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【発明の名称】 塩化ビニル系樹脂成形体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】畑山 博之
【氏名】松本 英志
【課題】無毒性の複合金属石鹸系安定剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物を押出成形して得られる耐衝撃性能に優れた塩化ビニル系樹脂成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。

【解決手段】複合金属石鹸系安定剤を含有する塩化ビニル系樹脂成形体であって、引張強度が49MPa以上、ビカット軟化温度が80℃以上、及び23℃におけるシャルピー衝撃値が5kJ/m2以上であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂成形体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複合金属石鹸系安定剤を含有する塩化ビニル系樹脂より得られる成形体であって、引張強度が49MPa以上、ビカット軟化温度が80℃以上、及び23℃におけるシャルピー衝撃値が5kJ/m2以上であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂成形体。
【請求項2】 硬質塩化ビニル系樹脂管であることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系樹脂成形体。
【請求項3】 樹脂温度180〜220℃、剪断速度50〜5000s-1、及び供給エネルギー1000〜10000MJ/m3の条件で押出成形を行うことにより得られうる、下記式(1)で定義される混練面積率Aが80〜100%、及び下記式(2)で定義されるキャピラリーフローテスターの押出圧力比Bが30〜100である請求項1又は2記載の塩化ビニル系樹脂成形体の製造方法。
A=(S0−S)/(S0−S100)×100 式(1)
S0:塩化ビニル系樹脂組成物の粉体加熱プレス体断面の写真の黒色部分の面積S100:塩化ビニル系樹脂組成物の完全混練体断面の写真の黒色部分の面積S:塩化ビニル系樹脂成形体断面の写真の黒色部分の面積 B=(P−P0)/(P100−P0)×100 式(2)
P0:塩化ビニル系樹脂組成物の粉体のキャピラリーフローテスターの押出圧力P100:塩化ビニル系樹脂組成物の完全混練体のキャピラリーフローテスターの押出圧力P:塩化ビニル系樹脂成形体のキャピラリーフローテスターの押出圧力
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩化ビニル系樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル系樹脂(以下、PVCともいう)は、機械的強度、耐候性、耐薬品性に優れており、他のプラスチック材料と比較しても安価であることから、給排水パイプ、プレート、継手等の幅広い範囲で利用されている。一方、PVCは成形温度領域と分解温度領域が近く、樹脂単独での成形は困難であり、成形時には一般に熱安定剤が用いられる。このPVC用熱安定剤としては種々のものがあるが、鉛系安定剤が性能およびコスト面で優れており、以前からよく使用されており、現在でも代表的な熱安定剤として知られている。
【0003】しかし、近年、環境問題への関心が高まり、重金属の安全性、特に鉛の毒性が問題になってきており、無毒性のPVC用熱安定剤の必要性が高まってきている。これらの要望に対し、例えば、特開昭50−51147号公報には、無毒性の複合金属石鹸系安定剤によるPVCの安定化の方法が提案されている。しかし、この複合金属石鹸系安定剤で安定化されたPVC組成物を押出成形した場合、成形体の耐衝撃性能が低下する問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑み、無毒性の複合金属石鹸系安定剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物を押出成形して得られる耐衝撃性能に優れた塩化ビニル系樹脂成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明(以下、発明1という)の塩化ビニル系樹脂成形体は、複合金属石鹸系安定剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物より得られる成形体であって、引張強度が49MPa以上、ビカット軟化温度が80℃以上、及び23℃におけるシャルピー衝撃値が5kJ/m2以上であることを特徴とする。
【0006】請求項2記載の発明(以下、発明2という)の塩化ビニル系樹脂成形体は、発明1の塩化ビニル系樹脂成形体であって、硬質塩化ビニル系樹脂管であることを特徴とする。
【0007】請求項3記載の発明(以下、発明3という)の塩化ビニル系樹脂成形体の製造方法は、発明1又は2の塩化ビニル系樹脂成形体の製造方法であって、樹脂温度180〜220℃、剪断速度50〜5000s-1、及び供給エネルギー1000〜10000MJ/m3の条件で押出成形を行うことにより得られうる、下記式(1)で定義される混練面積率Aが80〜100%、及び下記式(2)で定義されるキャピラリーフローテスターの押出圧力比Bが30〜100である。
A=(S0−S)/(S0−S100)×100 式(1)
S0:塩化ビニル系樹脂組成物の粉体加熱プレス体断面の写真の黒色部分の面積S100:塩化ビニル系樹脂組成物の完全混練体断面の写真の黒色部分の面積S:塩化ビニル系樹脂成形体断面の写真の黒色部分の面積 B=(P−P0)/(P100−P0)×100 式(2)
P0:塩化ビニル系樹脂組成物の粉体のキャピラリーフローテスターの押出圧力P100:塩化ビニル系樹脂組成物の完全混練体のキャピラリーフローテスターの押出圧力P:塩化ビニル系樹脂成形体のキャピラリーフローテスターの押出圧力以下に本発明を詳述する。
【0008】本発明に用いられるPVCとしては、特に限定されず、JIS K 6721に準拠した平均重合度が600〜2000の範囲のものが好適に用いられる。
【0009】また、本発明に用いられるPVCとしては、単独重合体及び共重合体が用いられ、塩化ビニルの共重合単量体成分としては、特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、エチレン、プロピレン等のオレフィン、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン等が挙げられ。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】本発明に用いられるPVC組成物には、複合金属石鹸系安定剤が含有される。上記複合金属石鹸系安定剤としては、複合して用いられる金属石鹸の中の金属が、鉛及びカドミウム以外の、いわゆる無毒性の金属石鹸であれば、特に限定されずに用いられ、例えば、バリウム(Ba)/亜鉛(Zn)系、カルシウム(Ca)/Zn系、Ca/マグネシウム(Mg)系、Ba/Ca/Zn系、Ca/Mg/Zn系等の複合金属石鹸が挙げられる。また、上記金属石鹸の中の脂肪酸としては、特に限定されず、例えば、2−エチルヘキソイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、ベヘン酸等が挙げられる。更に、上記複合金属石鹸系安定剤は、上記PVC組成物100重量部に対して、0.5〜3.0重量部の範囲で含有されるのが好ましい。
【0011】また、上記複合金属石鹸系安定剤には、該金属石鹸系安定剤と相乗作用を示す安定化助剤が添加されてもいてもよい。上記安定化助剤としては、一般的に金属石鹸系安定剤と相乗作用が知られている安定化助剤であれば、特に限定されず、例えば、亜リン酸エステル化合物、エポキシ系化合物、β−ジケトン化合物、含窒素化合物、多価アルコール類、ハイドロタルサイトやゼオライト等の無機安定剤等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】本発明に用いられるPVC組成物には、必要に応じて、滑剤、加工助剤、無機充填剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料等が添加されていてもよい。
【0013】上記滑剤としては、内部滑剤、及び外部滑剤が挙げられる。上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用され、特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用され、特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】上記加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤等が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】上記各種添加剤を、上記PVC組成物に混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0018】発明3のPVC成形体の製造方法において、得られるPVC成形体の混練面積率Aは、80〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。上記混練面積率Aは、下記の方法により算出される値である。即ち、先ず成形体断面をミクロトームを用いて厚さ15μmに切削する。この切削品を黒色の台座に乗せ、光学顕微鏡に接続したカメラを用いて、25倍に拡大して撮影する。均一に混練された部分は、顔料等の配合剤により着色され、一方均一に混練されていない部分は、配合剤が存在しないため透明となる。従って、均一に混練されていない部分は台座の黒色が透けるため、黒色に撮影される。このように撮影して得られた写真により、上記式(1)で示されるS0、S100及びSを求め、混練面積率Aを算出することができる。ここで、PVC組成物の粉体加熱プレス体は、混合粉体を205℃で予熱4分した後、205℃、15MPaで4分間加圧して得られた。上記混練面積率Aが80%未満であると、得られるPVC成形体のシャルピー衝撃値が低下することがある。
【0019】発明3のPVC成形体の製造方法において、得られるPVC成形体の押出圧力比Bは、30〜100であり、さらに好ましくは50〜100である。上記押出圧力比Bは、下記の方法により算出される値である。即ち、先ず成形体を約3mm四方に切断する。この切断した成形体をキャピラリーフローテスターのバレルに投入し、ピストンを一定速度で動かして押出を行い、そのときのピストンに掛かる圧力を押出圧力として測定する。次ぎに、PVC組成物の粉体の押出圧力を測定すると、PVCの粒子同士の絡み合いが少ないために押出圧力が小さくなり、逆に、PVC組成物の粉体の完全混練体の押出圧力を測定すると、PVCの粒子同士の絡み合いが多くなるために押出圧力が大きくなる。上記式(2)で示されるP0、P100及びPを求め、押出圧力比Bを算出することができる。ここで、押出条件は、バレル温度135℃、予熱時間5分、押出速度5mm/分であり、先端の金型は、長さ10mm、直径1mmのキャピラリーを有したものを用いた。上記押出圧力比Bが30未満であると、得られるPVC成形体のシャルピー衝撃値が低下することがある。
【0020】発明3のPVC成形体の製造方法において、得られるPVC成形体の押出成形は、樹脂温度は180〜220℃、好ましくは180〜210℃で行う。樹脂温度が180℃未満であると、得られるPVC成形体の押出圧力比Bが低下することがあり、220℃を超えると、PVC組成物の分解が発生し、得られるPVC成形体の物性値が低下することがある。
【0021】また、発明3のPVC成形体の製造方法において、得られるPVC成形体の押出成形は、剪断速度は50〜5000s-1、好ましくは20〜4000s-1で行う。剪断速度が50s-1未満であると、得られるPVC成形体の混練面積率Aが低下することがあり、5000s-1を超えると、PVC組成物の分解が発生し、得られるPVC成形体の物性値が低下することがある。
【0022】更に、発明3のPVC成形体の製造方法において、得られるPVC成形体の押出成形は、供給エネルギーは1000〜10000MJ/m3、好ましくは1500〜6000MJ/m3で行う。供給エネルギーが1000MJ/m3未満であると、得られるPVC成形体の混練面積率Aが低下することがあり、10000MJ/m3を超えると、PVC組成物の分解が発生し、得られるPVC成形体の物性値が低下することがある。
【0023】発明3のPVC成形体の製造方法において、押出成形の方法としては、例えば、上記PVC組成物を単軸押出機、二軸押出機等の押出混練装置によって実施する事ができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0025】(実施例1〜6、比較例1〜4)PVCとして平均重合度1000の塩化ビニル単独重合体(TS−1000R、徳山積水工業社製)100重量部、Ca/Zn系安定剤(NWP−603、堺化学工業社製)2.5重量部、ポリエチレン系滑剤(Hiwax2203A)1重量部、エステル系滑剤(WAX−OP、ヘキスト社製)0.5重量部、及び酸化チタン(SR−1、堺化学工業社製)0.5重量部の組成の配合物を、200Lスーパーミキサー(カワタ社製)中に投入し、高速回転で80℃まで昇温する。上記温度に到達した後、低速回転で1分間熟成し、次ぎに400Lクーリングミキサー(カワタ社製)に移送し、ミキサー温度が50℃以下になった時点で、混合を完了して抜き出し、PVC組成物を得た。このPVC組成物を、表1に示した成形条件下で、異方向回転二軸押出機(BT50、プラスチック工学研究所社製)を用いて押出成形を行い、PVC成形体を得た。このようにして得られたPVC成形体の混練面積率、及び、キャピラリーフローテスターの押出圧力比、さらに、下記の方法に従い実施したPVC成形体の物性評価の結果を表1に示した。
【0026】(物性評価方法)
・シャルピー衝撃試験JIS K 7111(硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験方法)に準拠して、エッジワイズ衝撃試験片でシャルピー衝撃値を測定した。測定温度は23℃であり、単位は(kJ/m2)である。
・ビカット軟化温度試験JIS K 7206(熱可塑性プラスチックのビカット軟化温度試験方法)に準拠して、ビカット軟化温度を測定した。測定には5kg錘を使用し、単位は(℃)である。
・引張試験JIS K 7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠して、1号形試験片で引張強度を測定した。測定温度は23℃であり、単位は(MPa)である。
【0027】
【表1】

【0028】
【発明の効果】本発明は、上述の構成からなるので、複合金属石鹸系安定剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物を押出成形して、耐衝撃性能に優れた塩化ビニル系樹脂成形体を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【出願日】 平成12年10月4日(2000.10.4)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−114853(P2002−114853A)
【公開日】 平成14年4月16日(2002.4.16)
【出願番号】 特願2000−305073(P2000−305073)