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【発明の名称】 一液型エポキシ樹脂組成物
【発明者】 【氏名】藤本 尊三

【要約】 【課題】保存安定性に優れ、かつ加熱によって速やかに硬化し、特に、積層された鋼板を用いた回転電機子をこの組成物で絶縁被覆するために使用する際に、被覆後の積層鋼板に浸透した間隙において分離未硬化物や回転軸の固結が発生しない、均一な液状酸無水物系一液型エポキシ樹脂組成物を提供する。

【解決手段】積層鋼鈑を用いた回転電機子を被覆する被覆材用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂、硬化剤として酸無水物、及びグリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを必須成分として含有することを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 積層鋼鈑を用いた回転電機子を被覆する被覆材用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂、硬化剤として酸無水物、及びグリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを必須成分として含有することを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】 グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートをエポキシ樹脂100重量部に対して1〜20重量部含有することを特徴とする請求項1記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絶縁性に優れた一液型エポキシ樹脂組成物に関するものである。本発明の組成物は、積層された鋼板を用いた回転電機子の封止を目的とした被覆材として特に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】従来より、積層された鋼板を用いた回転電機子を被覆する材料としては、エポキシ樹脂組成物が使用されてきた。このうち、一液型エポキシ樹脂組成物については、組成物の保存安定性をよくするために、硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジッド等のヒドラジッド化合物やジシアンジアミドのような固形のものが用いられ、また、硬化促進剤としては、第3級アミン、イミダゾール系化合物、有機金属塩などが用いられていた。
【0003】しかし、これらの硬化剤、硬化促進剤は固形であることから、硬化時に加熱によりエポキシ樹脂に溶解してから反応が始まるため、積層された鋼板の間隙に未硬化の液状エポキシ樹脂のみが先に流れ込んでしまい、これが回転電機子の内部に残り、経時変化によって積層鋼板内部の回転子の軸に到達し、固結してモーターが作動しなくなるという問題が内在していた。このような背景から、保存安定性を確保しながら、硬化性に優れ作業性がよく、積層鋼板内部に浸透しても回転子の軸に到達する前に硬化する性質をもつ一液型エポキシ樹脂組成物が切望されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、保存安定性に優れ、かつ加熱によって速やかに硬化し、特に、積層された鋼板を用いた回転電機子をこの組成物で絶縁被覆するために使用する際に、被覆後の積層鋼板に浸透した間隙において分離未硬化物や回転軸の固結が発生しない、均一な液状酸無水物系一液型エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)積層鋼鈑を用いた回転電機子を被覆する被覆材用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂、硬化剤として酸無水物、及びグリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを必須成分として含有することを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物、(2)グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートをエポキシ樹脂100重量部に対して1〜20重量部含有することを特徴とする第(1)項記載の一液型エポキシ樹脂組成物、である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明において用いられるエポキシ樹脂としては特に限定しないが、ビスフェノールタイプエポキシ樹脂(A型、F型、AD型)、脂環式エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのほか、カテコール、レゾルシノール、またはグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテルも使用出来る。また、P−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、さらにはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂等も使用することができ、これらを単独あるいは混合して使用する。樹脂の形態は液体でも固体でもよいが、通常硬化剤と混合した場合に液状となるものが使用される。但し、単価のアルコール系の飽和脂肪族あるいは不飽和脂肪族エポキシ樹脂など、潜在性硬化剤を溶解させる傾向が強いものは保存安定性が良くなく、好ましくない。製造時の作業性や硬化後の特性、材料コスト等を考慮すると、これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0007】本発明において用いられる酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ドデシニルコハク酸、無水ジクロルコハク酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、アルキルスチレンー無水マレイン酸共重合体、テトラブロム無水フタル酸、ポリアゼライン酸無水物、無水クロレンディク酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物が挙げられるが、カルボン酸基を有する無水トリメリット酸の場合保存安定性は良くなく、好ましくない。製造時の取り扱い作業性や硬化後の特性、材料コスト、工業的供給安定性を考慮すると、これらの中でも常温で液状であるものが好ましく、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が特に好ましい。
【0008】本発明において用いられる酸無水物硬化剤としては、主たる成分は前述した化合物であるが、これらの硬化剤のみでは塗装後硬化するまでの間に回転電機子の内部に組成物が浸透し、内部の軸に到達して固結し回転子が作動しなくなる問題が発生する。このため、本発明においては、グリセロールトリスアンヒドロチリメテートを併用する。グリセロールトリスアンヒドロチリメテートを添加することにより、硬化時の粘度上昇が早くなり、内部への浸透を防止すると考えられ、さらには、硬化時間が短くなり内部に浸透する前に硬化する効果をも有すると考えられる。
【0009】グリセロールトリスアンヒドロチリメテートの添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、1〜20重量部が好ましい。1重量部より少なくては、速硬化の特性が不充分で内部の軸に組成物の漏れを起こすことがあり、20重量部を超えると保存安定性が低下し、実用上問題を生ずることがある。樹脂組成物の保存安定性や使用時の作業性などを考慮すると、より好ましくは5〜10重量部である。
【0010】本発明において用いられる硬化促進剤は、潜在性硬化剤として市販されているアダクト系化合物が使用出来る。例えば、味の素社製アミキュアPN−23、MY−24や富士化成工業社製フジキュアFX−1000などが挙げられる。また、一般的なイミダゾール化合物や、特開平1−70523号公報に開示されている一液性エポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤、特開平6−73156号公報に開示されている潜在性硬化剤を用いてもよい。
【0011】本発明の一液型エポキシ樹脂組成物が回転電機子の絶縁材として用いられる場合、組成物の耐熱性の向上、熱膨張率の低減等のために、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク、アルミナ、ガラス粉末等の無機充填剤を配合することができる。上記目的のために好ましい無機充填剤としては、分離沈降現象が少なく、安価であることから炭酸カルシウム、タルクが挙げられる。
【0012】これらの充填剤の粒度は、本発明の目的のためには分離沈降が少なく、粘度上昇が小さいことが望まれるので、平均粒径が1〜20μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満では、粒子径が小さいため粘度上昇やチキソ性が現れ、取扱い上好ましくない場合がある。平均粒径が20μmを越えると塗装作業時に沈降が生じることがある。
【0013】なお、本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、本発明の目的に反しない範囲において、必要に応じて、染料、変性剤、チキソ性付与剤、着色防止剤、老化防止剤、離型剤、反応性ないしは非反応性の希釈剤等の添加剤を配合する事ができる。
【0014】本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の製造方法は、通常のエポキシ樹脂組成物の製造方法と同様な一般的な撹拌混合設備と加工条件が適用される。使用される設備としては、ミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ、押し出し機等である。加工条件としてはエポキシ樹脂等を溶解および/または低粘度化し撹拌混合効率を向上させるために加熱してもよい。また、摩擦発熱、反応発熱等を除去するために冷却してもよい。撹拌混合の時間は必要により定めればよく、特に制約されることはない。
【0015】
【実施例】以下実施例と比較例により本発明を説明する。表1に示す配合量により、原材料をプラネタリミキサを用いて常温で均一分散されるまで十分に撹拌混合を行い、エポキシ樹脂組成物を得た。この組成物について、以下の項目について評価を行った。結果を表2に示す。
【0016】各項目の測定方法を以下に記載する。
1.粘度(25℃):EH型粘度計(東機産業製)による。ロータの型式は3度コーンを用いた。
2.ゲルタイム:150℃熱板を用いて測定した。
3.流れ距離:スライドグラスに樹脂組成物を0.1g滴下して、1分以内にこのスライドグラスを傾斜角度45に保持して、100℃に設定された硬化炉に30分放置し、スライドガラス上の硬化物の流れ方向の寸法を測定した。
4.保存安定性:樹脂組成物の製造直後の粘度(V0 )を測定し、一方、容量200g容器内に充填密封した樹脂組成物を30℃の雰囲気で保存し、粘度(V14)を測定した。これらの粘度の比率(V14/V0:粘度変化率 )が2.0を超えたときの保存日数を保存安定性とした。この日数が長い程作業性が良好であることを示し、3日以上であることが好ましい。
5.軸漏れ:50mmφの鋼鈑(厚み約1mm)を、30枚積層して中央に5mmφの軸を通し、側面に組成物を塗布する。これを常温で24時間放置して、150℃の硬化炉で1時間加熱処理した。硬化後、積層鋼鈑の下部や軸からの樹脂の浸み出しの有無を確認した。
〇:浸み出し なし×:浸み出し あり6.分離未硬化物:50mmφの鋼鈑(厚み約1mm)を、30枚積層して中央に5mmφの軸を通し、側面に組成物を塗布する。これを常温で24時間放置して、150℃の硬化炉で1時間加熱処理した。硬化後、積層鋼鈑を剥がして、積層部分に粘稠な未硬化樹脂が存在するか否かを確認した。
〇:なし△:若干あるが、積層部分内で止まっている×:解体した内部すべて及び積層鋼鈑の中央に挿入した軸部分にもある【0017】
【表1】

表1の注1)エポキシ樹脂A:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量 約170)
2)エポキシ樹脂B:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量 約190)
3)ヒドラジッド化合物:アジピン酸ジヒドラジド4)酸無水物A:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸5)酸無水物B:グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート6)アミン系化合物:味の素テクノファイン製アミキュアMY−247)顔料:大日精化工業株式会社製ET4B403BLUE8)有機系チキソ付与剤:楠本化成製ディスパロン6900−20X9)消泡剤:信越化学工業製 KS−603【0018】
【表2】

【0019】表1,2から明らかなように、実施例1,2では、エポキシ樹脂と、硬化剤として酸無水物と共にグリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを使用しているので、保存安定性と加熱時の硬化性に優れ、軸漏れや分離未硬化物のない良好な一液型エポキシ樹脂組成物が得られた。これに対し、比較例1ではジシアンジアミド、比較例2,3ではヒドラジッド化合物をそれぞれ硬化剤として用いており、これらが固形物であるため分離未硬化物が発生した。比較例4では、硬化剤として酸無水物を用いたが、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを併用しておらず、軸漏れが発生した。
【0020】
【発明の効果】本発明は、積層鋼鈑を用いた回転電機子の被覆材において、硬化剤として酸無水物を含有し、かつ、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを必須成分として含有することにより、保存安定性に優れ、加熱によって速やかに硬化する一液型エポキシ樹脂組成物である。特に、積層された鋼板を用いた回転電機子を絶縁被覆するために使用した場合、被覆後積層鋼板の間隙に未硬化物が存在せず、回転軸の固結が発生しない、均一な液状酸無水物系一液型エポキシ樹脂組成物を提供することが出来る。
【出願人】 【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
【出願日】 平成13年2月26日(2001.2.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−249543(P2002−249543A)
【公開日】 平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願番号】 特願2001−49708(P2001−49708)