| 【発明の名称】 |
冷鉄源の溶解方法及び溶解設備 |
| 【発明者】 |
【氏名】中山 剛
【氏名】山口 隆二
【氏名】水上 秀昭
【氏名】須山 登
【氏名】佐藤 靖浩
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| 【要約】 |
【課題】溶解室に直結された予熱室を有するアーク溶解設備を用い、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保ちつつ溶解室内の冷鉄源を溶解して出湯する際に、冷鉄源の予熱室から溶解室への供給を安定して実施する。
【解決手段】本発明による溶解設備1は、溶解室2と、溶解室の上部に直結し、溶解室で発生する排ガスにて冷鉄源16を予熱するシャフト型の予熱室3と、アーク発生用電極6,7と、冷鉄源が予熱室と溶解室に連続して存在するように冷鉄源を予熱室へ供給する冷鉄源供給手段15と、予熱室内を出入り可能とし、少なくとも1基のプッシャーは他のプッシャーが予熱室内に存在する時には待機位置に存在するように運転される複数基のプッシャー12と、溶湯17を出湯する出湯口13とを具備し、冷鉄源をアーク19により溶解し、溶解室内に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で出湯する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶解室と、溶解室に直結し、溶解室で発生する排ガスが導入されるシャフト型の予熱室と、予熱室内を出入りする複数基のプッシャーとを具備したアーク溶解設備での冷鉄源の溶解方法であって、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ供給すると共に、前記複数基のプッシャーのうち少なくとも1基のプッシャーは他のプッシャーが予熱室内に存在する時には待機位置に存在するように複数基のプッシャーを運転して予熱室内の冷鉄源を溶解室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をアークにて溶解し、溶解室内に所定量の溶湯が溜まった時点で冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とする冷鉄源の溶解方法。 【請求項2】 請求項1に記載の冷鉄源の溶解方法において、溶解室内に所定量の溶湯が溜まった時点で、複数基のプッシャーを停止し、アークにて溶湯を加熱して昇温し、その後、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とする冷鉄源の溶解方法。 【請求項3】 請求項2に記載の冷鉄源の溶解方法において、複数基のプッシャーの停止後、溶解室を傾動して溶湯と溶解室内の冷鉄源との接触面積を減少させ、溶解室を傾動した状態でアークにて溶湯を加熱して昇温し、その後、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とする冷鉄源の溶解方法。 【請求項4】 前記複数基のプッシャーを、冷鉄源を押した際に受ける圧力が予め設定した値に達した時には後退させるようにすることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の冷鉄源の溶解方法。 【請求項5】 冷鉄源を溶解するための溶解室と、溶解室の上部に直結し、溶解室で発生する排ガスにて冷鉄源を予熱するシャフト型の予熱室と、溶解室内で冷鉄源を溶解するためのアーク発生用電極と、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ供給する冷鉄源供給手段と、予熱室内を出入り可能とし、少なくとも1基のプッシャーは他のプッシャーが予熱室内に存在する時には待機位置に存在するように運転される複数基のプッシャーと、溶湯を出湯するための出湯口とを具備し、溶解室内の冷鉄源をアークにより溶解し、溶解室内に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とする冷鉄源の溶解設備。 【請求項6】 前記複数基のプッシャーは、冷鉄源を押した際に受ける圧力の上限値が設定可能であり、この上限値に達した際には後退することを特徴とする請求項5に記載の冷鉄源の溶解設備。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、鉄スクラップや直接還元鉄等の冷鉄源を効率良く溶解する溶解方法及び溶解設備に関するものである。 【0002】 【従来の技術】製鋼用アーク溶解設備では、アーク発生用電極から発生するアーク熱にて鉄スクラップや直接還元鉄等の冷鉄源を加熱・溶解し、精錬して溶鋼を製造するが、多くの電力を消費するため、溶解中にアーク溶解設備の溶解室から発生する高温の排ガスを利用して冷鉄源を予熱し、予熱した冷鉄源を溶解することによって電力使用量を削減する方法が多数提案されている。 【0003】例えば、特公平6−46145号公報(以下「先行技術1」と記す)には、溶解室に直結したシャフト型の予熱室を設け、溶解室内と予熱室内とに1ヒート分の冷鉄源を溶解毎に装入して、この冷鉄源を排ガスで予熱しつつ溶解する設備が開示されている。先行技術1では、予熱室が溶解室に直結されているので冷鉄源の保持・搬送用設備が必要でなく、そのため、これら設備の熱による設備トラブルを懸念することなく排ガス温度を上昇させ、冷鉄源の予熱温度を上げることができるので、電力削減効果に優れるが、1ヒート分の溶鋼量を溶解する毎に予熱室内の全ての冷鉄源を溶解して出湯するため、次ヒートの最初に溶解される冷鉄源の予熱ができず、排ガスの有効利用という点では十分とはいえない。 【0004】この問題を解決すべく、特開平11−257859号公報(以下「先行技術2」と記す)が本発明者等により提案されている。先行技術2による溶解方法は、溶解室と、その上部に直結するシャフト型の予熱室と、予熱室の下部に設けられたプッシャーとを備えたアーク溶解設備を用い、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を予熱室へ供給すると共に、予熱室内にプッシャーを出入りさせて予熱室内の冷鉄源を溶解室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をアークにて溶解し、溶解室に所定量の溶鋼が溜まった時点で冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶鋼を出湯する溶解方法である。この溶解方法によれば、予熱室内及び溶解室内には常に冷鉄源が存在して、2ヒート目以降では溶解される全ての冷鉄源が溶解室で発生する排ガスにより予熱され、電力使用量の大幅な削減が達成される。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先行技術2でも以下の問題点がある。即ち、先行技術2では、冷鉄源が充填された予熱室内を出入りするプッシャーを設け、このプッシャーを運転させることで予熱室内の冷鉄源を溶解室内に供給しているが、プッシャーが1基の場合には、その前面の予熱室の冷鉄源充填層内にプッシャーの運転によって空間ができた場合には、その後プッシャーを作動させても冷鉄源を押すことができず、冷鉄源を安定して供給することができない。 【0006】又、プッシャー前面の予熱室内の冷鉄源が、充填層の充填度や冷鉄源の形状等により、プッシャーで押しても突っ張っていて崩れない場合には、冷鉄源を囲んでいる予熱室側壁等の設備に強い力がかかり、これら設備の損傷原因となる。一方、設備の強度が十分に強い場合には、設備の損傷には至らないが、プッシャーで押された冷鉄源は押される前よりも更に密に充填されることになり、冷鉄源の安定供給に悪影響を及ぼすことになる。 【0007】このように、予熱室内に充填された冷鉄源を、予熱室内を出入りするプッシャーで押して溶解室内に供給する際には、最適なプッシャーの設備仕様やプッシャーの運転方法があり、ただ闇雲に押せば良いと言うものではないが、先行技術2では、この点について何ら開示していない。 【0008】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、溶解室の上部に直結されたシャフト型の予熱室を有するアーク溶解設備を用い、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を予熱室へ供給しながら、予熱室内にプッシャーを出入りさせて予熱室内の冷鉄源を溶解室へ供給しつつ溶解室内の冷鉄源を溶解して出湯する際に、プッシャーによる冷鉄源の溶解室への供給を安定して行うことができる冷鉄源の溶解方法及び溶解設備を提供することである。 【0009】 【課題を解決するための手段】第1の発明による冷鉄源の溶解方法は、溶解室と、溶解室に直結し、溶解室で発生する排ガスが導入されるシャフト型の予熱室と、予熱室内を出入りする複数基のプッシャーとを具備したアーク溶解設備での冷鉄源の溶解方法であって、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ供給すると共に、前記複数基のプッシャーのうち少なくとも1基のプッシャーは他のプッシャーが予熱室内に存在する時には待機位置に存在するように複数基のプッシャーを運転して予熱室内の冷鉄源を溶解室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をアークにて溶解し、溶解室内に所定量の溶湯が溜まった時点で冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とするものである。 【0010】第2の発明による冷鉄源の溶解方法は、第1の発明において、溶解室内に所定量の溶湯が溜まった時点で、複数基のプッシャーを停止し、アークにて溶湯を加熱して昇温し、その後、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とするものである。 【0011】第3の発明による冷鉄源の溶解方法は、第2の発明において、複数基のプッシャーの停止後、溶解室を傾動して溶湯と溶解室内の冷鉄源との接触面積を減少させ、溶解室を傾動した状態でアークにて溶湯を加熱して昇温し、その後、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とするものである。 【0012】第4の発明による冷鉄源の溶解方法は、第1の発明ないし第3の発明の何れかにおいて、前記複数基のプッシャーを、冷鉄源を押した際に受ける圧力が予め設定した値に達した時には後退させるようにすることを特徴とするものである。 【0013】第5の発明による冷鉄源の溶解設備は、冷鉄源を溶解するための溶解室と、溶解室の上部に直結し、溶解室で発生する排ガスにて冷鉄源を予熱するシャフト型の予熱室と、溶解室内で冷鉄源を溶解するためのアーク発生用電極と、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ供給する冷鉄源供給手段と、予熱室内を出入り可能とし、少なくとも1基のプッシャーは他のプッシャーが予熱室内に存在する時には待機位置に存在するように運転される複数基のプッシャーと、溶湯を出湯するための出湯口とを具備し、溶解室内の冷鉄源をアークにより溶解し、溶解室内に所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とするものである。 【0014】第6の発明による冷鉄源の溶解設備は、第5の発明において、前記複数基のプッシャーは、冷鉄源を押した際に受ける圧力の上限値が設定可能であり、この上限値に達した際には後退することを特徴とするものである。 【0015】本発明においては、溶解室の上部に直結するシャフト型の予熱室に複数基のプッシャーを設置し、複数基のプッシャーのうち、少なくとも1基のプッシャーは他のプッシャーが予熱室内に存在する時には待機位置に存在するように、これら複数基のプッシャーを運転する。そのため、仮に、予熱室内の或る部分でプッシャーを進入させることにより空間が生じても、その時に待機位置に存在していたプッシャーの前面予熱室内には空間が生じていないので、待機位置に存在していたプッシャーの予熱室への進入によって冷鉄源を溶解室側へ押し込むことができ、溶解室への冷鉄源の供給を安定させることができる。この場合、プッシャーの進入によって予熱室内の或る部分に空間が生じても、待機位置に存在していたプッシャー等の他のプッシャーを予熱室へ進入させることによって冷鉄源の充填状態が変化するので、予熱室内の空間は直ちに解消される。その結果、溶湯中への冷鉄源の供給量が安定し、溶解時間及び溶湯温度が均一化する。ここで、プッシャーの待機位置とは、予熱室から最大限に後退した位置である。 【0016】ここで、プッシャーは予熱室を出入り可能であり、予熱室を出た状態ではプッシャーの先端部のみ排ガスにて加熱され、大部分は加熱されないので、排ガス温度を高めてもプッシャーの熱負荷は少なく、従って、冷鉄源の予熱温度を上昇させることができる。 【0017】又、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つように予熱室への冷鉄源の供給を継続しながら溶解室内の冷鉄源を溶解し、且つ、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯するので、次ヒートに用いる冷鉄源が全て予熱され、極めて高い予熱効率で溶解することができる。 【0018】一方、溶解室内において生成する溶湯中に未溶解の冷鉄源が埋没して共存していると、加えられた熱エネルギーは冷鉄源を溶解するための潜熱に使用され、溶湯温度は上昇しにくい。しかし、第2の発明では、所定量の溶湯が溜まった時点でプッシャーの運転を停止し、溶解室内の溶湯への冷鉄源の供給量を抑制して溶湯を加熱する。プッシャーを停止することで、溶湯中への冷鉄源の供給量が減少して溶湯と冷鉄源との接触面積が相対的に減少し、加えられた熱エネルギーのうち冷鉄源の潜熱に費やされる量が減少し、溶湯温度を上昇させることが可能となる。そのため、出湯中における出湯口の閉塞等の溶湯温度低下によるトラブルを未然に防止することができる。その際に、プッシャーの運転停止と共に溶解室を傾動させることで、溶湯と溶解室内の冷鉄源との接触面積が一層減少し、溶湯温度をより速く上昇させることが可能となる。 【0019】又、プッシャーは、予熱室内への進入時、充填する冷鉄源から受ける圧力の上限値が設定され、この上限値に達した際には予熱室から後退するため、冷鉄源を必要以上に強く押すことはなく、そのため、冷鉄源を取り囲む予熱室側壁等の設備への過剰な圧力が作用せず、プッシャーの運転によるこれら設備の損傷を未然に防止することができる。 【0020】尚、本発明における所定量の溶湯量とは、例えば1ヒート分の溶湯量や、出湯後に溶解室内に溶湯を残留させる場合には、1ヒート分の溶湯量と溶解室内の残留溶湯量とを合わせた量であり、操業状況により適宜決定される溶湯量である。 【0021】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態の1例を示すアーク溶解設備の縦断面概略図、図2は、図1に示すアーク溶解設備の概略平面図である。 【0022】図1及び図2において、内部を耐火物で構築され、底部に底部電極6を備えた溶解室2の上部には、シャフト型の予熱室3と水冷構造の側壁4とが配置され、側壁4の上部開口部は開閉自在な水冷構造の蓋5で覆われている。この蓋5を貫通して、溶解室2内へ上下移動可能な黒鉛製の上部電極7が設けられている。アーク発生用電極である底部電極6と上部電極7とは直流電源(図示せず)に連結され、底部電極6と上部電極7との間でアーク19を発生させる。又、溶解室2は傾動装置(図示せず)により出湯口13側の方向に傾動されるようになっている。 【0023】予熱室3の上方には、冷鉄源供給手段として、走行台車24に吊り下げられた底開き型の供給用バケット15が設けられ、この供給用バケット15より、予熱室3の上部に設けられた開閉蓋20及び開閉蓋20aを開閉させて、鉄スクラップや直接還元鉄等の冷鉄源16が予熱室3内に装入される。冷鉄源16の装入の際に、開閉蓋20及び開閉蓋20aを交互に開閉させること、即ち、どちらか一方の開閉蓋20、20aを閉鎖しておくことで、溶解室2で発生する排ガスの漏洩を防止することができる。又、予熱室3の上端に設けられたダクト21は集塵機(図示せず)に連結し、溶解室2で発生する高温の排ガスは、予熱室3及びダクト21を順に通って吸引され、予熱室3内の冷鉄源16は予熱される。 【0024】予熱室3の下部には、油圧シリンダー11と接続されたプッシャー12が複数基(図2では3基)水平方向に並んで設けられ、それぞれのプッシャー12は接続するそれぞれの油圧シリンダー11により駆動されて予熱室3内を出入りし、予熱室3内に充填される冷鉄源16を、溶解室2内の冷鉄源16が充填されていない空間に押し込んで供給する。油圧シリンダー11は、プッシャー12の予熱室3内への進入時の最大圧力を設定することができ、設定した最大圧力以上の負荷がプッシャー12の進入時にかかった場合には、プッシャー12の進入を停止して予熱室3の外側に後退するようになっている。この最大圧力値は適宜変更できるようになっており、冷鉄源16のロットや種類が変わった場合にも対応することが可能となっている。又、プッシャー12の作動状況は、ビデオカメラ等によって常時監視できるようになっている。 【0025】プッシャー12の予熱室3への出入りを頻繁に行えば、多量の冷鉄源16が溶解室2に供給され、又、プッシャー12を停止すれば、冷鉄源16は溶解室2内で溶解された量に見合って自由落下して供給されるが、冷鉄源16の溶解室2中の溶湯17への供給量は安定せず、予熱室3内で棚つり状態となって供給が停滞することが発生する。 【0026】蓋5を貫通して、溶解室2内を上下移動可能な酸素吹き込みランス8と炭材吹き込みランス9とが設けられ、酸素吹き込みランス8からは酸素が溶解室2内に吹き込まれ、そして、炭材吹き込みランス9からは空気や窒素ガス等を搬送用ガスとしてコークス、チャー、石炭、木炭、黒鉛等の等の炭材が溶解室2内に吹き込まれる。 【0027】又、溶解室2の予熱室3が直結されている側とは異なる部分に設けられた突出部2aには、その底部に、扉22で出口側を押さえ付けられて内部に詰め砂又はマッド剤が充填された出湯口13と、その側壁に、扉23で出口側を押さえ付けられて内部に詰め砂又はマッド剤が充填された出滓口14とが設けられている。この出湯口13の鉛直上方に対応する部位の蓋5には、バーナー10が取り付けられている。バーナー10は、重油、灯油、微粉炭、プロパンガス、天然ガス等の化石燃料を、空気又は酸素若しくは酸素富化空気により溶解室2内で燃焼させる。このようにして直流式アーク溶解設備1が構成されている。 【0028】このように構成される直流式アーク溶解設備1において、冷鉄源16を溶解するに際しては、先ず、溶解室2を水平状態として供給用バケット15より予熱室3内に冷鉄源16を供給する。予熱室3内に供給された冷鉄源16は、溶解室2内にも装入され、やがて予熱室3内を充填する。尚、溶解室2内へ冷鉄源16を均一に装入するため、蓋5を開けて予熱室3と反対側の溶解室2内に冷鉄源16を装入することもできる。次いで、底部電極6と上部電極7との間に直流電流を給電しつつ上部電極7を昇降させ、上部電極7と底部電極6及び装入した冷鉄源16との間でアーク19を発生させる。そして、発生するアーク熱により冷鉄源16を溶解し、溶湯17を生成させる。溶湯17の生成に伴い、生石灰、蛍石等のフラックスを溶解室2内に装入して、溶融スラグ18を溶湯17上に形成させ、溶湯17の酸化を防止すると共に溶湯17の保温を図る。溶融スラグ18の量が多すぎる場合には、溶解中でも出滓口14から、排滓することができる。 【0029】溶湯17の生成に伴って溶解室2内の冷鉄源16は減少するので、溶解室2内に溶湯17が生成する頃からプッシャー12の運転を開始する。プッシャー12は、数分間隔、例えば3分間に一回、複数基のプッシャー12を1基ずつ予熱室3内を10秒程度で往復するように運転すれば良い。前述したように、複数基のプッシャー12を同時に運転すると、プッシャー12の前面に冷鉄源16が存在しない空間ができ、これを回避することが困難になるため、本発明では複数基のプッシャー12を個別に運転する。但し、少なくとも1基のプッシャー12が待機位置に存在しているならば、2基以上プッシャ−12を同時に運転しても良い。プッシャー12の運転により予熱室3内に充填する冷鉄源16は、強制的に押し込まれて溶湯17側に供給される。 【0030】又、溶湯17の生成に伴って予熱室3内の冷鉄源16は減少するので、この減少分を補うために、供給用バケット15から予熱室3へ冷鉄源16を供給する。この冷鉄源16の予熱室3内への供給は、冷鉄源16が予熱室3と溶解室2とに連続して存在する状態を保つように、連続的又は断続的に行う。その際、予熱効率を高めるために、予熱室3と溶解室2とに連続して存在する冷鉄源16の量を、常に1ヒート分の冷鉄源16の50%以上とすることが好ましい。 【0031】溶湯17の生成する頃から、酸素吹き込みランス8及び炭材吹き込みランス9から、酸素と炭材とを溶湯17中又は溶融スラグ18中に吹き込むことが好ましい。この酸素吹き込み量は、溶解開始から出湯までの間に溶解室2内で滞留する溶湯17のトン当たり25Nm3 (以下、「Nm3 /t」と記す)以上とすることが好ましい。吹き込まれて溶湯17中に溶解した炭材又は溶融スラグ18中に懸濁した炭材と、吹き込まれる酸素とが反応して燃焼熱を発生し、補助熱源として作用し、電力使用量を節約すると共に、反応生成物のCOガスが溶融スラグ18をフォーミングさせて、アーク19が溶融スラグ18に包まれるので、アーク19の着熱効率が上昇する。又、酸素と炭材とを吹き込むことにより大量に発生する高温のCOガスと、このCOガスが燃焼して生成するCO2 ガスとで予熱室3内の冷鉄源16は効率良く予熱される。この炭材の吹き込み量は、吹き込む酸素の量に対応して決める。即ち、吹き込まれる酸素の化学当量に等しい程度の炭材を添加する。炭材が吹き込まれる酸素に比べて少ないと、溶湯17が過剰に酸化するので好ましくない。 【0032】このようにして冷鉄源16を溶解し、溶解室2内に所定量の溶湯17が溜まった時点で、必要に応じて脱炭等の精錬を行い、次いで、溶解室2を傾動して出湯口13から溶湯保持容器(図示せず)に溶湯17を出湯する。出湯中は、溶湯温度の低下を防止するために、バーナー10にて溶湯17を加熱することが好ましい。出湯後、溶湯17は必要に応じて取鍋精錬炉等にて昇温・精錬した後、連続鋳造機等で鋳造する。溶湯17を出湯し、更に必要に応じて溶融スラグ18を排滓した後、溶解室2を水平に戻すか、又は出湯時と逆方向の出湯口13側が上になるように溶解室2を傾動し、出湯口13及び出滓口14内に詰め砂又はマッド剤を充填した後、溶解室2を水平状態として溶解を再開する。次回のヒートは予熱された冷鉄源16で溶解を開始することができる。 【0033】この場合、溶湯17中には大量の未溶解の冷鉄源16が埋没して共存する状態であるので溶湯温度は1550℃程度になり、大きな溶湯過熱度を得ることは困難である。そこで、大きな溶湯過熱度を得るために、溶解室2内に所定量の溶湯17が溜まった時点で、プッシャー12の運転を停止して全てのプッシャー12を予熱室3の外に待機させ、アーク19にて溶湯17を加熱して昇温することが好ましい。プッシャー12を停止することで冷鉄源16の溶湯17中に供給される量が減少することと、同時に、溶湯17への冷鉄源16の供給量が減少することで溶湯17中に埋没する未溶解の冷鉄源16の溶解が促進することとにより、溶湯17中に埋没して共存する冷鉄源16が減少し、溶湯17と冷鉄源16との接触面積が減少する。その結果、投入するアーク熱のうちの冷鉄源16を溶解するための潜熱に費やされる熱量が相対的に減少し、溶湯温度を上昇させるために費やされる熱量が増加して溶湯温度が上昇し、大きな溶湯過熱度を得ることができ、その結果、出湯中における出湯口13の閉塞等の溶湯温度の低下によるトラブルを未然に防止することができる。尚、プッシャー12の停止後の溶湯17の加熱時に、バーナー10を併用することにより、投入される熱量が増加して溶湯温度の上昇率が高くなるので、バーナー10を併用することが好ましい。 【0034】又、プッシャー12の停止後、出湯口13側が下になるように溶解室2を傾動して溶湯17中に埋没する冷鉄源16を積極的に減少させることが好ましい。溶解室2を傾動した状態で加熱することで、溶湯17と冷鉄源16との接触面積が一層減少して溶湯温度の上昇速度がより速くなり、大きな溶湯過熱度を得ることが可能となる。溶湯17を加熱・昇温した後は、必要に応じて脱炭等の精錬を行い、上記に従い出湯口13から出湯する。尚、出湯時に、数トン〜数十トンの溶湯17を溶解室2内に残留させて、次回ヒートの溶解を再開しても良い。こうすることで初期の溶解が促進され、溶解効率が一層向上する。 【0035】このようにして冷鉄源16を溶解することで、冷鉄源16の予熱温度を上げることが可能となると共に、操業の最初のヒートで用いる冷鉄源16は、その一部が予熱されないが、その後のヒートで溶解される冷鉄源16は全て予熱されるので、予熱効率の極めて高い状態で操業を行うことができ、電力原単位を大幅に低減することが可能になる。又、複数基のプッシャー12の運転により安定して冷鉄源16を溶解室2に供給可能となるので、溶解時間の延長や溶湯温度の過度の上昇をもたらすことなく安定して操業を行うことができる。更に、予熱室3の側壁等はプッシャー12により過剰な圧力を受けないので、設備の損傷もなく、安定して操業を行うことができる。更に又、溶解後に溶湯17を加熱・昇温することで、出湯時の溶湯温度が確保され、溶湯温度の低下による操業トラブルを未然に防止することができる。 【0036】尚、上記説明では、直流式アーク溶解設備1の場合について説明したが、交流式アーク溶解設備でも全く支障なく本発明を適用でき、又、溶解室2における予熱室3と出湯口13との位置関係は溶解室2の中心に対して180度の対向する位置に限るものではなく90度の位置であっても良く、更に、プッシャー12の配置や底部電極6等の構造の違いは、本発明の支障とならないことは言うまでもない。 【0037】 【実施例】図1に示す直流式アーク溶解設備における実施例を以下に説明する。アーク溶解設備は、溶解室が外径7.2m、高さ4mであり、予熱室が最大幅3m、長さ5m、高さ7mであり、溶解室の容量が溶鋼換算で180トンである。 【0038】先ず、溶解室及び予熱室内に鉄スクラップ150トンを装入し、直径30インチの黒鉛製上部電極を用い、最大750V、130kAの電源容量により溶解した。溶鋼の生成に伴って、3基のプッシャーを10秒間で往復するように3分間隔で交互に予熱室に出入りさせた。この場合、プッシャーを作動させる油圧シリンダーの圧力上限値は全ての油圧シリンダーで100kg/cm2 に設定し、プッシャーの進入時、油圧シリンダーの圧力が100kg/cm2 を越えた時にはプッシャーの進入を停止して、待機位置まで後退させた。又、溶鋼の生成に伴って生石灰と蛍石とを添加して溶融スラグを形成し、次いで、酸素吹き込みランスから酸素を6000Nm3 /hrとし、又、炭材吹き込みランスからコークスを80kg/minとして溶融スラグ中に吹き込んだ。酸素とコークスの吹き込みにより、溶融スラグはフォーミングして上部電極の先端は溶融スラグ中に埋没した。この時の電圧を550Vに設定した。 【0039】予熱室内の鉄スクラップが溶解につれて下降したら、供給用バケットにて鉄スクラップを予熱室に供給し、予熱室内の鉄スクラップ高さを一定の高さに保持しながら溶解を続け、溶解室内に180トンの溶鋼が生成した時点で、約60トンを溶解室に残し、1ヒート分の120トンの溶鋼を取鍋に出湯した。出湯時、重油バーナーにより溶鋼を加熱した。出湯時の溶鋼の炭素濃度は0.1質量%で、溶鋼温度は1550℃であった。出湯後、出湯口及び出滓口に詰め砂を充填して溶解を再開し、溶鋼量が180トンになったら120トン出湯することを繰り返し実施した。出湯後の溶鋼は取鍋精錬炉にて精錬し、更に1620℃に昇温した後、連続鋳造機により鋳造した。取鍋精錬炉の電力使用量は、溶鋼トン当たり平均して60kWh(以下「kWh/t」と記す)であった。 【0040】その結果、溶解室内への冷鉄源の供給は安定し、溶解の停滞は発生せず、出湯から出湯までの時間は平均して40分となり、酸素の吹き込み量が33Nm3 /t、コークスの吹き込み量が溶鋼トン当たり26kgで、電力原単位210kWh/tで溶解することができた。アーク溶解設備と取鍋精錬炉とによる電力の総使用量は270kWh/tであった。又、プッシャーの熱による損傷は全く発生せず、安定した操業が可能であった。 【0041】又、比較のため、図1に示すアーク溶解設備において、プッシャー進入時の圧力の上限値を設定せずに、3基のプッシャーの内、中央の1基のみを運転し、その他の操業条件を実施例と同一とした操業(比較例)と、ヒート毎に120トンの鉄スクラップを溶解室と予熱室とに装入し、装入した鉄スクラップを全量溶解し、次いで1590℃に昇温し、120トンの溶鋼を出湯する操業(従来例)も実施した。尚、従来例ではプッシャーを運転せず、酸素吹き込み量及びコークス吹き込み量は上記の実施例と同一であり、又、従来例での取鍋精錬炉の電力原単位は30kWh/tであった。 【0042】比較例ではプッシャー前面の冷鉄源充填層に空間ができ、プッシャーを運転しても冷鉄源を押すことができなくなり、溶解が停滞する現象が1ヒートに約2回程度発生した。又、プッシャー前面の冷鉄源の突っ張り力が強くて、プッシャーで押しても冷鉄源が崩れずに、プッシャーの運転により冷鉄源が一層密に充填され、冷鉄源の棚吊り状態が5分間以上に渡って継続する現象が6ヒートに1回程度発生した。又、従来例では、予熱室内に充填する鉄スクラップの前面の溶解室内に空間があるにもかかわらず、鉄スクラップが予熱室から溶解室に落ちていかず、溶解が停滞する現象が6ヒートに1回の頻度で発生した。 【0043】図3に実施例及び比較例における出湯から出湯までの時間と、その頻度を比較して示す。図3に示すように、本発明の実施例では出湯から出湯までの時間はヒート間でのバラツキが少なく安定しており、平均値で40分であった。それに対して比較例では、出湯から出湯までの時間にヒート間のバラツキがあり、溶解が停滞したヒートでは、出湯から出湯までの時間に50分間を要し、平均値で43分であった。 【0044】比較例では、アーク溶解設備における電力原単位が220kWh/tで、アーク溶解設備と取鍋精錬炉とおける電力の総使用量が280kWh/tであり、又、従来例では、アーク溶解設備における電力原単位が300kWh/tで、アーク溶解設備と取鍋精錬炉とおける電力の総使用量は330kWh/tであった。このように、本発明では、従来例に比べて総使用量で60kWh/t程度の電力原単位を低減することが可能であった。 【0045】 【発明の効果】本発明によれば、溶解室から発生する排ガスによる予熱温度を高めることが可能で、且つ、溶解する冷鉄源のほとんどを予熱することが可能であるため、極めて高い予熱効率が得られ、電力使用量を大幅に低減することができると共に、複数基のプッシャーにより冷鉄源を安定的に溶解室に供給することができ、且つ、プッシャーの運転による設備への負荷も少なくなるため、溶解時間の延長や溶湯温度の過度の上昇、及び、設備破損をもたらすことなく安定して溶解することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004123 【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年10月18日(2000.10.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100116230 【弁理士】 【氏名又は名称】中濱 泰光
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| 【公開番号】 |
特開2002−121611(P2002−121611A) |
| 【公開日】 |
平成14年4月26日(2002.4.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−317373(P2000−317373) |
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