| 【発明の名称】 |
高炉炉内溶融状況の推定方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】秋山 義憲
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| 【要約】 |
【課題】炉下部における炉内の溶融状況、とくに溶銑と溶滓の生成バランスを、簡便にかつ正確に把握するための推定方法を提案すること。
【解決手段】休風時における炉底側壁部の上昇温度を測定して炉周方向における昇温分布を求め、その昇温分布に基づいて出銑孔前フリースペースの形態を推定し、そのフリースペースの形態によって、各出銑口付近および炉周方向全周の溶銑・溶滓の生成状況を推定することからなる高炉炉内溶融状況の推定方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高炉内の炉下部における溶銑,溶滓の生成状況を推定するに当たり、休風時における炉底側壁部の上昇温度を測定して炉周方向における昇温分布を求め、その昇温分布に基づいて出銑孔前フリースペースの形態を推定し、そのフリースペースの形態によって、各出銑口付近および炉周方向全周の溶銑・溶滓の生成状況を推定することを特徴とする高炉炉内溶融状況の推定方法。 【請求項2】 上記フリースペースFsは、実質的に高炉内炉下部に形成されるコークス充填層とマッド堆積層との間に形成される空間を意味するものである請求項1に記載の推定方法。 【請求項3】 炉底側壁部の上昇温度から、その上昇温度に相当する湯溜まり深度を求め、その湯溜まり深度によってフリースペースFsの形態を把握することを特徴とする請求項1または2に記載の推定方法。 【請求項4】 上記湯溜まり深度は、炉周方向の各測定点において、上記上昇温度に対応する炉芯方向への相対長さを、炉底部水平断面上に図示して表わされるものである請求項3に記載の推定方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高炉炉内溶融状況の推定方法に関し、とくに炉下部におけるフリースペースの大きさ等を推定することによって、溶銑,溶滓の生成状況、即ち装入物の溶融状況を把握するための方法を提案する。 【0002】 【従来の技術】高炉内の炉床部に貯留されている溶銑および溶滓 (以下、単に「出銑滓」という) は、一般に、炉下部に設けられている出銑口から出銑滓として排出されるのが普通である。この出銑滓の排出制御のための従来技術としては、例えば、特公昭63−65730号公報に記載されているような方法がある。この従来の技術は、前記公開公報の記載によれば、羽口からの送風量と出銑孔深度とを相対的に制御する方法である。例えば、出銑孔深度が浅くなったときには、羽口からの送風量を減少することにより、出銑孔近傍のガスの流れを制御して、出銑孔深度を深くする制御を行うか、または、出銑の末期において、出銑孔からガス吹きが生じる、いわゆる荒出の状態になった場合、羽口からの送風量を減少することにより、炉床部に貯留している溶銑,溶滓のレベル、つまり液面を安定させ、これによってガス吹きを抑制するという制御方法を提案している。 【0003】上述した従来の出銑滓の制御方法は、上述したところからわかるように、出銑孔深度が浅くなったときには羽口からの送風量を減少し、出銑孔近傍のガス流れを抑制することにより出銑孔深度が深くなるように制御し、逆に、出銑孔深度が深くなったときには、羽口からの送風量を増加することにより出銑孔近傍のガス流れを活発にすることで、出銑孔深度を浅くなるように制御する方法である。しかしながら、こうした制御方法を実行するにしても、炉内の状況とくに炉下部の溶銑,溶滓の溶融状況が正確に把握できていないと、送風量変更の基準が得られないことになり、安定した高炉の操業ができなくなる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】この点に関し、従来は、高炉の炉体や炉底部における炉壁の温度を測定し、炉操業履歴を加味した複雑な伝熱計算等を行った上で、炉内 (溶融) 状況を推定し、上記出銑滓排出制御に反映させている。しかしながら、このような方法は、比較的正確な情報が得られるが、■もともとは、炉壁れんがの損耗状況を知るための方法であること、■解析が非常に複雑で多くの時間と労力を必要とすること、■局部的な損耗れんがの様子を知るのには適しているが、高炉の炉内全体とくに炉下部炉周方向における溶銑,溶滓の生成状況を全体的にかつ簡便に把握することはできないし適してもいない、という問題があった。 【0005】本発明の目的は、炉下部における炉内の溶融状況、とくに溶銑と溶滓の生成状況を、簡便にかつ正確に把握するための推定方法を提案することにある。本発明の他の目的は、炉下部におけるフリースペースの正確な形態を簡便に知るための方法を提案することにある。本発明のさらに他の目的は、フリースペースの形態の把握を通じて、コークス充填層の存在形態と、炉壁れんがの損耗の状態を把握することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上掲の目的の実現に向け鋭意検討し、従来技術が抱えている上述した問題点の克服に努めた結果、発明者らは、下記要旨構成に係る本発明に想到した。すなわち、本発明は、高炉内の炉下部における溶銑,溶滓の生成状況を推定するに当たり、休風時に炉底側壁部の上昇温度を測定して炉周方向における昇温分布を求め、その昇温分布に基づいて出銑孔前フリースペースの形態を推定し、そのフリースペースの形態によって、各出銑口付近および炉周方向全周の溶銑,溶滓の生成状況を推定することを特徴とする高炉炉内溶融状況の判定方法である。 【0007】なお、本発明において、上記フリースペースFsは、炉内炉下部に形成されるコークス充填層とマッド堆積層との間に形成される空間を意味するものであり、そして、炉底側壁部の上昇温度から、その上昇温度に対応する湯溜まり深度を求め、その湯溜まり深度によって、前記フリースペースFsの形態を把握するものである。なお、上記湯溜まり深度は、炉周方向の各測定点において、上記上昇温度に対応する炉芯方向への相対長さを、炉底部水平断面上に図示して表わされるものである。なお、休風時に測定する炉底側壁部の上昇温度は、炉体の鉄皮に冷却水を散水して冷却する、いわゆる鉄皮冷却を中断した時に上昇する温度で表わされるものである。 【0008】 【発明の実施の形態】図1は、高炉の羽口から炉床部までを概略的に示した縦断面図である。この図に明らかなように、高炉炉腹部の炉壁1中には、全周方向に熱風送風口としての羽口2が配設されている。この羽口2からは、炉内に約1000℃の高温送風ガスが供給される。そして、この羽口2から炉内に吹き込まれた熱風により、羽口先の炉内にはレースウェイ3と呼ばれる高熱空間部が形成されている。 【0009】一方、前記羽口2より下方では、装入物のうちのほぼコークスだけからなるコークス充填層4が形成されている。これは、前記レースウェイ3での高温加熱によって鉱石の方は溶融し、それが溶銑および溶滓、つまり溶銑滓9として炉床部に流下して白熱コークスのみが残ったために形成された領域である。また、炉床部は、不定形耐火材料であるマッドの堆積層にて覆われており、マッド堆積層5を構成している。このマッドは、出銑口からマッド堆積層5まで穿設された出銑孔7を閉塞するために用いられたものが堆積して形成されたものであり、このマッド堆積層5が、本来の炉床部をカバーした状態になっている。そして、仮りの炉床部8、つまり前記マッド堆積層5の上に溶銑,溶滓 (以下、単に「溶銑滓9」という) がある程度溜まったら、前記炉壁1からマッド堆積層5まで出銑孔7を穿孔し、貫通した前記出銑孔7から溶銑滓9を出銑滓として排出するようになっている。 【0010】ところで、出銑滓の量は、一般に、溶銑滓が貯留している炉床部のうち、図1に示すように、コークス充填層4とマッド堆積層5との間の空間 (即ち、フリースペースFsという)6における溶銑滓9の流動性が関与していることが知られている。なお、このフリースペースFsとは、単純に前記各層4,5の間に挟まれた空間というだけでなく、実質的には層をなさない浮遊状態にあるコークス間の隙間といった空間も含んでいるものである。いわゆる、このフリースペースFs (空間6) が大きいと、溶銑滓9の流動性が向上して出銑滓量が増加するし (排銑滓性が向上する) 、逆に、このフリースペースFs (空間6) が小さいと、溶銑滓9の流動性が低下して出銑滓量が減少する (排銑滓量が低下する) と考えられる。かかる溶銑滓の流動性に関しては、主として粘性の大きい溶滓の方が影響を受けやすいのであるが、いずれにしてもこのフリースペースFsをコントロールすることができれば、出銑滓量をも自在に調整できることがわかる。 【0011】ところで、このフリースペースFsを構成する要素は、前記コークス充填層4とマッド堆積層5との相対的な位置関係である。例えば図1において、コークス充填層4の出銑孔側の端部をマッド堆積層5の位置まで変位させることができれば、フリースペースFsは狭まるし、一方、マッド堆積層5をコークス充填層4側の端部に向けて迫り出させても、かかるフリースペースFsは狭まる。但し、発明者を含めて、業界技術者にとって、このフリースペースFsの形態(大きさ、炉周方向での分布、各出銑孔付近での形状等) を正確に測定することはもちろん、その実態を正確に把握することは困難であり、それ故に適切な該フリースペースFsの制御、ひいては望ましい溶銑滓9の生成,排出の制御も困難である。 【0012】この点に関し、発明者は、高炉の休風時に、炉体冷却水の供給を停止するか大幅に減少させたときに、炉底部炉壁温度の推移、とくに一定時間を経過した時点における温度上昇の幅について、それの炉周方向における複数個所での温度 (上昇した温度) を測定したところ、この上昇温度の炉周方向における分布と前記フリースペースFsの形態、即ち炉周方向の分布とがよく一致することを知見し、本発明に想到した。以下に、かかる知見と溶融状況推定の関連について詳しく説明する。 【0013】一般に、高炉の休風時 (トラブル等による短時間の突発休風時は除く) には炉体の冷却水を絞るのが普通である。このため炉壁は、高温の炉内容物からの熱により、温度上昇を招く。この炉壁温度の上昇幅の、炉周方向における偏差 (分布) というのは、炉体の損耗状況 (炉壁れんが厚み) によっても当然左右されることになるが、炉内容物、特にコークス充填層の形状や位置、あるいは偏析や活性の度合いによっても変わってくるものと想像できる。そこで発明者は、休風時における炉底側壁温度の上昇温度について、炉周方向の複数個所の温度を測定し、このときの温度分布に基づき、炉底部の活性な部分と不活性な部分の分布を調査することにした。ここで、活性な部分とは、十分に熱をもち、コークスの入れ替わりが盛んで溶銑,溶滓の流動が盛んな部分、つまり,上述したフリースペースFsの大きな部分と考えられる部分である。 【0014】即ち、高炉休風時は、炉内下部の溶銑・溶滓の流れはほとんどないものとすると、炉内が活性な部分では、不活性な部分に比べて炉壁れんが中に埋設した温度計に供給される熱量が大きいと考えられる。逆に、不活性な部分の熱量は小さいものと考えられる。この場合、炉底部炉壁れんがはあまり侵食されていない健全な状態で、凝固層など炉壁への付着物の量、厚みなども炉内円周方向で均等であるものと仮定すれば、休風時に温度上昇の大きな個所は、その部分の炉内には多量の溶銑,溶滓が存在していて活性な状態にあるものと推測できる。従って、いわゆる活性な部分とは、図2(a) に示すように、溶銑,溶滓の量が多く、いわゆるフリースペースFs が大きいところである。一方、不活性な部分とは、同図(b)に示すように、溶銑,溶滓の量が少なく、フリースペースFsが小さい部分と言うことができる。また、溶銑・溶滓に流動が生じている時も同様な傾向を示し、活性な部分とは、溶銑・溶滓の流動が活発であるため、炉壁れんが中に埋設した温度計に供給される熱量が大きくなり、このような流動が活発な場所とはフリースペースFsが大きいため生じていると言える。一方、フリースペースFsが小さな部分では、溶銑・溶滓の流動も小さく留まることになり、温度計に供給される熱量も小さくなる。 【0015】このような考え方の下で、炉周方向における各測定点n1〜n6での炉壁の上昇温度 (休風前温度−休風後一定時間経過後の温度) t1〜t6を測定し、この上昇温度t1〜t6に見合う相対長さ (以下、これを「湯溜まり深度」という)l1〜l6を、それぞれの測定位置に対応する位置から炉底部水平断面上の炉芯方向に向かってプロットし、それぞれの個所の上昇温度の分布を図示したものを図3に示す。この図3は、各測定点における上昇温度の分布、即ち炉周方向における水平断面におけるフリースペースFsの分布状況、コークス充填層の位置や形状 (特に、中心からのずれ) を示すものであり、このような方法によって、フリースペースFsの形態、ひいては炉内溶融状況というものを比較的正確に推定することができるようになる。なお、上述した説明からわかるように、上記湯溜まり深度は、炉周方向の各測定点において、上記上昇温度に対応する炉芯方向への相対長さを、炉底部水平断面上に図示して表わされるものである。 【0016】次に、上述した湯溜まり深度 (l1〜l6) とフリースペースFsとの関係についてさらに説明する。即ち、炉下部の溶銑,溶滓の生成バランスを知るためには、該フリースペースFsの大きさに相当する湯溜まり深度l1〜l6を図示することが有効である。以下の説明は、上述した炉底側壁温度について、より下部 (図4のH2の位置) に設置した温度計による測定結果である。このH2レベルというのは、炉底よりも数段低いレベルにあり、この位置では上方の温度測定位置 (H4,H5) と比較すると、横からの熱供給というよりも炉床からの熱の供給の方が大きいと考えられる個所である。なお、図4は、炉底部の凝固層が薄い (湯溜まり深度が大きい) 個所では、凝固層が厚い (湯溜まり深度が小さい) 個所に比べて、れんがを通して温度計に伝わる熱量が大きく表れることを説明したものである。 【0017】また、図5は、炉周方向における複数の測定点n1〜n6での温度上昇分t1〜t6に相当する湯溜まり深度l1〜l6を図示したものであり、炉周方向における、湯溜まり深度の大きい部分 (l1〜l3) と小さい部分 (l4〜l6) が明らかにわかり、これがフリースペースFsの大きい部分、小さい部分となる。つまり、炉底側壁部の前記上昇温度の測定点から求められる湯溜まり深度l1〜l6を知ることにより、フリースペースFsの分布状況 (形態) をある程度正確に把握することができるようになるのである。 【0018】なお、この図5は、炉周方向における各温度測定点n1〜n6における湯溜まり深度を上述したと同じように数値化して炉芯方向に向かってプロットした図である。この図に示すように、湯溜まり深度は、そのままフリースペースFsの形態とよく一致しており、それ故に、湯溜まり深度を知ることができれば、フリースペースの分布状況を知ることができる。このようにして、炉周方向の全周に亘ってフリースペースFsを、ひいてはコークス充填層の形態というものを簡便に推定することができるようになる。 【0019】 【実施例】図6は、図4に示した炉底側壁部分における温度分布を図示したもので、休風時に高炉炉底の鉄皮部分への散水冷却を中断して、この冷却を中断した期間の温度上昇を測定した結果を示している。この図に明らかなように、休風後の冷却中断により温度変化 (温度上昇) が見られ、この温度変化をもとに湯溜まり深度が推定できるようになる。ここで、高炉炉底部の鉄皮部分への散水冷却中断は、所定の時間で良く、鉄皮温度の管理限界下で、炉底部を同一条件下で温度測定することで上昇温度データとして利用すればよい。このことから、湯溜まり深度の大きい所は上昇温度も大きく、湯溜まり深度の小さな所は上昇温度も低いということがわかった。 【0020】次に、図7は、この休風時における上昇温度の炉体円周方向の分布を図示したものである。図7(a)は、4300m3級の高炉の定期休風時点における上昇温度、すなわち湯溜まり深度をプロットすることにより、コークス充填層の壁と炉壁 (マッド堆積層先端) との空間であるフリースペースFsの形態を図示したものである。そして、同図 (b) は、別な時間の定期休風時点における湯溜まり深度をプロットすることにより、コークス充填層の壁と炉壁 (マッド堆積層先端) との空間であるフリースペースFsの形態を図示したものである。 【0021】このようにして本発明方法によれば、炉周方向の各測定点における上昇温度を測定するだけで、炉周方向の相対的な湯溜まり深度として図示することができ、ひいては炉周方向におけるフリースペースFsの分布、大きさ、さらにはコークス充填層の形態をも比較的簡便に模式化することができる。そして、この模式図をもとに、それぞれの時期における炉下部の溶銑,溶滓の生成状況やその流動性が明瞭に把握でき、高炉の安定操業に寄与するための結うような情報が得られるようになる。 【0022】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、高炉内の溶銑,溶滓の溶融状況が簡便な方法で容易に推定することができる。とくに本発明方法によれば、炉底部炉壁温度上昇の測定値に基づき湯溜まり深度を求めれば、炉内出銑孔前のフリースペースについての炉周方向における形態分布を知ることができるから、炉底部における比較的正確な溶融状況を把握できると共に、出銑滓の制御、羽口送風制御等の高炉操業基準としての有用な情報を提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001258 【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年8月17日(2000.8.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080687 【弁理士】 【氏名又は名称】小川 順三 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−60811(P2002−60811A) |
| 【公開日】 |
平成14年2月28日(2002.2.28) |
| 【出願番号】 |
特願2000−247531(P2000−247531) |
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