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【発明の名称】 水性コーティング剤およびその使用
【発明者】 【氏名】品川 英太

【氏名】中根 通雄

【要約】 【課題】通常の印刷用水性コーティング剤としての特性を維持しつつ、金インキによる印刷層の変色を防止する作用を併せ持つような水性コーティング剤を提供する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラス転移点が90〜140℃のスチレン−アクリル酸共重合体の水性樹脂に、1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤を添加してなることを特徴とする水性コーティング剤。
【請求項2】 1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤の添加量が水性コーティング剤を基準として0.1〜2重量%である請求項1記載の水性コーティング剤。
【請求項3】 基材上に、銅合金粉末もしくは薄片を含む金インキの印刷層、および該印刷層上に請求項1または2記載の水性コーティング剤のコーティング層をそれぞれ形成してなることを特徴とする印刷物。
【請求項4】 銅合金粉末もしくは薄片を含む金インキの印刷層の上に請求項1または2記載の水性コーティング剤をコーティングすることを特徴とする金インキの変色防止法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水性コーティング剤に関し、特に、金色印刷された紙器、パッケージなどの外観を美麗にし、意匠性を高めるための水性コーティング剤、それを用いた印刷物および金インキの変色防止法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、紙器、パッケージなどの分野で、外観、意匠の観点から金インキが印刷に用いられる機会が増大している。このような金インキは、主として黄銅などの銅合金を適当なワニスに分散したものが用いられる。しかし、比較的化学活性の高い銅合金は、これらの紙器、パッケージの印刷、製函工程、あるいは商品としての展示中に、用紙から発生する酸性ガスの発生など、種々の理由から変色、特に直径数ミリの点状の黒点が発生しやすく、金インキの変色により著しく商品価値を損ねることがあった。
【0003】金インキの変色防止のために、金インキ中に防錆剤を含有させ、変色防止する方法は公知であるが、充分な効果は得られない。このため、特開昭63−95277号公報では、金インキに用いられる黄銅粉をポリエチレングリコールと脂肪酸エステルで被覆し変色を防止する技術が、又、特公平05−78591号公報では、変色しやすい黄銅粉を着色されたアルミ合金に変える技術等の方法が提案されている。これらの改良方法は金インキの変色防止効果は認められるが、金属粉の表面処理による工程の煩雑化、金属粉の価格上昇などいくつかの欠点もあり更なる改良が期待されている。
【0004】紙器、パッケージ分野では、光沢の向上による商品価値の増大、表面の保護、すべり適性の付与などのために印刷工程の最後に印刷用コーティング剤を被覆する場合が多い。このような印刷用コーティング剤は、本来、金インキが外気と接触するのを防ぎ、変色防止に有効なのであるが、一方で基材である紙から発生する、銅を腐食する物質の拡散を止めるためか、特に高温、多湿時に金インキの点状の黒変が発生しやすくなる傾向があり、不都合であった。したがって、美観と変色防止を兼ねたコーティング剤の開発が待たれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記欠点を改良し、通常の印刷用水性コーティング剤としての特性を維持しつつ、金インキによる印刷層の変色を防止する作用を併せ持つような水性コーティング剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガラス転移点が90〜140℃のスチレン−アクリル酸共重合体の水性樹脂に、1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤を添加してなることを特徴とする水性コーティング剤に関する。
【0007】更に本発明は、1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤の添加量が水性コーティング剤を基準として0.1〜2重量%である上記水性コーティング剤に関する。
【0008】更に本発明は、基材上に、銅合金粉末もしくは薄片を含む金インキの印刷層、および該印刷層上に上記水性コーティング剤のコーティング層をそれぞれ形成してなることを特徴とする印刷物に関する。
【0009】更に本発明は、銅合金粉末もしくは薄片を含む金インキの印刷層の上に上記水性コーティング剤をコーティングすることを特徴とする金インキの変色防止法に関する。
【0010】本発明における金インキとは、インキ中に銅合金の粉末もしくは薄片などを含有し、金色の外観を呈するインキを言う。銅合金として代表的な物は真鍮が挙げられる。合金中の銅の比率により、青口、赤口などの金インキがあり、用途によって使い分けられる。銅の比率の高い、赤口金インキにおいて変色、黒変などが発生しやすい傾向にある。本発明の金インキにおける、銅合金中の銅の比率、粉末の形状、ワニス成分および添加剤等はなんら制限されることなく使用することができる。
【0011】金インキによる印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷等の従来使用されている印刷方法を用いることができ、印刷層の硬化も熱硬化、酸化重合、空気乾燥、紫外線硬化等のいずれであってもよい。
【0012】本発明において1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤は、防錆効果だけではなく、水性コーティング剤への添加のしやすさ、塗布、乾燥後の特性維持などの理由による選択されたものである。
【0013】本発明において1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤とは、例えば、1,2,3ベンゾトリアゾール、4−メチル−1,2,3ベンゾトリアゾール、5−メチル−1,2,3ベンゾトリアゾール等の低級アルキル置換体等が挙げられる。これらの中で、入手が容易であり、着色が少なく、水性コーティング剤への悪影響の少ない、1,2,3ベンゾトリアゾールまたは4−メチル−1,2,3ベンゾトリアゾールが好ましく、特に1,2,3ベンゾトリアゾールは防錆効果とコーティング剤適性に優れ、好ましい。
【0014】1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤の添加量は、水性コーティング剤に0.1〜2.0重量部が好ましい。0.1重量部未満では、変色防止効果が充分ではなく、2重量部より多いとコーティング剤としての特性を損ないやすい。すなわち、上記添加量の範囲は、変色防止効果とコーティング剤としての特性のバランスがとれ、特に好ましい。
【0015】1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤の添加方法は、防錆剤が充分に微細であれば直接に粉末を添加することも可能であるが、防錆剤の分散等を考慮すると、あらかじめメタノール、エチルアルコールなどの良溶媒に溶解し、10〜60重量%の溶液にした後水性コーティング剤に添加し、充分に攪拌することが好ましい。
【0016】本発明における水性樹脂とは、公知の方法により合成されたスチレン−アクリル酸共重合体のエマルジョン、コロイダルディスパージョンあるいはアルカリ性水溶液などを含む。重合体組成としては、モノマーとして、スチレン、アクリル酸以外にも、マレイン酸等のエチレン性不飽和二塩基酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでいても良い。あるいは常法によって得られたスチレン−アクリル酸共重合体の固形樹脂をアンモニア水または/あるいは水酸化カリウムなどのアルカリ性水溶液に溶解したものであってもよい。また、エマルジョン粒子の内部と外周部とで組成、性質を変えた、いわゆるコア−シェル型エマルジョンであっても良い。これらの水性樹脂は印刷用コーティング剤として印刷インキまたは白紙上にコーティングされ、加熱乾燥により水分、アンモニアの揮発により被覆膜を形成し、光沢、すべり性を持った有用なコーティング膜となる。
【0017】本発明では、1,2,3ベンゾトリアゾール系防錆剤を添加することによる耐ブロッキング性の低下を補うためにスチレン−アクリル酸共重合体のガラス転移点(理論値)を90〜140℃、好ましくは94〜130℃とする。
【0018】耐ブロッキング性とは、乾燥させたコーティング面同士を重ね、高温、多湿の条件下で荷重をかけた場合でも、コーティング面同士が接着、固着しない性質のことである。 耐ブロッキング性が良好でないと、印刷の後工程、製函、箱詰め、輸送、展示などの使用状況により、コーティング剤の接着、固着により印刷面の傷つきなどが発生し、著しく商品価値を減じることになる。
【0019】スチレン−アクリル酸共重合体のガラス転移点が90℃より高いと、耐ブロッキング性の著しい向上が見られる。したがって、ガラス転移点が高いほど、耐ブロッキング性は向上するのであるが、一方でコーティング材料として、塗布後レベリング性、成膜性、クラックの発生などで不都合が生じる場合があるのでガラス転移点の上限は140℃とする。特に94〜130℃は耐ブロッキング性と他物性のバランスがとれ好ましい。
【0020】本発明の水性コーティング剤は、樹脂成分としてガラス転移点が94〜105℃のスチレン−アクリル酸共重合体を水性コーティング剤を基準として6〜50重量%含むことが好ましく、それ以外の水性分散体樹脂、水溶解性樹脂を添加してもよい。
【0021】本発明の水性コーティングは、水およびイソプロピルアルコールのような水混和性溶剤の混合物が媒体として好ましく使用される。
【0022】本発明の水性コーティング剤は、離型剤、滑性付与のため微粒子状のポリエチレンワックスを添加することも可能である。
【0023】本発明の水性コーティング剤は、紙、金属、プラスチック等の基材の金インキを含む印刷層の上にロールコーター等の塗工機を使用してコーティングする。コーティング層の厚さとしては5μm以下が好ましい。
【0024】以下、本発明を実施例により説明する。
【0025】
【実施例】以下に実施例を示すが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。例中、部とは重量部を表す。
スチレン−アクリル酸共重合体:Joncryl7610,780,354,734,450、ジョンソンポリマー株式会社製ワックス:Jonwax26(平均粒子径0.07μm)、ジョンソンポリマー株式会社製すべり剤:KM−788、信越化学株式会社製消泡剤:B−748A、旭電化株式会社製離型剤:AP−13、大八化学工業所製防錆剤1:1,2,3−ベンゾトリアゾール防錆剤2:5−メチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール表1に示した配合量で、水性コーティング剤を作成した。容器中にスチレン−アクリル酸共重合体水性分散体を投入し、ハイスピードミキサーで3000rpmに攪拌しながら、各添加剤を順次、投入した。また、防錆剤はあらかじめイソプロピルアルコールに50wt%の濃度で溶解し、その溶解液を同様の方法で添加した。得られた水性コーティング剤は、水/イソプロピルアルコールの混合溶剤でB型粘度計にて150±50mPa・秒の粘度に調製した。
【0026】マリコート紙(25×27cm、北越製紙株式会社製)に枚葉用金インキ(黄銅粉を使用)0.3mlをRIテスターにて展色し、展色15分後に上記各水性コーティング剤を#3バーコーターで塗布、60℃に設定した乾燥機で30秒間乾燥する。塗布物は16時間放置後、120℃に設定した平板プレスにて、40Mpa,10秒間、加圧しプレス加工を行った。得られた水性コーティング被覆物は所定の形状に切断し、試験片とした。
【0027】試験方法光沢: 光沢計 60度/60度、鏡面光沢耐ブロッキング性:45℃、相対湿度80%の恒温恒湿器に荷重500g/cm2をかけ、24時間放置後のブロッキングを評価した。
【0028】金インキ黒変: 4×5cmの大きさに切断した試料と同紙質、同サイズの白紙を試料表面に置き、10試料を準備する。80℃、相対湿度80%、の恒温恒湿器に荷重100g/cm2をかけ、放置し、24時間後に取り出し、1個以上の黒点が発生した試験片の数を計数した。
【0029】
【表1】

【0030】比較例1と比較例2の結果を比べると、防錆剤の添加により耐ブロッキング性が悪化し、実用に耐えないことがわかる。比較例2と実施例2の結果から、本発明による水性コーティング剤では、防錆剤の添加によっても耐ブロッキング性は悪化しないことが明らかとなり、比較例3と実施例1,2から耐ブロッキング性を維持したまま、金インキの黒点発生を抑えることが可能である。
【0031】また、実施例1,4から、防錆剤の添加は微量であっても金インキの黒点発生の低減に有効であることがわかる。実施例3から黒点発生の低減と耐ブロッキング性の向上の両立が図れる。
【0032】
【発明の効果】本発明により、金色印刷層に上に形成するコーティングに防錆剤を添加するという新規な手法により、通常の印刷用水性コーティング剤としての特性を維持しつつ、金インキの変色を防止することが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキ製造株式会社
【出願日】 平成13年6月18日(2001.6.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−371221(P2002−371221A)
【公開日】 平成14年12月26日(2002.12.26)
【出願番号】 特願2001−182904(P2001−182904)