| 【発明の名称】 |
プロテアーゼの測定方法及び該方法に用いる薄膜 |
| 【発明者】 |
【氏名】小川 雅司
【氏名】浜岡 勤
【氏名】田村 裕
【氏名】立川 哲彦
【氏名】長谷川 郁夫
【氏名】吉木 周作
【氏名】長谷川 紘司
【氏名】西垣 純爾
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| 【要約】 |
【課題】マトリックス・メタロプロテアーゼなどのプロテアーゼを測定する方法を提供する。
【解決手段】プロテアーゼの測定方法であって、(1)プロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜(ただし写真用フイルムを除く)に対してプロテアーゼを含む試料を接触させる工程;及び(2)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程を含む方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 プロテアーゼの測定方法であって、(1)プロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜(ただし写真用フイルムを除く)に対してプロテアーゼを含む試料を接触させる工程;及び(2)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程を含む方法。 【請求項2】 プロテアーゼの測定方法であって、(1)プロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜(ただし写真用フイルムを除く)に対して生体試料の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを接触させる工程; (2)工程(1)で用いた薄膜に含まれるプロテアーゼ基質とは異なるプロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜(ただし写真用フイルムを除く)に対して残りの切片を接触させる工程; (3)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び(4)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化痕とを対比する工程を含む方法。 【請求項3】 プロテアーゼ基質が、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、及びカゼインからなる群から選ばれる請求項1又は2に記載の方法。 【請求項4】 該試料が患者から分離・採取した生体試料である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。 【請求項5】 顔料及び染料からなる群から選ばれ、400 nmから700 nmの波長領域の最大透過濃度が0.01以上の物質の1種又は2種以上を含む薄膜を用いて消化痕の検出を行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。 【請求項6】 プロテアーゼがマトリックス・メタロプロテアーゼである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。 【請求項7】 プロテアーゼが関与する疾患の診断に用いるための請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。 【請求項8】 該疾患が癌、リウマチ性疾患、歯周病、及び歯槽膿漏からなる群から選ばれる疾患である請求項7に記載の方法。 【請求項9】 プロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜(ただし写真用フイルムを除く)であって、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法に用いるための薄膜。 【請求項10】 顔料及び染料からなる群から選ばれ、400 nmから700 nmの波長領域の最大透過濃度が0.01以上の物質の1種又は2種以上を含む請求項9に記載の薄膜。 【請求項11】 支持体がスライドグラス又はポリエチレンテレフタレートフイルムから選ばれる請求項9又は10に記載の薄膜。 【請求項12】 上記支持体と上記薄膜との間に下塗り層が設けられた請求項9ないし11のいずれか1項に記載の薄膜。
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【発明の詳細な説明】【0001】(技術分野)本発明は、プロテアーゼの測定方法に関するものである。より具体的には、癌細胞の浸潤活性や転移活性などの癌の悪性度、歯周炎などの歯周病の進行度、リウマチ性関節炎などにおける破壊性病態などの正確な診断を可能にするプロテアーゼの測定方法に関するものである。 【0002】(従来の技術)腫瘍の良性、悪性の相違を規定する因子の一つとして、間質結合組織への浸潤の有無を挙げることができる。この病態を明らかにするためには、腫瘍細胞自体の増殖動態の変化を観察すると同時に、腫瘍細胞と間質結合組織との相互作用に影響を及ぼす要因を検索することが必要である。特に、腫瘍細胞の浸潤や転移にはプロテアーゼが関与することが明らかにされており、プロテアーゼを制御することによって悪性腫瘍細胞の浸潤や転移を抑制できる可能性がある。このようなプロテアーゼ(細胞外マトリックス分解酵素)のうち、特にマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)が癌細胞の増殖、浸潤、血管新生に重要な役割をはたすことが明らかにされている(鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、第8章、宮崎香著「マトリックス・プロテアーゼと癌の浸潤・転移」、pp.92-107、メジカルビュー社、1993年発行を参照)。 【0003】一方、歯周病では歯肉溝上皮の破壊及びコラーゲンを主体とした結合組織の破壊が初期病変として進行するが、この組織の破壊にもマトリックス・メタロプロテアーゼが関与していることが知られている(歯周組織破壊におけるプロテアーゼの関与、及び病態とプロテアーゼとの相関については、青野正男監修「歯周治療の科学」、白川正治著、第VII章「歯周組織の病理」、pp.99〜109、医歯薬出版、並びに、長谷川ら、「歯周病患者における歯肉溝滲出液(GCF)中のゲラチナーゼ活性」、演題A-44、日本歯周病学会第37回秋期学術大会などを参照)。 【0004】マトリックス・メタロプロテアーゼはコラーゲン、プロテオグリカン、ラミニン、フィブロネクチン、及びゼラチンなどの細胞外基質を分解する酵素であり、MMP-1,2,3,7,9及び10など8種類の存在が明らかにされている。間質型コラーゲナーゼ(MMP-1)は最も古くから知られているマトリックス・メタロプロテアーゼであり、繊維芽細胞や軟骨などに分布しており、間質型のコラーゲンを1/4及び1/3に切断する。歯周病においては、主として MMP-2(ゼラチナーゼA)及びMMP-9(ゼラチナーゼB)が歯周組織の構成成分であるIV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びプロテオグリカンなどを破壊する。なお、マトリックス・メタロプロテアーゼの分泌は、細胞増殖因子であるEGFやTGF-βによって強く促進されており、他方、組織内の内在性インヒビターによって分泌や活性発現が制御されている。もっとも、増殖因子が関与した場合にその発現がどのように抑制されるのかは必ずしも明らかではない。 【0005】また、腫瘍細胞の浸潤や転移に関与する他のプロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼであるプラスミノーゲン・アクティベーター(PA)を挙げることができる。このプラスミノーゲン・アクティベーターはプラスミノーゲンをプラスミンに変換する酵素であり、プラスミノーゲン・アクティベーターの作用により生成したプラスミンがプロメタロプロテアーゼを活性型メタロプロテアーゼに変換する。従って、マトリックス・メタロプロテアーゼとプラスミノーゲン・アクティベーターとの間で形成されるカスケードによって、癌細胞の浸潤や転移が進行ないしは加速されると考えられる。 【0006】プロテアーゼは、上記の癌細胞の浸潤及び転移、並びに歯周病の進行のほか、歯槽膿漏による骨組織や歯根膜の破壊、リウマチ性関節炎による骨膜や骨組織の破壊などの破壊性病変に関与している可能性がある(リウマチにおけるプロテアーゼの関与に関しては、日本臨床、50(3),pp.463-467,1992を参照)。従って、細胞や組織中のプロテアーゼを定量することによって、浸潤活性及び転移活性などからみた癌細胞の悪性度や歯周病の病態、及びリウマチなどの破壊性病変の進行程度を正確に診断することが可能である(癌細胞の浸潤度とプロテアーゼ活性との相関については、例えば、Yamagata,et al.,Cancer Lett.,59,51,1991; Azzam,et al.,J.Natl.,Cancer Inst.,85,1758,1993; Brown,et al.,Clin.Exp.Metastasis,11,183,1993; Davies,et al.,Br.J.Cancer,67,1126,1993などを参照)。 【0007】従来、プロテアーゼの測定方法としては、基質の分解の程度から酵素活性を測定するザイモグラフィー法や各々のプロテアーゼに特異的な抗体を用いたイムノブロティング法などが利用されている。例えば、癌細胞や歯周病化細胞を粉砕した後、抽出液をゼラチン含有SDS-ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動に付し、電気泳動後のゲルをアミドブラックで染色して、染色されずに白く透明なバンドを与える試料をプロテアーゼ陽性と判定する方法が知られている。しかしながら、この方法では測定毎にSDS-ポリアクリルアミドゲルを作成する必要があり、検出までに約30時間を要するという問題がある。 【0008】また、SDS-PAGEによる電気泳動後にゲルをメンブレンに密着させ、ブロッティング後の酵素をモノクローナル抗体で検出する方法もあるが、電気泳動を利用する点で上記の方法と同様の欠点を有しており、それに加えて、操作に熟練を要することと高価なモノクローナル抗体を用いることも問題である。さらに、これらの方法は個々の細胞のプロテアーゼを測定したものではなく、組織全体のプロテアーゼ総量を検出するものであり、個々の癌細胞の浸潤・転移活性の情報を得ることはできないという問題がある。 【0009】最近、血管組織中のプロテアーゼ活性をザイモグラフィーの原理により測定する方法が提案された(The FASEB Journal,Vol.9,July,pp.974-980,1995)。この方法では、蛍光性化合物が結合したカゼイン又はゼラチンをプロテアーゼの基質として用い、この基質を含むアガロースの薄膜をスライドグラス上に形成させた後、その薄膜の表面に固定化されていない組織切片(6-10μm)をのせて37℃で培養し、基質の消化を蛍光顕微鏡下に観察する工程を含んでいる(第975頁、右欄第6〜18行のプロトコールを参照)。この方法は、組織中のプロテアーゼを直接測定できる点では優れているものの、プロテアーゼの基質をスライドグラス上に固定化するためにアガロースを必須成分として用いる必要があり、プロテアーゼによる基質の消化にばらつきが生じてしまい、再現性に乏しいという問題があった。 【0010】(発明の開示)本発明の目的は、簡便かつ正確なプロテアーゼの測定方法を提供することにある。より具体的には、浸潤や転移活性などの癌細胞の悪性度、歯周病などの病態、及びリウマチなどの破壊性病変の進行度を短時間で正確かつ簡便に判定でき、癌の予後や破壊性病変の進行程度などを正確に予測するために有用なプロテアーゼの測定方法を提供することにある。 【0011】また、本発明の別の目的は、上記の特徴を有するプロテアーゼの測定方法であって、被検組織内に局在する癌細胞などに由来するプロテアーゼを正確に測定する方法を提供することにある。さらに本発明の別の目的は、上記のプロテアーゼの測定方法に用いる薄膜を提供することにある。 【0012】本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、ゼラチンなどのプロテアーゼ基質と硬膜剤とを含む薄膜の表面に癌組織などの組織切片を密着させるか、あるいは歯周病などの病変組織などから採取した滲出液を該薄膜上に滴下すると、試料中に含まれるプロテアーゼが薄膜を消化し薄膜表面に消化痕が形成されることを見いだした。また、上記の方法がアガロースを含む薄膜を用いる方法(The FASEB Journal,Vol.9,July,pp.974-980,1995)に比べて非常に再現性に優れており、試料中のプロテアーゼ活性を正確に測定できることを見いだした。さらに、連続した組織切片を用いてそれぞれ組織標本と上記の薄膜標本を作成して比較・比較することにより、組織中の個々の細胞内に発現しているプロテアーゼを測定することができることを見いだした。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。 【0013】すなわち本発明は、プロテアーゼの測定方法であって、(1)プロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜に対してプロテアーゼを含む試料を接触させる工程;及び(2)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程を含む方法を提供するものである。 【0014】本発明の第二の態様によれば、プロテアーゼの測定方法であって、(1)プロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜に対して生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つを接触させる工程;(2)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び(3)他の一つの切片から調製した組織標本と上記消化痕とを対比する工程を含む方法が提供される。 【0015】本発明の第三の態様によれば、プロテアーゼの測定方法であって、(1)プロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜に対して生体試料の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを接触させる工程;(2)プロテアーゼ基質、硬膜剤、及びプロテアーゼ・インヒビターを含み支持体表面に形成された薄膜に対して残りの切片を接触させる工程;(3)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び(4)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化痕とを対比する工程を含む方法が提供される。この方法の好ましい態様では、工程(2)において、残りの2以上の各切片をそれぞれ異なる種類のプロテアーゼ・インヒビターを含む薄膜に接触させる工程を含んでいる。 【0016】本発明の第四の態様によれば、プロテアーゼの測定方法であって、(1)プロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜に対して生体試料の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを接触させる工程;(2)工程(1)で用いた薄膜に含まれるプロテアーゼ基質とは異なるプロテアーゼ基質と硬膜剤とを含み支持体表面に形成された薄膜に対して残りの切片を接触させる工程;(3)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び(4)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化痕とを対比する工程を含む方法が提供される。この方法の好ましい態様では、工程(2)において、残りの2以上の各切片をそれぞれ異なる種類のプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させる工程を含んでいる。 【0017】本発明の第五の態様によれば、プロテアーゼの測定方法であって、(1)少なくとも下記の2層:プロテアーゼ基質、硬膜剤、及びプロテアーゼ・インヒビターを含み支持体表面に形成された(a)層と、プロテアーゼ基質及び硬膜剤を含み(a)層に積層された(b)層とを含む薄膜に対してプロテアーゼを含む試料を接触させる工程;(2)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び(3)(a)層の消化痕と(b)層の消化痕とを対比する工程を含む方法が提供される。 【0018】本発明の第六の態様によれば、(1)少なくとも下記の2層:プロテアーゼ基質及び硬膜剤を含み支持体表面に形成された(a)層と、(a)層に含まれるプロテアーゼ基質とは異なるプロテアーゼ基質及び硬膜剤を含み(a)層に積層された(b)層とを含む薄膜に対してプロテアーゼを含む試料を接触させる工程;(2)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び(3)(a)層の消化痕と(b)層の消化痕とを対比する工程を含む方法が提供される。 【0019】これらの方法では、プロテアーゼを含む試料や生体試料は、支持体に接触することなく薄膜の表面に接触することを特徴としている。本発明のさらに別の態様によれば、上記の各方法において定義されたプロテアーゼ測定用の薄膜が提供される。 【0020】これらの発明の好ましい態様によれば、プロテアーゼ基質が、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、及びカゼインからなる群から選ばれる上記の各方法及び薄膜;該試料が患者から分離・採取した生体試料である上記の各方法及び薄膜;生体試料が癌組織切片、歯肉溝滲出液、又は破壊性病変組織切片若しくは抽出液(例えば、リウマチ性病変組織抽出液又は歯槽膿漏組織抽出液)である上記の各方法及び薄膜;プロテアーゼがマトリックス・メタロプロテアーゼである上記の各方法及び薄膜;消化痕を染色により検出する上記の各方法及び薄膜;金属、金属酸化物、顔料、及び染料からなる群から選ばれ、400nmから700nmの波長領域の最大透過濃度が0.01以上の物質の1種又は2種以上を含む薄膜を用いて検出を行う上記の各方法;並びに、プロテアーゼ基質としてゼラチンを用い、消化痕をアミドブラック又はクマジーブルーでゼラチン染色する上記の各方法及び薄膜が提供される。 【0021】本発明の薄膜の好ましい態様によれば、金属、金属酸化物、顔料、及び染料からなる群から選ばれ、400nmから700nmの波長領域の最大透過濃度が0.01以上の物質の1種又は2種以上を含む上記薄膜;支持体がスライドグラス又はポリエチレンテレフタレートフイルムから選ばれる上記薄膜;上記支持体と上記薄膜との間に下塗り層が設けられた上記薄膜;並びに、上記薄膜が感光・現像・定着処理後の写真フイルムである上記薄膜も提供される。 【0022】本発明の別の態様により、上記のそれぞれの方法において定義された各工程に従ってプロテアーゼが関与する疾患を診断する方法が提供される。この発明の好ましい態様として、該疾患が、癌、リウマチ性疾患、歯周病、及び歯槽膿漏からなる群から選ばれる疾患である上記方法が提供される。 【0023】(発明を実施するための最良の形態)上記の各態様のプロテアーゼの測定方法は、基本的には、プロテアーゼを含む試料を薄膜と接触させる工程(第一工程)と、プロテアーゼの作用により該薄膜上に形成された消化痕を検出する工程(第二工程)を含んでいる。この方法に用いられるプロテアーゼ測定用の薄膜は、基本的には、支持体表面上に単層又は多重層として形成されており、プロテアーゼ基質と硬膜剤とを必須の成分として含むことを特徴としている。従って、本発明の方法に従うと、試料と薄膜との接触工程の当初においては、試料と支持体とが接触しないという特徴がある。また、上記の薄膜は硬膜剤を含有しており、アガロースのようなバインダーが存在しないために、プロテアーゼにより消化されるゼラチンなどのプロテアーゼ基質の膜中密度が高く、例えばゼラチンなどのプロテアーゼ基質の架橋により消化痕の形態の崩れが防止されるので、プロテアーゼの測定感度や測定の再現性に優れるという特徴を有している。 【0024】本明細書において用いられる測定方法という用語は、定性及び定量を含めて最も広義に解釈されるべきである。本発明の方法では、試料中に含まれるプロテアーゼによってプロテアーゼ基質が消化され、薄膜上に消化痕が形成される。この消化痕は、例えば、必要に応じて適宜の染色などを行った後に顕微鏡下で検出することができ、試料中のプロテアーゼの存在を証明することができる。 【0025】本発明の方法の測定対象となるプロテアーゼとしては、例えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)及びマトリックス・セリンプロテアーゼ(MSP)を挙げることができる。これらの酵素については、鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、pp.92-107、メジカルビュー社、1993年発行に詳細に説明されている。本発明の方法に特に好適なプロテアーゼとして、例えば、間質型コラーゲナーゼ(MMP-1)、ゼラチナーゼA(MMP-2)、及びゼラチナーゼB(MMP-9)などのマトリックス・メタロプロテアーゼ;及びプラスミノーゲン・アクティベーター(PA)などのマトリックスセリンプロテアーゼを挙げることができるが、本発明の方法の対象はこれらのプロテアーゼに限定されることはない。 【0026】プロテアーゼ基質は、プロテアーゼの基質として分解される高分子化合物であれば特に限定されない。例えば、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、又はカゼインなどを用いることができる。好ましくは、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、エラスチン、又はカゼインを用いることができ、より好ましくはゼラチン、フィブロネクチン、又はカゼインを用いることができる。プロテアーゼ基質は上記の物質の1種を用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 【0027】2種以上の異なるプロテアーゼ基質を組み合わせて用いることにより、生体試料中に含まれるプロテアーゼの種類を正確に特定できる場合がある。例えば、生体試料中の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つをプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させ、残りの切片を上記の薄膜に含まれるプロテアーゼ基質とは異なるプロテアーゼ基質を含む他の薄膜に接触させた後、それぞれの薄膜に形成された消化痕を対比する方法を採用することができる。この方法では、異なるプロテアーゼ基質をそれぞれ含有する3以上の薄膜を用いて測定を行なうことが可能である。また、例えば、プロテアーゼ基質を含有する第一の層と、第一の層に含まれるプロテアーゼ基質とは異なるプロテアーゼ基質を含有する第二の層とを含む単一の薄膜を製造し、プロテアーゼを含む試料を接触させた後に、それぞれの層に形成された消化痕を対比する方法を採用してもよい。この方法では、異なる種類のプロテアーゼをそれぞれ含有する3以上の層を積層した薄膜を用いることも可能である。 【0028】また、プロテアーゼ・インヒビターを用いることにより、インヒビターに関連するプロテアーゼの同定やプロテアーゼの特性の判定が容易になる場合もある。プロテアーゼ・インヒビターとしては、例えば、ティッシュ・インヒビター・オブ・メタプロテアーゼ1(TIMP1)、ティッシュ・インヒビター・オブ・メタプロテアーゼ2(TIMP2)、ラージ・インヒビター・オブ・メタロプロテアーゼ(LIMP)、チッキン・インヒビター・オブ・メタロプロテアーゼ(ChIMP)、オポスタチン、血小板第IV因子(PF-4)、α2マクログロブリン、EDTA、1,10- フェナントロリン、BB94、ミノサイクリン、マトリスタチン、SC-44463、又は、ジチオトレイトール(DTT)などを挙げることができる。例えば、生体試料中の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つをプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させ、残りの切片をプロテアーゼ基質とプロテアーゼ・インヒビターとを含む他の薄膜に接触させた後、それぞれの薄膜に形成された消化痕を対比する方法を採用することができる。また、例えば、プロテアーゼ基質を含有する第一の層と、プロテアーゼ基質とプロテアーゼ・インヒビターとを含有する第二の層を含む単一の薄膜を製造し、プロテアーゼを含む試料を接触させた後に、それぞれの層に形成された消化痕を対比する方法を採用してもよい。プロテアーゼ・インヒビターを用いる上記の方法と、2種以上の異なるプロテアーゼを組み合わせて用いる上記の方法とをさらに組み合わせてもよい。 【0029】本発明の薄膜の製造に用いられる硬膜剤は、上記のプロテアーゼ基質の薄膜の製造において薄膜の硬化を促進し、及び/又は形成後の薄膜の膨潤を防止する作用を有している。硬膜剤の種類は、上記の作用を有し、かつ、プロテアーゼとプロテアーゼ基質との反応を実質的に阻害しない限り特に限定されず、無機又は有機の硬膜剤のいずれを用いてもよい。例えば、クロム塩(クロム明ばん、酢酸クロムなど);アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グリオキサール、グリタールアルデヒドなど);N−メチロール化合物(ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントインなど);ジオキサン誘導体(2,3-ジヒドロキシジオキサンなど)、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物類(カルベニウム、2-ナフタレンスルホナート、1,1-ビスピロリジノ-1-クロロ-、ピリジニウム、1-モルホリノカルボニル-3-(スルホナトアミノメチル)-など);活性ビニル化合物(1,3-ビスビニルスルホニル-2-プロパノール、1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル、ビニルスルホニル基を側鎖に有するビニル系ポリマー、1,3,5-トリアクリロイル-ヘキサヒドロ-s-トリアジン、ビス(ビニルスルホニル)メタンなど);活性ハロゲン化合物(2,4-ジクロル-6- ヒドロキシ-s- トリアジン及びそのナトリウム塩など);ムコハロゲン酸類(ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸など);イソオキサゾール類;ジアルデヒド澱粉;又は、2-クロル-6- ヒドロキシトリアジニル化ゼラチンなどの硬膜剤を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ビニルスルホン酸型硬膜剤が好ましい。硬膜剤の使用量は特に限定されないが、例えば、プロテアーゼ基質としてゼラチンを用いる場合には、検出性能の点からゼラチン100gに対して0.1〜20mmol、さらに好ましくは0.3〜10mmol程度を配合するのがよい。本発明の方法に用いる試料としては、例えば、ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取した生体試料を用いることができる。生体試料としては、組織又は組織滲出液などを用いることができる。例えば、肺癌、胃癌、食道癌、乳癌、脳腫瘍などの固形癌組織から手術や組織検査などにより分離・採取した癌組織、リウマチ性関節炎の滑膜や骨組織、及び歯槽膿漏の歯根膜や骨組織などの破壊性病変組織や滲出液、並びに歯周病の歯肉溝滲出液などを用いることができる。 【0030】試料が組織の場合には、例えば、液体窒素で急速凍結した試料から凍結切片作成装置を用いて厚さ1〜10μm、好ましくは5μm程度の切片を調製し、この切片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接触させることができる。また、リウマチ性関節炎の患者から採取した滑膜液を試料として用いる場合には、滑膜液約5〜50μl、好ましくは20μl程度を薄膜上に滴下すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用いる場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約5〜10μl程度の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方法を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必要に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50mM Tris-HCl,pH 7.5,10mM CaCl2,0.2M NaClなど)を用いて濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴下してもよい。 【0031】組織内のプロテアーゼの存在を顕微鏡下で観察できるように、薄膜は透明又は半透明の支持体上に形成されることが好ましい。このような透明又は半透明の支持体としては、例えば、ガラス、又はポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルロース、若しくはトリアセテート等からなる透明又は半透明プラスチックフイルムなどを用いることができる。ガラスとしては顕微鏡用のスライドグラスを用いることが好ましく、プラスチックフイルムとしてはポリエチレンテレフタレートフイルムを用いることが好ましい。もっとも、支持体はこれらに限定されることはなく、均一な薄膜を製造することができ、検鏡に適するものであればいかなるものを用いてもよい。 【0032】また、歯肉溝滲出液などの試料溶液を薄膜表面に滴下すると、滴下により形成される円形の塗布面の円周に沿って消化痕が検出される場合がある。このような場合には必ずしも顕微鏡下での検出を必要としないので、上記の支持体に加えて、不透明な支持体を用いることも可能である。例えば、紙、合成紙、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート等)をラミネートした紙、金属板(例えば、アルミニーウム、アルミニウム合金、亜鉛、鉄、銅などの板)、上記の金属がラミネート又は蒸着された紙やプラスチックフイルムなどを用いることができる。このような態様においては支持体に着色が施されていてもよい。 【0033】支持体の厚さは特に限定されないが、ガラスの場合にはスライドグラス程度の厚さのもの(例えば2〜3mm程度)が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフイルムの場合には約100〜250μm、より好ましくは約150〜200μm、特に好ましくは 175μm程度のものを用いることができる。該支持体上の薄膜は単層又は重層で形成することができるが、薄膜はできる限り均一な表面を与えるように調製すべきである。例えば、乾燥後の膜厚が1〜10μm、好ましくは 4〜6μm程度になるように調製することが好ましい。 【0034】薄膜の調製には、例えば、水、又はメチレンクロライド、アセトン、メタノール、エタノール、若しくはそれらの混合溶媒などの有機溶媒に分散したプロテアーゼ基質を支持体表面に塗布して乾燥すればよい。塗布方法としては、例えば、ディップ塗布法、ローラー塗布法、カーテン塗布法、押し出し塗布法などを採用することができる。もっとも、薄膜の調製方法はこれらに限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている薄膜形成方法などを適宜採用することが可能である。なお、プロテアーゼ基質としてゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ処理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチンなどを用いることができる。 【0035】薄膜を支持体上に形成するにあたり、薄膜と支持体との接着を改善するために、薄膜と支持体表面との間に下塗り層を設けてもよい。例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合させて得られる重合体又は共重合体、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、又はニトロセルロースなどの重合体を下塗り層として形成することができる。また、ポリエステル系支持体を用いる場合には、下塗り層に替えて、支持体表面をコロナ放電処理、紫外線処理、又はグロー放電処理することによっても、支持体と薄膜との接着力を改善できる場合がある。 【0036】本明細書において用いられる「支持体表面上に形成された薄膜」という用語またはその同義語については、このような1又は2以上の下塗り層及び/又は支持体表面の処理を排除するものと解釈してはならない。もっとも、薄膜と支持体との接着を改善するための手段は上記のものに限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている手段を適宜採用することができる。 【0037】また、薄膜を製造する際に、上記の成分に加えて、染料、顔料、防腐剤、安定化剤などの成分を適宜配合してもよい。このような成分は、プロテアーゼとプロテアーゼ基質との反応を実質的に阻害しない限り、適宜のものを選択して用いることが可能である。染料としては、例えば、特開平6-102624号公報に記載された染料(第9頁I-1より第47頁63までの化学構造式により具体的に示された染料)を用いることができ、染料の添加方法は、例えば、特開平5-313307号公報に記載された方法(第11頁段落番号[0037]から第12頁段落番号[0044]までに具体的に説明された方法)を採用することができる。染料や顔料を添加することにより消化痕の検出が容易になる場合があるが、このような目的のためには、染料や顔料のほか、金属や金属酸化物を配合してもよい。金属、金属酸化物、染料、顔料などの物質を添加する場合には、製造後の薄膜が400nmから700nmまでの波長領域の最大透過濃度が0.01以上であることが好ましい。これらの物質の1種又は2種以上を薄膜に配合することができ、薄膜を形成する各層にそれぞれ異なる物質、例えば色の異なる染料などを配合してもよい。なお、薄膜の製造にあたりアガロースを用いるとプロテアーゼ検出の再現性が低下するので、本発明の薄膜の製造にアガロースを用いることは好ましくない。 【0038】本発明の方法では、例えば、組織切片を薄膜に貼付するか、あるいは液体試料を薄膜上に滴下することによって薄膜とプロテアーゼを含む試料とを接触させた後、好ましくは37℃の湿潤箱内で、組織切片については例えば1〜24時間、好ましくは2〜12時間、さらに好ましくは3〜6時間程度、液状試料については0.5〜12時間、好ましくは1〜6時間、さらに好ましくは1〜3時間程度インキュベートする。試料中にプロテアーゼが含まれる場合には、薄膜内のプロテアーゼ基質がプロテアーゼによって分解され、薄膜上に消化痕が形成される。必要に応じて薄膜を染色した後、肉眼や顕微鏡下で消化痕を観察することにより、プロテアーゼの存在を証明することができる。また、分光光度計による光分解を利用して評価を行ってもよい。 【0039】プロテアーゼ基質としてゼラチンを用いる場合には、ゼラチン染色後に消化痕を観察することが好ましい。ゼラチン染色は、例えば、1%アミドブラックやクマジーブルーなどを用いて、常法に従って行うことができる。例えば、アミドブラックを用いたゼラチン染色では、ゼラチン薄膜は黒紺色に染色されるが、プロテアーゼによりゼラチン薄膜上にゼラチン消化痕が形成されると、その消化痕の部分にはゼラチンが存在しないので、染色されない白抜き部分が現れる。写真用フイルムの表面にはゼラチン薄膜が形成されているので、写真用フイルム(例えばネオパンF、富士写真フイルム株式会社製)を感光させて通常の現像、定着、水洗、乾燥処理を行ったものを薄膜として用いてもよい。この場合には、感光した黒色のフイルム上に消化痕が白抜き部分として観察できる。 【0040】本発明の方法の別の態様に従えば、癌組織などから連続凍結切片を作成し、実質的に連続した二切片のうちの一方の切片を、例えば、ヘマトキシリン・エオシン染色切片などの通常の組織標本として調製し、他の切片を本発明の測定方法に従って処理し、両者の観察結果を比較・対比することによって組織中の個々の細胞に由来するプロテアーゼの存在を正確に把握することが可能である。このようなプロテアーゼの測定方法により、組織中に存在する個々の癌細胞の悪性度(浸潤活性及び転移活性など)を正確に判定することが可能であり、癌疾患の予後についての的確な判定が可能になる。また、リウマチ性関節炎の関節液や歯肉溝滲出液などの試料中のプロテアーゼを定量することにより、これらの疾患の病態や進行程度を正確に判定することができるが、試料中のプロテアーゼ定量のためには、予め作成した標準溶液を用いて検量線を作成することが好ましい。 【0041】(実施例)以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されることはない。 例1:プロテアーゼ測定用薄膜の製造牛骨アルカリ処理ゼラチン10gを純水127gに溶解し、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(2%)0.8mlを添加した。この溶液を下塗りを施したポリエチレンテレフタレートフイルム上に乾燥膜厚が約5μmになるように均一に塗布し、乾燥してゼラチン薄膜とした。ゼラチン薄膜は使用時まで室温で保存した。 【0042】例2:プロテアーゼ測定用薄膜の製造例1と同様にして牛骨アルカリ処理ゼラチン溶液を調製し、この溶液をスライドグラス上に乾燥膜厚が約6μmとなるように均一に塗布し、乾燥してゼラチン薄膜を製造した。また、牛骨アルカリ処理ゼラチンに替えて、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチン(シグマ社製#G2625)、及び豚皮膚酸処理ゼラチン(シグマ社製#G2500)をそれぞれ用いて、同様に各ゼラチン薄膜を製造した。 【0043】例3:プロテアーゼ活性測定プロテアーゼ液体試料として、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)-1、MMP-2及びMMP-9(ヤガイ社製)をそれぞれ2pg/mlから200ng/mlの濃度で含む溶液を用いた。また、生体試料としては、歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝滲出液(GCF: Gingival Crevicular Fluid)、及び歯周病原菌(P.gingivalis #381株;A.actinomycetemcomitans Y4株;及びP.intermedia ATCC 25611株)を培養した上清を用いた。例2で得たそれぞれのゼラチン薄膜上に液体試料約10μlを滴下し、組織試料は約5μmの凍結切片として各ゼラチン薄膜上に貼付した。ゼラチン薄膜を湿潤箱内に入れて37℃で4〜16時間インキュベートし、その後、クマジーブルーで染色した。 【0044】この結果、いずれのゼラチン薄膜にもプロテアーゼによるゼラチンの消化によって染色されない部位(白抜きの部分:ゼラチン消化痕)が認められた。特に、牛骨フタル化処理のゼラチン薄膜は液体試料の場合に顕著なゼラチン消化を与え、豚皮膚酸処理のゼラチン薄膜も液体試料及び組織切片に対して強いゼラチン消化痕を与えた。MMP-1、MMP-2及びMMP-9について、4時間後に200ng/ml、8時間後に20ng/ml、16時間後に20-200pg/mlの濃度範囲でプロテアーゼ活性が認められた。歯肉溝滲出液の多くはプロテアーゼ活性を認めるまでに約8〜16時間を要し、プロテアーゼの量が2pg/mlから20ng/mlの範囲であることが示唆された。また、組織切片でのプロテアーゼ活性は、内縁上皮、外縁上皮、及び上皮下結合組織中の炎症性細胞浸潤が強い部位に認められた。 【0045】例4:癌組織のプロテアーゼ活性測定被検組織試料として舌扁平上皮癌、肺癌、及び食道癌の手術標本を厚さ約0.5cm×幅2cmの大きさに切り出し、液体窒素で急速凍結して-80℃で保存した。この標本から凍結切片作成装置を用いて厚さ5μmの連続切片を作成し、一枚をスライドグラスに張り付けて乾燥させた後、10%ホルマリンで5分間固定し、その後、常法に従ってヘマトキシリン・エオシン染色を行った。他の連続切片を例2及び例3で製造した各ゼラチン薄膜上に貼付し、湿潤箱に入れて37℃で3〜6時間インキュベートした。インキュベート終了後にゼラチン薄膜を1%アミドブラック溶液で染色し、乾燥した後に検鏡した。プロテアーゼ活性が発現している部分は白抜きのゼラチン消化痕を与えており、一方、他の部分は濃い青黒色であった。いずれの癌組織にも癌胞巣を形成する個々の癌細胞にゼラチン消化痕が認められたが、特に癌胞巣辺縁に位置する細胞に強いゼラチン消化痕が認められた。正常扁平細胞ではゼラチンの消化が弱いながらも認められたが、この上皮が異型増殖するに従ってゼラチンの消化が強く認められた。 【0046】例5:症例(口腔上顎歯肉癌) 標本中の癌細胞は胞巣構造を形成する低分化型扁平上皮癌で、骨組織を破壊して強い浸潤を示していた。癌胞巣中の癌細胞に対応するゼラチン薄膜は消化されてゼラチン薄膜標本上に白抜きのゼラチン消化痕を与えていたが、特に癌胞巣の辺縁に位置する細胞に対応する部位に強いゼラチン消化痕が認められた。標本中の巣状の炎症性細胞浸潤部位に対応する部分には、強い顆粒状のゼラチン消化痕が生じていた。癌胞巣を拡大して観察すると、癌胞巣辺縁に位置する増殖域の細胞に強いゼラチン消化痕が認められ、癌胞巣に隣接する間質の繊維芽細胞にも顆粒状にゼラチンの消化痕が認められた。 【0047】例6:症例(舌癌) 標本中の癌細胞は未分化型扁平上皮癌で大小の癌胞巣が存在していた。癌胞巣の辺縁部の癌細胞に対応する部位にいずれにも強いゼラチン消化痕が認めら、癌の増殖域の細胞に相当する部位ではゼラチンの消化痕が顕著であった。巣状の炎症性細胞浸潤巣に対応する部分にも顆粒状のゼラチン消化痕が認められた。 【0048】例7:症例(口腔粘膜の高度上皮異形成症) ヘマトキシリン・エオシン染色標本では、上皮に高度上皮異形成症が認められ、棘細胞層の肥厚と基底細胞の重層化が生じていた。特に基底細胞には多形成や異型性の細胞増殖が認められた。ゼラチン薄膜上では、肥厚した棘細胞層及び顆粒細胞層に対応する部分に強いゼラチン消化痕を認めたが、基底細胞層では点状にゼラチン消化痕を認めたのみであった。この結果は、上皮細胞のターンオーバーが盛んに行われており、一方、基底細胞では上皮化結合織への浸潤が生じていることを示している。棘細胞の肥厚と重層化した基底細胞を拡大して観察すると、いずれの細胞層に対応する部分にもゼラチン消化痕が認められたが、特に、棘細胞と重層化基底細胞に対応する部分ではゼラチンが顕著に消化されていた。一方、単層又は2層の基底細胞ではゼラチンの消化が重層化基底細胞より弱かった。また、重層化した基底細胞は紡錘形となり、細胞の多形成や異型性が認められたが、異型性を示す増殖傾向の細胞に対応する部分はゼラチン薄膜上に強いゼラチン消化痕を形成していた。 【0049】例8:液状試料のプロテアーゼ活性測定リウマチ患者の滑膜液約20μlをゼラチン薄膜上に滴下し、37℃の湿潤箱内で1〜3時間インキュベートした。その後、ゼラチン薄膜を1%アミドブラックで染色したところ、滴下によりゼラチン薄膜上に形成された円形の塗布跡の円周に強いゼラチン消化痕が認められた。特に、牛骨フタル化処理のゼラチン薄膜を用いた場合には特に顕著なゼラチン消化痕が観察できた。 【0050】例9:歯周病におけるプロテアーゼ活性測定歯面の唾液及びプラークを可及的に綿球で除去して簡易防湿した後、ペリオペーパーを歯肉溝に挿入して90秒間静置し、歯肉溝滲出液(約5〜10μl程度)をペリオペーパーに吸い取らせた。このペリオペーパーを150μlの緩衝液(50mM Tris-HCl,pH7.5,10mM CaCl2,0.2M NaCl)で抽出して試料溶液とし、例3と同様の方法に従ってプロテアーゼの測定を行った。この結果、歯肉溝滲出液の滴下によりゼラチン薄膜上に形成された円形の塗布跡の円周に沿って強いゼラチン消化痕が認められた。 【0051】例10:プロテアーゼ測定用薄膜の製造牛骨アルカリ処理ゼラチン15gを純水123gに溶解し、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(4% 水溶液)0.6mlを添加した。この溶液をスライドグラス上に乾燥膜厚が約7μmになるように均一ワイヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜(単層薄膜:試料101)とした。薄膜は使用時まで室温で保存した。また、牛骨アルカリ処理ゼラチンの代わりに表1に示したプロテアーゼ基質を使用し、硬膜剤、添加剤、支持体を変更又は追加して、試料101と同様にして試料102〜130を作成した。なお、塗布の際には必要に応じて塗布助剤を使用した。なお、表中の染料1はアミドブラックを示し、顔料1は銅フタロシアニンを示す。 【0052】 【表1】
【0053】例11:プロテアーゼ測定用薄膜の製造コラーゲンI溶液(和光純薬株式会社製、3mg/ml)をスライドグラス上に乾燥膜厚が約1μmになるように均一ワイヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜(単層薄膜:試料131)とした。薄膜は使用時まで室温で保存した。また、コラーゲンIの代わりに表2に示したプロテアーゼ基質を使用し、硬膜剤、添加剤、支持体を変更又は追加して、試料131と同様にして試料132〜160を作成した。なお、塗布の際には必要に応じて塗布助剤を使用した。 【0054】 【表2】
【0055】塗布の際にワイヤーバーコーターの代わりにスライドコーターを使用した他は試料121〜130と同様にして試料161〜170を作成した。なお、乾燥条件は、必要に応じて10℃にいったん冷却した後、常温常湿で乾燥する方法を採用した。例12:プロテアーゼ活性測定 プロテアーゼ液体試料として例3に記載したMMP-2を用い、例11で得たそれぞれの薄膜上に約10μlを滴下した。薄膜を湿潤箱内に入れて37℃で4〜16時間インキュベートし、その後、透明な試料はアミドブラック溶液で染色した。活性の評価方法としては、それぞれの試料に対して、■目視による判定、■ミクロデンシトメトリーによる微小部分の濃度測定による判定、及び■接触式膜厚測定機による膜厚測定による判定を行った。結果を表3に示す。 【0056】 【表3】
【0057】 【表4】
【0058】 【表5】
【0059】プロテアーゼ・インヒビターを添加しなかった膜膜では、いずれについてもプロテアーゼによりプロテアーゼ基質が消化された白抜きの部分(消化痕)が認められ、この部分の光学濃度及び膜厚は周辺部に比べて減少していた。一方、プロテアーゼ・インヒビターを添加した試料についてはプロテアーゼ活性が抑制されたために消化痕を認めなかった。また、スライドコーターによって作成した試料160〜170はバーコーターによって作成した試料と同様の結果を与えた。 例13:プロテアーゼ活性測定 プロテアーゼ液体試料として、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)-1、をそれぞれ2pg/mlから200ng/mlの濃度で含む溶液を用い、例11で得た試料101に対して例12と同様の方法により測定を行って検量線を作成した。結果を表4に示す。 【0060】 【表6】
【0061】表4の結果をグラフ上にプロットし、生体試料を用いた場合の消化痕の光学濃度(2.6)を与えるマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)-1の濃度を求めた。この結果、生体試料中のプロテアーゼの濃度は約40pg/mlであった。 例14:プロテアーゼ活性測定 生体試料として、歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝滲出液、及び歯周病の組織試料を約5μmの凍結切片として薄膜試料101〜160の上に貼付した。薄膜を湿潤箱内に入れて37℃で4〜16時間インキュベートし、その後、透明な試料はアミドブラック溶液で染色した。活性の評価方法としては、それぞれの試料に対してはっきりと活性が認められる箇所について、■目視による判定、■ミクロデンシトメトリーによる微小部分の濃度測定による判定、及び■接触式膜厚測定機による膜厚測定による判定を行った。結果を表5に示す。 【0062】 【表7】
【0063】 【表8】
【0064】 【表9】
【0065】生体試料の凍結切片を直接設置する方法においても、各薄膜にはプロテアーゼによるプロテアーゼ基質の消化痕(白抜きの部分)が形成されており、この部分の光学濃度と膜厚は周辺部に比べて減少していた。 【0066】例15:プロテアーゼ測定用薄膜の製造牛骨アルカリ処理ゼラチン15gを純水123gに溶解し、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(4%)0.6mlを添加した。この溶液をスライドグラス上に乾燥膜厚が約7μmになるように均一ワイヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜とした。牛骨アルカリ処理ゼラチン15gを純水123gに溶解し、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(4%)0.6mlとポリメチルメタクリレート粒子(平均粒径2μm)を添加した。この溶液を、すでに作成した乾燥薄膜の表面に乾燥膜厚が約7μmになるように均一ワイヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜とした(多層薄膜:試料301)。薄膜は使用時まで室温で保存した。また、プロテアーゼ基質、硬膜剤、変更又は追加して、表6に示す薄膜を作成した。なお、塗布の際には必要に応じて塗布助剤、粘度調整剤を使用し、表中の青色染料1、緑色染料1、及び赤色染料としては、それぞれ以下の化合物を用いた。 【0067】 【化1】
【0068】 【表10】
【0069】 【表11】
【0070】 【表12】
【0071】塗布の際にワイヤーバーコーターの代わりにスライドコーターを使用した他は試料301〜330と同様にして試料331〜360を作成した。なお、乾燥条件は必要に応じて10℃にいったん冷却した後常温常湿にて乾燥する方法を採用した。例16:プロテアーゼ活性測定 例12と同様の方法でプロテアーゼの活性測定を行った。結果を表7に示す。この結果から、多層の薄膜においてもプロテアーゼ活性を非常に明確に判定可能であることがわかった。スライドコーターによって作成した試料331〜360はバーコーターによって作成した試料と同様の結果を示した。 【0072】 【表13】
【0073】例17:プロテアーゼ測定用薄膜の製造とプロテアーゼ活性測定牛骨アルカリ処理ゼラチン15gを純水123gに溶解し、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(4%)0.6mlを添加した。この溶液をバック層にスライドコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜とした他は試料331〜360と同様にして試料501〜530を作成した。また、試料501〜530のバック層の上にポリマーラテックス層を塗布、乾燥した試料531〜560を作成した。これらの試料について試料331〜360と同様にプロテアーゼ活性測定を行ったところ、同様な評価結果が得られた。また、これらの試料はカールなどが起きず、薄膜の取扱い性において非常に良好であった。 【0074】例18:写真用フイルムを用いたプロテアーゼの測定ネオパンF(写真用黒白フイルム:富士写真フイルム株式会社製)を完全に感光させた後、通常の方法に従って現像、定着、及び水洗を行った後に乾燥させた。この写真用フイルムをプロテアーゼ測定用のゼラチン薄膜として用い、フイルム上に実施例4で調製した癌組織の切片を貼付して、実施例4と同様の方法に従ってプロテアーゼ活性の測定を行った。この結果、プロテアーゼの存在しない部分は黒色のままであったが、実施例4で染色により調製した薄膜上に認められた消化痕と同様の消化痕が白抜き部分として認められた。ただし、例1、例2、例10、例11、例15、及び例17で製造した薄膜に比べると検出性能は劣っていた。 【0075】例19:ラジオグラフィ用乳剤を用いたプロテアーゼの測定および測定結果(比較例) 生体試料として、歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝滲出液、及び歯周病の組織試料を約5μmの凍結切片としてスライドグラス上設置した。その上に水で希釈したラジオグラフィ用乳剤NRM2又はNRH2(コニカ株式会社製)を塗布し、乾燥して薄膜を形成した。薄膜を湿潤箱内に入れて37℃で16時間〜14日間インキュベートし、その後、アミドブラックで染色するか、または黒白現像処理をした。その結果、プロテアーゼの活性はほとんど検出できなかった。14日間インキュベートした後に黒白現像処理した試料においてわずかに活性らしいものを示したが、活性部の表示が非常に曖昧であり、本発明の薄膜に比べてプロテアーゼの検出能は著しく劣っていた。 【0076】(産業上の利用可能性)本発明の方法は、組織中に局在する特定部位や組織中の個々の細胞に由来するプロテアーゼを正確かつ簡便に測定することができ、しかも短時間に判定できるという特徴がある。従って、本発明の方法は、浸潤や転移活性などの癌細胞の悪性度、歯周炎などの歯周病の進行度、リウマチや歯槽膿漏などの破壊性病態などの正確な診断に有用である。また、本発明の方法に従えば、極めて微量の試料からプロテアーゼ活性を測定することが可能であり、判定後の薄膜を固定標本として永久保存することもできる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005201 【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年2月27日(1997.2.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100096219 【弁理士】 【氏名又は名称】今村 正純 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−223797(P2002−223797A) |
| 【公開日】 |
平成14年8月13日(2002.8.13) |
| 【出願番号】 |
特願2002−4294(P2002−4294) |
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