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【発明の名称】 塗料用クレゾールノボラック樹脂
【発明者】 【氏名】実藤 徹

【要約】 【課題】エポキシ樹脂系塗料用の硬化剤として用いた場合、硬化性に優れた塗膜を形成することができる、分子量分布が狭く2核体成分の含有量が少ないクレゾールノボラック樹脂を提供する。

【解決手段】オルソクレゾールとパラクレゾールからなるクレゾール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒の存在下で反応させて得られるクレゾールノボラック樹脂であって、NMR測定法から求めた当該樹脂中のパラクレゾールに対するオルソクレゾールの結合比が1/9〜7/3であり、クレゾール成分1モルに対するホルムアルデヒドの結合モル数が0.7〜0.95モルであって、GPC測定法から求めた2核体成分の含有量が6%以下であり、数平均分子量が600〜3000で、且つ分散度が3.2以下であることを特徴とする塗料用クレゾールノボラック樹脂。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オルソクレゾールとパラクレゾールからなるクレゾール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒の存在下で反応させて得られるクレゾールノボラック樹脂であって、NMR測定法から求めた当該樹脂中のパラクレゾールに対するオルソクレゾールの結合比が1/9〜7/3であり、クレゾール成分1モルに対するホルムアルデヒドの結合モル数が0.7〜0.95モルであって、GPC測定法から求めた2核体成分の含有量が6%以下であり、数平均分子量が600〜3000で、且つ分散度が3.2以下であることを特徴とする塗料用クレゾールノボラック樹脂。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2核体成分の含有量が少なく、分子量分布が狭いクレゾールノボラック樹脂に関するものである。本発明のクレゾールノボラック樹脂は、特にエポキシ樹脂系食品缶用塗料用の硬化剤として好適に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】クレゾール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒の存在下で脱水縮合反応させて得られるクレゾールノボラック樹脂は良く知られており、該クレゾール類としてメタ・パラクレゾールを用いて得られたメタ・パラクレゾールノボラック樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤や、ポジ型フォトレジストのバインダー等に幅広く用いられている。クレゾールノボラック樹脂がエポキシ樹脂の硬化剤として使用される例としては、耐熱性が必要とされる食品缶用塗料,接着剤,成形材料,積層板等が挙げられる。
【0003】従来より知られているメタ・パラクレゾールノボラック樹脂は、数平均分子量が500〜1500であって分散度が4.0〜18.0であり、クレゾール2核体成分の含有量が6〜20%のものである。このようなクレゾールノボラック樹脂を硬化剤として適用したエポキシ樹脂材料では、クレゾール2核体成分とエポキシ樹脂との反応性が小さいことにより、クレゾール2核体成分の含有量が多いほど耐熱性や硬化性に劣るという欠点がある。
【0004】次いで、エポキシ樹脂系食品缶用塗料について説明する。食品缶用塗料は、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等を素材とした金属缶の腐食や内容物中への金属溶出を防止するために、金属缶の内面にコーティングされる保護塗料で、一般に、エポキシ樹脂及び硬化剤をキシレンやブチルセロソルブ等の溶剤に溶解させて製造される。
【0005】食品缶用塗料としては、密着性ならびに耐食性などの面で優れているところから、通常、レゾールタイプのクレゾール樹脂を硬化剤として配合したエポキシ樹脂系塗料が用いられている。また、これらの塗料を用いて形成される硬化塗膜には、製罐工程に耐える加工性と密着性、レトルト殺菌に耐える耐熱性、塗膜からの缶内容物への成分溶出が少ない衛生性とフレーバー性(缶内容物の風味保持性)が必要であり、エポキシ樹脂等の基体樹脂同様、硬化剤であるクレゾール樹脂についても種々検討されている。
【0006】エポキシ樹脂の硬化剤としてレゾールタイプのクレゾール樹脂を使用した場合、硬化時にレゾール樹脂同士の自己縮合も起こることにより塗膜が堅くなり、製罐時の加工性や塗膜の耐食性に劣る面があるため、自己縮合傾向を持たないノボラックタイプのクレゾール樹脂を使用して、このような欠点を改善することが期待される。
【0007】しかしながら、従来より知られているクレゾールノボラック樹脂をエポキシ樹脂系缶用塗料の硬化剤として適用すると、エポキシ樹脂との反応性の低いクレゾール2核体成分が多く残存しているため、塗料の硬化が遅く、得られる塗膜が耐熱性や衛生性に劣るという欠点があった。このため、クレゾールノボラック樹脂中の2核体成分の含有量の低減が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、エポキシ樹脂系塗料用の硬化剤として用いた場合、硬化性に優れた塗膜を形成することができる、分子量分布が狭く2核体成分の含有量が少ないクレゾールノボラック樹脂を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、オルソクレゾールとパラクレゾールからなるクレゾール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒の存在下で反応させて得られるクレゾールノボラック樹脂であって、NMR測定法から求めた当該樹脂中のパラクレゾールに対するオルソクレゾールの結合比が1/9〜7/3であり、クレゾール成分1モルに対するホルムアルデヒドの結合モル数が0.7〜0.95モルであって、GPC測定法から求めた2核体成分の含有量が6%以下であり、数平均分子量が600〜3000で、且つ分散度が3.2以下であることを特徴とする塗料用クレゾールノボラック樹脂、である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説明する。本発明のクレゾールノボラック樹脂は、オルソクレゾール及びパラクレゾールとからなるクレゾール類とアルデヒド類とを酸性触媒の存在下で反応させて得られるノボラック樹脂で、当該樹脂中のパラクレゾールに対するオルソクレゾールの結合比が1/9〜7/3である。1/9未満では、エポキシ樹脂との相溶性が低下するため硬化性及び衛生性が低下する。一方、7/3を越えると融点が低くなるため耐熱性が低下する。
【0011】ここで、パラクレゾールに対するオルソクレゾールの結合比は、クレゾールノボラック樹脂の13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)測定を行い、パラクレゾールのメチル基に基づく21.5ppmのピークとオルソクレゾールのメチル基に基づく16.5ppmのピークの面積強度比から求めたものである。13C−NMRの測定装置と測定条件は以下に示す通りである。NMR分光器:日本電子製JNM−AL300、パルスシーケンス:非NOE法、繰り返し時間:10秒、積算回数:3000回、溶剤:1,4−ジオキサン/重メタノール=6/1(固形分濃度15%になるように調整)
【0012】また、本発明のクレゾールノボラック樹脂のクレゾール成分1モルに対するホルムアルデヒドの結合モル数は0.7〜0.95モルである。0.7モル未満では、2核体成分の含有量が多くなるか、または数平均分子量が低下するため硬化性及び衛生性が低下する。一方、0.95モルを越えると分子量が高くなりすぎるため、エポキシ樹脂との相溶性が低下する。
【0013】ここで、クレゾール成分に対するホルムアルデヒドの結合比は、クレゾールノボラック樹脂の1H−NMR(核磁気共鳴スペクトル)測定を行い、オルソクレゾールとパラクレゾールを合わせたクレゾール成分中のメチル基に基づく1.5ppmのピークとクレゾールにホルムアルデヒドが付加縮合して形成されるメチレン基に基づく3.75ppmのピークの面積強度比から求めたものである。1H−NMRの測定装置と測定条件は以下に示す通りである。NMR分光器:日本電子製JNM−AL300、パルスシーケンス:NON法、繰り返し時間:7秒、積算回数:16回、溶剤:重アセトン(固形分濃度15%になるように調整)
【0014】本発明のクレゾールノボラック樹脂は、GPC測定法から求めたクレゾール2核体の含有量が6%以下である。GPC測定法によりクレゾール2核体成分の含有量を求めるには、GPC測定チャートをもとに、樹脂全体に対するクレゾール2核体成分に相当する部分の面積比率(%)より算出する。この含有量が6%を越えると硬化性が低下し、塗膜の耐熱性と衛生性が低下する。本発明のクレゾールノボラック樹脂は、また、数平均分子量が600〜3000とされる。数平均分子量が600未満になると硬化塗膜の耐熱性と衛生性が低下し、数平均分子量が3000を超えるとエポキシ樹脂との相溶性が悪くなる。
【0015】また、本発明のクレゾールノボラック樹脂は、分散度が3.2以下とされる。分散度が3.2を越えると樹脂中の低分子量成分が増えることによる硬化塗膜の衛生性の低下、及び/または樹脂中の高分子量成分が増えることによる硬化塗膜の加工性の低下を招く場合がある。ここで分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量の比である。本発明において、重量平均分子量及び数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたものである。検量線はポリスチレン標準物質を用いて作成したものを使用した。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で測定した。装置は、本体:TOSOH製HLC−8020、検出器:波長280nmにセットしたTOSOH製UV−8011、分析用カラム:昭和電工製SHODEX KF−802 1本、KF−803 1本、KF−8051本、を使用した。
【0016】本発明のクレゾールノボラック樹脂は、例えば次のようにして製造することができる。オルソクレゾール10〜80mol%,パラクレゾール20〜90mol%からなるクレゾール類1molに対してホルムアルデヒド0.75〜2.0molを酸性触媒の存在下で反応させ(反応工程)、反応終了後、常圧下及び減圧下で脱水・脱モノマーを行う(脱水工程)。反応工程において、オルソクレゾール、パラクレゾール及びホルムアルデヒドの使用比率を上記の範囲にすることにより、2核体成分の面積比率が6%以下であり、数平均分子量が600〜3000で、且つ分散度が3.2以下であるような、目的とするクレゾールノボラック樹脂を得ることが出来る。
【0017】本発明のクレゾールノボラック樹脂において2核体成分の含有量を低減できる理由としては、オルソ・パラクレゾールはホルムアルデヒドとの反応性の差が小さいため、反応が不充分なクレゾールの低分子成分が残りにくいためと考えられる。これに対し、従来用いられていたメタ・パラクレゾールの場合は、メタクレゾールの反応性が非常に大きいため、パラクレゾールがホルムアルデヒドと反応しにくく、この結果2核体のような低分子成分の含有量が多くなると考えられる。また、パラクレゾールは結晶性が高いため単独で用いるとホルムアルデヒドとの反応が進みにくい性質があり、一方、オルソクレゾールを単独で用いると2核体成分の含有量は少なくなるが、硬化剤として用いた場合の硬化性が不充分となる。このような理由から、オルソクレゾールとパラクレゾールとを適切な配合比で用いることで、2核体成分の含有量が少なく、硬化剤として用いた場合の硬化性に優れたクレゾールノボラック樹脂を得ることができるのである。
【0018】ホルムアルデヒドは、ホルマリン(水溶液)、パラホルムアルデヒド(固形)のどちらを使用しても良いが、分子量分布が狭い樹脂を得るのに好ましいのはパラホルムアルデヒドである。酸性触媒としては、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、硫酸、塩酸等の鉱酸など通常フェノールノボラック樹脂の製造に使用されるものを用いることができ、その使用量は、クレゾール類100重量部に対して0.1〜2重量部が好ましい。
【0019】反応条件としては、特に限定されるものではないが、反応温度60〜100℃で反応時間2〜5時間が好ましい。また、必要により反応溶媒を使用することもできる。反応終了後、常圧下及び減圧下で脱水・脱モノマーを行い、エポキシ樹脂硬化剤用クレゾールノボラック樹脂を得ることができる。脱水・脱モノマーの条件は特に限定されないが、得られたクレゾールノボラック樹脂の性状を考慮すると、減圧度は、0.1〜60torr程度で行うのが好ましく、最終脱モノマー温度は、150〜250℃で行うのが好ましい。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。しかし本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0021】《実施例1》攪拌機、熱交換器、温度計のついた3Lの四つ口フラスコにオルソクレゾール216g(2モル)、パラクレゾール864g(8モル)、80%パラホルムアルデヒド337.5g(9モル)を加え、クレゾール類100部に対して触媒としてシュウ酸2重量部を仕込み、100℃で4時間反応を行った。その後、常圧下で内温150℃まで脱水し、さらに40torrの減圧下で内温220℃まで脱水・脱モノマーを行い、クレゾールノボラック樹脂1185gを得た。得られた樹脂のパラクレゾールに対するオルソクレゾールの結合比率は1.7/8.3、クレゾール成分1モルに対するホルムアルデヒドの結合比率は0.88、数平均分子量1233、分散度2.4、遊離モノマー0.7%、2核体成分3.2%であった。
【0022】《実施例2〜5、比較例1〜4》表1に示す配合で実施例1と同様の方法でクレゾールノボラック樹脂を製造した。得られるクレゾールノボラック樹脂の物性を表1に併せて示す。
【0023】[塗膜性能試験]上記実施例1〜5及び比較例1〜4で得られたクレゾールノボラック樹脂を用いて下記のようにして塗料を調製し、その塗料をアルミ板に塗布後焼付け処理を行い、硬化性、耐熱性(耐レトルト性)、衛生性(過マンガン酸カリウム消費量)、加工性の試験を実施した。各種試験方法を下記に示し、その試験結果を表2に示す。
【0024】1.塗料の調製エピコート1009(油化シェルエポキシ(株)製エポキシ樹脂)をキシレンとブチルセロソルブ1/1の混合液に溶解し固形分25%のエポキシ樹脂溶液とした。このエポキシ樹脂溶液と実施例1〜5及び比較例1〜4で得られたクレゾールノボラック樹脂を、固形分の重量比が8対2となるように混合溶解し、さらに、両成分の固形分合計量100部に対しリン酸を0.2部添加し、9種類の塗料を得た。
【0025】2.塗膜性能試験方法上記の方法で調整した各塗料を0.3mmのアルミ板(5052材)に乾燥塗膜で5〜7μmとなるようにバーコーターで塗布して、200℃で10分間焼き付けを行った。そして、以下に示す塗膜性能を測定した。
【0026】(1)硬化性塗膜面積100cm2 の試験片を100mlのメチルエチルケトン還流下で1時間溶剤抽出処理を行い、処理前の塗膜重量に対する処理後の残存塗膜の重量(%)により評価した。
○:100〜90% △:89〜80% ×:79%以下【0027】(2)耐熱性試験片を水に浸漬し、130℃で30分間のレトルト処理した塗膜の白化状態を目視により判定した。
○:全く白化なし △:若干白化あり ×:著しい白化あり【0028】(3)衛生性塗膜面積100cm2 の試験片を100mlのイオン交換水に浸漬し、130℃で30分間のレトルト抽出を行い、得られた試験液について食品衛生法記載の測定法(厚生省434号)に準じて過マンガン酸カリウム消費量を測定し、下記基準にて評価した。
○:消費量が5ppm未満 △:5ppm以上で10ppm未満 ×:10ppm以上【0029】(4)加工性塗膜アルミ板を3cm×5cmに切断した試験片を、塗装面が外側になるように予備折り曲げし、試験片と同じ板厚のアルミ板3枚をスペーサーとしてはさみこみ、次いで3kgの鉄ブロックを30cmの高さからから落下させて曲げ加工を施した。この折り曲げ試験片の折り曲げ加工部(樹脂塗装表面と基材アルミ板裏側との間)に印加電圧6Vで4秒間通電したときの電流値(mA)を読みとって評価した。
○:電流値が5mA未満 △:5mA以上で10mA未満 ×:10mA以上【0030】3.試験結果【表1】

【0031】
【表2】

【0032】実施例1〜5によって得られたクレゾールノボラック樹脂は、パラクレゾールに対するオルソクレゾールの結合比、クレゾール成分1モルに対するホルムアルデヒドの結合モル数、2核体成分含有量、数平均分子量、及び分散度のいずれも適切な範囲にあり、これらを硬化剤として用いた場合のエポキシ樹脂系塗料の塗膜の硬化性、耐熱性、衛生性及び加工性について、良好な結果が得られた。一方、比較例1はクレゾール類としてパラクレゾールのみを用いたため、得られた樹脂の数平均分子量が低く、2核体成分含有量が多いため、塗膜の硬化性、耐熱性、衛生性が低下した。比較例2においても、ホルムアルデヒド配合量が少ないため、樹脂の数平均分子量が低く、2核体成分含有量が多くなり、塗膜の硬化性、耐熱性、衛生性において満足のいく結果が得られなかった。比較例3はクレゾール類としてオルソクレゾールのみを用いたことにより樹脂の硬化性が劣り、衛生性、耐熱性が悪化した。また、比較例4はメタ・パラクレゾールノボラック樹脂であるが、樹脂の分散度が大きく、2核体成分含有量も多いため、塗膜の硬化性、衛生性が低下し、加工性についても不充分なものとなった。
【0033】
【発明の効果】本発明は、GPC測定法から求めた2核体成分の含有量が6%以下であり、数平均分子量が600〜3000で、且つ分散度が3.2以下であるクレゾールノボラック樹脂であり、食品缶や飲料缶の缶内面塗工用のエポキシ樹脂系塗料の硬化剤として用いることで、硬化性と耐熱性及び衛生性に優れた塗膜を形成することができる。
【出願人】 【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
【出願日】 平成13年2月26日(2001.2.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−249532(P2002−249532A)
【公開日】 平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願番号】 特願2001−49873(P2001−49873)