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【発明の名称】 冷鉄源の溶解方法
【発明者】 【氏名】水上 秀昭

【要約】 【課題】溶解室に直結した予熱室を有するアーク溶解設備にて、50%以上の高い配合率で直接還元鉄を配合して溶湯を製造する際に、予熱室内のガス抜けが確保され、溶解室等からの排ガスの吹き出しがなく安定した操業を可能とする。

【解決手段】溶解室3と、その上部に直結するシャフト型の予熱室4とを有するアーク溶解設備1を用い、溶解室から発生する排ガスにより予熱室内で予熱した冷鉄源16を溶解室内で溶解する溶解方法において、直接還元鉄が質量比率で50%〜80%配合された冷鉄源を溶解用原料として用い、この冷鉄源が溶解室及び予熱室に存在する状態を保つように冷鉄源を予熱室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をアーク19並びに炭材と酸素とを溶解室に供給することによって溶解し、溶解室に所定量の溶湯17が溜まった時点で溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶解室と、その上部に直結するシャフト型の予熱室とを有するアーク溶解設備を用い、溶解室から発生する排ガスにより予熱室内で予熱した冷鉄源を溶解室内で溶解する溶解方法において、直接還元鉄が質量比率で50%〜80%配合された冷鉄源を溶解用原料として用い、この冷鉄源が溶解室及び予熱室に存在する状態を保つように冷鉄源を予熱室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をアーク並びに炭材と酸素とを溶解室に供給することによって溶解し、溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とする冷鉄源の溶解方法。
【請求項2】 溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室を傾動して溶湯と冷鉄源との接触面積を減少させ、アークにて溶湯を加熱して昇温した後、溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とする請求項1に記載の冷鉄源の溶解方法。
【請求項3】 溶解室と、その一方側の上部に直結するシャフト型の予熱室と、溶解室に突設され、出湯口を有する出湯部とを有し、予熱室内の冷鉄源は溶解中に溶解室の予熱室が設けられている一方側から他方側へ向けて供給され、出湯部はその冷鉄源の供給方向とは異なる方向に設けられたアーク溶解設備を用い、溶解室から発生する排ガスにより予熱室内で予熱した冷鉄源を溶解室内で溶解する溶解方法において、直接還元鉄が質量比率で50%〜80%配合された冷鉄源を溶解用原料として用い、この冷鉄源が溶解室及び予熱室に存在する状態を保つように冷鉄源を予熱室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をアーク並びに炭材と酸素とを溶解室に供給することによって溶解し、溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室を出湯部側が低くなるように傾動して溶湯と冷鉄源との接触面積を減少させ、アークにて溶湯を加熱して昇温した後、溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とする冷鉄源の溶解方法。
【請求項4】 前記アーク溶解設備は、溶解室の予熱室が設けられた部分と出湯部が設けられた部分との間に、溶解室を出湯部側に傾動した際に冷鉄源が出湯部へ流出することを妨げることが可能なように離間部を有していることを特徴とする請求項3に記載の冷鉄源の溶解方法。
【請求項5】 前記離間部の離間距離が、予熱室から溶解室に亘って安息角で拡がる冷鉄源の距離よりも長いことを特徴とする請求項4に記載の冷鉄源の溶解方法。
【請求項6】 前記アーク溶解設備は、出湯部が冷鉄源の供給方向に対して直交する方向に向けて設けられていることを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れか1つに記載の冷鉄源の溶解方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直接還元鉄を50%以上配合した冷鉄源をアーク熱により効率良く溶解する溶解方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】製鋼用アーク溶解設備では、電極から発生するアーク熱により冷鉄源を加熱溶解し、精錬して溶鋼を製造する。通常、冷鉄源としては鉄スクラップを用いるが、世界的なアーク溶解設備の新設による鉄スクラップ価格の上昇や鉄スクラップ調達の困難化に伴い、冷鉄源として鉄スクラップの替わりに大量の直接還元鉄を配合する操業が実施されるようになった。又、アーク溶解設備による製造品種も高級鋼の範囲に拡大されるに至り、高級鋼ではCu、Sn、Cr等の鉄スクラップに起因する不純物元素の混入が嫌われるために、これらの不純物を含まない直接還元鉄が大量に配合される要因の1つとなっている。
【0003】この直接還元鉄は大きく2種類に分類され、1つは直径が10〜30mm程度の直接還元鉄、所謂DRIと呼ばれるものと、1つは高温状態のDRIをブリケット化した、長辺が100〜200mm程度の直方体形状の直接還元鉄、所謂HBI(ホット−ブリケット−アイアン)と呼ばれるものがあり、以下、それぞれDRI及びHBIと記す。
【0004】直接還元鉄を大量に配合した操業として、例えば、H.Mulyatma等は、SEAISI Quartely 「October,1994,p.44 」(以下「先行技術1」と記す)において、130トン交流式アーク溶解設備を用い、鉄スクラップと20トンのDRIとを初装入して通電し、通電20分後からHBI及びDRIを連続装入し、HBI+DRIの配合率を(15+60)%から(5+85)%とした操業を報告している。又、I.S.Alvarez 等は、Ironmaking Conference Proceedings 「1994,p.467」(以下「先行技術2」と記す)において、鉄スクラップを初装入して通電・溶解後、DRI製造プラントから400〜600℃の高温のDRIを直接アーク溶解設備に連続的に装入し、DRIの配合率を60%とした操業を報告している。
【0005】DRI及びHBIは、鉄分が90mass%程度であることと、7mass%程度のFeOを含み、FeOの還元に熱が必要であることから、鉄スクラップを使用した場合に比較して、アーク溶解設備での電力原単位が悪化する。例えば、先行技術1で報告されるように、HBI+DRIの配合率が(15+60)%で電力原単位が溶鋼トン当たり743kWh(以下「kWh/t」と記す)、(5+85)%で813kWh/tとなり、鉄スクラップを使用した際の電力原単位400〜500kWh/tに比べて非常に多い。又、先行技術2では、高温のDRIをアーク溶解設備に直接装入するので、電力原単位は500kWh/t程度に低減されるが、この方法ではアーク溶解設備と同時にDRI製造プラントを配置しなければならないという欠点がある。
【0006】一方、本発明者等は冷鉄源を効率良く溶解する方法として、特開平10−292990号公報(以下「先行技術3」と記す)を提案している。先行技術3による溶解方法は、溶解室と、その上方に直結するシャフト型の予熱室とを有するアーク溶解設備を用いて冷鉄源を溶解する際に、冷鉄源が溶解室と予熱室に連続して存在する状態を保つように予熱室へ冷鉄源を連続的又は断続的に供給しながら溶解室内の冷鉄源をアークにより溶解し、溶解室に所定量の溶鋼が溜まった時点で溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶鋼を出湯する方法である。この方法では、予熱室内及び溶解室内には常に冷鉄源が存在して、2ヒート目以降では溶解される全ての冷鉄源が溶解室で発生する高温の排ガスにより予熱されるので、電力使用量の大幅な削減が達成できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、予熱室に大量のDRIやHBI等の直接還元鉄を装入して先行技術3に開示された方法により溶解操業を行うと、DRIやHBIは充填され易いために嵩密度が高くなり、予熱室内の通気抵抗が上昇して予熱室内のガス抜けが悪くなり、大量のDRIやHBIが溶解室内の溶湯中に一度に溶落した場合のように、溶解室内で大量のガスが急激に発生した際には、予熱室からの排気が間に合わず、溶解室等から大量の排ガスが漏洩して操業の中断を余儀なくされることが発生する。
【0008】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、溶解室に直結したシャフト型の予熱室を有するアーク溶解設備を用い、50%以上の高い配合率でDRIやHBI等の直接還元鉄を配合した冷鉄源を溶解して溶湯を製造する際に、予熱室内のガス抜けが確保され、溶解室等からの排ガスの異常吹き出しがなく、安定した操業が可能になると同時に、電力原単位を低減して効率良く溶解する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1の発明による冷鉄源の溶解方法は、溶解室と、その上部に直結するシャフト型の予熱室とを有するアーク溶解設備を用い、溶解室から発生する排ガスにより予熱室内で予熱した冷鉄源を溶解室内で溶解する溶解方法において、直接還元鉄が質量比率で50%〜80%配合された冷鉄源を溶解用原料として用い、この冷鉄源が溶解室及び予熱室に存在する状態を保つように冷鉄源を予熱室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をアーク並びに炭材と酸素とを溶解室に供給することによって溶解し、溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とするものである。
【0010】第2の発明による冷鉄源の溶解方法は、第1の発明において、溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室を傾動して溶湯と冷鉄源との接触面積を減少させ、アークにて溶湯を加熱して昇温した後、溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とするものである。
【0011】第3の発明による冷鉄源の溶解方法は、溶解室と、その一方側の上部に直結するシャフト型の予熱室と、溶解室に突設され、出湯口を有する出湯部とを有し、予熱室内の冷鉄源は溶解中に溶解室の予熱室が設けられている一方側から他方側へ向けて供給され、出湯部はその冷鉄源の供給方向とは異なる方向に設けられたアーク溶解設備を用い、溶解室から発生する排ガスにより予熱室内で予熱した冷鉄源を溶解室内で溶解する溶解方法において、直接還元鉄が質量比率で50%〜80%配合された冷鉄源を溶解用原料として用い、この冷鉄源が溶解室及び予熱室に存在する状態を保つように冷鉄源を予熱室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をアーク並びに炭材と酸素とを溶解室に供給することによって溶解し、溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室を出湯部側が低くなるように傾動して溶湯と冷鉄源との接触面積を減少させ、アークにて溶湯を加熱して昇温した後、溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とするものである。
【0012】第4の発明による冷鉄源の溶解方法は、第3の発明において、前記アーク溶解設備は、溶解室の予熱室が設けられた部分と出湯部が設けられた部分との間に、溶解室を出湯部側に傾動した際に冷鉄源が出湯部へ流出することを妨げることが可能なように離間部を有していることを特徴とするものである。
【0013】第5の発明による冷鉄源の溶解方法は、第4の発明において、前記離間部の離間距離が、予熱室から溶解室に亘って安息角で拡がる冷鉄源の距離よりも長いことを特徴とするものである。
【0014】第6の発明による冷鉄源の溶解方法は、第3の発明ないし第5の発明の何れかにおいて、前記アーク溶解設備は、出湯部が冷鉄源の供給方向に対して直交する方向に向けて設けられていることを特徴とするものである。
【0015】本発明者等は、DRIやHBI等の直接還元鉄を50%以上の配合率とした冷鉄源を溶解する際に、予熱室内のガス抜けに支障を来さず、且つ電力原単位を低減する方法について鋭意研究を重ねた。その結果、DRIやHBI等の直接還元鉄を予熱室内に装入する際に、質量比率で少なくとも20%以上の一般の市中鉄スクラップ(単に「市中鉄スクラップ」とも記す)をDRIやHBI等の直接還元鉄に混ぜて装入すれば、予熱室内のガス抜けが十分となり、突発的に起こる大量のガス発生時も溶解室からのガス吹き出しが生じないことを見出した。即ち、一般の市中鉄スクラップの嵩密度は0.7程度であり、DRI及びHBIの嵩密度が2以上であっても、一般の市中鉄スクラップを質量比率で20%以上配合すれば、通気性が確保され、溶解室で発生する排ガスを問題なく予熱室から排気できることを確認した。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。先ず、第1の実施の形態について、図1及び図2に基づき説明する。図1は、本発明による溶解方法を実施する際に用いたアーク溶解設備の1例を示す縦断面概略図であり、図2は、図1に示すアーク溶解設備を傾動させた状態を示す縦断面概略図である。
【0017】図1及び図2において、内部を耐火物で構築され、底部に下部電極8を備えた溶解室3の上部には、シャフト型の予熱室4と水冷構造の側壁6とが配置され、この予熱室4で覆われない側壁6の上部開口部は開閉自在な水冷構造の上蓋7で覆われている。この上蓋7を貫通して、溶解室3内へ上下移動可能な黒鉛製の上部電極9が設けられている。下部電極8と上部電極9とは直流電源(図示せず)に連結し、下部電極8と上部電極9との間でアーク19を発生させる。
【0018】予熱室4の上方には、走行台車28に吊り下げられた底開き型の供給用バケット15が設けられ、この供給用バケット15から、予熱室4の上部に設けた開閉自在な供給口20を介して、DRIやHBI等の直接還元鉄を質量比率で50%〜80%配合した冷鉄源16が予熱室4内に装入される。
【0019】予熱室4の上端にはダクト21が設けられ、ダクト21の他端は集塵機(図示せず)に連結されており、溶解室3で発生する排ガスの排出流路を構成している。即ち、溶解室3で発生する高温の排ガスは予熱室4及びダクト21を経由して排出され、予熱室4を通過する排ガスにより予熱室4内に装入された冷鉄源16は予熱され、予熱された冷鉄源16は、溶解室3内で溶解される冷鉄源16の量に見合って溶解室3内に自由落下し、溶解室3へ装入される。
【0020】上蓋7を貫通して、溶解室3内を上下移動可能な酸素吹き込みランス10と炭材吹き込みランス11とが設けられ、酸素吹き込みランス10からは酸素が溶解室3内に吹き込まれ、そして、炭材吹き込みランス11からは空気や窒素等を搬送用ガスとしてコークス、チャー、石炭、木炭、黒鉛等の炭材が溶解室3内に吹き込まれる。又、溶解室3の予熱室4を設置した部位の反対側には、その底部に、扉26で出口側を押さえ付けられて内部に詰め砂又はマッド剤が充填された出湯口13と、その側壁に、扉27で出口側を押さえ付けられて内部に詰め砂又はマッド剤が充填された出滓口14とが設けられている。そして、出湯口13の鉛直上方に対応する部位の上蓋7には、バーナー12が取り付けられている。バーナー12は、重油、灯油、微粉炭、プロパンガス、天然ガス等の化石燃料を、空気又は酸素若しくは酸素富化空気により溶解室3内で燃焼させる。このようにして直流式アーク溶解設備1が構成されている。
【0021】この直流式アーク溶解設備1において冷鉄源16を溶解するに際しては、先ず、図1に示すように溶解室3を水平状態とし、供給用バケット15から予熱室4内に溶解用原料として冷鉄源16を装入する。溶解用原料として用いる冷鉄源16は、DRIやHBI等の直接還元鉄を質量比率で50%〜80%の範囲内に配合したものを使用する。冷鉄源16の直接還元鉄以外の配合物としては、一般の市中鉄スクラップとする。予熱室4内に装入された冷鉄源16は、溶解室3内にも装入され、やがて予熱室4内を充填する。尚、溶解室3内へ冷鉄源16を均一に装入するため、上蓋7を開けて予熱室4と反対側の溶解室3内に冷鉄源16を予め装入しておくこともできる。又、市中鉄スクラップ以外に冷銑等を溶解用原料として使用することもできる。但し、冷銑はその嵩密度がDRIやHBIに近いので、冷銑を配合する場合には、質量比率で少なくとも20%以上の市中鉄スクラップが確保されるように直接還元鉄の配合率を調整することとする。
【0022】次いで、下部電極8と上部電極9との間に直流電流を給電しつつ上部電極9を昇降させ、下部電極8と上部電極9との間、又は、装入された冷鉄源16と上部電極9との間でアーク19を発生させる。そして、発生するアーク熱により冷鉄源16を溶解して溶湯17を生成させる。溶湯17の生成に伴い、生石灰、蛍石等のフラックスを溶解室3内に装入して溶融スラグ18を溶湯17上に形成させ、溶湯17の酸化を防止すると共に溶湯17の保温を図る。溶融スラグ18の量が多すぎる場合には、操業中でも出滓口14から排滓することができる。
【0023】溶湯17の生成する頃から、酸素吹き込みランス10から酸素を、又、炭材吹き込みランス11から炭材を、溶解室3内の溶湯17又は溶融スラグ18中に吹き込む。吹き込まれて溶湯17中に溶解した炭材又は溶融スラグ18中に懸濁した炭材は、吹き込まれる酸素と反応して燃焼熱を発生し、補助熱源として作用して電力使用量を節約する。同時に、反応生成物のCOガスが溶融スラグ18をフォーミングさせ、アーク19が溶融スラグ18に包まれた、所謂スラグフォーミング操業となるので、アーク19の着熱効率が上昇する。又、大量に発生する高温のCOガスと、このCOガスが燃焼して生成するCO2 ガスは予熱室4を通って排出され、その際に予熱室4内の冷鉄源16は効率良く予熱される。
【0024】酸素吹き込み量は、溶解して生成する溶湯17の1トン当たり、直接還元鉄としてHBIを冷鉄源16に配合した場合には33Nm3 以下、望ましくは28Nm3 以下とし、又、DRIを冷鉄源16に配合した場合には25Nm3 以下、望ましくは20Nm3 以下とする。排ガスによる予熱温度が高くなり過ぎると直接還元鉄が酸化し、直接還元鉄中のC分が燃焼してしまい、又、酸化が激しい場合にはFeOが増加することがあり、歩留まりの低下や生成したFeOを還元するためにコークス等還元剤が必要になり、溶解効率を劣化させる。本発明者等は、直接還元鉄の酸化が少ない予熱条件として、DRIでは400℃以下、HBIでは800℃以下であることを確認している。酸素吹き込み量を上記の範囲とすることで、HBIの予熱温度を800℃以下、DRIの予熱温度を400℃以下に制御することができ、これら直接還元鉄の酸化を防止して効率良く溶解することが可能となる。尚、DRIとHBIとを同時に配合した場合には400℃以下に制御する。
【0025】又、炭材の吹き込み量は酸素吹き込み量に対応して決める。即ち、吹き込まれる酸素の化学当量に等しい程度の炭材を供給することとする。吹き込まれる炭材が酸素吹き込み量に比べて化学当量的に少ないと、溶湯17が過剰に酸化するので好ましくない。
【0026】溶湯17の生成に伴い、予熱室4内の冷鉄源16は溶解室3内で溶解された量に見合って溶解室3内に自由落下して減少するので、この減少分を補うために供給用バケット15から予熱室4へ冷鉄源16を装入する。この冷鉄源16の予熱室4内への装入は、冷鉄源16が予熱室4と溶解室3とに連続して存在する状態を保つように、連続的又は断続的に行う。この際の冷鉄源16の装入は、操業実績に基づいて予め設定されたレシピに基づいて行っても良いし、予熱室4内の冷鉄源16の量を検出可能なセンサーを設け、このセンサーからの信号に基づいて供給用バケット15による冷鉄源16の投入を制御するようにしても良い。その際に、予熱室4と溶解室3とに連続して存在する冷鉄源16の量を、1ヒート分の冷鉄源16の50%以上とすることが好ましい。
【0027】冷鉄源16の溶解が進行して所定量、例えば1ヒート分の溶湯17が溶解室3内に溜まったら、必要に応じて溶湯17の成分を調整した後、溶解室3を出湯口13側に傾動させつつ、溶解室3及び予熱室4に冷鉄源16が連続して存在する状態を保ったまま、出湯口13を塞いでいた扉26を開き、出湯口13から1ヒート分の溶湯17を溶湯保持容器(図示せず)へ出湯する。出湯に際しては、溶湯17の凝固による出湯口13の閉塞を防止するために、バーナー12で溶湯17を加熱しても良い。尚、本発明における所定量の溶湯量とは、例えば1ヒート分の溶湯量や、出湯後に溶解室3内に溶湯17を残留させる場合には、1ヒート分の溶湯量と溶解室3内の残留溶湯量とを合わせた量であり、操業状況により適宜決定される溶湯量である。
【0028】又、この場合、溶湯17中に冷鉄源16が埋没して共存しているので、溶湯温度は凝固温度近傍になり、十分な過熱度を得ることが困難である。そのため、出湯時の溶湯温度を上昇させる場合には、所定量、例えば1ヒート分の溶湯17が溶解室3内に溜まったら、図2に示すように、溶解室3を出湯口13側に傾動して溶湯17中に埋没する冷鉄源16を減少させて、溶湯17と冷鉄源16との接触面積を低減させ、溶湯17をアーク加熱又はアーク加熱とバーナー12との併用により加熱し、昇温した後、上記に従い溶湯17を出湯する。この場合には、大きな過熱度を有する溶湯17を得ることができる。
【0029】そして出湯後、必要に応じて溶湯17を取鍋精錬炉等にて昇温して精錬した後、連続鋳造機等で鋳造する。溶湯17を出湯し、更に必要に応じて溶融スラグ18を排滓した後、溶解室3を水平に戻し、出湯口13及び出滓口14内に詰め砂又はマッド材を充填した後、次回ヒートの溶解を開始する。
【0030】このようにして溶解することで、次回のヒートは予熱された冷鉄源16で溶解を開始することができると共に、DRIやHBI等の直接還元鉄の酸化を抑制し且つ予熱室4内のガス抜けが確保された状態で、DRIやHBI等の直接還元鉄が50%以上の大量に配合された冷鉄源16を予熱効率の極めて高い状態で溶解することができ、電力原単位を大幅に低減することが可能となる。
【0031】次いで、第2の実施の形態について、図3から図7に基づき説明する。図3は、本発明による溶解方法を実施する際に用いたアーク溶解設備の他の例を示す斜視図、図4はその平面図、図5は、図3のX−X’矢視による縦断面概略図、図6は、図3のY−Y’矢視による縦断面概略図、図7は、溶解室を出湯部側に傾動させた状態を示す縦断面概略図である。
【0032】この直流式アーク溶解設備2は、冷鉄源16をアーク溶解するための溶解室3と、その一方側3aの上部に直結し、上方に向かって延在するシャフト型の予熱室4と、溶解室3に設けられた出湯部5とを備えている。この溶解室3及び予熱室4にはDRIやHBI等の直接還元鉄を質量比率で50%〜80%の範囲内で配合した冷鉄源16が装入される。
【0033】予熱室4の上方には供給用バケット15が設けられており、この供給用バケット15から予熱室4内に冷鉄源16が装入される。供給用バケット15からの冷鉄源16の装入は、操業中に、冷鉄源16が溶解室3と予熱室4に連続して存在する状態を保つように予熱室4へ冷鉄源16を連続的又は断続的に供給する。
【0034】溶解室3の上部には開閉可能な上蓋7が設けられており、その上蓋7を貫通して溶解室3の上方からその中にほぼ垂直に上部電極9が挿入されている。又、溶解室3の底部には、上部電極9と対向する位置に下部電極8が設けられている。そしてこれらの電極によって形成されるアーク19により、冷鉄源16が溶解され、溶湯17となる。溶湯17の上には溶融スラグ18が形成されており、アーク19はこの溶融スラグ18内に形成されることとなる。又、溶解室3には酸素吹き込みランス10、炭材吹き込みランス11がその先端を溶湯湯面に向けて挿入されており、前述したように、酸素吹き込みランス10からは酸素が供給され、炭材吹き込みランス11からは炭材が吹き込まれる。
【0035】予熱室4の上端にはダクト21が設けられ、ダクト21の他端は集塵機(図示せず)に連結されており、溶解室3で発生する排ガスの排出流路を構成している。即ち、溶解室3で発生する高温の排ガスは予熱室4及びダクト21を経由して排出され、予熱室4を通過する排ガスにより予熱室4内に装入された冷鉄源16は予熱され、予熱された冷鉄源16は、溶解室3内で溶解される冷鉄源16の量に見合って溶解室3内に自由落下し、溶解室3へ装入される。
【0036】予熱室4内の冷鉄源16は、溶解室3の予熱室側3aからその反対側3bに向かう方向へ供給されるが、出湯部5は、この冷鉄源16の供給方向に対して直交する方向に向くように溶解室3に突設されている。そして、溶解室3は、図7に示すように傾動装置(図示せず)により出湯部5側が低くなるように傾動可能となっている。
【0037】溶解室3の予熱室4が設けられた部分と出湯部5が設けられた部分とは距離aだけ離間しており、溶解室3が出湯部5側に傾動された際に、その部分の壁部により冷鉄源16が出湯部5に流出することが阻止される。この場合に、図5に示すように、距離aが予熱室4から溶解室3に亘って安息角で拡がる冷鉄源16の距離よりも長いことが好ましい。このようにすることにより、溶解室3を出湯部5側に傾動した際の冷鉄源16の出湯部5への流出を完全に阻止することができる。
【0038】出湯部5の先端近傍の底部には出湯口13が形成されており(図6参照)、この出湯口13を開閉するための扉26が設けられている。更に、出湯部5の先端部側面には、その出口側を扉27で塞がれた出滓口14が設けられている。その他、直流式アーク溶解設備1と同一の部分は同一符号により示し、その説明は省略する。
【0039】このように構成される直流式アーク溶解設備2において冷鉄源16を溶解するに際しては、前述の第1の実施の形態と同様に、先ず、供給用バケット15から予熱室4内に溶解用原料として冷鉄源16を装入する。溶解用原料として用いる冷鉄源16は、DRIやHBI等の直接還元鉄を質量比率で50%〜80%の範囲内に配合したものを使用する。冷鉄源16の直接還元鉄以外の配合物としては、一般の市中鉄スクラップとする。そして、冷鉄源16が溶解室3と予熱室4に連続して存在する状態とし、そして、この状態でアーク19を形成して冷鉄源16を溶解する。
【0040】冷鉄源16を前述の第1の実施の形態と同様にして溶解し、溶解室3内に所定量の溶湯17を溜める。所定量、例えば1ヒート分の溶湯17が溶解室3内に溜まったら、図7に示すように溶解室3を出湯部5側に傾動させてアーク加熱を続ける。この場合、出湯部5は溶解室3への冷鉄源16の供給方向に対して直交する方向に向くように溶解室3に突設されており、しかも溶解室3の予熱室4が設けられた部分と出湯部5が設けられた部分とは距離aだけ離間しており、その部分の壁部により冷鉄源16が出湯部5に流出することが阻止されるため、出湯部5へ流れ込んだ溶湯17と冷鉄源16との接触面積を小さくすることができる。従って、溶湯17の過熱度を高くすることができ、出湯される溶湯17の温度が低いという問題を回避することができる。この離間距離aを予熱室4から溶解室3に亘って安息角で拡がる冷鉄源16の距離よりも長くすることにより、冷鉄源16の出湯部5への流入をほぼ完全に阻止することができ、より一層溶湯温度を高くすることができる。
【0041】又、溶解室3を出湯部5側に傾動させると上部電極9が図7の波線の位置になり、アーク19が有効に供給されなくなるが、電極傾動装置(図示せず)により上部電極9を傾動させることにより、図7の実線位置となり、アーク19を溶湯17に対して有効に供給することができる。
【0042】そして、一定時間アーク加熱して溶湯17の過熱度を適切な範囲(約30〜80℃程度)にし、必要に応じて溶湯17の成分を調整した後、溶解室3を出湯部5側に更に傾動させつつ、溶解室3及び予熱室4内に冷鉄源16が連続して存在する状態を保ったまま、出湯口13を塞いでいた扉26を開き、出湯口13から1ヒート分の溶湯17を溶湯保持容器(図示せず)へ出湯する。
【0043】出湯後、必要に応じて溶湯17を取鍋精錬炉等にて昇温して精錬した後、連続鋳造機等で鋳造する。溶湯17を出湯し、更に必要に応じて溶融スラグ18を排滓した後、溶解室3を水平に戻し、出湯口13及び出滓口14内に詰め砂又はマッド材を充填した後、次回ヒートの溶解を開始する。
【0044】酸素吹き込み量は、前述したように、溶解して生成する溶湯17の1トン当たり、直接還元鉄としてHBIを冷鉄源16に配合した場合には33Nm3 以下、望ましくは28Nm3 以下とし、又、DRIを冷鉄源16に配合した場合には25Nm3 以下、望ましくは20Nm3 以下とする。これにより、HBIの予熱温度を800℃以下、DRIの予熱温度を400℃以下に制御することができ、これら直接還元鉄の酸化を防止して効率良く溶解することができる。
【0045】このようにして溶解することで、次回のヒートは予熱された冷鉄源16で溶解を開始することができると共に、DRIやHBI等の直接還元鉄の酸化を抑制し且つ予熱室4内のガス抜けが確保された状態で、DRIやHBI等の直接還元鉄が50%以上の大量に配合された冷鉄源16を予熱効率の極めて高い状態で溶解することができ、電力原単位を大幅に低減することが可能となる。更に、本実施の形態では出湯時の溶湯過熱度を適正値に制御することができるので、溶湯温度の低下に起因して起こる出湯口13の閉塞等の操業トラブルを防止することができる。
【0046】尚、上記説明では直流式アーク溶解設備の場合について説明したが、交流式アーク溶解設備でも全く支障なく本発明を適用することができる。又、出湯時に、数トン〜数十トンの溶湯17を溶解室3内に残留させて、次回ヒートの溶解を再開しても良い。こうすることで初期の溶解が促進され、溶解効率が向上する。
【0047】
【実施例】[実施例1]図1に示す直流式アーク溶解設備における実施例を以下に説明する。アーク溶解設備は、溶解室が直径7.2m、高さ4m、予熱室が幅3m、長さ5m、高さ7mで、溶解室の容量が180トンである。
【0048】先ず、溶解室に50トンの市中鉄スクラップを装入し、次いで、DRIを65%、市中鉄スクラップを35%配合した、DRIと市中鉄スクラップとの混合物76トンを予熱室に装入して、直径28インチの黒鉛製上部電極を用い、最大600V、100kAの電源容量により溶解を開始した。そして、溶鋼の生成に伴い、生石灰と蛍石とを添加して溶融スラグを形成し、次いで、酸素吹き込みランスから生成する溶鋼1トン当たり20Nm3 (以下「Nm3 /t」と記す)の酸素を吹き込み、又、炭材吹き込みランスからコークスを溶融スラグ中に吹き込んだ。酸素とコークスの吹き込みにより、溶融スラグはフォーミングして上部電極の先端は溶融スラグ中に埋没した。この時の電圧を400Vに設定した。
【0049】この後、溶解室内の市中鉄スクラップが溶解するにつれて、予熱室内のDRIと市中鉄スクラップとの混合物が下降したら、供給用バケットにてDRIを65%、市中鉄スクラップを35%配合した、DRIと市中鉄スクラップとの混合物を予熱室に装入し、予熱室内におけるDRIと市中鉄スクラップとの混合物の高さを一定の高さに保持しながら溶解を続けた。そして、溶解室内に約180トンの溶鋼が生成した時点で、溶解室を出湯口側に15度傾動し、この状態で更に400Vの電圧によるアークと重油バーナーにより加熱し、溶鋼を1580℃まで昇温した後、約60トンの溶鋼を溶解室に残し、1ヒート分の120トンの溶鋼を取鍋に出湯した。出湯時の溶鋼の炭素濃度は0.1mass%であった。
【0050】出湯後、溶解室を水平に戻して出湯口に詰め砂を充填した後に溶解を再開し、再び溶鋼量が約180トンになったら溶解室を傾動させ、溶鋼を1580℃まで昇温して120トン出湯することを繰り返し実施した。
【0051】その結果、酸素吹き込み量が20Nm3 /tの条件で、出湯から出湯までの時間は平均して55分となり、溶解室からの排ガスの吹き出しもなく、570kWh/tの電力原単位で溶解することができた。
【0052】[実施例2]図3から図7に示す直流式アーク溶解設備における実施例を以下に説明する。アーク溶解設備は、溶解室が長さ8.5m、幅3m、高さ4m、予熱室が幅3m、長さ3m、高さ7mで、溶解室容量が180トンである。
【0053】先ず、溶解室内に市中鉄スクラップを46トン装入し、次いで、HBIを75%、市中鉄スクラップを25%配合した、HBIと市中鉄スクラップとの混合物76トンを予熱室に装入し、直径28インチの黒鉛製電極により、最大600V、100kAの電源容量でアークを形成し、これら冷鉄源を溶解した。又、酸素吹き込みランスから最大6000Nm3 /hrの流量で、酸素吹き込み量が28Nm3 /tの条件で送酸した。溶解室内に溶鋼が溜まってきた時点で、炭材吹き込みランスから最大80kg/minでコークスをスラグ中に吹き込み、スラグフォーミング操業に移行し、黒鉛製電極の先端をフォーミングスラグ中に埋没させた。この時の電圧は400Vに設定した。
【0054】予熱室内のHBIと市中鉄スクラップとの混合物が溶解室内での市中鉄スクラップの溶解に伴って下降したら、HBIを75%、市中鉄スクラップを25%配合した、HBIと市中鉄スクラップとの混合物を供給用バケットを介して予熱室内に装入し、予熱室内におけるHBIと市中鉄スクラップとの混合物の高さを一定の高さに保持しながら溶解を続けた。
【0055】このように、HBIと市中鉄スクラップとの混合物が溶解室内及び予熱室内に連続して存在する状態で溶解を進行させ、十分に溶鋼が生成した段階で、溶解室を出湯部側に15度傾動させ、溶鋼とこれら冷鉄源との接触面積を低減させて溶鋼を加熱して過熱度を持たせ、溶解室内に180トンの溶鋼が生成した段階で、更に溶解室を傾動させ、60トンを溶解室内に残し、1ヒート分の120トンの溶鋼を出湯口から取鍋に出湯した。出湯時の溶鋼の温度は1575℃、溶鋼中のC濃度は0.1mass%であった。
【0056】120トン出湯後、溶解室を元に戻し、送酸とコークス吹き込みを行いながらスラグフォーミング操業を行って溶解を継続し、十分に溶鋼が生成したら溶解室を再び傾動させて溶鋼を加熱して過熱度を持たせ、再度溶解室内の溶鋼量が180トンになったら120トン出湯することを繰り返し実施した。
【0057】その結果、酸素吹き込み量が28Nm3 /tの条件で、出湯から出湯までの時間は平均して55分となり、溶解室からの排ガスの吹き出しもなく、450kWh/tの電力原単位で溶解することができた。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、溶解室に直結したシャフト型の予熱室を有するアーク溶解設備を用いて50%以上の高い配合率でDRI又はHBI等の直接還元鉄を配合した冷鉄源を予熱・溶解して溶湯を製造する際に、予熱室内でのガス抜けを十分確保した状態で直接還元鉄を予熱しながら溶解するので、電力原単位を大幅に低減することが可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成13年4月26日(2001.4.26)
【代理人】 【識別番号】100116230
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 泰光
【公開番号】 特開2002−327211(P2002−327211A)
【公開日】 平成14年11月15日(2002.11.15)
【出願番号】 特願2001−129314(P2001−129314)