トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 異方性光散乱フィルム用組成物及び異方性光散乱フィルム
【発明者】 【氏名】久米 誠

【氏名】大江 靖

【要約】 【課題】散乱特性に異方性(前方か後方か、及び入射角度の依存性)を持たせ、縦横の散乱範囲に係る散乱特性までも制御することが容易であると共に、観察位置によって表示光の色が変化しない異方性散乱フィルム及び組成物を提供する。

【解決手段】少なくとも、(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、(B)ラジカル重合性を有する化合物と、(C)分子内に少なくともひとつのカチオン重合性基を有した化合物と、(D)化学放射線によってラジカル種及びカチオン種を発生する光重合開始剤からなり、前記(B)の屈折率が(A)及び(C)よりも低い組成物を用い、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、且つその屈折率の異なる部分が、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して層状に分布している構造である異方性散乱フィルムを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも、(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物と、(C)分子内に少なくともひとつのカチオン重合性を有した化合物と、(D)化学放射線によってラジカル種及びカチオン種を発生する光重合開始剤からなり、(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物の屈折率が(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び(C)分子内に少なくともひとつのカチオン重合性を有した化合物よりも低いことを特徴とする異方性光散乱フィルム用組成物。
【請求項2】前記(C)分子内に少なくともひとつのカチオン重合性を有した化合物がオキシラン環を有する化合物、オキセタン環を有する化合物、ビニルエーテル化合物から選ばれる少なくともひとつあるいは数種の化合物からなることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物。
【請求項3】前記(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂がエポキシ当量400〜5000であることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物。
【請求項4】前記(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物が、常温、常圧で液体で、かつ常圧で沸点が100℃以上で、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個以上有する化合物であることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物。
【請求項5】前記(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対して、前記(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物を20から80重量部を混合してなることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物。
【請求項6】前記(D)化学放射線によってラジカル種及びカチオン種を発生する光重合開始剤を増感せしめる(E)増感色素を添加することを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物。
【請求項7】請求項1〜6のいずれかに記載の異方性光散乱フィルム用組成物を用いて製造された異方性光散乱フィルム。
【請求項8】フィルム内部に、屈折率の異なる部分が不規則な形状、厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、且つその屈折率の異なる部分が、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して層状に分布している構造であることを特徴とする請求項6記載の異方性光散乱フィルム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光の入射角度に応じて散乱性が異なる(或いは、入射角度選択性を持つ)と共に、光散乱特性に異方性を有する光拡散フィルム用組成物及び異方性光拡散フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】反射型液晶表示装置や透過型液晶表示装置のなどの光を利用する表示装置では、観察の際の視野角を確保する(すなわち、表示装置の前面には、明るく表示画像を見せる)ことや、表示画面の全面にわたって均一な明るさで表示画面を見えるようにする目的で、装置の前面に光拡散フィルムを配置することが行われている。従来の光散乱フィルムとしては、表面をマット状に加工した樹脂フィルムや、内部に拡散材を包含した樹脂フィルムなどが用いられている。
【0003】従来のマット状に加工した樹脂フィルムや内部に拡散材を含有するフィルムの場合、入射光の入射角度に依存した散乱性の変化といった機能を持たせることは原理上困難であり、現実的にそのような機能は持ち合わせていない。
【0004】表面をマット状に加工した光散乱フィルムの場合、フィルム表面をサンドブラスター処理のように物理的にマット面を形成したり、或いは酸性又はアルカリ性の溶液による溶解処理により化学的にマット面を形成する。従って光の散乱性を制御する事が難しく、また縦と横の散乱性を変えるといったことも出来ないため散乱異方性を持たせることもできない。
【0005】また、内部に拡散材を包含した光散乱フィルムにおいても、散乱性を制御するために拡散材の屈折率や大きさ、形状等を制御する試みも為されているが、技術的に難易度が高く、実用上十分であるとは言えないのが現状である。
【0006】従って、上記の光散乱フィルムでは、散乱性の入射角度依存性がなく、光散乱の異方性も無いかもしくは少ないため、表示装置に使用した際に、不必要な散乱光が生じ、結果として表示の明るさやコントラストの低下或いは表示画像のぼけを招くという問題点がある。
【0007】一方、光散乱に異方性を持つ散乱板を用いた反射型液晶表示装置に係る提案として、特開平8−20180号公報が公知である。上記公報に開示された散乱板は、後方散乱特性がほとんどなく前方散乱特性が強い散乱板であり、液晶表示装置への入射光あるいは液晶表示装置から出射表示光のどちらか一方を選択的に散乱させる特性を有する。
【0008】しかしながら、上記公報では、散乱板の構成は具体的に説明されておらず、「透明微細粒子を透明な重合性高分子で固めたもの」とだけ記載されている。このような散乱板では、上述した「内部に拡散材を包含した光拡散フィルム」と同様に、散乱特性に異方性(前方か後方か)を持たせられたとしても、縦と横の散乱特性までも制御するのは難しい。
【0009】また、散乱板としてホログラムを用いた透過型液晶表示装置に係る提案として、特開平9−152602号公報が公知である。上記提案は、バックライトを有する液晶表示装置からの出射表示光を散乱させるものであり、散乱板としてホログラムを採用しているため、散乱特性に異方性を持たせることも容易であり、縦と横の散乱特性も制御することも可能ではあるが、必然的に分光(波長分散)を伴ってしまうため、観察する視点を移動することに応じて、表示光の色が変化して視覚されることになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、散乱特性に異方性(前方か後方か、及び入射角度の依存性)を持たせ、縦横の散乱範囲に係る散乱特性までも制御することが容易であると共に、観察位置によって表示光の色が変化しない異方性散乱フィルムを得るための組成物及び異方性散乱フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る異方性散乱フィルムは、フィルム内部に屈折率の異なる部分が不規則な形状、厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、屈折率の異なる部分の大きさ、形、分布を、フィルム表面での縦横方向及びフィルムの厚さ方向に沿って最適化することにより、入射角度に依存した散乱特性に変化を持たせると共に、不必要な方向への光散乱を無くし、必要な方向(範囲)のみに光を散乱させるもので、本発明に係る異方性散乱フィルム用組成物は、それぞれの屈折率に差があり、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物からなることを特徴とするものである。
【0012】即ち、請求項1の発明は、少なくとも、(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物と、(C)分子内に少なくともひとつのカチオン重合性を有した化合物と、(D)化学放射線によってラジカル種及びカチオン種を発生する光重合開始剤からなり、(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物の屈折率が(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び(C)分子内に少なくともひとつのカチオン重合性を有した化合物よりも低いことを特徴とする異方性光散乱フィルム用組成物である。
【0013】請求項2の発明は、前記(C)分子内に少なくともひとつのカチオン重合性を有した化合物がオキシラン環を有する化合物、オキセタン環を有する化合物、ビニルエーテル化合物から選ばれる少なくともひとつあるいは数種の化合物からなることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物である。
【0014】請求項3の発明は、前記(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂がエポキシ当量400〜5000であることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物である。
【0015】請求項4の発明は、前記(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物が、常温、常圧で液体で、かつ常圧で沸点が100℃以上で、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個以上有する化合物であることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物である。
【0016】請求項5の発明は、前記(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対して、前記(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物を20から80重量部を混合してなることを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物である。
【0017】請求項6の発明は、前記(D)化学放射線によってラジカル種及びカチオン種を発生する光重合開始剤を増感せしめる(E)増感色素を添加することを特徴とする請求項1記載の異方性光散乱フィルム用組成物である。
【0018】請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の異方性光散乱フィルム用組成物を用いて製造された異方性光散乱フィルムである。
【0019】請求項8の発明は、フィルム内部に、屈折率の異なる部分が不規則な形状、厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されており、且つその屈折率の異なる部分が、フィルムの厚さ方向に対して傾斜して層状に分布している構造であることを特徴とする請求項6記載の異方性光散乱フィルムである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明を説明する。図1は、屈折率の異なる部分が不規則な形状、厚さで分布して、屈折率の高低(同図では、白と黒で表現する)からなる濃淡模様が形成された異方性光散乱フィルム(以下、単に光散乱フィルムともいう)1を示す説明図であり、左が平面図、右が断面図である。
【0021】平面図から分かるように、屈折率の異なる部分の形状は横長である。また、断面図から分かるように、屈折率の異なる部分は、フィルムの厚さ方向に対して傾斜した層状に分布した構造である。図1では、屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布は一様(傾斜方向では、色が変化していない)である。
【0022】図2は、別の実施形態に係る光散乱フィルム1を示す説明図であり、左が平面図、右が断面図である。図2では屈折率の異なる部分の形状は縦長であり、また、屈折率の異なる部分が、層状に傾斜している方向については、屈折率の分布は不規則(傾斜方向でも、色が変化している)である。
【0023】図1、図2の光散乱フィルムの光学特性について、まず、断面図で考える。屈折率の異なる部分が層状に分布した上記傾斜方向に沿った角度(フィルムの垂線から角度θをなす、図2の矢印2の方向)で入射する光に対しては、光散乱が生じることになる。
【0024】上記傾斜方向とは垂直な角度(図の矢印3の方向)で入射する光に対しては、単なる透明フィルムとして機能し、入射光は散乱されずに出射する。
【0025】次に、平面図で考えると、屈折率の異なる部分の形状が縦長(或いは横長)であると、その部分に入射する光が散乱出射する場合には、それぞれの部分から出射光の光散乱特性が、横長(或いは縦長)となるような異方性を持つ。図1では形状が横長であるから出射光は縦長に散乱し、図2では形状が縦長であるから出射光は横長に散乱することになる。
【0026】図3は、本発明の組成物を用いて作製した光散乱フィルム1の持つ入射角度依存性の一例を示すグラフである。図中実線で示すように、ある特定入射角度範囲(図では0度から60度)の光に対してはヘイズ値が80%以上あり、逆にそれとは対称な入射角度(図では−60度から0度)の光に対してのヘイズ値は20%以下になっており、これが本明細書中で言う散乱性の入射角度依存性を示す。
【0027】また、上述したように、屈折率の異なる部分の形状が縦長(或いは横長)であると、その部分に入射する光が散乱出射する場合には、それぞれの部分からの出射光の光散乱特性が、横長(或いは縦長)となるような異方性を持つ。例えば、図1のように形状が横長であると、光散乱フィルムからの散乱出射光は、図4の様な縦長の楕円形となるような分布となる。
【0028】次に、本発明の異方性光散乱フィルム用組成物について詳細に説明する。上述したように、本発明の組成物で作製した異方性光散乱フィルムの内部は、屈折率の異なる部分が不規則な形状、厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されている。
【0029】この屈折率の差異を数値で言えば、0.005以上、0.25以下、更に好ましくは0.01以上、0.25以下である。この値より小さすぎると散乱性が悪くなり、逆に大きすぎるとどのような角度で光が入射しても光散乱が生じてしまうことになり、散乱性の入射角度依存性を持たせることが困難となる。
【0030】本発明の組成物において用いられる、(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、一般式(I)で表わされる樹脂で、そのエポキシ当量は400〜5000の範囲が望ましい。また、片方のオキシラン環が変性されていても良い。該樹脂は、カチオン種存在下加熱することにより架橋反応がおこり硬化する。
【0031】
【化1】

【0032】(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物とは、化学放射線によりラジカルを発生する開始剤の存在下、化学放射線照射により高分子化または架橋反応するラジカル重合性を有する化合物である。また、該化合物(B)と前記化合物(A)及び(C)は異なる工程で重合硬化させ、一方を硬化させるときには他方は硬化させないようにするため、反応機構、反応性の異なる化合物を用いることが好ましい。例えば、構造単位中にエチレン性の不飽和結合を少なくとも1個以上含むものであり、1官能であるビニルモノマーの他に多官能ビニルモノマーを含むものであり、またこれらの混合物であってもよい。さらに、該化合物は、上記(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂或いは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂よりも屈折率が低い必要がある。また、常温、常圧で液体で、かつ常圧で沸点が100℃以上であるものが好ましい。
【0033】このような要求を満たすものとして、具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の高沸点ビニルモノマー、さらには、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、例えば、エチレングルコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどのモノ、ジあるいはポリ(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられるがこの限りではない。
【0034】本発明の組成物において用いられる(C)分子内に少なくともひとつのカチオン重合性を有した化合物は、(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物よりは反応性が低く、屈折率は高い必要があり、また、露光後の加熱時に液体であるようなものが望ましい。該化合物は、(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物が重合する際には液体として存在するため、(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物の拡散移動を起き易くする、いわゆる可塑剤的な役割を果たす。さらに、樹脂が硬化するときに該化合物も硬化するため、異方性散乱フィルム中では重合物として存在することとなり、熱劣化等の悪影響を及ぼすことはなく適当な該化合物を組み合わせることによって硬化物の特性を向上させることもできる。また、屈折率も(B)分子内に少なくともひとつのラジカル重合性を有する化合物よりも高いため散乱性に悪影響を及ぼすことはない。このような要求を満たすものとして、例えばオキシラン環を有する化合物、オキセタン環を有する化合物、ビニルエーテル化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物が挙げられる。
【0035】具体的には、グリシジルフェニルエーテル、p−ブロモフェニルグリシジルエーテル、グリシジル−1−ナフチルエーテル、グリシジル−2−ナフチルエーテル、グリシジルインダリルエーテル、ベンゾチアゾリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物、フェノキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、p−ブロモフェノキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、p−トリルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ナフトキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(p−ブロモフェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(p−トリルメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ナフトキシメチル)オキセタン、3,3’−ビス(フェノキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン等のオキセタン化合物、フェニルビニルエーテル、p−ブロモフェニルビニルエーテル、p−トリルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、ナフチルビニルエーテル、ビス(4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル)グルタレート、ビス(4−ビニロキシブチル)イソフタレート等のビニルエーテル化合物が挙げられるがこの限りではない。
【0036】本発明の組成物において用いられる(D)化学放射線によってラジカル種及びカチオン種を発生する光重合開始剤としては、J.Photochem.Sci.Technol.,2,283(1987).に記載される化合物、具体的には鉄アレーン錯体、トリハロゲノメチル置換s−トリアジン、スルフォニウム塩、ジアゾニウム塩、フォスフォニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。また、ヨードニウム塩としては、Macromolecules、10、1307(1977).に記載の化合物、例えば、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p−アニシル)ヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムなどのヨードニウムのクロリド、ブロミド、あるいはホウフッ化塩、ヘキサフルオロフォスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩、スルホン酸塩等や、ジフェニルフェナシルスルホニウム(n−ブチル)トリフェニルボレート等のスルホニウム有機ホウ素錯体類を挙げることが出来る。
【0037】さらに、記録する化学放射線の波長に応じて、本発明の(D)化学放射線によってラジカル種及びカチオン種を発生する光重合開始剤を増感せしめる(E)増感色素を加えても良い。(D)化学放射線によってラジカル種及びカチオン種を発生する光重合開始剤を増感せしめる(E)増感色素としては、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、シアニンまたはメロシアニン誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体などの有機染料化合物が使用でき、その他に「色素ハンドブック」(大河原信他編、講談社、1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編、シーエムシー、1981年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編、シーエムシー、1986年)に記載されている色素及び増感剤が用いられる。なお、これらに限定されるものではなく、その他の可視域の光に対して吸収を示す色素及び増感剤であり、使用する光重合開始剤を分光増感出来れば用いることが出来る。これらは必要に応じて任意の比率で二種以上で用いてもかまわない。
【0038】本発明の組成物に含有される成分(B)の量は、成分(A)100重量部に対して20から200重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは20から80重量部である。この範囲よりも少ないと高い散乱性が得られず、この範囲より多いと粘度が低くなり感材を保持できなくなってしまう。成分(C)のカチオン重合性基を有した化合物の量は、成分(A)100重量部に対し、20から100重量部、好ましくは20から60重量部である。この範囲よりも少ないと高い散乱性が得られず、この範囲より多いと粘度が低くなり感材を保持できなくなってしまう。成分(D)の光重合開始剤の量は、成分(A)100重量部に対し、0.1から20重量部、好ましくは1から10重量部である。さらに、成分(E)を使用する場合の量は、成分(A)100重量部に対して0.05から5重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは0.1から0.5重量部である。使用量は、感光層膜厚と該膜厚の光学濃度によって制限を受ける。すなわち、光学濃度が2を越えない範囲で使用することが好ましい。
【0039】この様にこれらの各成分を適宜選択し、任意の割合で混合して得た感光液をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマーコーター等の公知の塗工手段を用いてガラス板やフィルム等の基材に塗布する。
【0040】なお、感光液を塗布する際は、必要に応じて適当な溶剤で希釈してもよいが、その場合には基材上に塗布した後に、乾燥を要する。上記溶剤としては、ジクロルメタン、クロロホルム、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、エチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0041】さらに、記録可能な屈折率差は作製方法や記録材料などにより制限を受けるため、大きな屈折率差を持つ場合はフィルム膜厚を薄く、小さな屈折率差を持つ場合はフィルム膜厚を厚くすることで、本発明の組成物を用いて光散乱フィルムを実現することが可能である。
【0042】屈折率の異なる部分の大きさは、光散乱を生じるためにランダムで規則性はないが、必要な散乱性を持つために、その平均の大きさは直径で0.1μmから300μmの範囲内でそれぞれの用途に必要な散乱性に応じて適宜選択する。
【0043】また、前記屈折率の異なる部分のフィルム表面上での分布は、光散乱を生じるためにランダムで規則性はないが、必要な散乱性を持たせるために、フィルム全体の平均屈折率を<n>とすると、その確率分布は<n>を中心とする正規分布を呈する。或いは、屈折率nの最小値nmin で最大値をとり指数関数的に屈折率の最大値nmax まで単調減少するような確率分布、或いは単調増加する確率分布に従って分布していてもよい。
【0044】以下、本発明の異方性光散乱フィルムを作製する手段について述べる。本発明の光散乱フィルムは光学的な露光手段により作製することができる。最初にレーザー露光等を用いてスペックルパターンを形成し、その後硬化処理により未硬化部分を硬化させて異方性光散乱フィルムを形成する。図5はランダムマスクパターンを利用して作製する光学系の一例を示す説明図である。UV光源6から出た紫外光はコリメート光学系7により平行光8とし、マスク原版9を照射する。
【0045】マスク原版9のUV照射側とは反対の面には感光材料5を密着して配置しており、マスク原版9のパターンを感光材料5に露光照射する。この際、図示のようにUV平行光8とマスク原版9は所定角度αだけ傾いて配置されているため、パターン露光は感光材料5中で、所定角度傾いてなされることになる。この角度が、光散乱フィルム中の屈折率の異なる部分の傾斜角度(すなわち、入射角度依存性の散乱角度θ)に相当することになるので、前記角度は用途に応じて0から60度程度の範囲内で適宜選択する。
【0046】また、ここで使用する感光材料5は、UV光の露光部と未露光部を屈折率の変化形態で記録できる感光材料であり、記録しようとする濃淡模様より高い解像力を持ち、その厚みの方向にもパターンを記録できるような材料である必要がある。
【0047】図5で用いている所定のランダムパターンを持つマスク原版9は、計算機を用いた乱数計算から作製した白黒パターンデータを、所謂フォトリソグラフィーの手法によりガラス基板10上の金属クロムパターン11としてエッチングしたものを用いてもよい。もちろんマスク原版の作成方法としては、上記方式に限定されるものではなく、リス乾板を使った写真手法などにより作製しても同様なマスクを作製できる事は周知である。
【0048】図6は、図2に示す構造の光散乱フィルムをスペックルパターンを利用して作製する光学系の一例を示す説明図である。レーザー光源13から出たレーザー光14ですりガラス15を照射する。すりガラス15のレーザー照射側とは反対の面には所定距離Fをおいて感光材料5を配置し、すりガラス15で透過散乱したレーザー光が作り出す複雑な干渉パターンであるスペックルパターンを感光材料5に露光照射される。
【0049】この際、図示のようにすりガラス10と感光材料5は所定角度αだけ傾いて配置されているため、スペックルパターンは感光材料中で、所定角度傾いて露光されることになる。この角度が、光散乱フィルム中の屈折率の異なる部分の傾き(すなわち、入射角度依存性の散乱ピーク角度θ)に相当することになるので、前記角度は用途に応じて0から60度程度の範囲内で適宜選択する。
【0050】記録に使用するレーザ光源は、アルゴンイオンレーザーやクリプトンイオンレーザーの647.9nm、514.5nm、488nm、457.9nm、413nm、364nm或いは351nmの波長のうち、感光材料の感度に応じて適宜選択して使用する事ができる。またアルゴンイオン、クリプトンイオンレーザー以外でもコヒーレント性の良いレーザー光源であれば仕様可能で、例えばヘリウムネオンレーザーや半導体レーザなどが使用できる。
【0051】スペックルパターンは、コヒーレント性が良い光が粗面で散乱反射または透過した時に生じる明暗の斑点模様であり、粗面の微小な凹凸で散乱した光が不規則な位相関係で干渉するために生じるものである。
【0052】「光測定ハンドブック朝倉書店田光幸敏治ほか著1994年11月25日発行」の記述(p.266〜p.268)によれば、濃度や位相が位置によってランダムな値を示すようなスペックルパターンでは、前記パターンの大きさは、感光材料から拡散板を見込む角度に反比例して、パターンの平均径が決定される。従って、拡散板の大きさを、水平方向よりも垂直方向で大きくした場合、感光材料上に記録されるパターンは、水平方向よりも垂直方向が細かいものとなる。
【0053】図6の光学系での作製方法によるスペックルパターンは、使用するレーザー光の波長λ及びすりガラスの大きさD、すりガラスと感光材料との距離Fが、記録されるスペックルパターンの平均サイズdを決定し、一般に次式で表される。
d=1.2λF/Dまた、このスペックルパターンの奥行き方向の平均の長さtはt=4.0λ(F/D)2で表される。
【0054】以上よりλ及びF/Dの値を最適な散乱性を持つように最適化することで所望の3次元的な屈折率分布を持つ本発明の光散乱フィルムを得ることが出来る。
【0055】一例として、λ=0.5μmで、F/D=2とすると、d=1.2μm、t=8μmとなり、フィルム表面上の濃淡模様は平均1.2μmで分布し、フィルム厚み方向には前記傾斜角度に従った方向に平均8μmの大きさで分布することになる。
【0056】ただし、これらの大きさはあくまでも平均の大きさであり、実際にはこれらの大きさを中心に大小様々な大きさで屈折率の異なる部分が表面上及び奥行き方向に傾斜して分布することになり、図2に示すような本発明の異方性光散乱フィルムとなる。
【0057】以下、本発明の実施の形態について具体的な実施例を挙げて説明する。
【0058】<実施例1>ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1007、油化シェルエポキシ(株)製商品名 エポキシ当量1750〜2200)100重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(VISCOAT−310HP、大阪有機化学(株)製商品名)40重量部、グリシジルフェニルエーテル30重量部、および4,4’−ビス(tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート5.0重量部、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン0.2重量部をメチルエチルケトン(関東化学(株)製)100重量部に混合溶解したものを感光液とした。該感光液を青板ガラス(1.1mm厚、5インチ角)に、膜厚が約30ミクロンになるようにドクターブレードで塗布、乾燥し記録用媒体とした。
【0059】該記録用媒体を、図6に示した光学系で、光源としてクリプトンレーザー(413nm)をレンズを用いて広げた光ですりガラス15を介して、記録材料面から露光し(α=22゜、10mJ/cm2)、85℃で5分間加熱後、高圧水銀灯で記録用媒体を全面照射することで定着した。さらに、該記録用媒体を130℃で30分加熱し、硬化物をガラス基板から剥離することによって光散乱性フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは29ミクロンであった。
【0060】評価は、島津製作所(株)製の分光光度計で各角度で透過率(波長範囲;400〜600nm)を測定した。結果(全波長平均透過率)を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】<実施例2>グリシジルフェニルエーテルの代わりに1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(OXT−121、東亜合成(株)製商品名)を使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光散乱性フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは29ミクロンであった。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】<実施例3>グリシジルフェニルエーテルの代わりにビス(4−ビニロキシブチル)イソフタレート(VECTOMER4010、アライドシグナル(株)製商品名)を使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光散乱性フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは25ミクロンであった。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】<実施例4>グリシジルフェニルエーテル30重量部の代わりにグリシジルフェニルエーテル15重量部と1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(OXT−121、東亜合成(株)製商品名)15重量部の混合系にした以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光散乱性フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは28ミクロンであった。結果を表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】<実施例5>4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの代わりに、カルボニルビス(p−ジメチルアミノベンジリデン)、光源としてクリプトンレーザー(413nm)の代わりにアルゴンレーザー(514.5nm)を使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光散乱性フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは30ミクロンであった。結果を表5に示す。
【0069】
【表5】

【0070】<実施例6>トリプロピレングリコールジアクリレート(VISCOAT−310HP、大阪有機化学製(株)商品名)の代わりにネオペンチルグリコールジアクリレート(VISCOAT−215、大阪有機化学製(株)商品名)を使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光散乱性フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは31ミクロンであった。結果を表6に示す。
【0071】
【表6】

【0072】<実施例7>4、4’−ビス(tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェートの代わりにトリクロロメチルトリアジンを使う以外は実施例1と同様にして操作し、作製した光散乱性フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは28ミクロンであった。結果を表7に示す。
【0073】
【表7】

【0074】<実施例8>ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1007、油化シェルエポキシ(株)製商品名 エポキシ当量1750〜2200)100重量部の代わりにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1007、油化シェルエポキシ(株)製商品名 エポキシ当量1750〜2200)60重量部と臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YDB−405、東都化成(株)製商品名 エポキシ当量530〜630)40重量部の混合系を使用する以外は実施例1と同様にして操作し、光散乱性フィルムを作製したが散乱性は光散乱性フィルムを得た。得られた該フィルムの厚みは30ミクロンであった。結果を表8に示す。
【0075】
【表8】

【0076】<比較例>トリプロピレングリコールジアクリレート(VISCOAT−310HP、大阪有機化学製(株)商品名)の代わりにフェノキシエチルアクリレート(VISCOAT−192、大阪有機化学製(株)商品名)を使う以外は実施例1と同様にして操作し光散乱性フィルムを作製を試みたが、散乱性は発現しなかった。得られた該フィルムの厚みは30ミクロンであった。
【0077】
【発明の効果】本発明に係る組成物を用いれば、所定角度で入射する光に対しては光散乱が生じ、逆にそれとは垂直な光に対しては透明フィルムとして機能することにより、光散乱性に入射角度選択性を持ち、そのため、散乱性を要する光と散乱性が不要な光とを、そのフィルムへの入射角度により分離することができ、結果として表示装置などに用いた場合に、不必要な散乱を生じることなく表示の明るさや細かさ、コントラストを向上し、且つ表示像のぼけを軽減させる等の効果がある異方性光散乱フィルムを作製することができる。
【0078】また、光散乱が生じる入射角度で光が入射した際に、その散乱光の広がりが、縦横で異なるような散乱異方性をも併せ持つフィルムの作製が可能である。そのため、容易に必要な方向にのみ散乱光を出射することが出来、結果として表示装置などに用いた場合に、不必要な散乱を生じることなく表示の明るさ、コントラストを向上させる等の効果がある。
【0079】
【出願人】 【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
【出願日】 平成13年2月26日(2001.2.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−249541(P2002−249541A)
【公開日】 平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願番号】 特願2001−49851(P2001−49851)