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【発明の名称】 受銑方法及び受銑装置
【発明者】 【氏名】西村 和裕

【氏名】笹部 幸博

【氏名】加藤 靖史

【氏名】山本 光夫

【要約】 【課題】高炉から出銑される溶銑を、傾注樋を介して鍋車が受銑する作業を安全に、また確実に行う受銑装置及び受銑方法を提供することを目的とする。

【解決手段】受銑の開始からの経過時間Tを用いて受銑量が過多ではないと判断し(S21でYES)、湯面レベルの実測値を所定の方法を用いて誤差を低減した算出値Yk を用いて、所定の受銑量に達したと判断し(S25でYES)、経過時間Tを用いて受銑量が過少ではないと判断し(S26でYES)、更に実測値の変化量Uを用いて湯面レベルが過度に変動していないと判断したとき(S28でYES)、前記受銑を終了して(S29)、次の受銑を開始する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高炉が出銑した溶銑を、傾注樋を一方向に傾斜させて鍋車に受銑させ、次いで、他の鍋車に受銑させるべく、前記傾注樋を他方向に傾斜させる受銑方法において、前記鍋車の受銑開始からの経過時間を計測し、該経過時間が予め定められた時間幅の最長時間以上であるか否かを判断し、前記最長時間以上の場合は警報を発し、また、前記鍋車内の溶銑の湯面レベルを測定し、該湯面レベルの実測値を、所定の誤差低減方法を用いて前記実測値の誤差を低減した算出値を時系列的に算出し、前記経過時間が前記最長時間未満の場合は、前記算出値が予め定められた閾値以上であるか否かを判断して、前記閾値未満の場合は受銑を継続し、前記閾値以上の場合は、前記経過時間が前記時間幅の最短時間以上であるか否かを判断し、また、前記算出値の、前回の算出値からの変化量が予め定められた範囲以内であるか否かを判断して、前記経過時間が前記最短時間未満である場合又は前記変化量が前記範囲を超越している場合は警報を発し、前記経過時間が前記最短時間以上の場合及び前記変化量が前記範囲以内の場合は他の鍋車の受銑を開始することを特徴とする受銑方法。
【請求項2】 前記誤差低減方法は、前記算出値Yk を、前記実測値Xk 、測定した回数k、前回の算出値Yk-1 、及び所定の係数α(0<α<1)と、Yk =αXk +(1−α)Yk-1の式とを用いて算出することを特徴とする請求項1に記載の受銑方法。
【請求項3】 前記誤差低減方法は、前記算出値Yk を、前記実測値Xk 、測定した回数k、自然数n、及びn回前の実測値Xk-n と、Yk =(Xk +Xk-1 +Xk-2 +…+Xk-n )/(n+1)
の式とを用いて算出することを特徴とする請求項1に記載の受銑方法。
【請求項4】 両側に溶銑出口を有し、一方向に傾斜して、高炉が出銑した溶銑を一方の溶銑出口の下に置かれた鍋車に受銑させる傾注樋と、前記溶銑を他方の溶銑出口の下に置かれた鍋車に受銑させるべく、前記傾注樋を他方向に傾斜するよう傾動させる傾注樋傾動手段とを備える受銑装置において、鍋車内の溶銑の湯面レベルを測定するレベル計と、該レベル計の実測値を所定の誤差低減方法を用いて前記実測値の誤差を低減した算出値となす演算手段と、前記鍋車の受銑開始からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間及び前記算出値を用いて警報を発するか否かを判断する手段と、警報を発するべきと判断した場合に警報を発する警報発信手段と、警報を発しない場合に前記鍋車の受銑を終了するか否かを判断する手段と、終了すると判断した場合に前記傾注樋傾動手段を制御して前記傾注樋を他方向に傾斜するよう傾動させ、他の鍋車の受銑を開始する手段とを備えることを特徴とする受銑装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高炉から出銑される溶銑を、傾注樋を介して鍋車に受銑させる受銑方法及び受銑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】高炉が出銑した溶銑は、一般に、鍋車に受銑させて、製鉄設備へ運搬される。鍋車に溶銑を受銑させる受銑装置は、両側に溶銑出口を有する傾注樋及び該傾注樋の駆動装置を備え、高炉から出銑された溶銑は、例えば主樋を介して、前記傾注樋に導かれる。該傾注樋は、一方向に傾斜することによって、一方の溶銑出口の下に置かれた鍋車に溶銑を受銑させる。前記鍋車が受銑した溶銑が所定量に達したとき、傾注樋を傾動して前記鍋車の受銑を終了する。次いで、傾注樋は他向に傾斜することによって、他方の溶銑出口の下に置かれた鍋車に溶銑を受銑させる。受銑した鍋車は、搬送システムに制御されて製鉄設備へ溶銑を運搬し、製鉄設備から空の鍋車が受銑装置へ移動して、該鍋車が再び受銑することを繰り返す。
【0003】従来の受銑装置を用いる場合、作業者は、受銑中の鍋車の湯面レベル及び空の鍋車が所定位置に待機していることを目視で確認し、鍋車が所定の湯面レベルまで受銑したとき、傾注樋の駆動装置を操作して、傾注樋を傾動させ、前記鍋車の受銑を終了する。このため、作業者のミス又は目測による誤差によって湯面レベルが所定より過剰に低い状態で鍋車の受銑が終了したときは、鍋車が運搬する銑鉄の量が減少して鍋車の回転効率が悪化し、また、所定より過剰に高い状態で鍋車の受銑が終了したときは、例えば鍋車から溶銑があふれて重大な事故が発生することがあった。また、制御装置の誤操作による事故が発生することもあった。更に、受銑作業場は高温状態であり、作業環境は良いとは言えない。
【0004】このような事情に鑑み、特開平5−125413号公報、特開平6−88679号公報、及び特開平6−273071号公報は、自動化された受銑装置を開示している。該受銑装置は、鍋車内の溶銑の湯面レベルを測定するレベル計、鍋車の重量を測定する重量計、及び傾注樋の駆動装置の制御装置とを備え、該制御装置が、レベル計又は重量計の実測値が所定値に達した時点で駆動装置を制御して傾注樋を傾動させることによって、作業者による湯面レベルの確認ミス、目測による誤差、及び制御装置の誤操作等を防止して、安全に、また確実に受銑作業を行うことができる。更に、前記受銑装置に撮・映像手段を追加した場合は、作業者が受銑作業場から遠隔した場所で湯面レベル及び鍋車の待機状況等を確認できるため、より安全に、また確実に作業を行うことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の受銑装置は、湯面レベルを測定するレベル計及び鍋車の重量を測定する重量計を備え、場合によっては撮・映像手段も備えるため、構成が複雑である。また、重量計として用いられるロードセルは高価である。また、チャタリング(レベル計の実測値の振動)又はフォーミング(湯面の泡立ち)等によって、レベル計から送られて来る実測値信号が一時的に高く又は低くなることがあるため、重量計を用いずに、レベル計のみを用いて前記受銑装置を構成する場合であって、従来のように、レベル計の実測値が所定値に達した時点で駆動装置を制御して傾注樋を傾動させた場合は、所定量を確実に受銑することができない。
【0006】本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、鍋車内の溶銑の湯面レベルを測定し、実測値の誤差を低減した算出値を算出し、受銑開始からの経過時間を計測し、該計測時間及び前記算出値に基づいて傾注樋を傾動することにより、高価なロードセルを用いなくても、鍋車に所定量の溶銑を安全に、また確実に受銑させることができる受銑方法を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、算出値を、所定の係数を用い、実測値と前回の算出値との関係式で算出することにより、実測値の誤差を低減した算出値を用いて、所定量の受銑を確実に行うことができる受銑方法を提供することにある。本発明の他の目的は、算出値を、今回の実測値とn回前までの実測値(nは自然数)との関係式で算出することにより、誤差低減のための係数を予め求めなくても、実測値の誤差を低減した算出値を用いて、所定量の受銑を確実に行うことができる受銑方法を提供することにある。
【0007】本発明の更に他の目的は、レベル計の実測値を用いて算出値を求め、受銑開始からの経過時間を計測し、該経過時間及び前記算出値を用いて傾注樋の傾動を制御する手段を備えることにより、高価なロードセルを用いなくても、鍋車に所定量の溶銑を安全に、また確実に受銑させることができる受銑装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1発明に係る受銑方法は、高炉が出銑した溶銑を、傾注樋を一方向に傾斜させて鍋車に受銑させ、次いで、他の鍋車に受銑させるべく、前記傾注樋を他方向に傾斜させる受銑方法において、前記鍋車の受銑開始からの経過時間を計測し、該経過時間が予め定められた時間幅の最長時間以上であるか否かを判断し、前記最長時間以上の場合は警報を発し、また、前記鍋車内の溶銑の湯面レベルを測定し、該湯面レベルの実測値を、所定の誤差低減方法を用いて前記実測値の誤差を低減した算出値を時系列的に算出し、前記経過時間が前記最長時間未満の場合は、前記算出値が予め定められた閾値以上であるか否かを判断して、前記閾値未満の場合は受銑を継続し、前記閾値以上の場合は、前記経過時間が前記時間幅の最短時間以上であるか否かを判断し、また、前記算出値の、前回の算出値からの変化量が予め定められた範囲以内であるか否かを判断して、前記経過時間が前記最短時間未満である場合又は前記変化量が前記範囲を超越している場合は警報を発し、前記経過時間が前記最短時間以上の場合及び前記変化量が前記範囲以内の場合は他の鍋車の受銑を開始することを特徴とする。
【0009】第1発明にあっては、受銑中の鍋車の受銑開始からの経過時間が予め定められた最長時間以上に達した場合は、既に受銑量が所定量に達していることが、レベル計の誤検出又は故障等により検出されず、鍋車内に所定量以上の溶銑が受銑されて危険な状態になっている可能性があると判断し、作業者に注意を促すための警報を発する。経過時間が最長時間未満であって、算出値が閾値未満である場合は、鍋車内の溶銑が所定量に到達していないと判断して、受銑を継続する。経過時間が最長時間未満であって、算出値が閾値以上に到達した場合は、鍋車内の溶銑が所定量に到達したと判断して、傾注樋を傾動して他の鍋車の受銑を開始するが、算出値が閾値以上に到達した場合であっても、経過時間が最短時間以上に達していない場合は、算出値から判断できる結果(所定量に到達)と経過時間から判断できる結果(所定量に未到)とが矛盾しているため、レベル計の誤検出、若しくは故障等が発生した、又は閾値、若しくは最短時間等の設定にミスがあった可能性があると判断して、作業者に対し警報を発する。また、算出値が閾値に到達した場合であっても、算出値の変化量が許容範囲を越えている場合は、レベル計の誤検出、又は故障等が発生した可能性があると判断して警報を発する。警報が発せられた場合は、例えば作業者が受銑状態を目視で確認して手動で傾注樋の駆動装置を操作すること、又は高炉からの出銑を中止すること等の対処ができるため、鍋車に所定量の溶銑を安全に、また確実に受銑させることができ、更に、過剰な受銑及び過少な受銑を防止することができる。
【0010】なお、前記最長時間は、遅くともその時点までには鍋車内の溶銑量が所定量に達するはずである受銑開始からの経過時間であり、最短時間は、早くてもその時点には鍋車内の溶銑量が所定量に達しないはずである受銑開始からの経過時間であって、最長時間及び最短時間は、大まかに把握できる高炉からの出銑スピードと鍋車の容量との関係及び過去の操業実績に基づき定めることができるが、更に安全性も加味して定めることができる。また、前記変化量の範囲は、前記出銑スピードと湯面レベルの測定間隔との関係及び過去の操業実績に、安全性又は作業性も考慮して定めることができる。また、前記最長時間、最短時間、及び変化量の範囲は、当初安全目に設定しておき、その後の操業実績に基づいて、より最適な値に調整することもできる。
【0011】第2発明に係る受銑方法は、前記誤差低減方法は、前記算出値Yk を、前記実測値Xk 、測定した回数k、前回の算出値Yk-1 、及び所定の係数α(0<α<1)と、Yk =αXk +(1−α)Yk-1 の式とを用いて算出することを特徴とする。
【0012】第2発明にあっては、鍋車内の溶銑が所定量に到達したときの湯面レベルを算出値の閾値Dとし、例えばY0 =X1 と置き、Yk =αXk +(1−α)Yk-1=α(Xk −Yk-1 )+Yk-1 の式を用いて、今回の湯面レベルを、前回の湯面レベルに、今回の湯面レベルと前回の湯面レベルとの差、即ち湯面レベルの変化量を加算したものと考えて、該変化量を係数αで調整することによって、実測値の誤差を低減し、Yk ≧Dのとき鍋車内の溶銑が所定の受銑量に到達したと判断するため、実測値の誤差を低減した算出値を用いて、所定量の受銑を確実に行うことができる。また、係数αが1に近すぎる場合は、算出値と実測値とが略等しくなって、実際の湯面レベルがD未満であってもYk ≧Dとなることがある。また、係数αが0に近すぎる場合は、今回の算出値と前回の算出値とが略等しくなって、実際の湯面レベルがD以上であってもYk <Dとなることがある。このため、αの値を、例えば予め実験を繰り返すことによって最適化しておく場合は、前記変化量を係数αで調整して誤差を低減することができる。
【0013】第3発明に係る受銑方法は、前記誤差低減方法は、前記算出値Yk を、前記実測値Xk 、測定した回数k、自然数n、及びn回前の実測値Xk-n と、Yk =(Xk +Xk-1 +Xk-2 +…+Xk-n )/(n+1)の式とを用いて算出することを特徴とする。
【0014】第3発明にあっては、鍋車内の溶銑が所定量に到達したときの湯面レベルを算出値の閾値Dとし、また、k−n≦0のときは例えばXk-n =Xk と置いて、Yk =(Xk +Xk-1 +Xk-2 +…+Xk-n )/(n+1)の式を用いてn回分の実測値の平均値を算出して誤差を低減し、Yk ≧Dのとき鍋車内の溶銑が所定の受銑量に到達したと判断するため、実測値の誤差を低減でき、所定量の受銑を確実に行うことができる。また、n回前までの実測値を用いて算出値を算出することによって、該算出値が実際の湯面レベルより小さくなる場合、実際の湯面レベルがD以上となる時刻より算出値がD以上となる時刻が遅れることがあるため、閾値Dを、鍋車内の溶銑が所定量に到達したときの湯面レベルより少し小さい値とすることによって、所定量の受銑を確実に行うことができる。
【0015】第4発明に係る受銑装置は、両側に溶銑出口を有し、一方向に傾斜して、高炉が出銑した溶銑を一方の溶銑出口の下に置かれた鍋車に受銑させる傾注樋と、前記溶銑を他方の溶銑出口の下に置かれた鍋車に受銑させるべく、前記傾注樋を他方向に傾斜するよう傾動させる傾注樋傾動手段とを備える受銑装置において、鍋車内の溶銑の湯面レベルを測定するレベル計と、該レベル計の実測値を所定の誤差低減方法を用いて前記実測値の誤差を低減した算出値となす演算手段と、前記鍋車の受銑開始からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間及び前記算出値を用いて警報を発するか否かを判断する手段と、警報を発するべきと判断した場合に警報を発する警報発信手段と、警報を発しない場合に前記鍋車の受銑を終了するか否かを判断する手段と、終了すると判断した場合に前記傾注樋傾動手段を制御して前記傾注樋を他方向に傾斜するよう傾動させ、他の鍋車の受銑を開始する手段とを備えることを特徴とする。
【0016】第4発明にあっては、レベル計の実測値を用いて該実測値の誤差を低減した算出値を求める演算手段と、鍋車の受銑開始からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間及び前記算出値を用いて、受銑の終了若しくは継続、又はエラーを判断する判断手段と、判断した結果に基づいて作業者に警報を発し、又は傾注樋を傾動させる手段とを制御部として構成して、レベル計及び傾注樋傾動手段に接続することができるため、高価なロードセルを用いなくても、鍋車に所定量の溶銑を安全に、また確実に受銑させることができ、また、装置の構造が簡易である。
【0017】また、前記制御部は、一方向に傾斜している傾注樋が鍋車に受銑させている場合であって、前記判断手段がエラーの可能性があると判断したときは、作業者に警報を発して注意を促す手段と、前記判断手段が受銑の終了を判断したときは、前記傾注樋を他方向に傾斜するよう傾動させて他の鍋車に受銑させる手段と、作業者に警報を発しないとき及び受銑を終了しないときは受銑を継続する手段とを備えるため、作業者が受銑を行なう度に傾注樋傾動手段を手動で駆動させる必要がなく、作業者のミスによる事故を防止し、更に、作業の安全性を向上することができる。更に、第1発明乃至第4発明の何れかに記載の受銑方法の実施に使用することによって、鍋車に所定量の溶銑を安全に、また確実に受銑させることができ、過剰な受銑及び過少な受銑を防止することができるため、受銑作業を自動化することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係る受銑装置の模式的正面図、図2は該受銑装置の模式的側面図、図3は該受銑装置の模式的水平断面図である。図中1は高炉であり、該高炉1が出銑した溶銑10を傾注樋4まで導くよう延設してある主樋2は、長手方向両端に流入口と流出口とを有し、流入口が高炉1の底部付近に設けられ、流出口の下側に傾注樋4が設置してある。傾注樋4は、主樋2の長手方向に交叉する方向を長手方向として設置してあり、該長手方向の両側に溶銑出口を有し、各溶銑出口の下側に、傾注樋4がある受銑作業場から図示しない製鉄設備まで、搬送路6,6が敷設してある。各搬送路6上には、受銑すべき鍋車5が溶融出口の真下に位置するようにして、複数の鍋車5,5,…が搬送路6に沿って移動可能に乗せてある。
【0019】傾注樋4の各溶銑出口近傍には、受銑中の鍋車5の湯面レベルを計測するレベル計3が設置され、レベル計3,3は、湯面レベルの実測値を電気信号として出力し、受銑作業場から離れた制御室7に設置してある制御部8へ送信すべく、LAN11aを介して制御部8に接続してある。また、傾注樋4の下部には、該傾注樋4を傾動して一方又は他方に傾斜させる駆動装置9が備えられている。該駆動装置9は、前記制御部8から制御信号を受信すべく、LAN11bを介して制御部8に接続され、前記制御信号に従って、傾注樋4を傾動する。制御信号が受銑開始信号である場合は、傾注樋4を一方に傾斜するよう傾動する。制御信号が受銑終了信号である場合は、傾注樋4を他方に傾斜するよう傾動する。
【0020】図4は該受銑装置の制御部8のブロック図である。図中81は、パーソナルコンピュータを用いてなる制御部8のCPUであり、該CPU81は、バス80を介し、計時部82、表示部83、操作部84、RAM85、ハードディスク(HDD)86、受信部87、送信部88及びブザー89に夫々接続され、ハードディスク86に格納された制御プログラムに従って装置各部を制御する。計時部82はパーソナルコンピュータに内蔵された時計であり、受銑開始からの経過時間を計測する。表示部83はディスプレイであり、CPU81に制御されて、設定すべきパラメータの入力指示又は該パラメータの現在値等を表示し、操作部84はキーボード及びマウス等であり、作業者は表示部83を見ながら操作部84を操作し、例えば前記パラメータをテンキーを用いて、受銑の開始をファンクションキーを用いて、夫々入力する。
【0021】RAM85は、受銑作業実行時の各種データを一時記憶するためのメモリであり、例えば受銑の開始前にユーザによって操作部84から入力されたパラメータを記憶しておく。受信部87及び送信部88は、入出力インターフェイスを有する受信回路及び送信回路であり、受信部87は、受銑中の鍋車の湯面レベルを計測しているレベル計3から送信された湯面レベルの実測値をLAN11aを介して受信し、送信部88は、駆動装置9へ傾注樋4を傾動させるための制御信号をLAN11bを介して送信する。ブザー89は、作業者にエラーを報知して注意を促す警報を発する。
【0022】CPU81は、受信したレベル計3の実測値を、後述するデジタルフィルタを用いて、該実測値の誤差を低減した算出値となし、該算出値を時系列的に算出する。次いで、計時部82が計測した経過時間と、前記パラメータと、前記算出値とを用いて、受銑の終了若しくは継続、又はエラーを判断し、判断した結果に基づいて、傾注樋4を傾動させるための制御信号を送信し、ブザー89を用いて警報を発する。前記制御信号は、駆動装置9に適した所定の信号をハードディスク86に予め格納してある。このとき、前記パラメータとして、算出値の閾値、経過時間の最長時間並びに最短時間、算出値の変化量(今回の算出値と前回の算出値との差)の許容範囲、及び係数αを用いる。係数αは、前記デジタルフィルタのスムージングファクタであり、受銑実験を繰り返すことによって予め求めておく。
【0023】以上のような受銑装置は、レベル計3と、制御部8の計時部82とを用いて受銑の制御を行うため、レベル計と重量計とを併用して受銑の制御を行う従来の受銑装置に比べて構成が簡易であり、また、制御部8として用いているパーソナルコンピュータは一般に計時機能を有するため、計時部として新たに時計を準備する必要がない。更に、制御部8を受銑作業場から離れた制御室7に設置してあるため、作業者が制御部8を用いて作業を行う場合、高熱状態の受銑作業場で行う必要がなく、作業者の作業環境を向上できる。
【0024】図5は、本発明に係る受銑方法で用いる算出値の閾値及び経過時間の最短時間の説明図、図6は、前記受銑方法で用いる経過時間の最長時間の説明図である。グラフの横軸は経過時間Tであり、縦軸は湯面レベルLである。T=0が受銑の開始であり、Tの増加に伴ってLも増加する。鍋車5が所定量の溶銑10を受銑したとき、鍋車5の湯面レベルはDである。レベル計3が測定する実測値は誤差を含む値であるため、Dは、誤差を低減した算出値の閾値とする。溶銑10は高炉1から所定の時間間隔毎に出銑されるが、各出銑時の流量は変動することがあるため、予め鍋車5が所定量の溶銑10を受銑するまでの最短時間S1 及び最長時間S2 を求めておく。経過時間Tが最長時間S2 以上である場合、既に湯面レベルが所定値Dに達していることが、レベル計の誤検出又は故障等により検出されず、鍋車5に過剰な受銑が行なわれている可能性があると判断し、作業者に対してエラーを報知し注意を促すべく警報を発する(図6の場合)。また、経過時間Tが最長時間S2 未満であって算出値が閾値D未満である場合、鍋車5の受銑量は過少であると判断し、受銑を継続する(図5の場合)。
【0025】図7は、前記受銑方法で用いる算出値の変化量の許容範囲の説明図である。グラフの横軸は経過時間Tであり、縦軸は湯面レベルLである。T=0が受銑の開始であり、Tの増加に伴ってLも増加する。今回の算出値と前回の算出値との差、即ち算出量の変化量Uの許容範囲Hは、例えば実験を繰り返すことによって予め最適の値を求める。経過時間Tが最長時間S2 未満であって算出値が閾値D以上である場合、算出値の変化量Uが許容範囲Hを超過しているときは、例えばレベル計が甚だしい誤検出を行った可能性があると判断して、作業者に対してエラーを報知すべく警報を発する。また、算出値が閾値D以上である場合、経過時間Tが最短時間S1 未満であるときは、算出値から判断できる結果(湯面レベルD以上)と経過時間から判断できる結果(湯面レベルD未満)とが矛盾しているためレベル計の誤検出又は故障等の可能性があると判断して、エラーを報知すべく警報を発する。また、経過時間Tが最長時間S2 未満であって算出値が閾値D以上である場合、算出値の変化量Uが許容範囲H以内であって、経過時間Tが最短時間S1 以上であるときは、鍋車5は所定量の溶銑10を受銑したと判断して、該鍋車5の受銑を終了し、次いで、他の鍋車5の受銑を開始する。
【0026】図8及び図9は、前記受銑装置の制御部8による駆動装置9の制御手順を示すフローチャートである。制御部8は、受銑作業の開始を受け付ける。CPU81は、必要な操作手順を表示部83に表示して、作業者に対し、操作部84を用いてパラメータを入力し、次いで、一方の溶銑出口の下に位置する鍋車5の受銑開始を入力するよう指示する(S10)。このときユーザは、表示部83の表示に従って、算出値の閾値D、経過時間Tの最短時間S1 並びに最長時間S2 、変化量Uの許容範囲H、及び係数αを入力し、次いで、受銑開始を入力する。制御部8のCPU81は、入力されたパラメータを受け付けて、RAM85に記憶させる(S11)。
【0027】次に、CPU81は、受銑開始が入力されたか否かを判断する(S12)。入力されなかった場合は(S12でNO)、入力されるまで待機する。入力された場合は(S12でYES)、ハードディスク86から受銑開始信号を読み出し、送信部88を介して駆動装置9へ送信する(S13)。このとき、駆動装置9は、傾注樋4が一方に傾斜するよう傾注樋4を傾動する。高炉1から出銑された溶銑10は、主樋2を通って、傾注樋4に供給される。傾注樋4は一方に傾斜しているため、一方の溶銑出口の下に位置する鍋車5が、溶銑10を受銑する。次に、CPU81は、経過時間T及び算出値の変化量Uを初期化して、RAM85に、T=0、U=0、及びk=1を記憶させる(S14)。受銑が開始されたため、レベル計3は、所定の時間間隔毎に前記鍋車5の湯面レベルを計測して、実測値を制御部8へ送信する。
【0028】次に、CPU81は、受信部87を介して、実測値Xk を受信し(S15)、計時部82が計測した経過時間Tと前記実測値Xk とをRAM85に記憶させる(S16)。CPU81は、経過時間Tが最長時間S2 未満であるか否かを判断し、(S21)、S2 以上である場合は(S21でNO)、鍋車5が受銑過多になった可能性があると判断して、作業者に対してエラーを報知し注意を促すべく、ブザー89を用いて警報を発する(S22)。
【0029】経過時間Tが最長時間S2 未満である場合は(S21でYES)、算出値Ykを、デジタルフィルタYk =αXk +(1−α)Yk-1 を用いて算出して、RAM85に記憶させる。k=1のとき、Yk-1 、即ちY0 にはX1 を代入する(S24)。算出値Yk が閾値D以上であるか否かを判断し(S25)、D未満である場合は(S25でNO)、鍋車5は受銑過少であるため受銑を継続すると判断し、k=k+1をRAM85に記憶させ(S30)、S15に戻って、レベル計3から実測値Xk を受信する。
【0030】算出値Yk が閾値D以上である場合(S25でYES)、経過時間Tが最短時間S1 以上であるか否かを判断し(S26)、S1 未満である場合は(S26でNO)、算出値からは所定量の溶銑10を受銑したと判断できるが経過時間からは受銑過少であると判断できるという矛盾が生じるため、レベル計の誤検出、若しくは故障等が発生した、又は閾値、最長時間、若しくは最短時間等の設定にミスがあった可能性があると判断して、S22で、作業者に対して注意を促すべく、ブザー89を用いて警報を発する。
【0031】経過時間Tが最短時間S1 以上である場合(S26でYES)、算出値Yk と前回のYk-1 の差、即ち算出値の変化量U=Yk −Yk-1 を算出して、RAM85に記憶させ(S27)、変化量Uの絶対値|U|が許容範囲H以内であるか否か判断する(S28)。Hを超過している場合は(S28でNO)、算出値の変化量が過大であることから、レベル計の誤検出又は故障等によるエラーの可能性があると判断して、S22で、作業者に対して注意を促すべく、ブザー89を用いて警報を発する。
【0032】変化量Uの絶対値|U|が許容範囲H以内である場合(S28でYES)、鍋車5が所定量の溶銑10を受銑したと判断し、ハードディスク86から受銑終了信号を読み出し、駆動装置9へ送信して(S29)、S14へ戻り、次の受銑のための初期化を行う。このとき、駆動装置9は、傾注樋4が他方に傾斜するよう傾注樋4を傾動する。傾注樋4に供給された溶銑10は、傾注樋4が他方に傾斜しているため、他方の溶銑出口の下に位置する鍋車5に受銑される。
【0033】以上のような受銑方法は、レベル計3が計測した湯面レベルの実測値の誤差を低減した算出値と、制御部8の計時部82が計測した経過時間とを用いて受銑を制御するため、実測値の誤差による受銑ミス又は事故等を防止して、確実に、また安全に受銑作業を行うことができる。なお、前記デジタルフィルタの代わりに、n+1回分の実測値の平均値を算出するYk =(Xk +Xk-1 +Xk-2 +…+Xk-n )/(n+1)の式(k−n≦0のときXk-n =Xk )を用いた場合であっても、同様の効果を得ることができる。例えば5回分の実測値の平均値を算出する場合は、今回の実測値と、4回前までの実測値とを用いて、Yk =(Xk +Xk-1 +Xk-2 +Xk-3 +Xk-4 )/5の式を用いる。また、鍋車5毎に異なる前記パラメータを入力するよう構成しても良い。
【0034】図10は、本発明に係る受銑方法を用いて駆動装置9を制御した場合の経過時間と実測値又は算出値との関係を示すグラフである。横軸は経過時間T(ms)、縦軸は湯面レベルL(m)であり、深さ5mの鍋車5の受銑を行なったときに100ms毎に測定された実測値と、該実測値から、α=0.3として前記デジタルフィルタを用いて算出された算出値とを夫々プロットしてある。実測値は、L=3を超えた時点から大きく振動し始め、T=T1 で閾値Dを超過するが、T=T1 以降も振動が大きく、T=T1 〜T2 間の平均値は閾値D未満となることがわかる。また、該平均値はT=T2 以降に閾値Dを超えることもわかる。算出値は、L=3を超過すると振動し始めるが、振幅は小さく、T=T1 を越えても閾値D未満であって、T=T2 で閾値Dを超えることがわかる。図より、算出値は実測値より振幅が小さく、湯面レベルの平均的な値を示していることがわかる。
【0035】なお、前記受銑装置に撮・映像手段を追加して、作業者が受銑作業場の状況を制御室から監視するよう構成する場合は、作業の確実性及び安全性等を更に向上することができる。また、前記受銑装置に重量計を追加して、鍋車の重量を併用して制御する場合は、受銑量をより精密に計測して受銑することができる。
【0036】
【発明の効果】本発明の受銑方法によれば、鍋車内の溶銑の湯面レベルを測定し、実測値の誤差を低減した算出値を算出し、受銑開始からの経過時間を計測し、該計測時間及び前記算出値に基づいて傾注樋を傾動することにより、例えば作業者は、鍋車内の溶銑が所定量に到達したときの湯面レベルと、受銑開始から該湯面レベルに到達するまでの最長時間及び最短時間と、チャタリング又はフォーミング等が発生したとき及び発生しなかったときにレベル計の実測値が変動する変化量とを、実験を繰り返すことによって予め求めておき、作業性又は安全性等を考慮して、前記湯面レベルを算出値の閾値とし、前記変化量の許容可能な最大範囲を、今回の算出値と前回の算出値との差、即ち算出値の変化量の許容範囲とする。
【0037】受銑中の鍋車の受銑開始からの経過時間が最長時間以上に達した場合は、作業者に注意を促すための警報を発する。経過時間が最長時間未満であって、算出値が閾値未満である場合は、受銑を継続する。経過時間が最長時間未満であって、算出値が閾値以上に到達した場合は、傾注樋を傾動して他の鍋車の受銑を開始するが、算出値が閾値以上に到達した場合であっても、経過時間が最短時間以上に達していない場合は、作業者に対し警報を発する。また、算出値が閾値に到達した場合であっても、算出値の変化量が許容範囲を越えている場合は、作業者に対し警報を発する。以上のことにより、鍋車に所定量の溶銑を安全に、また確実に受銑させることができ、更に、過剰な受銑及び過少な受銑を防止することができる。
【0038】また、算出値を、所定の係数を用い、実測値と前回の算出値との関係式で算出することにより、鍋車内の溶銑が所定量に到達したときの湯面レベルを算出値の閾値Dとし、例えばY0 =X1 と置き、Yk =αXk +(1−α)Yk-1 =α(Xk −Yk-1 )+Yk-1 の式を用いて、今回の湯面レベルを、前回の湯面レベルに、今回の湯面レベルと前回の湯面レベルとの差、即ち湯面レベルの変化量を加算したものと考えて、該変化量を係数αで調整することによって、実測値の誤差を低減し、Yk ≧Dのとき鍋車内の溶銑が所定の受銑量に到達したと判断するため、実測値の誤差を低減した算出値を用いて、所定量の受銑を確実に行うことができる。また、αの値を、例えば予め実験を繰り返すことによって最適化しておく場合は、前記変化量を係数αで調整して誤差を低減することができる。
【0039】また、算出値を、今回の実測値とn回前までの実測値との関係式で算出することにより、鍋車内の溶銑が所定量に到達したときの湯面レベルを算出値の閾値Dとし、また、k−n≦0のときは例えばXk-n =Xk と置いて、Yk =(Xk +Xk-1 +Xk-2 +…+Xk-n )/(n+1)の式を用いてn回分の実測値の平均値を算出して誤差を低減し、Yk ≧Dのとき鍋車内の溶銑が所定の受銑量に到達したと判断するため、誤差低減のための係数を予め求めなくても、実測値の誤差を低減した算出値を用いて、所定量の受銑を確実に行うことができる。
【0040】本発明の受銑装置によれば、レベル計の実測値を用いて算出値を求め、受銑開始からの経過時間を計測し、該経過時間及び前記算出値を用いて傾注樋の傾動を制御する手段を備えることにより、レベル計の実測値を用いて該実測値の誤差を低減した算出値を求める演算手段と、鍋車の受銑開始からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間及び前記算出値を用いて、受銑の終了若しくは継続、又はエラーを判断する判断手段と、判断した結果に基づいて作業者に警報を発し、又は傾注樋を傾動させる手段とを制御部として構成して、レベル計及び傾注樋傾動手段に接続することができるため、高価なロードセルを用いなくても、鍋車に所定量の溶銑を安全に、また確実に受銑させることができ、また、装置の構造が簡易である等、本発明は優れた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成13年6月14日(2001.6.14)
【代理人】 【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫 (外1名)
【公開番号】 特開2002−371309(P2002−371309A)
【公開日】 平成14年12月26日(2002.12.26)
【出願番号】 特願2001−180792(P2001−180792)