| 【発明の名称】 |
転炉の精錬方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】安藝 弘
【氏名】山内 雅夫
【氏名】秦 啓二
|
| 【要約】 |
【課題】高炭素鋼(脱炭吹止%C≧0.1)溶製時の転炉脱炭吹錬において、高脱りん精錬能の確保と安定操業を両立することができる吹錬方法を提供する。
【解決手段】スラグ中のT.Fe(FeO)について、その生成速度は送酸速度(FO2)と気体酸素-溶銑との反応界面積(火点面積:S)の積に比例し、消滅速度はFO2の2乗に比例すると仮定でき、スラグ中のT.Fe(FeO)は、その生成と消滅のバランスで決定される。すなわち、生成速度と消滅速度の比、FO2/Sを2100〜26000(Nm3/hr.・m2)の範囲に設定することでスラグ中のT.Feが制御でき、高脱りん精錬能の確保と安定操業の両立が可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 終点の炭素濃度が0.1質量%以上となる転炉の精錬方法において、FO2/Sに基づいてスラグ中のT.Feを制御することを特徴とする転炉の精錬方法。 但し、FO2;送酸速度(Nm3/hr.) S;火点面積(m2) 【請求項2】 前記FO2/Sが、21000〜26000(Nm3/hr.・m2)の範囲で精錬することを特徴とする請求項1記載の転炉の精錬方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高炭素鋼(脱炭吹止時の質量%C≧0.1)溶製時の転炉脱炭吹錬において、精錬(特に、スラグ中のT.Fe)制御精度の高い転炉精錬方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】最近、固定費削減などの目的で溶銑の脱Pを転炉で行うLD-ORP法が普及しつつある。これは転炉で脱P精錬後、一旦、鍋に溶湯を排出し、再度、転炉に溶銑を装入して、脱C精錬を行う方式であるが、そのためにチャ-ジ当たりの溶製時間は長時間を要することとなる。 【0003】ここで、転炉製鋼法における脱C挙動について、従来より、吹錬中の脱C反応の進行状況は、図1に示すような台形モデルで表され、脱C反応は3つの領域に分けられるとされている。それらの特徴は以下の通りである。 領域−I:Siの酸化がCの酸化よりも優先的に起る領域領域−II:Cの酸化が優先的に起り、脱C反応は酸素の供給律速となる領域領域−III :脱C反応がCの供給律速となり、脱C速度が減少する領域一方、従来より、転炉吹錬の精錬制御の重要な指標であるスラグ中のT.FeはL/L0に依存すると考えられていた。一般に、L/L0の増加に伴いスラグ中のT.Feが減少し、L/L0の減少に伴いスラグ中のT.Feが増加すると考えられている。なお、 L/L0は一般に溶鋼の攪拌強度の指標として用いられ、L0は浴深を、Lは浴のへこみ深さを表し、Lは式(1)で算出される。 L=Lh0・exp(−0.78・h/Lh0) …………………(1)Lh0=63.0(FO2/(nd/k))2/3 …………………(2)但し、L0:浴深さ(mm) L:浴のへこみ深さ(mm) h:ランス高さ(mm)Lh0:ランス高さh=0の時のキャビティ深さ FO2:送酸速度(Nm3/hr.)n:ランス孔数 d:ノズルの径(mm)k:多孔ノズル傾斜角による係数【0004】 【発明が解決しようとする課題】表1は、LD-ORP法により、高炭素材を溶製した時のメタル成分の推移を示したものであるが、表1に示す通り、脱P後溶銑のC濃度は約3.7%と高濃度であり、Siはtr.(痕跡)であることからLD-ORP法での脱C吹錬は、領域−IIに従う酸素供給律速の条件で脱C反応が進行することになる。つまり、 LD-ORP法の脱C吹錬期は初期から主に脱C反応が起こるが、その反応は酸素供給律速であるので、LD-ORP法の時間短縮の一環として脱C吹錬の時間短縮を行うためには送酸速度を増加させることが必須条件となる。 【0005】 【表1】
【0006】脱C吹錬時間は既述のように送酸速度を増加させることにより短縮することが可能だが、式(1)、(2)より送酸速度の増加によりL/L0が増大しスラグ中のT.Feが低下、その結果、充分な脱P能が確保できず低P鋼の溶製が困難となる。一方で、脱P能確保のために過剰にスラグ中のT.Feを増加させると、スロッピングが起り安定した操業が困難になることが考えられる。 【0007】以上のように脱C精錬の時間短縮における課題は、脱P能確保とスロッピング抑制とを両立する適正なスラグ中のT.Feに制御することである。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。即ち、その要旨とするところは、以下のとおりである。 (1)終点の炭素濃度が0.1質量%以上となる転炉の精錬方法において、FO2/Sに基づいてスラグ中のT.Feを制御することを特徴とする転炉の精錬方法。 【0009】但し、FO2;送酸速度(Nm3/hr.) S;火点面積(m2) (2)前記FO2/Sが、21000〜26000(Nm3/hr.・m2)の範囲で精錬することを特徴とする(1)記載の転炉の精錬方法。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明者らが、ランスチップを変更するなどして送酸速度を上げて試験水準−1(表2)で試験を実施し、L/L0とスラグ中のT.Feとの関係を調べた結果、図2に示すようにL/L0の増加に伴いスラグ中のT.Feも増加するという、従来の知見と異なった傾向を示し、また、それに伴ってスロッピングも発生した。この従来の知見とは異なる現象が生じた要因について、本発明者らが解析した結果は以下のとおりである。 【0011】 【表2】
【0012】この試験と従来操業との相違点は2点で、1つは送酸速度を増大させていること、もう1つは L/L0を揃えるためにランスギャップを大きくしており、その結果生じる火点面積が増大していることである。つまり、L/L0を一定とするために送酸速度とともに火点面積が変化している。そこで、図3に平均送酸速度とスラグ中のT.Feとの関係を、図4に平均火点面積とスラグ中のT.Feとの関係を示した。なお、火点面積については、平均送酸速度および平均ランスギャップを用いて、図5に示すような、火点面積導出のための模式図にもとずき式(3)〜(6)より算出した。 【0013】 LS=(4.12× P1―1.86)×R0 但し、|P0― P1|/P0≦0.1 …………………(3) LS=(3.52× P1―1.26)×R0 但し、|P0― P1|/P0>0.1 …………………(3)’LG=cosα×(LS+LF) …………………(4)R2=2.26×R1 …………………(5)R3=R2+LF・tan β …………………(6)但し、LG:ランスギャップ LS:超音速域長さ LF:自由噴流長さR0:スロ-ト径 R1:スロ-ト部出口径 R2:超音速域先端径 R3:火点径P0:ランス設計圧 P1:スロ-ト部入口圧 α:ランススロ-ト角β:自由噴流での広がり角図3および図4から送酸速度や火点面積の増加によってスラグ中のT.Feが増大していることが分かる。そこで、FeOの生成挙動について転炉吹錬時の炉内反応を考慮して検討した。 【0014】図6に炉内反応のメカニズムを示した模式図を示した。溶銑表面に供給された酸素は溶鉄中のFeと反応し火点内でFeOが生成する。生成したFeOはスラグと粒鉄が混在するエマルジョン相に移動し、上吹酸素のエマルジョン相の攪拌により溶鉄中のCと反応する。これらの反応を以下の式(7)〜(9)に示す。 2Fe+O2→2FeO …………………(7)FeO+C→Fe+CO↑ …………………(8)O2+2C→2CO↑ …………………(9)高炭素鋼材の吹錬中の反応は主に上記3つの式で表されると仮定して、スラグ中のT.Feの生成および消滅、また、脱C反応のメカニズムについて以下の仮説をたて、今回の現象を説明する。 FeOの生成:火点で式(7)の反応が起りFeOが生成される。 (1) 火点面積を鉄と酸素の反応界面積と考えると、FeOの生成量は、火点面積に比例する。 (2) FeOの生成速度は、送酸速度の上昇とともに増大する。 FeOの消滅:火点で生成したFeOの大部分はエマルジョン相に移動し、FeOは浴の攪拌によりメタル中のCと反応し還元される(式(8))。その還元速度は浴の攪拌力に依存する。 【0015】なお、式(9)の脱C反応は火点付近で起っていると考えられる。この試験では、強攪拌吹錬期の初期および弱攪拌吹錬期の末期のL/L0を従来通りとし、その変更タイミングを従来操業と同じ前半、また、中盤、後半と変えて試験を実施したので、攪拌力は全体的には同等、もしくは若干強くなり、FeOの還元反応は同程度か従来より速やかに進行すると考えられる。一方で、送酸速度と火点面積の増大によりFeO濃度が従来より増加することが考えられる。ここで、スラグ中FeO濃度はその生成と消滅の速度差により決定されるとすると、今回の試験において、スラグ中のT.Feが過剰になった理由は、火点で生成するFeOが送酸速度および火点面積の増大により多量に生成し、その生成速度が還元によるFeOの消滅速度より早かったためと考えられる。以下に、それぞれの反応速度について定式化する。 【0016】一般に運動エネルギ-Eは式(10)で表される。 E=1/2・m・v2 …………………(10)但し、m:質量 v:速度ここで、ランスから噴出する酸素の運動エネルギ-について、式(10)の速度の項はFO2に対応すると考え、上吹きガスの運動エネルギ-EtはFO2の2乗に比例するとした。また、底吹きガスによるスラグの攪拌についても考慮する必要があるのでその攪拌エネルギ-をEbとすると、スラグの攪拌エネルギ-はEtとEbの和で表すことができる。但し、高炭素鋼を溶製する際は、底吹きガスは低流量(上吹き酸素の攪拌エネルギ-の約1/10)で操業するため、高炭素鋼溶製時におけるFeOの消滅速度R(消滅)は式(11)のようにFO2の2乗の関数で表すことができる。 R(消滅) ∝Et+Eb∝α・FO22 …………………(11)但し、Et:上吹きガスの攪拌エネルギー Eb:底吹きガスの攪拌エネルギ-一方、FeOの生成について、鉄の酸化反応は式(7)で表されることからFeOの生成速度R(生成)(=d[FeO]/dt)は以下のように表される。 R(生成) =d[FeO]/dt=S/V・k・[Fe]・[O] …………………(12)但し、S:反応界面積 V:溶鉄の体積 k:反応速度定数 [M]:物質Mの濃度ここで、鉄の濃度、および、体積はほぼ一定であるからFeOの生成速度はSと[O]の積、つまり火点面積Sと送酸速度FO2に比例すると近似でき、式(12)’で表される。 R(生成)∝S・FO2 …………………(12)’FeO濃度はその生成と消滅の速度比により表すことができると考え、吹錬指標をこれらの比で表すこととした。 R(消滅)/R(生成) ∝α・FO22/(S・FO2)=FO2/S ………………(13)前述の仮説より、FeOの生成/消滅の指標を式(13)のFO2/Sで表し、図7にFO2/Sとスラグ中のT.Feとの関係について示すが、FO2/Sの減少とともにスラグ中のT.Feが増加していることがわかる。 FO2/Sの減少は、FeOの生成速度の増加、もしくは消滅速度の減少を意味しており、その結果、スラグ中のT.Feが増加する傾向を示すのは妥当である。以上の知見からFO2/Sにもとずいて精錬制御すれば、高精度の転炉精錬が可能となる。 【0017】 【実施例】FO2/Sを種々変化させて高炭素鋼を溶製する試験を行った。試験方法は試験水準−1と同様で、試験は試験水準−2(表3)に示す範囲で行った。 【0018】 【表3】
【0019】図8に送酸速度と脱C速度との関係、図9にスラグ中のT.FeとP分配比との関係を試験水準−1の結果とともに示した。脱C速度に関しては試験水準−1と同様に送酸速度の増加とともに向上した。また、Pの分配比はスラグ中のT.Feに依存しており、スラグ中のT.Fe≧8を確保することで従来と同等のP分配比が得られることがわかった。 【0020】次に、図10にFO2/Sとスラグ中のT.Feとの関係を、図11にFO2/Sとスロッピングの発生状況との関係を示す。なお、図11におけるスロッピングの度合とは試験の際観察したスロッピング発生状況の大小を意味し、表4その定義を示した。評点≦1の時が安定的に操業が行える範囲であり、評点=2はスロッピングが若干大きいので、その頻度は少なくする必要がある。評点=3では操業不可能となると思われるので回避する必要がある。図11に示したようにFO2/Sの減少とともにスラグ中のT.Feは増加しており、それに伴ってスロッピングの度合が大きくなっていることがわかる。 【0021】 【表4】
【0022】なお、図8〜図11において、試験とあるのは、上記の試験水準−2の試験結果と先の試験水準−1の試験結果とをあわせて示していることを表わす。先にFeOの生成のメカニズムについて述べたが、以下にその検証を行う。まず、送酸速度と攪拌力が従来操業と同程度のデ-タについて、火点面積とスラグ中のT.Feとの関係を図12に示したが、火点面積の増大に従ってスラグ中のT.Feは増大している。つまり、既述のとおりFeOの生成は火点面積に依存することがわかる。 【0023】一方、火点面積を従来操業と同程度とした場合について、送酸速度とスラグ中のT.Feとの関係を図13に示したが、送酸速度が大きい程スラグ中のT.Feは低下する傾向を示している。ところで、この時の送酸速度と攪拌力との関係を図14に示すと、送酸速度と共に攪拌力は上昇していることがわかる。つまり、送酸速度を増加させると、FeOの生成速度が増大する一方で、攪拌力の増大によってFeOの消滅速度も増加しており、この試験の条件においては消滅速度が生成速度を上回っていると考えられる。仮に、ランス形状等を変更し、同一火点面積・同一攪拌力の下で送酸速度のみを増加させることが可能となれば、その増加に伴ってスラグ中のT.Feは増大すると推察できる。 【0024】以上のとおり、FO2/Sとスラグ中のT.Feとの間に強い相関関係が見られたので、このFO2/Sを指標として、より適正なT.Feに制御できることがわかる。さらに、このFO2/Sを指標とした吹錬設計として、低P鋼の溶製を検討した。低P鋼の溶製のために必要なP分配比50を得る為にはT.Fe≧8が必要となるので、図10よりFO2/S≦26000が必要条件となる。一方で、図11よりスロッピングの発生度合をスロッピングの度合=2まで許容すると FO2/S ≧21000が必要条件となる。つまり、21000≦ FO2/S≦26000の範囲とすることで、最小限のスロッピング発生で脱Pに必要なスラグ中のT.Feを得ることができる。 【0025】 【発明の効果】本発明を適用して、高炭素鋼を溶製した際の脱C吹錬の吹錬時間を、従来操業のものと併せて図15に示した。本発明の方法を適用することにより、高速吹錬が可能となり、脱C吹錬に要する時間は、ほぼ3分の短縮が達成された。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
|
| 【出願日】 |
平成13年5月1日(2001.5.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077517 【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
|
| 【公開番号】 |
特開2002−327209(P2002−327209A) |
| 【公開日】 |
平成14年11月15日(2002.11.15) |
| 【出願番号】 |
特願2001−134451(P2001−134451) |
|