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【発明の名称】 高炉への微粉炭多量吹込みにおける低シリコン操業方法
【発明者】 【氏名】早坂 祥和

【氏名】松原 真二

【氏名】森 侯寿

【氏名】佐藤 道貴

【氏名】村井 亮太

【氏名】下村 昭夫

【要約】 【課題】原料の配合構成を調整することにより、微粉炭を180kg/t−溶銑以上吹き込む高炉操業において低Si操業を安定して、且つ低コストで行なう高炉の操業方法を開発する。

【解決手段】高炉から排出されるスラグ比を270〜330kg/t−溶銑の範囲内にし、当該スラグ中のMgO含有率を5.5〜7.0mass%の範囲内に調整し、そして、溶銑のSi濃度を0.3mass%以下に制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 微粉炭を180kg/t−溶銑以上吹き込む高炉操業において、高炉から排出されるスラグ比を270〜330kg/t−溶銑の範囲内にし、当該スラグ中のMgO含有率を5.5〜7.0mass%の範囲内に調整し、そして、溶銑のSi濃度を0.3mass%以下に制御することを特徴とする、高炉への微粉炭多量吹込みにおける低シリコン操業方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、微粉砕した石炭である微粉炭(PC)を羽口から多量に吹き込む高炉操業において、高炉のスラグ比上限値を厳しく制限することなく、低シリコン操業を安定して行なう技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高炉における溶銑製造コストの削減と、更にはコークス炉の寿命延長を図ることにも寄与することを目的として、高炉羽口から微粉炭を多量に吹き込み、コークス使用量を低減させる、即ちコークス置換率を高めるための高炉の操業方法が開発されてきた。高炉への微粉炭吹込み設備の一例を図1に示す。同図に概略縦断面図を示すように、高炉1の下部に設けられた炉内への送風用ブローパイプ2の側壁を斜めに貫通挿入して微粉炭吹込み用ランス3を設け、この微粉炭吹込み用ランス3からブローパイプ2内を流れる熱風7中に微粉炭5を吹き出させて、羽口4から炉内へ吹き込む。こうして吹き込まれた微粉炭5は、ブローパイプ2及び羽口4、並びに羽口4の前方に形成されるレースウェイ6内において燃焼するが、一部分は未燃分がチャーとなって、あるいは石炭中の揮発分が不完全燃焼して煤となり、これらは炉内に持ち込まれる。未燃チャー及び煤は炉内で燃焼されるが、高炉に吹き込まれる微粉炭の量が多くなると、これらは完全には燃焼消費されずに、炉内に蓄積されるか、又は炉頂部よりダストの一部となって排出される。従って、微粉炭の多量吹込みの効果を発揮させるためには、微粉炭の反応効率の向上を図って、コークス置換率を上昇させると共に、安定した高炉操業の確保が必要である。
【0003】ところが、多量の微粉炭を吹き込む高炉の操業は一般に、原燃料の性状や出銑滓の影響を受け易く、操業変動が増大する。微粉炭の吹込み量を増やしていくと、高炉内の鉱石/コークス比(O/C)の増加により融着帯が上方に移動すると共にその厚さが増加し、また熱流比(固体の熱容量/ガスの熱容量)が低下し、そのために炉頂排ガスの持ち出し顕熱が増加して熱効率が低下する。このような操業変動の増大や熱効率の低下対策として、炉熱レベルを上げて操業の安定化を図る。その結果、溶銑温度レベルが上昇して溶銑中Si濃度が上昇する。また、微粉炭の吹込み量を増やしていくと、鉱石/コークス比の増加、コークスの劣化あるいは微粉炭の未燃チャーの増加により、高炉下部炉芯部は通気・通液性の悪化により不活性化する。その結果、スラグがレースウェイ近傍を流下するようになり、スラグ中SiO2((SiO2)で表記する)が下記化学式で表わされる反応により還元されて、Siが溶銑に移行し、溶銑のSi濃度が上昇する。
【0004】
(SiO2)+C(コークス又はPC)
=SiO(g)+CO(g) ………… (1)
SiO(g)+C = Si+CO(g) ………… (2)
溶銑のSi濃度上昇は、高炉内でSiO2を還元するために多量の熱量が消費されたことを意味し、また所謂溶銑予備処理工程における脱珪剤及び脱燐剤使用量の増加をきたし、莫大なコストデメリットを招く。そこで、このデメリットを抑制するために、溶銑のSi濃度を低下させることが重要となる。
【0005】溶銑のSi濃度を低下させる技術は多数提案されている。
【0006】従来の一般的方法として、溶銑温度を低下させる方法が行なわれている(以下、「先行技術1」という)。しかし、この方法では、スラグ粘性の悪化(増大)や、高炉内付着物の脱落等による溶銑温度の急激な低下が引き起こされ、操業リスクが増加するという欠点がある。特に、微粉炭の多量吹込み時にはその影響が大きくなる。溶銑Si濃度低下の他の方法として、特開昭57−237402号公報には、微粉炭と共に酸化鉄を吹込み、羽口先の高温帯において、脱珪反応:Si+2(FeO)=(SiO2)+2Feにより溶銑中Siを酸化低減させる方法が提案され(以下、「先行技術2」という)、先行技術2を更に改善した特開昭59−153812号公報には、微粉炭に、酸化鉄と共にCaO源又はMgO源物質を混合して吹き込むことにより、上記高温帯におけるスラグの適切な高塩基度化を図り、SiO(g)+2(FeO)=(SiO2)+2Fe反応及び上記脱珪反応を促進すると共に、上記2反応で生成する高活量のSiO2を高塩基度スラグに速やかに吸収させて再加珪反応を阻止するという方法が提案されている(以下、「先行技術3」という)。また、特開昭61−37902号公報には、微粉炭と共にMn鉱石粉を吹込み、羽口先の高温帯において、(MnO)及び(FeO)により脱珪反応を起こさせて、溶銑中Siを酸化低減させる方法が提案されている(以下、「先行技術4」という)。しかしながら、これらの方法では酸化物は鉱石の粉砕工程や粉砕されたものの羽口への搬送設備の増設が必要となり、溶銑製造コストが非常に高くなる。
【0007】また、特開平5−78718号公報には、吹き込まれる微粉炭中SiO2の(1)及び(2)式による溶銑への加珪を抑制するために、SiO2含有率の高い微粉炭と低い微粉炭とを別々のホッパーに入れ、目標溶銑Si濃度に応じて使用する微粉炭を選択する方法が提案されている(以下、「先行技術5」という)。しかし、この方法では別個のホッパーを設置し、装入を調節しなければならないので、設備コスト等が高くなる。また、特開平7−70616号公報には、作り分けのベース溶銑Si濃度を低減させる方法として、コークスに使用する非微粘結炭よりもSiO2含有率が低い微粉炭を使用することにより、溶銑Si濃度を低下させる方法が提案されている(以下、「先行技術6」という)。しかし、この方法によるとSiO2含有率の低い石炭が必ずしも安価ではなかったり、使用原料の制約を受けて原料需給上の制約が多くなり、長期間継続するのは現実的ではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、先行技術1〜先行技術6にはいずれも一長一短があり、微粉炭の多量吹込みが安定して行なわれ、総合的コストメリットが得られるような高炉の低Si操業技術は見当たらない。高炉への微粉炭多量吹込み操業において、先行技術で提案されている低Si操業の実施に関連する基本事項を、下記(1)及び(2)式: (SiO2)+C(コークス又はPC)
=SiO(g)+CO(g) ………… (1)
SiO(g)+C = Si+CO(g) ………… (2)
に基づく反応を用いて整理すると、次の通りである。
【0009】基本事項1:羽口先での反応領域の温度を低下させて、(1)式及び(2)式の反応速度及び化学平衡恒数が小さくなる方向にコントロールして、溶銑中Si濃度を下げること、基本事項2:スラグ中SiO2の活量を小さくして、(1)式の化学平衡恒数が小さくなる方向にコントロールし、これによって(2)式の化学平衡恒数が小さくなる方向にコントロールして、溶銑中Si濃度を下げること、及び、基本事項3:SiOガスと溶銑との接触を抑制することにより(2)式による反応量を低減させて、溶銑中Si濃度を下げること。
【0010】上記基本事項1〜3項の中でも、羽口先での反応領域の温度を低下させることが、高炉から排出される溶銑のSi濃度低下に対して有効な手段であるために、従来この方法が広く採られてきた。
【0011】ところが、前述したように、溶銑温度を低下させた高炉操業には、スラグの粘性増加や炉内付着物の脱落等による溶銑温度の急激な低下を招くことがあり、操業リスクを増加させるという欠点を伴う。このような傾向は、特に微粉炭の吹込み量が多い場合に顕著になる。
【0012】そこで、本発明者等は、微粉炭多量吹込みの高炉操業において、特別な設備の新設あるいは改造をすることなく、高価な原料を特別に調達することもなく、予め与えられた所定の主原料と副原料等を用い、それら原料の配合構成の調整手段により、高炉の低温操業時に発生し易い炉内付着物の脱落事故等を引き起こすことなく、更に炉内滴下帯における溶銑滓の降下流路が、羽口先の高温領域に近づくことなく、できるだけ炉芯部を降下するようにして、上記基本事項3のSiOガスと溶銑との接触を抑制することができる技術を開発することを本発明の課題とした。
【0013】こうして、本発明の目的は、高炉への微粉炭多量吹込み時における低シリコン操業を安定して、且つ低コストで行なうことができる高炉の操業方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上述した背景と問題点を考慮した結果、本発明者等は、特に安定した原燃料需給下における原燃料及び設備等の低コスト維持を前提条件として、先ず、高炉スラグの粘性を適切に下げるためのその成分組成の調整方法について検討することにした。
【0015】高炉で生成するスラグの成分組成は、使用する主原料中のスラグ化成分の含有率、当該主原料の配合構成、副原料銘柄の配合構成、並びにコークス及び微粉炭中のスラグ化成分の含有率等に依存して変化する。そして、高炉スラグの粘性は、溶銑温度の低下につれて上昇し、更にスラグの成分組成に依存して変化する。
【0016】一般に、高炉スラグの主要構成成分は、SiO2、CaO、MgO及びAl23の4成分からなる。この内、SiO2及びCaOの含有率は、スラグの塩基度(CaO/SiO2)が溶銑成分中S濃度の重要な決定要因の一つであるから、その塩基度設定値の制約を受ける。従って、SiO2及びCaOの含有率をスラグ粘性の調整因子とするのは必ずしも適切でない。スラグのAl23含有率は、Al23が主として、コークス中の灰分や鉱石中に含まれているので、原燃料需給バランスにより変動し、必ずしも容易に調整し得るものではない。
【0017】これに対してスラグ中MgO成分の機能は、スラグの粘性調整にある。ところが、スラグ中MgO含有率の設定は、一般にMgO−SiO2系である蛇紋岩やMgO−CaO系であるドロマイトを、スラグ比が目標上限値以下を満たす条件下において、そのスラグ中MgO含有率が最小値となるように、そのときの主原料配合率に応じて高炉装入時に調整される。そこで、本発明者等は、スラグ中MgO含有率の上昇によるスラグの粘性低下機能を再検討することに着眼した。
【0018】溶融スラグ中のMgO濃度を高めることにより、■スラグの粘性を低下させること、及び■Mgガス蒸気圧を高め、前記(2)式の反応におけるSiOガスの分圧を下げてSiOガスの活量を低下させること、により、スラグ中SiO2の解離による溶銑中へのSiの移行を抑制して溶銑中Si濃度の低下にも効果を発揮させ得ることに着眼した。また、このように溶融スラグのMgO濃度を高めれば、従来の微粉炭多量吹込み操業におけるほど高炉のスラグ比を低く制限して炉芯部の通気抵抗を低下させなくても、溶銑のSi濃度を低く抑えることができることを知見した。
【0019】この発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その特徴は次の通りである。即ち、この出願に係る発明の高炉への微粉炭多量吹込みにおける低シリコン操業方法は、微粉炭を180kg/t−溶銑以上吹き込む高炉操業において、高炉から排出されるスラグ比を270〜330kg/t−溶銑の範囲内にし、スラグの成分組成について、MgO含有率を5.5〜7.0mass%の範囲内に調整し、そして、溶銑のSi濃度を0.3mass%以下に制御することに特徴を有するものである。また、上記発明において、スラグ比を300〜330kg/t−溶銑に制限すれば、高炉操業の安定化上望ましく、更に、スラグ比が270〜330kg/t−溶銑の範囲内、あるいはスラグ比が300〜330kg/t−溶銑の範囲内のいずれにおいても、スラグの成分組成について、塩基度を1.20〜1.30の範囲内、且つAl23含有率を13.0〜16.0mass%の範囲内に制限すれば、高炉への装入原料需給上ないし高炉操業の安定化上から一層望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】図1に示した高炉における微粉炭の吹込み設備において、この発明の方法を下記の通り行なう。高炉1の羽口4部に取り付けられたブローパイプ2に斜めに貫通して装着された微粉炭吹込み用ランス3から、微粉炭を180kg/t−溶銑以上、熱風7と共に、高炉1内に吹き込み、溶銑を製造する。この高炉操業において、出銑滓口8から排出される溶融スラグの成分組成において、MgO含有率を5.5〜7.0mass%の範囲内に入るように、しかも、スラグ比が270〜330kg/t−溶銑を満たすように、主原料及び副原料の銘柄及び配合率を調整する。また、炉熱レベルは、高微粉炭比吹込み操業において従来採用されているような高レベル、あるいは低Si溶銑製造操業において従来採用されているような低温出銑操業は行なわない。その他の高炉操業条件については特別のアクションを採る必要はない。
【0021】上記操業条件下における実用高炉4基における操業データを図2〜図5に図示する。
【0022】図2は、スラグのMgO含有率とスラグ比との関係を示し、MgO含有率の増加と共にスラグ比が増加している。同図におけるスラグ比のバラツキは、主に高炉間における主原料の構成差に起因するものである。
【0023】図3は、スラグのMgO含有率と溶銑Si含有率との関係を示し、MgO含有率の増加につれて溶銑Si含有率は低減し、MgO含有率が7mass%程度になると、溶銑Si含有率に極小値が存在することが推定される。同図における溶銑Si含有率のバラツキは、主に溶銑温度等高炉間における操業諸元差に起因するものである。
【0024】図4は、スラグのMgO含有率に対する当該スラグの粘度の計算値との関係を示し、MgO含有率の増加につれてスラグの粘度が低下することを示す。同図におけるスラグ粘度のバラツキは、主に高炉間における主原料の構成差に起因するものである。
【0025】また、図5は、スラグ比と炉下部における圧損比指数との関係を示す。ここで、圧損比指数1.00とは、高炉毎に固有の圧損比のベース値であり、スラグ中MgO含有率が5.5〜6.0mass%の範囲内にある操業条件下における炉下部圧損の平均値を、高炉毎に求めたものである。そして、圧損比指数が1.00より大きくなるほど、圧損が増大することを意味する。同図における炉下部圧損比指数のバラツキは、主に高炉間における操業諸元差に起因するものである。同図によれば、スラグ比が270kg/t−溶銑から330kg/t−溶銑程度まで増加する間において、炉下部圧損比指数はほぼ一定であり、スラグ比330kg/t−溶銑程度よりも大きくなると、炉下部圧損比指数が増大する。なお、従来一般に、スラグ比の増加につれて炉下部圧損は単調増大すると認められているが、図5で示される上記傾向は本発明における課題解決中に得られた新しい知見である。
【0026】上記実施形態をとることにより、高炉操業状態及び炉内反応等において下記特徴的現象がみられる。即ち、スラグの成分組成中、特にMgO濃度を通常操業におけるよりも高くして5.5〜7.0mass%の範囲にしたので、その粘性が低下すると共に、羽口先近傍の高温反応領域におけるMgの蒸気分圧が高くなる。スラグの粘性低下により炉芯部における通液性が改善され、溶融スラグが羽口先近傍の高温反応領域であるレースウェイ近傍を通らずにそのまま炉芯部を流下するようになるので、(1)式で示した(SiO2)の微粉炭やコークスによる還元反応が抑制されて、SiOガスの生成が抑制される。更に、この領域におけるMgの蒸気分圧の上昇により、SiOガスの活量が低下するので、(2)式で示したSiOガスの溶銑中Cによる還元反応が抑制されて、溶銑中Si濃度の上昇が抑制される。かくして、溶銑のSi濃度を0.3mass%以下に制御することが可能となる。また、上記の通り、炉芯部における通液性が改善されるので、スラグ量の上限を330kg/t−溶銑まで許容しても、操業の安定性を確保することができる。
【0027】なお、スラグの成分組成において、スラグ塩基度を1.20〜1.30の範囲内に限定することにより、溶銑のS含有率を所定の目標値以下にすることができ、またAl23含有率を13.0〜16.0mass%の範囲内に調整することは、鉄鉱石銘柄やコークス用原料炭銘柄を特定する必要がないことを意味し、使用する原燃料に自由度を与えることができ、且つスラグ粘性が上昇しない範囲内にあることを意味し、高炉操業を一層行ない易くなる。
【0028】このようにして、この発明の高炉操業方法により、微粉炭を羽口から多量に吹き込んでも、高炉のスラグ比上限を厳しく制限することなく、溶銑の低シリコン操業を安定して行なうことが可能となる。
【0029】
【発明の効果】上述した通り、この発明の方法によれば、微粉炭を180kg/t−溶銑以上という高水準の多量吹込み高炉操業において、高炉のスラグ比上限を厳しく制限することなく、溶銑のSi濃度を低く抑えることができる操業を、安定して行なうことが可能となる。このような高炉への微粉炭吹込み操業方法を提供することができ、工業上有用な効果がもたらされる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成13年6月1日(2001.6.1)
【代理人】 【識別番号】100116230
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 泰光
【公開番号】 特開2002−60810(P2002−60810A)
【公開日】 平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願番号】 特願2001−166132(P2001−166132)