって、酸洗時間は長時間を要するものとなる。 【0004】そこで、冷却過程におけるウスタイトの共析変態を抑制して常温の鋼材に生成するスケールを改質し、酸洗性を向上する試みが検討されてきた。例えば、特開昭53−37539号公報には、鋼帯の高温時に発生するスケ−ル(マグネタイト)の変態を阻止して酸洗性の良好なスケ−ル(ウスタイト)を安定化して脱スケ−ル性の向上を図ることを目的に、熱間圧延機出側あるいは巻き取り直前で鋼帯温度550℃以上の鋼帯表面にアルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム等)の酸化物、炭酸塩、水酸化物を塗布するか、または、鋼帯の巻取温度制御用冷却水中にアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物を0.5%以上混合した冷却水を噴射して鋼帯表面にアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物を付着させた後、巻取る熱延鋼帯の製造方法が開示されている。 【0005】また、特開昭53−100130号公報には、鋼板の熱間仕上圧延過程においてアルカリ金属、アルカリ土類金属、ホウ素、アルミニウム、マンガン等の化合物を圧延油に懸濁せしめた状態で鋼板表面に供給することにより脱スケ−ル性に優れた鋼板を製造する方法が開示されている。 【0006】また、特公昭56−43369号公報には、Ca化合物、Mg化合物やポリリン酸、ホウ砂等をスラブの表面に塗布し、その上に酸化防止剤を塗布して所定の温度まで加熱し圧延することによってFeO 中にCaO やMgO を固溶させ、FeO の変態を防止するスケ−ルの酸洗性に優れた鋼材の製造方法が開示されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭53−37539号公報や特開昭53−100130号公報に開示されているように、高温の鋼材表面にアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物等のスケール改質剤を水や圧延油中に混合して塗布してもスケール改質剤が十分に付着しなかったり、付着しても不均一になるためスケールの改質が不十分で酸洗性向上効果が十分得られないと言う問題があった。 【0008】通常、鋼材の熱間圧延時にはその前後でスケ−ル噛込み等による疵防止のため高圧水等を用いた脱スケ−ル処理が行われる。したがって、熱間圧延の前後にこのような脱スケール処理が行われる場合には、特公昭56−43369号公報に開示された方法では、鋼材の加熱過程で改質されたスケ−ルは除去され、その後に発生した2次スケ−ルはFe3O4 に変態するため酸洗性の向上効果が不十分となる。 【0009】本発明の課題は、上記従来の問題に鑑み、剥離性が良く、酸溶解性の良好なスケ−ルを常温下の鋼材表面に均一に形成させるための酸洗性に優れた鋼材の製造方法を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】前述したように、加熱された鋼材の表面にはスケ−ルが形成される。例えば、炭素鋼鋼材の場合、560℃以上の高温になるとFeO (ウスタイト) 、Fe2O3 (ヘマタイト)、Fe3O4 (マグネタイト)の3層からなるスケ−ルが形成され、通常、冷却過程でFeO は、αFeとFe3O4 に共析変態する。したがって、常温下の鋼材には、Fe2O3 を含みFe3O4 を主体とするスケールが形成される。 【0011】鋼材表面に形成されたスケールは、常温〜100℃の温度範囲の塩酸あるいは硫酸などの水溶液に浸漬する酸洗により除去されるが、本発明者らの調査によると、各スケールの酸への溶解性は、例えば、90℃の10%塩酸水溶液でFeO:Fe3O4:Fe2O3 =100:31:<5である。 【0012】つまり、常温下の鋼材には、FeO に比べて格段に酸溶解性の悪いFe3O4 を主体とするスケールが形成される。そこで、本発明者らは、上記共析変態を抑制し、常温下でも酸溶解性に優れたFeO を主体とするスケールに改質するための方法を検討した。 【0013】その結果、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物等のスケール改質剤をそのままもしくは水と有機系高分子ポリマ−や圧延油に分散して高温鋼材に供給する方法では、スケール改質剤が鋼材表面に付着し難く、付着しても不均一となるため、スケールの改質が不十分となることが判った。 【0014】そこで、本発明者らは、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物等のスケール改質剤の高温鋼材への付着性を向上させるための方法を鋭意検討し、以下の知見を得た。 【0015】(a)アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物の1種または2種以上の粉末に無機系粘結剤と水とを加えた粘性組成物を表面温度が580℃以上の鋼材表面に塗布することにより、鋼材表面への粉末の付着性が向上し、ウスタイトの共析変態が抑制される。 【0016】(b)粘性組成物中の粉末および無機系粘結剤の含有量、無機系粘結剤の種類粉末の粒径、および粘性組成物の動粘度を適切に選ぶことにより、粉末の付着性がより向上する。 【0017】(c)粉末の付着性が向上する理由は、次のように推察される。すなわち、ベントナイトやカオリナイト等の無機系粘結剤は高温で安定しており、また、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物に比べスケールとの親和性が高い。アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物の1種または2種以上の粉末に無機系粘結剤と水とを加えて混合すると、粉末が均一に分散し、さらに、粉末の周囲にスケールとの親和性に優れた無機系粘結剤が付着した状態の粘性組成物が得らる。したがって、このような粘性組成物を塗布することにより、無機系粘結剤を介してスケールに対する粉末の付着性が向上し、また、付着の均一性が高まるものと考えられる。 【0018】更に、本発明者らは、棒鋼の製造ラインにおいて、熱間圧延された表面温度が580℃以上の棒鋼の表面に上記粘性組成物を塗布する試験を行い、例えば、特開昭53−37539号公報等に開示された従来の方法では予期されない著しい酸洗時間の短縮、換言すれば、上記従来の方法に比べ2〜3倍以上の酸洗生産性の向上が得られることを確認した。 【0019】本発明は、上記の知見に基づいて完成されたもので、その要旨は以下のとおりである。 (1)熱間圧延された鋼材の冷却過程で、表面温度が580℃以上の前記鋼材の表面に、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物の中の1種または2種以上の粉末と無機系粘結剤と水とを含有する粘性組成物を塗布することを特徴とする酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【0020】(2)前記粘性組成物中の粉末、無機系粘結剤および水の含有量は、質量%で、それぞれ、40〜95.5%、0.5〜40.0%、0.5〜60.0%であることを特徴とする前記(1)項に記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【0021】(3)前記無機系粘結剤の主成分がベントナイトであることを特徴とする前記(1)項または(2)項に記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 (4)前記粉末の平均粒子径が0.02〜10μmであることを特徴とする前記(1)項〜(3)項のいずれかに記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【0022】(5)前記粘性組成物の動粘度が40℃において50〜1000mm2 /sであることを特徴とする前記(1)項〜(4)項のいずれかに記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【0023】(6)前記鋼材が線材または条鋼であることを特徴とする前記(1)項〜(5)項のいずれかに記載の酸洗性に優れた鋼材の製造方法。 【0024】 【発明の実施の形態】本発明に係る粘性組成物は、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物の中の1種または2種以上の粉末と無機系粘結剤と水とを含有する。以下、これらの構成要素について説明する。なお、以下の%表示は質量%を意味する。 【0025】アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物:アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物は、高温鋼材の表面に塗布され、高温時に発生するウスタイトを安定化し、冷却過程でのウスタイトの共析変態を阻止する作用をなす。 【0026】例えば、アルカリ土類金属の炭酸塩としては、CaCO3 、MgCO3 等を、また、アルカリ土類金属の水酸化物としては、Ca(OH)2 、Mg(OH)2 等を、また、アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO 、MgO 等を挙げることができる。これらはいずれも常温では粉末であり、粘性組成物はこれらの中の1種または2種以上の粉末を含有する。以下、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、酸化物をアルカリ土類金属化合物ともいう。 【0027】粘性組成物中のアルカリ土類金属化合物の粉末の含有量が過多の場合には、粘性組成物の動粘度が過大となり、鋼材表面への付着性が不良となることがある。また、含有量が過小の場合には、共析変態の阻止が不十分となりスケ−ルの改質が不均一となり易い。従って、粘性組成物中のアルカリ土類金属化合物の粉末の含有量は、合計で、60%以上95.5%以下とするのが望ましい。 【0028】アルカリ土類金属化合物の粉末の粒径は、粘性組成物中における粉末の分散性と鋼材表面への粉末の付着性に影響がある。粉末の平均粒径が0.02μm未満では、粉末同士が凝集し易く、分散性が低下することがある。また、平均粒径が10μmを超えると鋼材表面への付着性が低下し易い。従って、粉末の平均粒径は0.02μm以上10μm以下が望ましい。より好ましくは、0.1μm以上8μm以下である。 【0029】無機系粘結剤:無機系粘結剤は、粘性組成物中におけるアルカリ土類化合物の粉末の分散性を向上させるとともに、高温鋼材の表面に塗布された粒子の付着性を向上させる作用をなす。例えば、無機系粘結剤としては、ベントナイト、カオリナイト、水ガラス、石膏、セメントを用いることができる。 【0030】ベントナイトは、非常に微細な結晶からなる粘土鉱物でモンモリロナイト ((CAl1.67Mg0.33)SiO10(OH)10)を主成分としたスメクタイト系の含水層状珪酸塩で、通常、それ以外に石英、α−クリストバライト、長石、方解石、雲母などを含み、無機質で熱にも強く約700℃まで安定なため高温の鋼材に接触してもその粘結力を維持する。 【0031】ベントナイトのうちで、交換性陽イオンが主としてNa+ であるものはナトリウムベントナイトと、また、主としてCa2+やMg2+であるものはカルシウムベントナイトと呼ばれるが、いずれを使用しても良い。ナトリウムベントナイトは、別名膨潤土とも呼ばれ、水中で著しく膨潤、分散して安定な水系コロイドを形成する。カルシウムベントナイトは、膨潤力は小さいが吸水速度は速いという性質がある。ベントナイトとしては、例えばクニミネ工業製のクニゲルV1やネオクニボンドなどを、あるいは、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソ−コナイト、スチブンサイトやイライトなどを使用することもできる。 【0032】カオリナイト(Alx(Si2O5)(OH)4) は、岩石が物理的、化学的風化作用、湖沼や河口、海底に沈殿堆積した粘土である。いずれの粘土も運搬や堆積の過程の中で更に化学作用も受けて結晶化して粘土鉱物となったものである。例えば、岐阜産の木節粘土などがある。 【0033】なお、ベントナイトやカオリナイトは、通常粉末状であり、200メッシュ(約74μm)前後の粒径のものが不純物も少なく好ましいが、とくにこれに限定されるものではない。また、天然に産出される原鉱石を乾燥、粉砕し、微粉末や粒状にしたものでも、人工的に合成されたものでもよい。 【0034】水ガラスは、珪酸ソ−ダ(Na2O・nSiO2)で二酸化珪素(SiO2)とアルカリ(Na2O)とを融解して得られた珪酸アルカリ塩を主成分とした水溶液であり、通常、粘着剤として人造石、ガラス、陶磁器の接合、耐火塗料、耐酸塗料等の製造に用いられている公知のものを用いることができる。なお、JIS K1408 では、二酸化珪素と酸化ナトリウムとの割合に応じて1〜4号に分類されている。 【0035】石膏は、化学組成がCaSO4・2H2Oであり、装飾品、ポルトランドセメントの凝縮遅緩剤、充填剤に常用されているものを用いることができる。セメントは、無機質の膠着剤であり、水硬性セメントや気硬性セメントを用いることができる。 【0036】水硬性セメントとしては、珪酸カルシウムを主成分とするポルトランドセメントが最も一般的であり、SiO2:20〜25%、Al2O3 :4〜6%、Fe2O3 :2〜4%、CaO :62〜66%、MgO :1〜2%、SO3 :1.5〜3.5%の化学組成を有する。 【0037】気硬性セメントとしては、キ−ンスセメントやマグネシアセメントがある。前者は、400℃以上に焼いた無水石膏CaSO4 にミョウバンその他の硬化促進剤を加えて微粉砕したものである。後者は、軽焼マグネシアMgO をにがり(主成分はMgCl2 )、鋸屑、石材片とともに練った一種のオキシクロランドセメントで、3MgO・MgCl2・nH2O の組成をもつ。その他、特殊セメントなど一般に使用されるものを用いてもよい。 【0038】これら無機系粘結剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、ベントナイトを主成分とする無機系粘結剤であり、更に好ましくは、ナトリウムベントナイトを主成分とする無機系粘結剤である。ここで、主成分とは含有量が50%以上の状態を指す。 【0039】粘性組成物中の無機系粘結剤の含有量は、0.5〜40.0%が望ましい。含有量が0.5%未満では、粘性組成物の流動性不足により、鋼材表面への付着が不均一となり易い。一方、40.0%を超えると粉末の含有量が過小となり、ウスタイトの共析変態の抑制が不十分となり易い。なお、粘性組成物中に、補助粘結剤としてアマニ油、大豆油に代表される植物性乾性油などの油類、デキストリンなどの澱粉類、オ−ジンサルファイドなどの糖類、合成樹脂類のような有機系粘結剤を10%以下の含有量で含有させてもよい。 【0040】水:水は、粘性組成物に適度の動粘度を与えるための作用と無機粘結剤の作用を補助する作用をなす。粘性組成物中の水の含有量が過小では、粘性組成物の動粘度が過大となり、粘性組成物中におけるアルカリ土類金属化合物の粉末の均一分散性が低下する。また、含有量が過多では、粘性組成物の粘性が低くなりすぎ鋼材表面への均一付着性が低下するばかりかアルカリ土類金属化合物の含有量が小さくなりウスタイトの共析変態の抑制が不十分となり易い。従って、好ましくは、水の含有量は、0.5%以上60.0%以下である。 【0041】粘性組成物の動粘度は、鋼材表面への粘性組成物の塗布性と付着性とに影響する。40℃における動粘度が50mm2 /s未満では、十分な付着性が得られないことがある。また、40℃における動粘度が1000mm2 /s超では均一な塗布が困難となることがある。したがって、40℃における動粘度は、50mm2 /s以上1000mm2 /s以下が望ましい。 【0042】本発明の方法は、熱間圧延された鋼材の冷却過程で、上記のように構成される粘性組成物を、表面温度が580℃以上の鋼材表面に塗布する。以下、表面温度が580℃以上の鋼材表面に塗布する理由を説明する。 【0043】表面温度が580℃以上に加熱された鋼材の表面には、ウスタイトを主体とするスケールが形成されており、この鋼材表面に粘性組成物を塗布することにより、粘性組成物中のアルカリ土類金属がスケール中に拡散して、MxFeyOz (M :アルカリ土類金属)の形態で固溶し、この状態で冷却されるため、ウスタイトの共析変態が抑制される。したがって、常温下の鋼材表面に形成されるスケールの主体は酸溶解性の高いウスタイトとなり、スケ−ルと鋼材地鉄との密着性が低下して酸洗性が向上する。 【0044】鋼材の表面温度が580℃未満では、ウスタイトの共析変態が進行し始め、しかもアルカリ土類金属のスケ−ル中への固溶がほとんど起こらないため、ウスタイトの大部分は酸溶解性の低いマグネタイトに変態する。 【0045】したがって、粘性組成物を塗布する際の鋼材表面温度は580℃以上である。好ましくは、800℃以上である。なお、鋼材表面温度の上限は特に限定しないが、圧延温度の制約などの観点から、実用上は1000℃以下である。 【0046】粘性組成物は鋼材表面に塗布されて付着するが、その付着量が過小だと、ウスタイトの共析変態の抑制効果が不十分となる。したがって、粘性組成物の付着量は、乾燥状態で、0.02g/m2 以上とするのが望ましい。 【0047】粘性組成物を鋼材表面に塗布する方法は、特に限定しないが、例えば、ノズルから粘性組成物を噴射するスプレ−方式や粘性組成物が充填された貯蔵容器中に浸漬する方法により行うことができる。 【0048】本発明の方法は、鋼板、鍛造品、鋼管、棒鋼、線材などの鋼材の製造に適用することができる。特に、通常、巻取温度が800〜900℃となる線材や棒鋼の製造に適用すると好適であり、酸洗性の顕著な改善効果が得られる。例えば、熱間圧延後の線材の冷却過程において、巻き取り直前に粘性組成物を貯蔵したタンクあるいは粘性組成物を噴射するノズルを配置し、熱間圧延された線材をタンクに浸漬する、あるいはノズルで線材表面に粘性組成物を噴射する事により線材表面に粘性組成物を塗布することができる。 【0049】なお、本発明に係る鋼材の種類は、特に限定するものでなく、炭素鋼、ステンレス鋼、その他特殊鋼でも同様の効果を得ることができる。但し、特に顕著な効果が得られる炭素鋼が好適である。 【0050】 【実施例】(実施例1)以下、本発明の方法を線材の製造に適用した例に基づいて詳細に説明する。 【0051】まず、アルカリ土類金属化合物の1種または2種以上の粉末、無機系粘結剤、水とからなる12種類(A〜L)の粘性組成物を製造した。表1に粘性組成物の組成を示す。 【0052】 【表1】
アルカリ土類金属化合物としては、平均粒子径が0.04μm、2.6μm、12μmの炭酸カルシウムと、平均粒子径が1.5μmの水酸化カルシウムと、平均粒子径が3.9μmの酸化カルシウムと、平均粒子径が5.5μmの酸化マグネシウムとを用いた。 【0053】また、無機系粘結剤としては、ベントナイト(クニミネ工業製のクニゲルV1)と、珪酸ナトリウム(JIS K1408 の珪酸ナトリウム3号相当品)と、カオリナイト(市販品)と、石膏とを用いた。 【0054】なお、比較のため、平均粒子径が2.6μmの炭酸カルシウムを水に分散させた液(表1の種類M)と、平均粒子径が2.6μmの炭酸カルシウムを40℃の動粘度が250mm2 /sの高粘度精製鉱油に懸濁させた液(表1の種類N)を準備した。 【0055】次ぎに、本発明の効果を確認するため、試験装置を用いて棒鋼の製造試験を行った。図1は試験装置の構成を模式的に示す概要図で、符号1は粘性組成物、2は圧延機群、3は棒鋼、4は加熱炉、5は容器を示す。図1に示す試験装置を用い、直径11.2mm、全長500mmの棒鋼用素材を(JIS SCM435)を加熱炉4で1100℃に加熱し、酸化スケ−ルを生成させた後、一対の孔型ロールを垂直に有する垂直圧延機2Aと一対の孔型ロールを水平に有する水平圧延機2Bとで構成される圧延機群2で減面率30%の熱間圧延を行い直径9.4mmの棒鋼3とし、その後、直ちに粘性組成物1を貯蔵した容器5内に通した後、徐冷した。容器内を通過する際の棒鋼の表面温度は800℃とした。 【0056】なお、比較のため、図1に示す試験装置の圧延機群の出側にノズル(図示無し)を設けるとともに、容器5を取り外し、このノズルから種類Mと種類Nのいずれかの液を熱間圧延直後の表面温度800℃の棒鋼表面に噴射し、その後、徐冷する試験を実施した。更にまた、比較のため、熱間圧延された棒鋼をそのまま徐冷する試験も実施した。 【0057】次いで、徐冷して得られた棒鋼の表面に形成されたスケールの酸洗性を下記の要領で調査した。すなわち、棒鋼の長手方向の中央部からサンプルを採取し、このサンプルを酸洗液に浸漬し、酸洗完了迄の時間(以下、酸洗完了時間という)を測定した。なお、酸洗完了は、サンプル全長にわたりムラ無くスケ−ルが除去された時点とし、100倍の光学顕微鏡で確認した。また、酸洗液は、10質量%の塩酸水溶液に5質量%の塩化第1鉄および0.1質量%のインヒビタ−を添加したものを使用した。 【0058】表2にスケ−ルの酸洗性を試験No.15の比較例に対する酸洗完了時間の比として整理して示す。 【0059】 【表2】
試験No.1〜12は、いずれもスケールが均一に酸に溶解して行く様子が観察され、表2に示すように、試験No.15に比べて酸洗完了時間が大幅に短縮した。特に、アルカリ土類金属化合物の平均粒子径が0.02〜10μmで、その含有量が40〜95.5%、ベントナイトを主成分とする無機系粘結剤の含有量が0.5〜40.0%、水の含有量が0.5〜60.0%である粘性組成物を用いた試験No.1〜6、9はより酸洗時間が短く良好であり、更に、酸化カルシウム90%とベントトナイト1.0%と水9%とを含有する粘性組成物を用いた試験No.5は、酸洗時間が極めて短く良好であった。 【0060】なお、平均粒子径が10μm超の試験No.12やアルカリ土類金属化合物の含有量が40%未満の試験No.8、10は、試験No1〜7、9および11に比べ、鋼材品質には問題はないものの酸洗性にやや劣ることが判った。 【0061】一方、試験No.13、14は、試験No.15に比べ全体的には酸への溶解が進む様子が観察されたが部分的に酸への溶解の遅れが生じた。 (実施例2)図1に示す試験装置で容器5内の粘性組成物に浸漬する際の棒鋼3の表面温度を400〜900℃の間で変化させたときの酸洗性を調査した。粘性組成物は表1の種類Aを用いた。酸洗性は実施例1と同様に表2の試験No.15に対する酸洗完了時間の比で整理した。 【0062】図2は、酸洗性と棒鋼の表面温度との関係を示すグラフである。図2に示すように、表面温度が580℃以上で大幅な酸洗時間の短縮が得られ、特に800℃以上で一層優れた酸洗性促進効果が得られることを確認した。 【0063】 【発明の効果】本発明によれば、常温下の鋼材に生成するスケ−ルを剥離性、酸溶解性の良好なスケ−ルに均一かつムラ無く改質することができる。その結果、酸洗時間の大幅な短縮と鋼材表面品質の向上を共に実現することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000002118 【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年10月18日(2000.10.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081352 【弁理士】 【氏名又は名称】広瀬 章一
|
| 【公開番号】 |
特開2002−121617(P2002−121617A) |
| 【公開日】 |
平成14年4月26日(2002.4.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−318026(P2000−318026) |
|