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【発明の名称】 カルシウムイオン測定用組成物および測定方法
【発明者】 【氏名】今村 茂行

【要約】 【課題】

【解決手段】被検液を、キレート剤で処理したホスフォリパーゼDとホスフォリパーゼDの基質およびホスフォリパーゼDに作用せしめ、ホスフォリパーゼDの酵素活性を測定してなるカルシウムイオンの定量方法およびそのカルシウムイオン定量用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくともホスフォリパーゼD、リン酸モノエステラーゼ、ホスフォリパーゼDの基質、グリコールエーテルジアミン四酢酸、およびジエチレントリアミン五酢酸を含有することを特徴とするカルシウムイオン測定用試薬組成物。
【請求項2】 少なくともホスフォリパーゼD、リン酸モノエステラーゼ、ホスフォリパーゼDの基質、グリコールエーテルジアミン四酢酸、およびジエチレントリアミン五酢酸を含有するカルシウムイオン測定試薬組成物にカルシウムイオンを含有する試料溶液を添加した後、ホスフォリパーゼD生成物を測定することを特徴とするカルシウムイオンの測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検体中に含まれるカルシウムイオンの測定用試薬組成物ならびに該試薬組成物を用いる測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】血清または尿中に含まれるカルシウムイオンは、各種疾患の診断において有用な情報をもたらすため、その測定は、臨床検査分野において頻繁に行なわれている。各種疾患の例としてあげれば、低カルシウム血症として低蛋白血症、低リン血症、腎症、ネフローゼ、ビタミンD欠乏症、副甲状腺機能低下症、クル病等の疾患、高カルシウム血症としては、骨腫瘍、アジソン病、肺気腫、副甲状腺機能亢進症、腎不全等の疾患がある。生体成分中のカルシウムイオン測定方法としては、O-CPC(オルトクレゾールフタレインコンブレクソン)法が日常的に広く用いられている。この方法は、O-CPCがアルカリ性下でカルシウムイオンと反応して赤紫色の色素を生成するという原理に基づく発色法であるが、マグネシウムイオンの影響を受けるなど特異性に欠けることや、蛋白質や温度の影響を受けるなどの欠点がある。
【0003】そのため、近年、より特異性の高い酵素法が種々報告されている。これらの方法は、いずれも酵素のカルシウムイオンによって活性化される現象を利用した下記のとおりのものである。
(1)ホスフォリパーゼDを用いるものとして例えば特開昭62−195297号公報;レシチン、ホスォリパーゼDおよびコリンオキシダーゼからなる組成物、特開平4−187098号公報;コリン系リン脂質、ホスフォリパーゼD、コリンオキシダーゼ、界面活性剤および2価金属塩からなる組成物、特開平4−23999号公報;非天然型ホスファチジルコリン誘導体、ホスフォリパーゼDおよびコリンオキシダーゼまたはコリンデヒドロゲナーゼからなる組成物、特開平7−170999;キレート剤を含むカルシウムイオン測定試薬。
【0004】(2)ホスフォリパーゼA2を用いる方法として例えば特開平1−231896号公報;ホスフォリルコリンチオエステルを基質にしてホスフォリパーゼA2酵素活性を測定する方法、特開平5−168498号公報;基質としてコリンリン脂質またはエタノールアミンリン脂質を用いてホスフォリパーゼA2酵素活性を測定する方法。
(3)カルモジュリンを用いる方法として例えば特開昭62−36199号公報。
(4)ピルビン酸キナーゼを用いる方法として例えば特開平2−142498号公報。
(5)アミラーゼを用いる方法として例えば特開平2−276597号公報。
(6)トランスアミナーゼを用いる方法として例えば特開平5−219992号公報。
【0005】これらの方法において、(1)はカルシウムイオン以外の2価陽イオンの影響を受ける点や、活性調節剤としてのキレート剤により酵素が不安定化する問題が、(2)は血清等の検体中に存在する内在性ホスホリパーゼの影響を受ける問題が、(3)はカルモジュリンの入手が困難である点や、2段階の活性化を利用するため反応時間が長いという問題がある。(4)はカルシウムイオンによる阻害作用を利用したものであるため測定精度に問題があった。また、(5)は検体中に含まれる内在性の膵臓アミラーゼ、唾液アミラーゼ等の影響を受けやすいという欠点がある。さらに、(6)は生成物のひとつであるヒドロキサム酸の特異性の高い定量法がないこと、また、もう一方の生成物であるアンモニアのを定量する際、検体中の内在性アンモニアの影響を受ける等の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ホスフォリパーゼDのカルシウムイオンによる活性化反応に基づいた検体中のカルシウムイオンに特異性が高くて、高精度かつ簡便な測定方法、ならびに該方法に使用するカルシウム測定用試薬組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、本発明者は、多方面から検討した結果、カルシウムイオンに対する特異性を飛躍的に高めるために、ホスフォリパーゼDの活性調節剤としてのキレート剤に着目した。生化学反応に用いるキレート剤としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が汎用されるが、本キレート剤処理ではマグネシウムイオンとも反応し、正確なカルシウムイオンの測定が不可能(図1参照)であったが、ホスフォリパーゼDをグリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)処理することにより、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン等の2価陽イオンの中で、カルシウムイオンに対する特異性を飛躍的に高めることができ(図2参照)、血清等の検体を使用したとき正確にカルシウムイオンが定量できることがわかった。さらに、ホスフォリパーゼDをキレート剤処理することにより酵素が不安定になり、定量用試薬として長期保存に問題があったが、マグネシウムイオンを共存させることで試薬の保存安定性を高めることがわかり、本発明を完成させた。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成および好ましい形態について、さらに詳しく説明する。本発明に用いるホスフォリパーゼDは、酵素反応にカルシウムイオンが必須であるキャベツ、ストレプトマイセスsp(特開2000−270857号記載)、ノカルディア属(特開昭60−164483号記載)由来酵素を使用できるが、安定供給、安定性等より、ストレプトマイセス・クロモフスカス由来の微生物酵素が好ましい。
【0009】本発明に使用されるホスフォリパーゼDの基質は、ホスフォリパーゼDと酵素反応した後、分光学的な検出に変換できる反応生成物を生じるものであればよく、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルグリセロール等のリン脂質やパラニトロフェニルホスフォリルコリン等を使用することができるが、中でもホスフォリパーゼD反応の生成物をリン酸モノエステラーゼにより容易に分光学的に検出できる色原基を有し、入手が容易で、水溶性であり、さらに、安定性の良好なパラニトロフェニルホスフォリルコリンが好ましい。ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルグリセロール等のリン脂質を使用した場合には、ホスフォリパーゼDの生成物であるコリンをコリンオキシダーゼを用い酸化し、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼ作用で発色させることで分光学的にカルシウムイオンを定量することができる。
【0010】本発明の測定原理を、基質としてパラニトロフェニルホスフォリルコリンを用いた場合を下記の式で表す。
ホスフォリパーゼD、カルシウムイオンパラニトロフェニルホスフォリルコリン+水 → パラニトロフェニルリン酸+コリンリン酸モノエステラーゼパラニトロフェニルリン酸+水 → パラニトロフェノール(黄色)+リン酸【0011】本発明の試薬の各成分としては、ホスフォリパーゼDの基質であるパラニトロフェニルホスフォリルコリンを0.5から50mM、好ましくは1から10mM、ホスフォリパーゼDを0.05から10U/ml、好ましくは2から5U/ml使用すればいい。さらに、ホスフォリパーゼDの活性調節剤としてのキレート剤であるグリコールエーテルジアミン四酢酸を5から200uM、好ましくは10から80uM、ジエチレントリアミン五酢酸を1から50uM、好ましくは5から20uM使用すればいい。このキレート剤処理によりホスフォリパーゼDは不安定化するが、安定化剤としてマグネシウムイオンを使用することができる。その濃度は1から300mM、好ましくは10から100mMである。リン酸モノエステラーゼとしては微生物、動物起源の各種酵素でアルカリホスファターゼ、中性ホスファターゼが使用できるが、安定性に優れている大腸菌由来のアルカリホスファターゼが好ましい。その濃度は0.1U/mlから20U/ml、好ましくは0.5から5U/mlである。緩衝液としては酵素活性を安定に保ち、その他の試薬を溶解し、所定のpHが得られるものであればいかなるものでも使用できるが、各種グッド緩衝液、トリス緩衝液、ジメチルグルタル酸緩衝液等が挙げられる。そのpHは5から9、好ましくは6から7.5であり、濃度は5から500mM、好ましくは20から100mMである。
【0012】本発明の試薬を用いてカルシウムイオンを定量するには、例えばホスフォリパーゼD、アルカリホスファターゼ、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ホスフォリパーゼDの基質であるパラニトロフェニルホスフォリルコリンを含む試薬溶液に被検液を加え、20〜40℃に加温し、生成されるパラニトロフェノールを380〜450nmの任意の波長における吸光度の増加量を測定すればよい。
【0013】本発明のカルシウムイオン測定用組成物の調製にあたっては、反応試薬は一つまたは二つ以上に分け、二つ以上に分けた場合には、それらの各成分を適宜組み合わせたものもできる。吸光度の測定は分光光度計のみでなく、臨床検査室でよく用いられている自動分析機を用いた連続測定にも適応できる。被検液としては、血液、例えば血漿、血清もしくは尿などの生体液等や排水、微生物培養液、動植物培養液、生体材料抽出液等が挙げられる。
【0014】
【実施例】次いで、本発明を実施例で説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】(キレート剤処理による二価陽イオンの反応性)50mM PIPES−NaOH緩衝液(pH7.3)、5mMパラニトロフェニルホスフォリルコリン、アルカリホスファターゼ(1U/ml;大腸菌由来、旭化成T−08)、0.1%トリトンX100、ホスフォリパーゼD(3U/ml;ストレプトマイセスクロモフスカス由来、旭化成T−07)からなる反応液(1ml)に、図1に示した各種キレート剤を50uMになるように加え、37℃に2分間加温した後、10mg/dlのカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオン溶液を10マイクロリットル添加して、37℃で正確に5分間反応を行なった。次いで、0.1mlの0.1Mエチレンジアミン四酢酸を加え反応を停止した後、波長405nmにおける吸光度を測定した。図1に示したようにグリコールエーテルジアミン四酢酸を用いた時のみマグネシウムイオンには反応せず、カルシウムイオンの特異性が確認された。しかし、グリコールエーテルジアミン四酢酸処理のみではマグネシウムイオン以外のイオンに対しても反応し、特異性が厳密でないことがわかった(図2)。グリコールエーテルジアミン四酢酸にジエチレントリアミン五酢酸を併用することにより、ニッケルイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンでの反応性をほぼ完全に消失させることが明らかになった(図2)。
【0015】
【比較例1】(キレート剤にクエン酸塩を用いた時のマグネシウムイオン特異性)実施例1に示した組成の反応液にキレート剤としてクエン酸ナトリウムを10mMになるように添加して、実施例1に記載した方法によりカルシウムイオンとマグネシウムイオンの特異性を調べた。表1に示すようにマグネシウムイオンにも反応し、イオンの特異性がなかった。
【0016】
【表1】

【0017】
【実施例2】(自動分析機による分析)日立自動分析機(7170型)を用いてカルシウムイオンの定量を行なった。2種類の試薬を用い〔試薬1;61.1mM PIPES−NaOH緩衝液(pH7.3)、4U/mlホスフォリパーゼD(旭化成株式会社製T−07)、53.3uMグリコールエーテルジアミン四酢酸、13.3uMジエチレントリアミン五酢酸、33.3mM塩化マグネシウム、0.13%トリトンX−100の組成;180マイクロリットル、試薬2;5mMPIPES−NaOH緩衝液(pH7.2)、16mMパラニトロフェニルホスフォリルコリン、5U/mlアルカリホスファターゼの組成、60マイクロリットル〕、図3に示した各種濃度のカルシウムイオン標準液を4マイクロリットル使用して37℃で反応を行い、主波長405nm、副波長660nmの吸光度を経時的に測定した。結果を図3に示した。
【0018】
【実施例3】(カルシウムイオン標準曲線)実施例2で得られた反応曲線の吸光度増加速度から求めた標準曲線を図4に示した。カルシウムイオン濃度に比例した吸光度変化量が直線として得られた。
【0019】
【実施例4】(マグネシウムイオンによるホスフォリパーゼDの安定化)下記1から3の組成からなるホスホリパーゼD(旭化成株式会社製T−07)含有試薬を37℃、15時間静置した後、実施例2に示した試薬2を加えカルシウムイオンに対する反応性を調べた。その結果を表2に示した。マグネシウムイオン無添加組成ではカルシウムイオンに対するシグナルが減少したが、マグネシウムを添加することでホスホリパーゼDを含有する試薬を安定に保存することができた。
【0020】組成1;61.1mM PIPES−NaOH緩衝液(pH7.3)、4U/mlホスフォリパーゼD、53.3uMグリコールエーテルジアミン四酢酸、13.3uMジエチレントリアミン五酢酸、0.13%トリトンX−100からなる組成物。
組成2;61.1mM PIPES−NaOH緩衝液(pH7.3)、4U/mlホスフォリパーゼD、53.3uMグリコールエーテルジアミン四酢酸、13.3uMジエチレントリアミン五酢酸、0.13%トリトンX−100、5mM塩化マグネシウムからなる組成物。
組成3;61.1mM PIPES−NaOH緩衝液(pH7.3)、4U/mlホスフォリパーゼD、53.3uMグリコールエーテルジアミン四酢酸、13.3uMジエチレントリアミン五酢酸、0.13%トリトンX−100、30mM塩化マグネシウムからなる組成物。
【0021】
【表2】

【0022】
【発明の効果】本発明のように、 ホスフォリパーゼDのカルシウムイオンによる活性化反応を利用したカルシウムイオン定量試薬中に、グリコールエーテルジアミン四酢酸とジエチレントリアミン五酢酸のキレート剤およびマグネシウムイオンを共存させることにより、カルシウムイオン以外の2価陽イオンの影響を受けず、簡便で高精度で安定なカルシウムイオン定量用試薬を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【出願日】 平成13年2月15日(2001.2.15)
【代理人】 【識別番号】100068238
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 猛 (外3名)
【公開番号】 特開2002−238598(P2002−238598A)
【公開日】 平成14年8月27日(2002.8.27)
【出願番号】 特願2001−37996(P2001−37996)