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【発明の名称】 ポリアセタール共重合体及びその組成物
【発明者】 【氏名】大川 秀俊

【要約】 【課題】ポリアセタール樹脂が有する優れた外観、剛性、熱安定性等の諸特性を維持しつつ、摺動特性が顕著に改善されたポリアセタール樹脂材料を提供する。

【解決手段】(A)トリオキサン100重量部、(B)シクロヘキセンオキシド基を1個以上有するポリシロキサン化合物0.01〜40重量部及び(C)トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物0〜20重量部を共重合して得られるポリアセタール共重合体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)トリオキサン100重量部、(B)シクロヘキセンオキシド基を1個以上有するポリシロキサン化合物0.01〜40重量部及び(C)トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物0〜20重量部を共重合して得られるポリアセタール共重合体。
【請求項2】 ポリシロキサン化合物(B)が、下記式で示されるポリシロキサン構造を主骨格とするものである請求項1記載のポリアセタール共重合体。
【化1】

【請求項3】 ポリシロキサン化合物(B)が、0.5〜5000cStの粘度を有するものである請求項1又は2記載のポリアセタール共重合体。
【請求項4】 ポリシロキサン化合物(B)が、1〜3000cStの粘度を有するものである請求項1又は2記載のポリアセタール共重合体。
【請求項5】 ポリシロキサン化合物(B)が、構成成分としてポリオキシアルキレン鎖を含むものである請求項1〜4の何れか1項記載のポリアセタール共重合体。
【請求項6】 総末端基量が15〜200mmol/kgである請求項1〜5の何れか1項記載のポリアセタール共重合体。
【請求項7】 ヘミホルマール末端基量が4mmol/kg以下である請求項1〜6の何れか1項記載のポリアセタール共重合体。
【請求項8】 請求項1〜7の何れか1項記載のポリアセタール共重合体100重量部に対しシリコーンオイルを0.01〜10重量部添加してなるポリアセタール組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摺動特性に優れたポリアセタール共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性等において、優れた特性を持っており、主に構造材料や機構部品等として電気機器、自動車部品、精密機械部品等に広く使用されている。しかし、ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、要求特性は益々高度化、複合化、特殊化する傾向にある。そのような要求特性として、ポリアセタール樹脂本来の剛性を維持しつつ摺動特性の一層の向上が要求される場合がある。このような要求に対し、単に摺動性の向上の目的に対してはシリコーンオイル等を添加混練する方法が一般的であるが、ポリアセタール樹脂は活性に乏しく、多くの配合成分との親和性が不十分なために、剛性低下、成形不良、成形片の表面剥離等を引き起こしたり、摺動特性の面でも十分な改良ができない等の問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記の如き課題を解決し、ポリアセタール樹脂が有する優れた外観、剛性、熱安定性等の諸特性を維持しつつ摺動特性に優れたポリアセタール樹脂材料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を達成するためには、ポリアセタール樹脂のポリマー骨格自体の変性とかかるポリマーを基体とする樹脂組成物の設計が課題解決の重要な鍵を握るものと推測し鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂の製造にあたり特定のポリシロキサン化合物を共重合することによって得られるポリアセタール共重合体によって上述の課題が解決することを見出し、本発明に達した。
【0005】即ち、本発明は、(A)トリオキサン100重量部、(B)シクロヘキセンオキシド基を1個以上有するポリシロキサン化合物0.01〜40重量部及び(C)トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物0〜20重量部を共重合して得られるポリアセタール共重合体に関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明のポリアセタール共重合体について詳細に説明する。
【0007】本発明のポリアセタール共重合体は、上記のように(A)トリオキサン100重量部、(B)シクロヘキセンオキシド基を1個以上有するポリシロキサン化合物0.01〜40重量部及ぴ(C)トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物0〜20重量部を共重合して得られるものである。
【0008】本発明において用いられるトリオキサン(A)とは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。重合に用いるトリオキサンは液状であり、その温度は65〜135℃であることが好ましい。
【0009】次に、本発明で使用する(B)成分は、シクロヘキセンオキシド基を1個以上有するポリシロキサン化合物である、シクロヘキセンオキシド基は、主骨格を構成するポリシロキサン構造の末端に有するもの及び側鎖に有するものの何れもが使用可能である。主骨格を構成するポリシロキサン構造は特に限定されるものではないが、下記式で示されるポリシロキサン構造、すなわちポリジメチルシロキサン構造を主骨格とするものが一般的であり好ましい。
【0010】
【化2】

【0011】また、シクロヘキセンオキシド基を1個以上有するポリシロキサン化合物(B)として、さらにポリオキシアルキレン鎖を構成成分として有するものも使用可能である。
【0012】本発明において使用する上記の如きポリシロキサン化合物(B)は、25℃における粘度が0.5〜5000cStの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは1〜3000cStである。ポリシロキサン化合物(B)の粘度が過大であると共重合時に(A)成分等と均一に混和せず、目的の共重合体を安定して得ることができない。
【0013】これらの化合物は単独で又は2種以上を併用して、トリオキサン(A)との共重合に供することができる。
【0014】本発明において、上記の如きポリシロキサン化合物(B)は、(A)トリオキサン100重量部に対して0.01〜40重量部の範囲となるように使用する。好ましくは0.1〜30重量部の範囲、特に好ましくは0.5〜20重量部の範囲で使用するのがよい。ポリシロキサン化合物(B)が過小量の場合、得られるポリアセタール共重合体の摺動特性が改良されず十分な効果が得られない。逆にポリシロキサン化合物(B)が過大量の場合、ポリアセタール共重合体の製造を安定して行うことができず、また得られる共重合体の流動性等が大幅に低下する。
【0015】次に、本発明に使用するトリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物(C)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロルメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエテレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられ、その中でもエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。これら環状エーテル化合物(C)の使用量は、得られるポリアセタール共重合体の剛性、耐薬品性等を考慮すると、(A)トリオキサン100重量部に対して1種又は2種以上で合わせて0〜20重量部、好ましくは0.01〜15重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0016】本発明のポリアセタール共重合体の製造においては、上記成分の他に分子量を調整する成分を併用し末端基量を調整する。分子量を調整する成分としては、不安定末端を形成することのない連鎖移動剤、即ち、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラール、オキシメチレンジ−n−ブチルエーテル等のアルコキシ基を有する化合物が例示される。本発明においては、これら分子量調整剤の使用量を調整することにより、生成するポリアセタール共重合体の総末端基量を15〜200mmol/kgに調整したものが好ましく、特に好ましくは総末端量を20〜100mmol/kgに調整したものである。得られたポリアセタール共重合体の総末端基量が過少の場合には、流動性が著しく劣るものとなり、射出成形等の加工が非常に困難となる。また、総末端基量が過多の場合には、溶融粘度が著しく低いものとなり、押出し等の製造工程において、ペレット化することが不可能となる。また、得られた共重合体は、著しく靱性の低いものとなる。
【0017】上記の如きモノマー成分及びコモノマー成分からなる本発明のポリアセタール共重合体を製造するにあたり、触媒としては、一般にカチオン重合触媒が用いられる。具体的には、四塩化鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化バナジウム、三塩化アンチモン、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物等の三フッ化ホウ素配位化合物、過塩素酸、アセチルパークロレート、t−ブチルパークロレート、ヒドロキシ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の無機および有機酸、トリエチルオキソニウムテトラフロロボレート、トリフェニルメチルヘキサフロロアンチモネート、アリルジアゾニウムヘキサフロロホスフェート、アリルジアゾニウムテトラフロロボレート等の複合塩化合物、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド等のアルキル金属塩、ヘテロポリ酸、イソポリ酸等の1種又は2種以上が挙げられる。その中でも特に三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物等の三フッ化ホウ素配位化合物が好ましい。これらのカチオン重合触媒はそのままでも、有機溶剤等で予め希釈して用いることもでき、その調製方法は特に限定されない。
【0018】本発明のポリアセタール共重合体の製造方法は、特に限定されるものではないが、一般的には液状化したトリオキサン(A)、シクロヘキセンオキシド基を有するポリシロキサン化合物(B)及び環状エーテル化合物(C)を、主としてカチオン重合触媒を用いて重合させ、固体粉塊状のポリマーを得る塊状重合により行う。重合装置は特に限定されるものではなく、公知の装置が使用され、バッチ式、連続式等、いずれの方法も可能である。また、重合温度は65〜135℃に保つことが好ましい。
【0019】重合後の触媒の失活は、重合反応後、重合機より排出される生成反応物、あるいは、重合機中の反応生成物に塩基性化合物或いはその水溶液等を加えて行う。重合触媒を中和し失活するための塩基性化合物としては、アンモニア、或いはトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン等のアミン類、或いはアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物塩類、その他公知の触媒失活剤が用いられる。また、重合反応後、生成物にこれらの水溶液を速やかに加え、失活させることが好ましい。かかる重合方法および失活方法の後、必要に応じて更に、洗浄、未反応モノマーの分離回収、乾燥等を従来公知の方法にて行う。更に、不安定末端部の分解除去または安定物質による不安定末端の封止等、必要に応じて公知の方法にて安定化処理を行い、必要な各種安定剤を配合する。ここで用いられる安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種又は2種以上を挙げることができる。
【0020】上記のようにして得られるポリアセタール共重合体の末端基については、1H−NMRにより検出されるヘミホルマール量が0〜4mmol/kgであることが好ましく、特に好ましくは0〜2mmol/kgである、4mmol/kgを越える場合には、成形時にポリマー分解に伴う発泡等の問題が生じてしまう。ヘミホルマール末端基量を上記範囲に制御するためには、重合に供するモノマー、コモノマー総量中の不純物、特に水分を20ppm以下にするのが好ましく、特に好ましくは10ppm以下である。
【0021】更に、本発明のポリアセタール共重合体には、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、或いは、有機高分子材料、無機または有機の繊維状、粉体状、板状の充填剤等を1種または2種以上添加することができる。
【0022】中でも、摺動特性のさらなる改善のためにシリコーンオイルを添加することが効果的である。この場合、添加量はポリアセタール共重合体100重量部に対しシリコーンオイル0.01〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。本発明のポリアセタール共重合体を用い、これにシリコーンオイルを配合することにより、摺動特性のみならず、これまでの課題であった成形性(成形不良、成形片の表面剥離)等の問題も改善される。
【0023】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例における評価は次の方法で行った。
[メルトインデックス(MI)]失活処理後の重合体(粉粒状)について、190℃で測定したメルトインデックス(g/10min)を示す。これは分子量に対する特定値として評価した。即ちMIが低いほど分子量が高い。但し、測定時の分解を防ぐため、一定の安定剤(チバガイギー社、イルガノックス1010(0.5重量%)及びメラミン(0.1重量%))を添加し、よく混合して測定した。
[引張強度]射出成形機を用いてダンベル型試験片を成形し、ISO法に準じて測定を行った。
[曲げ弾性率]射出成形機を用いて試験片を成形し、ISO法に準じて測定を行った。
[末端基分析]物性評価に用いたポリマーをヘキサフルオロイソプロパノールd2に溶解し、1H−NMR測定を行った。各末端に対応するピーク面積より定量した。
[剥離試験]50mm×50mm×1mm平板ピンゲート金型を用い、射出速度2m/secで射出成形した成形片について表面状態を目視観察した。
[摺動性評価]射出成形により円筒状の鈴木式試験片(外径25.6mm、内径20mm)を成形し、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック(株)製、EFM−III−EN)を用い、固定側に設置し金属又は樹脂材料を相手材として摺動試験を行い24時間後の動摩擦係数、比摩耗量を測定した。
【0024】対樹脂摺動条件;荷重:0.06MPa、線速度:15cm/sec対金属摺動;荷重:0.98MPa、線速度:30cm/sec実施例1〜7外側に熱(冷〉媒を通すジャケットが付き、断面が2つの円が一部重なる形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、(A)トリオキサン、(B)ポリシロキサン化合物、(C)トリオキサンと共重合可能な環状エーテル化合物を表1に示す割合で加え、更に分子量調節剤としてメチラール、同時に触媒の三フッ化ホウ素0.005重量部を重合機に連続的に供給しながら塊状重合を行った。重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活した。さらに、分離、洗浄、乾燥後、粗ポリアセタール共重合体を得た。次いで、この粗ポリアセタール共重合体100重量部に対して、トリエチルアミン5重量%水溶液を4重量部、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3重量部添加し、2軸押出機にて210Cで溶融混練し不安定部分を除去した。得られたポリアセタール共重合体は、ヘキサフルオロイソプロパノールd2を溶媒とする1H−NMR測定により、その構造と共重合組成を確認した。
【0025】上記の方法で得たポリアセタール共重合体100重量部に、安定剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.03重量部、およびメラミン0.15重量部を添加し、2軸押出機にて210℃で溶融混練し、ペレット状のポリアセタール共重合体を得た。前述の方法で評価した評価結果を表1に示す。
【0026】実施例82軸押出機による溶融混練時に更にシリコーンオイル(東レダウコーニングシリコーンSH200(粘度5000cSt))を添加する以外は、実施例2と同様にして重合及び押出機による混練を行い、ペレット状のポリアセタール共重合体を得た。前述の方法で評価した評価結果を表1に示す。
【0027】比較例1〜4ポリシロキサン化合物(B)を使用せずに調製されたポリアセタール共重合体及びこれにシリコーンオイル(東レダウコーニングシリコーンSH200(粘度5000cSt又は60000cSt))を添加した組成物について実施例と同様に評価を行った。
【0028】
【化3】

【0029】
【表1】

【出願人】 【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
【出願日】 平成13年2月9日(2001.2.9)
【代理人】 【識別番号】100063897
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 馨 (外4名)
【公開番号】 特開2002−234924(P2002−234924A)
【公開日】 平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願番号】 特願2001−33253(P2001−33253)