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【発明の名称】 アクリル系樹脂プラスチゾル組成物
【発明者】 【氏名】鈴木 卓郎
【氏名】清村 和明
【課題】本発明は、必要以上の加熱をせずともプラスチックフィルムとの接着が良好で、経時粘度変化の小さいアクリル系樹脂組成物を提供するものである。

【解決手段】本発明のアクリル系樹脂プラスチゾル組成物は、少なくともアクリル系樹脂と可塑剤とを含み、熱活性官能基を分子中に2個以上有するイソシアネート化合物を含有することを特徴とする。また、前記アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、かつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合比率が50モル%以上であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくともアクリル系樹脂と可塑剤とを含み、熱活性官能基を分子中に2個以上有するイソシアネート化合物を含有することを特徴とするアクリル系樹脂プラスチゾル組成物。
【請求項2】前記アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、かつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合比率が50モル%以上であることを特徴とする請求項1に記載のアクリル系樹脂プラスチゾル組成物。
【請求項3】前記可塑剤が、一般式(1)あるいは(2)で示すベンゾエート系化合物、一般式(3)で示すフタル酸エステル系化合物、一般式(4)で示すトリメリット酸エステル系化合物の中から選ばれた一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクリル系樹脂プラスチゾル組成物。




【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固化してプラスチックフイルムと十分な接着力を有するプラスチゾル組成物に関する。
【0002】
【従来技術】従来、アクリル系樹脂は、サスペンジョン重合、バルク重合、反応押出成形等により重合されるものが多く、エマルジョン重合されるものは、エマルジョンのまま塗料や粘接着剤等の用途に主に利用されており、乾燥し樹脂パウダーを取り出し可塑剤を配合してプラスチゾルとすることはあまり行われていなかった。
【0003】エマルジョン重合されたポリ塩化ビニル系樹脂用い、可塑剤を配合したポリ塩化ビニル系樹脂プラスチゾルは、各種基材にコーティングされ加熱により固化積層されてシーリング材または塗料、緩衝材、滑止材、スペーサ材等としての用途がある。近年、燃焼時の塩素系ガスの発生等の問題でポリ塩化ビニル系樹脂の代替として、可塑剤を配合することによりプラスチゾルとすることができる点で、アクリル系樹脂を使用したアクリル系樹脂プラスチゾルの開発が行われるようになった。
【0004】そして前記基材としてプラスチックフィルムを用いた場合、以下のような要望があった。ポリ塩化ビニル系樹脂を用いたプラスチゾルは、プラスチゾルの流動が無くなる現象(以下「ゲル化」と表現する場合もある)が発現する温度が高温であり、加熱時間も長くする必要がある。これらの加工要因及びポリ塩化ビニル系樹脂の特性により、プラスチックフイルムへの接着は比較的良好である。
【0005】しかしながら、アクリル系樹脂プラスチゾルのゲル化温度は比較的低温であり、加熱温度を上げることはエネルギーの浪費であるため、加工(ゲル化)可能温度にてプラスチックフイルムへの接着が良好なプラスチゾル組成物が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、必要以上の加熱をせずともプラスチックフィルムとの接着が良好で、経時粘度変化の小さいアクリル系樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のアクリル系樹脂プラスチゾル組成物は、少なくともアクリル系樹脂と可塑剤とからなり、熱活性官能基を分子中に2個以上有するイソシアネート化合物を含有することを特徴とする。また、前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、かつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合比率が50モル%以上であることを特徴とする。ここで(メタ)アクリルとは、メタクリルとアクリルとのうち少なくとも一方をいい、例えば(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、メタクリル酸エステル共重合体単独、アクリル酸エステル共重合体単独、メタクリル酸エステル共重合体とアクリル酸エステル共重合体の混合物のうちいずれかである。
【0008】また、前記可塑剤は、アクリル樹脂系プラスチゾルを調製した際に経時粘度変化が小さく、加熱固化後に可塑剤が表面に滲み出るブリード現象が少なくアクリル系樹脂と相溶性の良い可塑剤を選択することが好ましく、一般式(1)あるいは(2)で表れるベンゾエート系化合物、一般式(3)で示すフタル酸エステル系化合物、、一般式(4)で示すトリメリット酸エステル系化合物の中から選ばれた一種以上であることを特徴とする。




【0009】アクリル系樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等のアルキル炭素数1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体又は共重合体が使用できる。
【0010】さらに前記モノマーと、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等のモノマーを共重合した共重合体を使用することもできる。
【0011】アクリル系樹脂として共重合体を用いる場合は、アルキル炭素数1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの共重合比率が50モル%より多いことが好ましい。さらに好ましくは70モル%以上である。この数値が50モル%より小さいとアクリル系樹脂と可塑剤との相溶性が悪くプラスチゾル化が困難となったり、加熱固化後に可塑剤がブリードする傾向にある。
【0012】また、前記アクリル系樹脂は、プラスチゾルを調製するのに適している一括仕込み重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴下法、シード重合法等のエマルジョン重合法によって得られたものを用いることが好ましく、サスペンジョン重合によって得られたものを混合することもできるがその割合は30重量%未満である。
【0013】可塑剤としては、具体的には、構造式(5)で示すジエチレングリコールジベンゾエート、構造式(6)で示すジプロピレングリコールジベンゾエート、構造式(7)で示すジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、構造式(8)で示すジイソノニルフタレート(DINP)、構造式(9)で示すトリオクチルトリメリテート(TOTM)等を挙げることができる。その他の可塑剤を2次可塑剤として最大10重量%程度であれば併用使用することも可能である。




【0014】可塑剤の配合量は加熱固化後の所望の硬度等の物性、コーティング適性等の加工性を考慮して適宜選定されるものであり特に限定されるものではないが、アクリル系樹脂100重量部に対して50〜200重量部、好ましくは80〜120重量部の範囲である。50重量部未満では、プラスチゾルの粘度が高くなってしまいプラスチックフィルム等へのコーティングが困難になり、200重量部超では加熱固化後にブリードし易くなる。
【0015】熱活性官能基を分子中に2個以上有するイソシアネート化合物としては、イソシアネートとブロック化剤を反応させることによるブロックイソシアネート化合物、およびイソシアネート基同士が結合した形のイソシアネート化合物2量体、3量体等の化合物が好適に使用される。
【0016】イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)等の有機ジイソシアネートが挙げられる。
【0017】ブロック化剤としては、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ等のアルコール系化合物、メチルエチルケトンオキシム、ホルムアルドオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物、イミダゾール、2エチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0018】また、イソシアネート基(NCO基)同士が結合した2量体としては、一般式(10)で表せるものが使用でき、式(11)のように熱により解離し、活性のあるイソシアネート基を有する化合物となる。具体的には構造式(10)で示すTDIの2量体が好適に使用される。また、前記イソシアネート化合物の熱解離温度が60℃〜160℃の範囲であることが好ましい。熱解離温度が60℃より小さいと混合撹拌してプラスチゾルを作製(以下調製ということもある。)中又は貯蔵中にイソシアネート化合物が活性化してしまい増粘したり接着性能が得られない傾向にある。160℃より大きいとプラスチックフィルムの耐熱性の問題で使用可能なプラスチックフィルムがほとんどなくなってしまう。



【0019】アクリル系樹脂、可塑剤、熱活性イソシアネート化合物を十分に混合攪拌して均一なプラスチゾルに調整する装置としては、その粘度特性などからディゾルバーミキサー、ホモミキサーなどの攪拌機が好適に使用される。
【0020】このようにして得られるアクリル系樹脂プラスチゾルには、プラスチゾルの加熱固化時の加工性を制御するために、イソシアネート化合物に通常使用される各種触媒および遅延剤を添加してもよい。また、アクリル系樹脂プラスチゾルは、塩化ビニル系樹脂プラスチゾルに比較して熱安定性や耐候性が良好であるが、必要ならば耐候安定剤、耐光安定剤等を添加しても良い。さらに、必要に応じて、充填材、着色のための顔料等を添加しても良い。
【0021】得られたアクリル系樹脂プラスチゾルは、プラスチックフィルムにコーティングし加熱することによって固化される。加熱に関しては、樹脂の種類、可塑剤の配合量、塗布量により変化するが、一般的にオーブン加熱の場合は110℃〜150℃程度の温度で2分〜5分間程度が好ましい。ただし、加熱条件は、熱活性イソシアネート化合物の熱解離温度よりも10℃〜15℃上の温度であることが必要である。また、プラスチゾルをコーティングするプラスチックフイルムの種類にもよるが、フイルムの融点、軟化点を超えないことが必要である。
【0022】
【実験例】以下に具体的な実験例を挙げ、本発明のアクリル系樹脂 プラスチゾル組成物に関して詳細に説明するが、本願発明は以下に挙げる例に限定されるものではない。
(アクリル系樹脂プラスチゾルの調製)表1に示す薬品を計量混合し、プロペラミキサーで十分攪拌しプラスチゾルを調製した。なお、配合量は重量部で表した。
【表1】

アクリル系樹脂A:メチルメタクリレート単独重合体(日本ゼオン社製F−325)
アクリル系樹脂B:メチルメタクリレート、メタクリル酸共重合体(日本ゼオン社製F−303L)
アクリル系樹脂C:メチルメタクリレート系重合体(三菱レイヨン社製ダイアナールLP−3102 )
可塑剤A:ジエチレングリコールジベンゾエート(Velsicol社製Benzoflex2−42)
可塑剤B:ジプロピレングリコールジベンゾエート(Velsicol社製Benzoflex9−88)
可塑剤C:ジイソノニルフタレート(DINP)
可塑剤D:ジオクチルアジペート(DOA)
可塑剤E:トリクレジルフォスフェート(TCP)
イソシアネート化合物A:解離温度90℃(Baxeden Chemical社製Trixene BI−7983)イソシアネート化合物B:解離温度120℃(武田薬品工業社製 タケネートB−883NS)
イソシアネート化合物C:TDI2量体 解離温度140℃(Bayer社製Desmodule−TT)
イソシアネート化合物D:解離温度160℃(Baxeden Chemical社製Trixene BI−7963)触媒A:ジブチル錫ジラウレート触媒B:式(13)で示す錫系化合物(武田薬品工業社製フォーメートTK−1)

【0023】(性能評価)実験例1〜13について、アクリル系樹脂プラスチゾルを配合調製3日後に表2に示すプラスチックフィルム上に0.1mmの隙間を有するアプリケーターを用いて0.1mm厚さで塗布した後、表2に示す加熱条件で加熱固化して積層シートを得た。
【表2】

【0024】前記積層シートを25mm幅に切り、端部を爪で剥離し、ゆっくりとプラスチゾル固化物とプラスチックフイルムとを180度剥離する。この操作を同一試料にて3回繰り返し、接着性を下記の基準で判定した結果を表3に示す。
○:剥離不可能またはプラスチゾル固化物が界面で材料破壊。
△:一部プラスチゾル固化物がプラスチックフイルムに付着する程度。
×:プラスチゾル固化物が材料破壊せずにプラスチックフイルムから完全に剥がれる。
【表3】

【0025】また、調製したプラスチゾルの粘度を調製直後(η0)、作成後24時間放置後(η1)、調製後3日放置後(η3)、調製後7日放置後(η7)、調製後10日放置後(η10)の各時間経過後のプラスチゾル粘度をそれぞれ測定した。さらに経時での粘度変化をη1/η0、η3/η0、η7/η0、η10/η0、で算出した。これらの結果を表4に示す。なお、粘度測定は、BM型回転式粘度計(東京計器社製)で測定、回転数6rpmでの粘度測定値(Pa・s/25℃)をその粘度とした。
【表4】

【0026】以上の実験例から、熱活性官能基を分子中に2個以上有するイソシアネート化合物を含有するプラスチゾルにおいて、調製後のプラスチゾルの僅かな粘度上昇はあるが実験例1〜7及び9〜11においては、調製直後においては、粘度が100Pa・s以下であり、コンマコータ等の隙間をあけてコーティングするアプリケータの使用が可能である。また、調製3日後においても実験例1〜7において前記アプリケーターの使用が可能であり、プラスチゾル固化物とプラスチックフィルムとが十分に接着しうるものであった。
【0027】
【発明の効果】本発明のアクリル系樹脂プラスチゾル組成物によれば、アクリル系樹脂と可塑剤を含有したプラスチゾルに熱活性官能基を分子中に2個以上有するイソシアネート系化合物を配合したので、従来接着性の乏しかったアクリル系プラスチゾル固化物と酸化された表面を持つプラスチックフィルムとが優れた接着性を示す。また、アクリル系樹脂プラスチゾルが、ゲル化温度より僅かに高い温度でもその固化物が優れた接着性を有するので、加熱の為のエネルギーコストが削減できる。また、特定の可塑剤を使用すれば、経時においてほとんど増粘せず粘度安定性が高いので、ある期間貯蔵することができる。
【出願人】 【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
【出願日】 平成13年12月17日(2001.12.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−249537(P2002−249537A)
【公開日】 平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願番号】 特願2001−383372(P2001−383372)