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【発明の名称】 大豆のナイトレートトランスポーター1遺伝子ファミリーに属する遺伝子
【発明者】 【氏名】青島 均

【氏名】山田 守

【要約】 【課題】植物には、窒素源への暴露によって誘導される、NRT1およびNRT2という2つのファミリーの存在が知られているが、大豆においては、NRT2のcDNAがクローニングされているに過ぎない。本発明は、NRT1ファミリーに属する、大豆の新規な遺伝子および遺伝子断片を提供することを目的とする。

【解決手段】上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、大豆のcDNAクローニングと遺伝子発現解析の結果、NRT1ファミリーに属する大豆の新規な遺伝子および遺伝子断片を単離し、ヌクレオチド配列を同定するに至った。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 大豆の遺伝子であって、窒素源への暴露によって誘導されるナイトレートトランスポーター1遺伝子ファミリーに属する遺伝子。
【請求項2】 ヌクレオチド配列が配列表の配列番号1、配列番号2、配列番号3のいずれかで示される請求項1に記載の大豆の遺伝子。
【請求項3】 ヌクレオチド配列が配列表の配列番号4または配列番号5で示される請求項1に記載の大豆の遺伝子断片。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大豆の遺伝子であって、窒素源への暴露によって誘導されるナイトレートトランスポーター1遺伝子に属する遺伝子および遺伝子断片に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】植物には、窒素源への暴露によって誘導される、ナイトレート(NO3-)の取り込みに関与する輸送体ナイトレートトランスポーター1(Nitrate Transporter 1)とナイトレートトランスポーター2(Nitrate Transporter 2)の2つのファミリーの存在が知られている(以下、それぞれNRT1、NRT2と略記する)。シロイヌナズナやトマトなどの植物では、両ファミリーのcDNAが、既にクローニングされている。しかし大豆では、NRT2のcDNAが、クローニングされているに過ぎない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、NRT1ファミリーに属する、大豆の新規な遺伝子および遺伝子断片を提供することが目的である。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、大豆のcDNAクローニングと遺伝子発現解析の結果、NRT1ファミリーに属する大豆の新規な遺伝子および遺伝子断片を単離し、ヌクレオチド配列を同定するに至った。
【0005】窒素源は、多くの高等植物にとって必須の栄養素であり、ナイトレート(NO3-)は、それらの内でもメインの窒素源である。ナイトレートの同化は、根の細胞において、土壌中からナイトレートを取り込むことにより開始される。それに引き続いて、細胞中でナイトライト(NO2-)を経由してアンモニウム(NH4+)へと還元される。根の表皮細胞および皮質細胞の原形質膜を横断しての取り込みは、電気化学的なナイトレートの勾配に対するエレクトロジェニック プロトン−ナイトレート(2H+/NO3-)シンポートによって行われる。
【0006】ナイトレートトランスポーター(NRT)をコードする遺伝子の同定は、ナイトレート同化作用を欠失している突然変異体に関する研究から始まった。そのような真核生物の突然変異体のほとんどはナイトレートの還元能が障害されていたが、残りの突然変異体はナイトレート取り込み能に欠陥を有していた。このナイトレート取り込み能に欠陥を有する突然変異体のキャラクタリゼーション、単離およびホモロジー解析の結果、真核生物における2種類の遺伝子ファミリーの存在が明らかにされた(Crawford et al.,Trends Plant Sci. 1998; 3:389-395)。これら2つの遺伝子ファミリーは、それぞれNRT1、NRT2と命名されたが、ファミリー間のヌクレオチド配列の類似性はないという、大きな特徴を有していた。NRT1とNRT2の2つのファミリーは高等植物間で保存されているが、NRT2ファミリーは菌類や藻類でも保存されている。
【0007】Glycine max(大豆)においては、高親和性のナイトレートトランスポーターのcDNAがクローニングされ、NRT2ファミリーに属する遺伝子としてGmNRT2と命名されており、また、大豆の根におけるGmNRT2の発現が、供給される窒素源の種類によって異なるレギュレーションを受けること、GmNRT2遺伝子の発現増加に伴って、根における正味のナイトレート取り込み量が増加することが報告されている(Amarasinghe et al., Planta 1998; 206: 44-52)。しかしながら、大豆のNRT1ファミリーのナイトレートトランスポーター遺伝子のクローニングに関しては、未だ報告はない。そこで本発明者らは、大豆のcDNAクローニングと遺伝子発現解析の結果、NRT1ファミリーに属する大豆の新規な遺伝子および遺伝子断片を単離し、ヌクレオチド配列を同定するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態を、実施例にもとづき図面を参照して説明する。
【0009】本発明の新規な遺伝子および遺伝子断片のcDNAクローニングは、市販の大豆cDNAライブラリー用いて行った。また、DNA操作法は、定法に従った(Sambrook et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd edn.,1989)。得られたcDNAクローンは、ヌクレオチド配列分析を行って遺伝子配列を明らかにした後、既知の遺伝子配列とのホモロジー解析にかけた。その結果、アミノ酸配列レベルでの比較において、NRT2ファミリーに属する遺伝子とのホモロジーはなく、NRT1ファミリーに属する遺伝子とのホモロジーは高いことから、大豆のNRT1ファミリーに属する遺伝子であることを確認できた。また、既知の遺伝子とのハイドロパシー解析の結果からも、ナイトレートトランスポーター遺伝子であることが推定できた。
【0010】既知のナイトレートトランスポーター遺伝子では、窒素源の種類によって、あるいは窒素源に対する暴露時間の違いによって、複雑な遺伝子発現パターンを示すことが知られている。本発明の新規NRT1遺伝子の場合も、複雑な遺伝子発現パターンを示すという点では同様であった。
【0011】本発明のNRT1遺伝子が、既知のNRT1遺伝子と異なる点は、発現している組織の違いにある。既知のNRT1遺伝子、例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ(Brassica napus)、トマト(Lycopersicon esculentum)の場合は、窒素源によって遺伝子発現が誘導されるのは、主として根に限定されている。本発明の大豆のNRT1遺伝子では、窒素源による誘導条件によっては、根と葉の両方または葉のみでの発現が確認できた点で、既知のNRT1遺伝子とは明らかに異なっており、新規なNRT1遺伝子であると言える。
【0012】本発明の新規な遺伝子は、遺伝子組換えによる植物の品種改良に利用することが可能である。例えば、少量の窒素肥料で、あるいは窒素分の少ないやせた土壌で生育可能な新規組換え植物創製への利用が考えられる。窒素肥料が、合成肥料として大量に使用されるようになってから、食料増産には大きく貢献してきたが、一方では、窒素肥料に由来する硝酸塩が農地からしみ出て、湖沼や湾を富栄養化させていることによる環境汚染、農地に残留している窒素化合物による土壌の酸性化などのマイナス面も、近年は目立っている。少量の窒素肥料で生育可能な遺伝子組換え植物は、このような害を低減させるために役立つ。
【0013】本発明の大豆NRT1遺伝子を、植物品種改良のための遺伝子操作に用いる場合は、植物の組織内に、遺伝子を導入する必要がある。遺伝子導入には、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法、マイクロインジェクション法、マイクロプロジェクタイル法などのベクターを用いない既知の方法が利用できる。また、ベクターを用いる形質転換法でも良い。
【0014】また、本発明の大豆NRT1遺伝子断片は、完全長のcDNAクローンを得るためのプローブとして利用することができる。
【0015】
【実施例】以下に、本発明の具体的な実施態様を実施例として示すが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0016】
【実施例1】大豆のcDNAライブラリーは、ストラタジーン(Stratagene)社製を用いた。12日目の大豆(Glycine max cv. Williams 83)の、上胚軸(epicotyl)由来のmRNAを用いて作製されたcDNAライブラリーである。
【0017】宿主菌は、大腸菌XL1−Blueを用いた。PCR(Polymerase Chain Reaction)用として、2つのプライマーAAT−NおよびAAT−C(表1)を用いた時に、GmNRT1−1cDNAは増幅され、大豆のcDNAライブラリーからクローニングできた。
【0018】完全長のcDNAをクローニングするためのPCRは、大豆cDNAライブラリー0.1μgをテンプレートとし、2.5ユニットのTaq DNAポリメレ−ス、100pmolのプライマーを用いた。GmNRT1−1cDNAの5’−領域は、プライマー5’VECと3’VECのセット(表1)を用い、3’−領域はプライマー5’SBON1と3’SBON1のセット(表1)を用いて、それぞれのcDNAを増幅させた。プライマー5’SBON1と3’SBON1の5’端には、それぞれ制限酵素BamHIおよびHindIIIの切断部位を有している。増幅されたPCRフラグメントを、制限酵素BamHIまたはHindIIIで切断後、ベクターpUC118のマルティプルクローニングサイトに挿入した。次に、それぞれのPCRフラグメントを、HindIII切断部位を有するオーバーラッピング領域で再結合させた後、pBluescriptベクターのBamHI−HindIII切断部位に挿入した。最終的な組換え体は、ヌクレオチド配列分析により確認した。
【0019】
【表1】

【0020】GmNRT1−1と相同性を有するcDNAを探索するため、前述の大豆cDNAライブラリーの約1×105ファージクローンをスクリーニングした。スクリーニング用のプローブは、GmNRT1−1cDNAの816番目から1,267番目のヌクレオチドに相当する452bpのDNA断片を用い、ECLキット(Amersham-Pharmacia Biotech 製)で検出した。その結果、GmNRT1−1およびGmNRT1−2の2つの完全長cDNAを検出できた。それぞれのcDNA塩基配列を、配列表の配列番号1および配列番号2に示した。
【0021】GmNRT1−1cDNAは、オープンリーディングフレーム(ORF)の上流の同じフレーム内に、ストップコドンがヌクレオチド17−19番目のサイトに存在して、そのフレーム内に最初のメチオニン残基(Met)が存在することを示しており、また3’端の非翻訳領域(3'-UTR)にポリ(A)テイルが存在することから、完全長のcDNAであることが示された。1,794bpから成るORFには、597アミノ酸のペプチドがコードされており、その分子量は65,820Daと計算された。
【0022】GmNRT1−2cDNAも、オープンリーディングフレーム(ORF)の上流の同じフレーム内の、開始コドンから105ヌクレオチド上流のサイトにストップコドンが存在しており、そのフレーム内に最初のメチオニン残基(Met)が存在することを示しており、また3’端の非翻訳領域(3'-UTR)にポリ(A)テイルが存在することから、完全長のcDNAであることが示された。1,818bpから成るORFには、605アミノ酸のペプチドがコードされており、その分子量は66,720Daと計算された。
【0023】
【実施例2】大豆のNRT1ファミリーに属する遺伝子が、GmNRT1−1やGmNRT1−2以外にも存在するのではないかと考え、さらなるcDNAクローニングを試みた。実験方法は、実施例1と実質的に同等である。その結果、新たに3種類のcDNAを検出できた。
【0024】完全長のGmNRT1−3(配列表の配列番号3)は、RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)法により得られたものであり、SMART RACEcDNA Amplification kit(Clontech製)およびプライマー 5'-TTGGATTCACAACGTTGGACACGG-3' を用いて行った。オープンリーディングフレーム(ORF)の上流の同じフレーム内に、ストップコドンがヌクレオチド138−140番目のサイトに存在して、そのクローン内に最初のメチオニン残基(Met)が存在することを示しており、また3’端の非翻訳領域(3'-UTR)にポリ(A)テイルが存在することから、GmNRT1−1およびGmNRT1−2と同じく、完全長のcDNAであることが確認できた。1,728bpから成るORFには、575アミノ酸のペプチドがコードされており、その分子量は64,120Daと計算された。
【0025】一方、GmNRT1−4(配列表の配列番号4)とGmNRT1−5(配列表の配列番号5)は完全長のcDNAではなく、遺伝子断片であった。GmNRT1−4は、5’端の非翻訳領域(5'-UTR)、3’端の非翻訳領域(3'-UTR)およびポリ(A)テイルを欠失していた。GmNRT1−5は、5’端の非翻訳領域(5'-UTR)を欠失していたが、3’端の非翻訳領域(3'-UTR)とポリ(A)テイルは有していた。コーディング領域に関しては、GmNRT1−4はN末端側の約300アミノ酸とC末端側の約50アミノ酸を欠失していた。また、GmNRT1−5のコーディング領域は、N末端側の約20アミノ酸が欠失していた。
【0026】
【実施例3】得られた新規なcDNA、GmNRT1−1〜GmNRT1−5が、NRT1遺伝子ファミリーに属することを証明するため、既に知られている他の植物のNRT1タンパク質とのホモロジー解析を行った。GmNRT1−2の配列を基準として、それぞれのコーディング領域のアミノ酸配列を対象に、ソフトウエアBLASTを用いて解析した(図1)。ホモロジーは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)との比較ではAtNRT1とは31%、AtNRT3 とは31%であり(図1)、またトマト(Lycopersicon esculentum)の場合はLeNRT1-1とは31%、LeNRT1-2とは32%であり(表2)、いずれも高い相同性を示した。また、大豆のNRT1ファミリー間のホモロジーは、97〜29%という高い値であった(表2)。
【0027】
【表2】

【0028】また、ハイドロパシー解析の結果、シロイヌナズナのNRT1ファミリーに属するAtNRT1タンパク質と同様に、12個の膜貫通セグメントを有するとともに、中央部に疎水性が低い領域が存在するという2つの特徴を有していた。ハイドロパシー解析の結果の一例を、図2に示してある。
【0029】一方、同じくGmNRT1−2を基準とした、大豆および他の植物のNRT2ファミリーとのホモロジーは4〜3%と低く(表2)、実質的にはホモロジーがないと言える。従って、NRT1ファミリーとNRT2ファミリーとのアミノ酸配列には、明らかな違いが存在することを証明できた。
【0030】以上の結果を総合すると、アミノ酸配列レベルでの比較により、本発明の新規遺伝子および遺伝子断片は、大豆のNRT1ファミリーに属することが示された。
【0031】
【実施例4】本発明の大豆NRT1ファミリーに属する遺伝子の発現パターンを確認するため、以下の試験を行った。
【0032】フォトチャンバー内において、大豆(Glycine max cv. Williams)を22℃、16時間/8時間の明暗サイクル条件下に栽培した。窒素源によるNRT1遺伝子のインダクションの結果は、RT−PCR(Reverse Transcriptase-Polymerase Chain Reaction)により確認した。
【0033】窒素源に対する短時間暴露の場合は、大豆の種子は、滅菌した湿潤バーミキュライト(vermiculite)のトレイ中で発芽させた。6日後の実生を、栄養液を含んだ水栽培用ポットに移し、3〜6時間処理した。実質的に窒素源を含まない栄養液は、2mM CaSO4,1mM MgSO4,0.94mM CaCl2,0.5mM K2SO4,0.16mM K2HPO4,0.082mM KH2PO4,0.024mM Fe−EDTA,1.08mM MES バッファー,0.8mM KOH,5μM H3BO3,2μM MnSO4,0.8μM ZnSO4,0.033μM CoCl,0.65nM (NH46MO724 の組成である。窒素源補充栄養液には、10mM KNO3 または 10mMNH4Clまたは10mM KNO3 と 10mM NH4Clの両方を、実質的に窒素源を含まない栄養液に添加した。培養液のpHは、6.0に調整した。
【0034】窒素源に対する長期間暴露の場合は、大豆の種子を滅菌した湿潤バーミキュライト(vermiculite)のトレイ中で発芽させ、3種類の栄養液の1種類を添加した後、7〜14日間成長させた。ナイトレートおよびアンモニウム(NH4+)補充液の組成は、25mM NH4NO3,2mM CaCl2,3mM KCl,1.6mM MgCl2,0.375mM MgSO4,0.375mM NaH2PO4,0.05mM Fe−EDTA,0.01mM ホウ酸,0.045mM MnSO4,0.7μM ZnSO4,0.2μM CuSO4,0.2μMKIである。アンモニウム補充液の組成は、NH4NO3の代わりに、25mMコハク酸アンモニウムを含有している他には、ナイトレートおよびアンモニウム補充液と同じである。培養液のpHは、6.0に調整した。
【0035】RT−PCRは、宝酒造のmRNA Selective RT−PCRキットを用いた。トータルRNAは、TRIzol(GIBCO BRL製)を用いて単離した。窒素源への短時間暴露の場合は、トータルRNAを大豆の根から単離した。また、窒素源への長期間暴露の場合は、大豆の根と葉からトータルRNAを単離した。
【0036】GmNRT1−1およびGmNRT1−2の両方の発現を解析するためには、5’SBON1と3’SBON1のプライマーセット(表1)を用いた。逆転写反応は、0.1μgのトータルRNAと3’SBON1プライマーを用いて、50℃、15分間行った。続くPCR反応は、5’SBON1と3’SBON1のプライマーセットを用いて、25〜40サイクルの反応を行った(後述の図3および4には、25、30、35、40の各サイクルのサンプルでの結果を示してあり、RT−PCR産物の経時変化を見ることができる)。1サイクル毎の反応は、85℃、1分間の熱変性(denature)、45℃、1分間のアニ−リング(anealing)、72℃、1分間の伸長(extension)反応を行った。反応生成物を1.5%アガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウム ブロマイドで染色した。ゲル上のバンドの濃度は、デンシトメーター(Bio-Rad製 Molecular Imager)で定量した。
【0037】GmNRT1−1とGmNRT1−2の発現を区別するためには、5’Ndifと3’Ndif(表1)という別のプライマーセットを用いた。これらはそれぞれ、GmNRT1−2のヌクレオチド配列の127〜143番目と313〜329番目に対応している。この反応の生成物は、12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。
【0038】RT−PCRの生成物が、GmNRT1−1とGmNRT1−2のどちらに由来するかを決定するためには、同じトータルRNA、同じプライマーセット5’Ndifと3’Ndifを用いて、同じ宝酒造製のRNA PCRキット(AMV)によるRT−PCRを行った。この反応の生成物は、T−ベクター(Promega製)にクローニングした後、ヌクレオチド配列分析を行った。
【0039】GmNRT2の転写物を検出する場合には、RT−PCR用のプライマーセットとして、5’−GNTと3’−GNT(表1)を用いた。mRNA Selective RT−PCRキットを用いた本発明の実験条件下においては、逆転写酵素を除いた条件下では、いかなるバンドも検出されなかった。従って、本実施例において増幅されたバンドは、RNA由来であることが示された。図3に結果を示したが、目的のバンドの位置は、楔形の矢印マークで示してある。
【0040】窒素源に短時間(3時間)暴露した場合は、GmNRT1−1および/またはGmNRT1−2の増幅バンドが検出されたのは、窒素源なし(Nitrogen-free)、ナイトレート存在下での成長(Nitrate)、ナイトレートとアンモニウム共存下での成長(Nitrate/Ammonium)の3つのケースであり、アンモニウム存在下で成長させた場合(Ammonium)には、増幅バンドは検出されなかった(図3 A))。増幅バンドの相対的な強度は、ナイトレート存在下、窒素源なし、ナイトレートとアンモニウム共存下の順に大きかった。
【0041】コントロールとして、NRT2ファミリーのGmNRT2の発現を、同じトータルRNAを用いて調べてみた。その結果、GmNRT2の増幅バンドは、ナイトレート存在下で最も高く、窒素源なしの条件下が次に高かったが、アンモニウム存在下では増幅バンドは検出されなかった(図3 B))。このGmNRT2の結果は、文献値と一致していた(Amarasinghe et al., Planta 1998; 206: 44-52)。窒素源に長時間(6時間)暴露した時のトータルRNAを用いた場合は、GmNRT1−1および/またはGmNRT1−2およびGmNRT2に対して、ほとんど同様の結果が得られた。
【0042】GmNRT1−1とGmNRT1−2の発現を区別するために、プライマーセット5’Ndifと3’Ndif(表1)を用いてRT−PCRを行った。この場合には、GmNRT1−1からは179bpのバンドが、GmNRT1−2からは203bpのバンドが検出される。ナイトレート存在下で成長させた根からのトータルRNAでは、プライマー セット5’Ndifと3’Ndifを用いたRT−PCRにより、203bpのバンドだけが検出された(図3 C))。さらに、ヌクレオチド配列分析により、確かにGmNRT1−2の転写物であることを確認できた。従って、ナイトレート存在下で成長させた大豆の根では、GmNRT1−2だけが発現されていることが判明した。同様にして、窒素源なしとナイトレートとアンモニウム共存下のケースも、GmNRT1−2の増幅バンドだけが観察された。
【0043】窒素源への14日間の長期間暴露においては、アンモニウム存在下で成長させた根だけに、GmNRT1−2のバンドだけが観察され、ヌクレオチド配列分析からもGmNRT1−2由来であることが確認できたが、ナイトレートとアンモニウム共存下では、バンドは観察されなかった(図3 D)のレーン1および2)。一方、葉からは、GmNRT1−1とGmNRT1−2の2つのバンドが観察され、ヌクレオチド配列分析からも確認できた(図3 D)のレーン4および5)。以上の結果から、GmNRT1−1とGmNRT1−2は、組織における発現パターンが異なっており、GmNRT1−1は葉で発現されており、GmNRT1−2は根と葉の両方で発現されていることが明らかになった。
【0044】図3のE)のデータは、試験に用いたトータルRNAの品質チェックと、結果の定量性の保証を目的として行ったものであるが、rRNA(ribosomal RNA)の28Sおよび18Sバンドの状態を指標として判定した結果、問題はないことが示された。
【0045】
【実施例5】GmNRT1−3およびGmNRT1−4についても、遺伝子の発現パターンを確認するための試験を行った。特にことわらない限り、試験条件は実施例4と同等である。
【0046】3時間処理後の根から得られたトータルRNAの場合は、すべての条件において、GmNRT1−3の増幅バンドが検出された(図4 A))。この結果は、GmNRT1−3遺伝子は、構成的(constitutive)に発現されていることを示している。GmNRT2に関しては、実施例4と一致した結果が得られた(図4B)および図3 B))。また、6時間処理後の根から得られたトータルRNAの場合も、GmNRT1−3とGmNRT2のどちらについても、ほぼ同等の結果が得られた。図4のC)のデータは、試験に用いたトータルRNAの品質チェックと、結果の定量性の保証を目的として行ったものであるが、rRNAの28Sおよび18Sバンドの状態を指標として判定した結果、問題はないことが示された。
【0047】窒素源への長期間暴露の場合は、アンモニウム存在下およびナイトレートとアンモニウム共存下の2つの条件下で行った。トータルRNAは、大豆の根からは5、7、11、14日目に調製し、葉からは11、14日目に調製した後に、RT−PCRにかけた。プライマーセットとしては、GmNRT1−3用には5’SBON2と3’SBON2(表1)を、GmNRT1−4用には5’SBON3と3’SBON3(表1)を用いた。
【0048】根においては、GmNRT1−3の増幅バンドが、すべてのサンプルで同等に検出された(図5のA))。この結果からも、GmNRT1−3遺伝子は構成的に発現されていることが示された。GmNRT1−2のバンドは、アンモニウム存在下に成長させた大豆のすべての試料において観察されたが、ナイトレートとアンモニウム共存下の場合は、バンドは観察されなかった(図5のB))。バンドの強度は成長と共に徐々に増加しており、明らかにバンドの強度の増加は、根の成長と対応していることが示された。
【0049】GmNRT1−4の発現は弱く、アンモニウム存在下の5日目と7日目の試料だけに観察された(図5のC))。従って、この結果は、アンモニウム存在下に成長させた大豆では、GmNRT1−4遺伝子は成長の初期段階で発現しており、GmNRT1−2遺伝子の発現は、根の成長と共に増加して行くことが示された。GmNRT1−5の増幅バンドは、すべての試験サンプルにおいて観察できなかった。恐らく、今回の試験条件下では、発現が低すぎるものと考えられる。GmNRT2のバンドは、アンモニウム存在下の7日目と11日目の試料で見られたが、ナイトレートとアンモニウム共存下では11日目の試料だけに、非常に弱いバンドが観察された(図5のD))。図5のE)のデータは、試験に用いたトータルRNAの品質チェックと、結果の定量性の保証を目的として行ったものであるが、rRNAの28Sおよび18Sバンドの状態を指標として判定した結果、問題はないことが示された。
【0050】葉では、GmNRT1−3遺伝子の増幅バンドが、アンモニウム存在下およびナイトレートとアンモニウム共存下の両方の試料において同様に検出され、11日目と14日目の試料のバンド強度は、ほとんど同等であった(図6のA))。しかしながら、GmNRT1−1および/またはGmNRT1−2のバンドもまた両方の条件下で検出され、14日目のバンドの強度は11日目の試料よりもずっと強かった(図6のB))。図6のC)のデータは、試験に用いたトータルRNAの品質チェックと、結果の定量性の保証を目的として行ったものであるが、rRNAの28Sおよび18Sバンドの状態を指標として判定した結果、問題はないことが示された。
【0051】
【発明の効果】本発明は、大豆のcDNAクローニングと遺伝子発現解析の結果、NRT1ファミリーに属する大豆の新規な遺伝子および遺伝子断片を単離し、ヌクレオチド配列を同定するに至った。既知のNRT1ファミリー遺伝子との比較、特に発現組織の違いなどから、本発明の遺伝子および遺伝子断片は、確かに新規な遺伝子であることを同定できた。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【出願人】 【識別番号】800000013
【氏名又は名称】有限会社 山口ティー・エル・オー
【出願日】 平成13年3月28日(2001.3.28)
【代理人】 【識別番号】100080539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 義輝
【公開番号】 特開2002−281975(P2002−281975A)
【公開日】 平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願番号】 特願2001−93523(P2001−93523)