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【発明の名称】 高清浄鋼の溶製方法
【発明者】 【氏名】松野 英寿

【氏名】村井 剛

【氏名】菊地 良輝

【氏名】渡辺 敦

【氏名】櫻井 栄司

【要約】 【課題】溶鋼中の介在物を低減し、清浄性の高い鋼を製造する方法を提供すること。

【解決手段】転炉出鋼後、取鍋中の溶鋼に、RH脱ガス処理装置で脱ガスおよび成分調整するRH脱ガス処理を施して鋼を溶製するにあたり、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ中のT.Fe濃度を0.4mass%以上7mass%以下、SiO濃度を9mass%以下、CaO/Alの比を1以上2以下とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 転炉出鋼後、取鍋中の溶鋼に、RH脱ガス処理装置で脱ガスおよび成分調整するRH脱ガス処理を施して鋼を溶製するにあたり、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ中のT.Fe濃度を0.4mass%以上7mass%以下、SiO濃度を9mass%以下、CaO/Alの値を1以上2以下とすることを特徴とする高清浄鋼の溶製方法。
【請求項2】 転炉出鋼時に、石灰、またはCaOをベースとした合成フラックス、および金属Alを取鍋に添加することを特徴とする請求項1に記載の高清浄鋼の溶製方法。
【請求項3】 前記石灰または合成フラックスを添加した後、取鍋を揺動させることを特徴とする請求項2に記載の高清浄鋼の溶製方法。
【請求項4】 前記RH脱ガス処理の処理前および/または処理中に、石灰、またはCaOをベースとした合成フラックス、および金属Alとをスラグに添加することを特徴とする請求項1から請求項3に記載の高清浄鋼の溶製方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、清浄性の高い鋼を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、製鋼段階での取鍋精錬および鋳造技術の進歩により介在物が少なく清浄性の高い鋼塊・鋳片の溶製が可能となっているものの、鉄鋼材料に要求される材料特性もその使用用途の拡大、過酷化により従来に増して高性能化している。脱酸時に生成するアルミナはガス攪拌等で大部分は系外へ除去されるものの、一部は溶鋼内に懸濁したまま凝固し、最終製品の欠陥に影響を及ぼす場合があり、これら介在物の積極的除去が重要な課題である。
【0003】介在物を除去、無害化する方法としては、例えば、特開平3−47910号公報に、溶鋼にCaO系の粉体を添加し、アルミキルド鋼の介在物をAlからCaO−Al系に変える方法が提案されている。また、CaO−Al系以外への形態制御をする方法として、特開平3−100233号公報に、金属Mgを溶鋼中に添加し、一旦生成したAlをAl−MgO系へ変化させて介在物の無害化を図る方法が提案されている。
【0004】しかし、CaO系を添加する場合は生成した大きなCaO−Alが必ずしも鋼中から除去されず、鋼塊・鋳片中に残存して逆に品質を悪化させたりする等安定して清浄性が得られない。また、金属Mg添加の場合には、Mgの蒸気圧が高いためMgの歩留まりが悪く、金属Mg自体も高価なためコストが高くなる点、さらにAlより高融点になるために制御幅が狭く、操業の安定性の面から介在物の絶対量を大幅に低減できるまでは至らないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、溶鋼中の介在物を低減し、清浄性の高い鋼を製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋼に含まれる介在物の実態を調査し、その対策を検討した。その結果、製品の欠陥発生割合を低減するには、鋼中の介在物を減らすことが重要であり、介在物の量とRH脱ガス処理後の取鍋スラグの組成とには相関があることを見出した。すなわち、Alを添加した後にスラグの組成が悪いと、溶鋼中のAlが再酸化してアルミナ介在物が生成し、製品の欠陥発生率が高くなる。
【0007】本発明は上記知見に鑑みてなされたものであって、第1発明は、転炉出鋼後、取鍋中の溶鋼に、RH脱ガス処理装置で脱ガスおよび成分調整するRH脱ガス処理を施して鋼を溶製するにあたり、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ中のT.Fe濃度を0.4mass%以上7mass%以下、SiO濃度を9mass%以下、CaO/Alの値を1以上2以下とすることを特徴とする高清浄鋼の溶製方法を提供する。
【0008】第2発明は、第1発明において、転炉出鋼時に、石灰、またはCaOをベースとした合成フラックス、および金属Alを取鍋に添加することを特徴とする高清浄鋼の溶製方法を提供する。
【0009】第3発明は、第2発明において、前記石灰または合成フラックスを添加した後、取鍋を揺動させることを特徴とする高清浄鋼の溶製方法を提供する。
【0010】第4発明は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記RH脱ガス処理の処理前および/または処理中に、石灰、またはCaOをベースとした合成フラックス、および金属Alとをスラグに添加することを特徴とする高清浄鋼の溶製方法を提供する。
【0011】なお、本発明におけるスラグ中のT.Fe濃度とは、スラグ中にFeO、Fe等として含まれる酸化鉄中のFeの総和の濃度のことである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説明する。本発明における高清浄鋼の溶製方法は、転炉出鋼後、取鍋中の溶鋼に、RH脱ガス処理装置で脱ガスおよび成分調整するRH脱ガス処理を施して鋼を溶製するにあたり、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ中のT.Fe濃度を0.4mass%以上7mass%以下、SiO濃度を9mass%以下、CaO/Alの値を1以上2以下とするものである。
【0013】転炉出鋼後、RH脱ガス処理して鋼を溶製する方法においては、処理後の取鍋スラグ中のFeおよびSiOは、それぞれ下記(1)および(2)式の反応を示して溶鋼中のAlを再酸化してアルミナを生成し、鋼中の介在物を増大することから、処理後の取鍋スラグ中のT.Fe濃度およびSiO濃度はいずれも低く抑えることが重要である。
3FeO+2Al→Al+3Fe …… (1)
3SiO+4Al→2Al+3Si …… (2)
【0014】このことから、本発明では、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ中のT.Fe濃度を0.4mass%以上7mass%以下、SiO濃度を9mass%以下と規定した。T.Fe濃度が7mass%超またはSiO濃度が9mass%超では上記(1)または(2)式に示した反応により生成したアルミナによる製品欠陥の発生が顕著となる。一方、T.Fe濃度が0.4%未満では上記(1)式の反応によるAlの再酸化量が激減するため、スラグがAlの再酸化量の支配的要因でなくなり、雰囲気や耐火物の影響が現れ始め、T.Fe濃度をさらに低減しても介在物量をそれ以上低減する効果が得られない。T.Fe濃度は3mass%以下とすることが望ましく、SiO濃度は5mass%以下とすることが望ましい。これにより製品欠陥の発生をより有効に防止することができる。
【0015】また、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ中のCaO濃度とAl濃度との比であるCaO/Alの値を1以上2以下と規定したのは、この値が2を超えると処理温度でのスラグの溶融性が悪くなり、裸湯面が露出しやすくなって空気による再酸化が増加するためであり、一方、この値が1未満ではスラグ中のAl濃度が高くなるため、溶鋼中に懸濁していたAlが浮上してきた際に速やかにスラグに吸収されにくくなるためである。
【0016】本発明においては、処理後の取鍋スラグ組成が上記の規定を満たすようにRH脱ガス処理を施すことにより、清浄性の高い鋼を溶製することができる。RH到着のスラグでは、処理中に脱炭の酸化精錬やAl投入後の還元精錬などにより組成が変化するためバラツキが大きく、鋼の清浄性を示す指標にはなりにくい。これに対して、処理後の取鍋スラグ組成はバラツキが少なく、これを指標とすることで鋼の高清浄性を確保することができる。
【0017】処理後の取鍋スラグ組成が上記の規定を満たすようにRH脱ガス処理を施すためには、転炉出鋼時、RH到着時もしくはRH処理中に、スラグを改質する改質剤として石灰、またはCaOをベースとした合成フラックス、および金属Alを添加することが好ましい。転炉出鋼時にはT.Fe濃度が高いスラグが不可避的に取鍋に混入するが、このようにすることでスラグのT.Fe濃度を低下させることができる。このような改質剤は、転炉出鋼時に添加する場合には取鍋に直接添加することができ、RH到着時もしくはRH処理中に添加する場合にはRH脱ガス処理装置で添加することができる。
【0018】また、添加した石灰等とスラグとの反応性を高めるためには、転炉出鋼時の溶鋼に石灰、またはCaOをベースとした合成フラックスを添加した後、取鍋を揺動させることが好ましい。取鍋の揺動は、取鍋を運搬するクレーンまたは鍋台車等を用いて行うことができる。
【0019】
【実施例】高炉から出た溶銑を脱硫、脱燐の溶銑予備処理を経た後に、転炉で吹錬した約250トンの溶鋼を取鍋に出鋼した。出鋼した溶鋼の成分は、[C]:0.03〜0.05mass%、[Si]:0.05mass%以下、[Mn]:0.2〜0.4mass%、[P]:0.01mass%以下、[S]:0.003mass%以下であった。
【0020】その後、RH脱ガス装置を用いて、環流用Arガス量が2000〜3000NL/min、槽内真空度が1torr(133Pa)以下の種々の条件でRH脱ガス処理を施し、所定の[C]、[Si]、[Mn]、[Al]濃度等に調整した後、連続鋳造機にて溶鋼をスラブとした。なお、転炉から取鍋への出鋼時、RH到着時またはRH処理中のいずれかのタイミングで、CaOをベースとし、50%CaO−45%Al−5%SiOの組成を有するプリメルトフラックス、および金属Alを添加して、RH脱ガスは、Al添加後の環流時間が10〜12分間とほぼ一定となるように調整して行った。また、一部の条件ではフラックスを添加した後に取鍋を運搬するクレーンまたは鍋台車を用いて取鍋を揺動させた。また、RH脱ガス処理を施した後の取鍋からスラグを採取し、その組成を分析した。一方、連続鋳造で得られたスラブを圧延機で圧延し、冷延コイルにおける欠陥発生を欠陥発生指数で評価し、欠陥発生とRH処理後の取鍋スラグ組成との関係を調査した。なお、欠陥発生指数とは欠陥発生頻度をコイル重量あたりで標準化した値であり、欠陥発生指数0.3以下が基準を満足する領域である。
【0021】得られた結果を図1から図3に整理して示す。図1は、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ組成がSiO濃度≦9mass%および1≦CaO/Al≦2を満足する場合を抽出し、横軸をT.Fe濃度とし、縦軸を欠陥発生指数として示したグラフである。図2は、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ組成が0.4mass%≦T.Fe濃度≦7mass%および1≦CaO/Al≦2を満足する場合を抽出し、横軸をSiO濃度とし、縦軸を欠陥発生指数として示したグラフである。図3は、RH脱ガス処理後の取鍋スラグ組成が0.4mass%≦T.Fe濃度≦7mass%およびSiO濃度≦9mass%を満足する場合を抽出し、横軸をCaO/Alの値とし、縦軸を欠陥発生指数として示したグラフである。
【0022】図1から図3より、処理後の取鍋中のスラグ組成が、T.Fe濃度:0.4mass%以上7mass%以下、SiO濃度:9mass%以下、CaO/Alの値:1以上2以下となるようにRH脱ガス処理することにより、冷延コイルでの欠陥発生指数を0.3以下とすることができ、基準を満足する清浄度の高い鋼を溶製することができることがわかる。また、さらに、T.Fe濃度が3mass%以下となるようにした場合、および、SiO濃度が5mass%以下となるようにした場合には、冷延コイルでの欠陥発生指数をより低い値に抑えることができることがわかる。
【0023】また、転炉出鋼時、RH到着時もしくはRH処理中に、スラグを改質する改質剤として合成フラックスと金属Alとを添加することにより、スラグのT.Feを低下させることができることが確認された。さらに、合成フラックスを添加した後に取鍋を揺動させることにより、スラグと合成フラックスとの反応性を高める効果があることも確認された。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、欠陥起因となる介在物量を激減し、清浄性に優れた鋼を溶製することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成12年10月13日(2000.10.13)
【代理人】 【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
【公開番号】 特開2002−121614(P2002−121614A)
【公開日】 平成14年4月26日(2002.4.26)
【出願番号】 特願2000−313944(P2000−313944)