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【発明の名称】 全芳香族ポリエステルの製造方法
【発明者】 【氏名】石渡 豊明

【氏名】櫻井 博志

【氏名】松村 俊一

【要約】 【課題】耐熱性、機械特性に優れた高重合度の芳香族ポリエステルを、ジカルボン酸やジオールをあらかじめエステル化することなく、直接ジカルボン酸とジオールから溶融重合により、色相に優れ、工業的に安価に、かつ短時間製造する方法を提供する。

【解決手段】例えばテレフタル酸のごとき芳香族ジカルボン酸、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのごとき芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートとを加熱溶融反応せしめて芳香族ポリエステルを製造するに際し、特定のピリジン化合物と有機スズ化合物の組合せを触媒として存在させる。これにより、前記性能を持つ全芳香族ポリエステルが得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記式(I)
HOOC−A1−COOH (I)
[ここで、A1は置換または未置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基である]で表される芳香族ジカルボン酸、および下記式(II)
HO−A2−X−A3−OH (II)
[ここで、A2およびA3は互いに独立に置換または未置換のフェニレン基でありそしてXは、下記式(III)【化1】

(ここでR1、R2、R3およびR4は、互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であり、qは4〜10の整数である、ただし、複数個のR3およびR4は同一でも異なっていてもよい。)で表される基である。]で表される芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートを、下記式(IV)
【化2】

[ここで、R5およびR6は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であるか、あるいはR5とR6は互いに結合してそれらが結合している窒素原子と一緒になって5〜7員環を形成していてもよく、R7は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であり、そしてnは0〜4の整数である、ただしnが2〜4のとき、複数個のR7は同一でも異なっていてもよい。]で表されるピリジン化合物と下記式(V)
【化3】

[ここで、R8は炭素数1〜20のアルキル基、または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリール基であり、R9は、炭素数1〜20のアルキル基、または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリール基であり、R10は、単結合または炭素数1〜10のアルキレン基または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリーレン基であり、p+r+2s=2または4であり、p+r+2s=2のときp=0または1、r=0、1または2、s=0または1であり、そしてp+r+2s=4のときp=0〜3の整数であり、r=0〜4の整数でありそしてs=0〜2の整数である]で表される有機スズ化合物との組合せよりなる触媒の存在下で、加熱溶融して重縮合せしめることを特徴とする全芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項2】 芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートを、下記式(1)および(2):0.1≦A/B≦1.1 (1)
0.8≦(A+B)/C≦1.2 (2)
[ここで、Aは芳香族ジカルボン酸のモル数であり、Bは芳香族ジオールのモル数でありそしてCはジアリールカーボネートのモル数である。]を満足する割合で使用する請求項1に記載の全芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項3】 芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートを下記式(1)−1および(2): 0.95≦A/B≦1.05 (1)−1 0.8≦(A+B)/C≦1.2 (2)
[ここで、A、BおよびCの定義は上記式に同じである。]を満足する割合で使用しそしてカーボネート結合とエステル結合の合計に基づきカーボネート結合を約5%未満で含有する全芳香族ポリエステルを生成せしめる請求項1に記載の全芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項4】 芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートを下記式(1)−2および(2): 0.1≦A/B<0.95 (1)−2 0.8≦(A+B)/C≦1.2 (2)
[ここで、A、BおよびCの定義は上記式に同じである。]を満足する割合で使用しそしてカーボネート結合とエステル結合の合計に基づきカーボネート結合を約5%以上で含有する全芳香族ポリエステルを生成せしめる請求項1に記載の全芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項5】 上記式(IV)で表されるピリジン化合物が下記式(IV)−1【化4】

[ここで、R51およびR61は互いに独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であるかあるいはR51とR61は互いに結合してそれらが結合している窒素原子と一緒になって5〜7員環を形成していてもよい。]で表される請求項1に記載の全芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項6】 上記式(V)で表される有機スズ化合物が下記式(V)−1【化5】

[ここで、R8とR9の定義は上記式に同じであり、u+w=2または4であり、u+w=2のときu=0または1であり、w=1または2であり、u+w=4のときu=0〜3の整数でありそしてw=1〜4の整数である。]で表される請求項1に記載の全芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項7】 上記式(V)−1で表される有機スズ化合物において、R8とR9がともに炭素数1〜20のアルキル基である請求項6に記載の方法。
【請求項8】 重縮合の最終温度が260〜400℃の範囲にある請求項1に記載の全芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項9】 還元粘度(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比6/4の混合溶媒中、1.2g/100ml、35℃測定)が0.5dl/g以上の全芳香族ポリエステルを生成せしめる請求項1に記載の全芳香族ポリエステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、全芳香族ポリエステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、耐熱性、靭性、機械的特性さらに色調に優れた非晶性全芳香族ポリエステルの効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年耐熱性が高く機械的強度の優れたエンジニアリングプラスチックに対する要求性能が高まっている。非晶性エンジニアリングプラスチックに芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸に由来する全芳香族ポリエステルや芳香族ポリエステルカーボネートがある。例えば、芳香族ジオールとして2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと略す。)、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸とイソフタル酸よりなる全芳香族ポリエステルは、比較的バランスの取れた特性を有しており、各種の用途に用いられている。
【0003】これら非晶性全芳香族ポリエステルの製造方法については、従来種々の研究が行われ、その中で芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物と芳香族ジオールとの界面重縮合法が工業化されている。しかしながら、この界面重縮合法で反応溶媒として通常用いられている塩化メチレンは、環境、衛生上の問題がある化学物質であり、その取扱には十分な注意が必要であるが、その沸点が40℃と非常に低いため、芳香族ポリエステルの製造時に使用した塩化メチレンを完全にリサイクルできる閉鎖系にすることは設備の面で難しく、また多大の費用がかかる。
【0004】また、芳香族ポリエステルカーボネートも同様に、芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物と芳香族ジオール、さらにホスゲンから、界面重合法によって製造すると同様の問題が生じる。そこでこれらポリマーの溶融重合法が検討されている。
【0005】しかしながら、これらのポリマーを芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールを用いて直接溶融重合で得ようとすると、着色が激しくまた重合速度も小さいため、実用的ではない。そのため、実際にはジカルボン酸のジアリールエステルとジオールを反応させる方法(a)、ジカルボン酸とジオールの低級脂肪族カルボン酸エステルを反応させる方法(b)および方法(b)の別法としてジカルボン酸とジオールを反応させる際に低級脂肪族カルボン酸無水物を加える方法(c)が知られている。しかし、方法(a)(b)では原料をあらかじめエステル化せねばならず、コスト高の原因となっている。また、方法(b)(c)では反応中に低級脂肪族カルボン酸が生じるため装置が腐食しやすく、また得られたポリマーも末端COOH基濃度が多いという問題がある。
【0006】このような問題点を解決する方法として、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、ジアリールカーボネートを反応させる方法がある。しかしこの方法でも、色相の優れたポリマーを得ることは難しかった。色相を改善する方法として、特開平3−128926号公報には、ボラン−第3級アミン錯塩化合物化合物および/または第4級アンモニウムボロハイドライド化合物を触媒として、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、ジアリールカーボネートを反応させる、芳香族ポリエステルの製造方法が開示されている。また、特開平4−236224号公報には、特定の錫化合物を触媒として用いた芳香族ポリエステルの製造法が開示されている。
【0007】しかし、一般に芳香族ジカルボン酸は溶解性が低く、芳香族ジカルボン酸の溶解が重合反応の律速となるため、反応は高温で行わなければならず、しかも長時間を必要とする場合があるために色相の改善には限界があった。また、従来の溶融重合法では、重合反応中に昇華物が生じ、それらの除去のために生産工程が煩雑となり、設備も大掛かりになり、結果的にコストが高くなるという問題があった。
【0008】本発明者らの一部は上記問題点を解決するため、特開平7−133345号公報において、特定のピリジン化合物存在下で芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートを反応させて色相に優れ、かつ重合反応時の昇華物も少なくして全芳香族ポリエステルを製造できることを開示した。
【0009】しかしながら、最近では要求特性の向上に伴いより重合度の大きい全芳香族ポリエステルが望まれており、より短時間でなおかつ高重合度の全芳香族ポリエステルを製造し得る方法が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的は、耐熱性、機械特性に優れた高重合度の芳香族ポリエステルを、芳香族ジカルボン酸成分をあらかじめエステル化することなく、直接ジカルボン酸と芳香族ジオール成分およびジアリールカーボネートを溶融重合反応せしめることにより、色相に優れ、工業的に安価に、かつ短時間で製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記式(I)
HOOC−A1−COOH (I)
[ここで、A1は置換または未置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基である。]で表される芳香族ジカルボン酸、および下記式(II)
HO−A2−X−A3−OH (II)
[ここで、A2およびA3は互いに独立に置換または未置換のフェニレン基でありそしてXは、下記式(III)
【0012】
【化6】

【0013】(ここでR1、R2、R3およびR4は、互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であり、qは4〜10の整数である、ただし、複数個のR3およびR4は同一でも異なっていてもよい。)で表される基である。]で表される芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートを、下記式(IV)
【0014】
【化7】

【0015】[ここで、R5およびR6は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であるか、あるいはR5とR6は互いに結合してそれらが結合している窒素原子と一緒になって5〜7員環を形成していてもよく、R7は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であり、そしてnは0〜4の整数である、ただしnが2〜4のとき、複数個のR7は同一でも異なっていてもよい。]で表されるピリジン化合物と下記式(V)
【0016】
【化8】

【0017】[ここで、R8は炭素数1〜20のアルキル基または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリール基であり、R9は、炭素数1〜20のアルキル基または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリール基であり、R10は、単結合または炭素数1〜10のアルキレン基または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリーレン基であり、p+r+2s=2または4であり、p+r+2s=2のときp=0または1、r=0、1または2、s=0または1であり、そしてp+r+2s=4のときp=0〜3の整数であり、r=0〜4の整数でありそしてs=0〜2の整数である。]で表される有機スズ化合物との組合せよりなる触媒の存在下で、加熱溶融して重縮合せしめることを特徴とする、0.5dl/g以上の還元粘度(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)中、1.2g/100ml、35℃)を有する全芳香族ポリエステルの製造法である。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る非晶性全芳香族ポリエステルの製造方法について詳細に説明する。
【0019】本発明に用いられる芳香族ジカルボン酸は、下記式(I)
HOOC−A1−COOH (I)
で表される。ここでA1は置換または未置換の炭素数6〜20の2価の芳香族基である。未置換の芳香族基としては、例えばp−フェニレン基、m−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、ビフェニレン基を挙げることができる。またA1は芳香族基には芳香族基にアルキル基、アルコシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、ハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つの基を有しても良い。具体的にはアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等があげられ、アルコシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロピロキシ基、ブトキシ基、ヘキシロキシ基等があげられ、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等があげられアリールオキシ基としてはフェノキシ基、ナフチロキシ基等があげられアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等があげられハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等があげられる。かかる芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸およびジフェニルインダンジカルボン酸等を挙げることができる。これら芳香族ジカルボン酸は単独で用いても2種以上一緒に用いてもよい。特に、テレフタル酸とイソフタル酸を組合せて用いることが好ましい。
【0020】また、本発明で用いられる芳香族ジオールは、下記式(II)で表される。
【0021】
HO−A2−X−A3−OH (II)
上記式(II)中のA2、A3は、互いに独立に、置換または未置換のフェニレン基である。Xは、【0022】
【化9】

【0023】を表す。
【0024】上記式でR1、R2、R3およびR4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であり、qは4〜10の整数である。ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素等を挙げることができる。炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチルおよびn−ヘキシル等を挙げることができる。炭素数5〜6のシクロアルキル基としては、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを挙げることができる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル等を挙げることができる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えばベンジル、フェネチル等を挙げることができる。qは4〜10の整数である。また複数のR3およびR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0025】このような芳香族ジオールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。これらのうち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。また、これら芳香族ジオール成分は、単独であるいは2種以上を一緒に用いてもよい。
【0026】ジアリールカーボネートとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート等が挙げられる。これらのうちジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジアリールカーボネートは、上記例示化合物から理解されるように、置換されていてもよい。また単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0027】本発明方法は、上記芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートを、触媒の存在下に加熱溶融して重縮合せしめることにより実施される。
【0028】触媒としては、上記のごとく、下記式(IV)
【0029】
【化10】

【0030】で表されるピリジン化合物と上記式(V)で表される有機スズ化合物との組合せが用いられる。式(IV)中、R5およびR6は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であるか、あるいはR5とR6は互いに結合してそれらが結合している窒素原子と一緒になって5〜7員環を形成していてもよく、R7は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基であり、そしてnは0〜4の整数である。
【0031】R5、R6およびR7における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基としては、前記式(II)のR1〜R4に関して前記した例と同じ基を具体例として挙げることができる。
【0032】また、R5とR6が互いに結合して形成することのできる上記5〜7員環としては、例えばピロリジン環、ピロリン環およびピペリジン環等を挙げることができる。
【0033】nは0〜4の整数である。nが2〜4のときには、複数個のR7は同一でも異なっていてもよい。
【0034】ピリジン化合物としては、下記式(IV)−1【0035】
【化11】

【0036】[ここで、R51およびR61は互いに独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であるかあるいはR51とR61は互いに結合してそれらが結合している窒素原子と一緒になって5〜7員環を形成していてもよい。]で表される化合物が特に好ましい。
【0037】上記式(IV)で表される化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、4−ピペリジノピリジン、4−ピロリノピリジンおよび2−メチル−4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。これらのうち、4−ジメチルアミノピリジンおよび4−ピロリジノピリジンが特に好ましい。
【0038】次に、上記ピリジン化合物と一緒に用いられる有機スズ化合物は下記式(V)
【0039】
【化12】

【0040】で表される。[式(V)中、R8は炭素数1〜20のアルキル基または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリール基であり、R9は、炭素数1〜20のアルキル基または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリール基であり、R10は、単結合または炭素数1〜10のアルキレン基または無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリーレン基であり、p+r+2s=2または4であり、p+r+2s=2のときp=0または1、r=0、1または2、s=0または1であり、そしてp+r+2s=4のときp=0〜3の整数であり、r=0〜4の整数でありそしてs=0〜2の整数である。]
【0041】R8およびR9が表す炭素数1〜20のアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ヘキサデシルおよびアイコサニル等を挙げることができる。
【0042】またR8およびR9が表す無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリール基は例えばフェニル、ナフチル、メチルフェニル、エチルフェニル、ブチルフェニル、ヘキシルフェニル、クロロフェニル、1−メチルナフチル、2−メチルナフチル、1−クロロナフチル、2−クロロナフチル等を挙げることができる。
【0043】また、R10が表す炭素数1〜10のアルキレン基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、例えばメチレン、エチレン、1,2−プロピレン、トリメチレン、ヘキサメチレン、ウンデカメチレン、デカメチレン等を挙げることができる。
【0044】またR10が表す無置換若しくは置換基を持つ炭素数6〜20のアリール基は例えばo−フェニレン、3−メチル−o−フェニレン、4−メチル−o−フェニレン、4−エチル−o−フェニレン、4−プロピル−o−フェニレン、3,4−ジメチル−o−フェニレン、3−クロロ−o−フェニレン、4−クロロ−o−フェニレン、3,4−ジクロロ−o−フェニレン、1,8−ナフタレン、1,2−ナフタレン、2,3−ナフタレン等を挙げることができる。
【0045】p+r+2s=2または4である。p+r+2s=2のとき(スズが2価であるとき)、pは0または1であり、rは0、1または2でありそしてsは0または1である。またp+r+2s=4のとき(スズが4価であるとき)、pは0〜3の整数であり、rは0〜4の整数でありそしてsは0〜2の整数である。
【0046】有機スズ化合物としては、下記式(V)−1【0047】
【化13】

【0048】[ここで、R8とR9の定義は上記式に同じであり、u+w=2または4であり、u+w=2のときu=0または1であり、w=1または2であり、u+w=4のときu=0〜3の整数でありそしてw=1〜4の整数である。]で表される化合物が好ましい。さらにはR8とR9がともにかつ独立に炭素数1〜20のアルキル基であらわされる化合物が特に好ましい。
【0049】上記式(V)で表される化合物としては、例えばジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−オクチルスズジラウレート、2−エチルヘキシル酸スズ等を挙げることができる。これらの組合せの触媒を用いることにより、従来のエステル交換触媒ではなし得なかった著しく大きな重合速度を達成することができる。
【0050】上記式(IV)で表されるピリジン化合物の使用量は特に制限はないが、上記芳香族ジカルボン酸に対して、0.01モル%〜10モル%の量とすることが好ましい。0.01モル%より少ないと該ピリジン化合物の触媒としての効果が不十分となる。また、10モル%より多いと得られるポリマーの物性が低下することがあり好ましくない。より好ましくは、0.05モル%〜1モル%である。また、かかるピリジン化合物は有機酸塩または無機酸塩の形で用いてもよい。
【0051】また、上記式(V)で表される有機スズ化合物の使用量は特に制限はないが、上記芳香族ジオールに対して0.001モル%〜0.1モル%とするのが好ましい。0.001モル%より少ないと有機スズ化合物の触媒としての効果が不十分となる。また、0.1モル%より多いと得られるポリマーの物性が低下することがあり、好ましくない。より好ましくは0.005モル%〜0.8モル%である。
【0052】本発明の重縮合反応においては、はじめに主としてジアリールカーボネートが芳香族ジカルボン酸成分および芳香族ジオール成分と反応してフェノール類と炭酸ガスを生じる。一般に芳香族ジカルボン酸は溶解性が低く融点も高いため、この初期の反応が開始されるには高温を要し、また初期反応が終結するには長時間を必要とする。このため、従来の方法では得られるポリマーの色調が悪くなり、該反応中における昇華物の発生量が多かった。しかし、上記のごとき化合物を用いると、この初期の反応が非常に低温で、しかも短時間で開始される。そのため、反応に要する時間が短くなり得られるポリマーの色相が著しく改善されると推定される。
【0053】本発明方法では、好ましくは、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートは、下記式(1)および(2):0.1≦A/B≦1.1 (1)
0.8≦(A+B)/C≦1.2 (2)
[ここで、Aは芳香族ジカルボン酸のモル数であり、Bは芳香族ジオールのモル数でありそしてCはジアリールカーボネートのモル数である。]を満足する割合で使用される。
【0054】上記式を満足する割合の中で、特に、下記式(1)−1および(2): 0.95≦A/B≦1.05 (1)−1 0.8≦(A+B)/C≦1.2 (2)
[ここで、A、BおよびCの定義は上記に同じである。]を満足する場合には、カーボネート結合とエステル結合の合計に基づきカーボネート結合を約5%未満で含有する全芳香族ポリエステルを有利に生成せしめることが可能となる。
【0055】同様に、上記式を満足する割合の中で、下記式(1)−2および(2): 0.1≦A/B<0.95 (1)−2 0.8≦(A+B)/C≦1.2 (2)
[ここで、A、BおよびCの定義は上記に同じである。]を満足する場合には、カーボネート結合とエステル結合の合計に基づきカーボネート結合を約5%以上で含有する全芳香族ポリエステルを有利に生成せしめることが可能となる。
【0056】また本発明においては、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)中、ポリマー溶液濃度1.2g/100ml、35℃にて測定した還元粘度が0.5dl/g以上となる全芳香族ポリエステルの製造方法であることが好ましい。還元粘度が0.5dl/gより低いと得られるポリマーの耐熱性、靭性が不十分であり、好ましくない。実用上、還元粘度の上限は2程度が好ましい。
【0057】本発明における反応において、加熱重縮合する際の最終重合温度は260〜400℃とすることが好ましい。ここで最終重合温度とは重合後期あるいはその終了時における温度を意味する。最終重合温度が260℃よりも低いとポリマーの溶融粘度が高くなるため高重合度のポリマーを得ることはできず、また400℃よりも高いとポリマーの劣化等が生じやすくなり好ましくない。更には、280〜380℃とすることが、より好ましい。
【0058】本発明の製造方法では重合温度の初期は比較的低温とし、これを徐々に昇温して最終的に上記重合温度にすることが好ましい。この際の初期重合温度は好ましくは160〜320℃である。ここで初期重合温度とは重合初期における温度を意味する。この初期重合反応は常圧下、または減圧下で実施される。また常圧時には、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。重縮合反応時間は得に制限はないがほぼ1〜10時間である。
【0059】なお、本発明の方法では、上記芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびジアリールカーボネートを反応の当初から同時に反応容器に仕込むのが好ましいが、モル当量分のジアリールカーボネートを反応開始から数回に分けて反応容器に導入することも可能である。かくして、本発明によれば、下記式(VI)
【0060】
【化14】

【0061】[ここで、A1、A2、A3およびXの定義は上記式に同じである。]で表される繰返し単位を含有してなる全芳香族ポリエステルが得られる。かかる全芳香族ポリエステルは、非晶性ポリマーであり、これを用いて例えば射出成型等の溶融成型形法により透明な成型品を得ることができる。そして、非晶性であることは、例えばDSCによりその融点が得られない等から確認することができる。
【0062】本発明の製造方法により得られる全芳香族ポリエステルは、好ましくは、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)中、1.2g/100ml、35℃にて測定した還元粘度が0.5dl/g以上である。還元粘度が0.5dl/gより低いと得られるポリマーの耐熱性、靭性が不十分であり、好ましくない。実用上、還元粘度の上限は2程度が好ましい。
【0063】本発明の全芳香族ポリエステル製造方法においては、例えばその製造時に、必要に応じて安定剤、着色剤、顔料、滑剤等の各種添加剤を添加しても構わない。
【0064】本発明の製造方法により得られる芳香族ポリエステルは耐熱性、透明性等を有し、自動車用ライトカバー、電子部材等の成型品に好適に用いることができる。
【0065】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中「部」は「重量部」を意味する。還元粘度はフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)中、濃度1.2g/100ml、35℃にて測定した。ガラス転移温度はDSC(昇温速度10℃/min)で測定した。
【0066】[実施例1]テレフタル酸24.9部、イソフタル酸24.9部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン68.5部、ジフェニルカーボネート128.5部、4−ジメチルアミノピリジン0.037部、ジ−n−ブチルスズジアセテート0.04部を攪拌装置および窒素導入口を備えた真空留出系を有する反応容器に入れ、200℃で反応を開始した。30分後、220℃に昇温し、同温度で30分間反応させた。その後240℃に昇温し、フェノールの留出を確認した後、系内を徐々に減圧にした。反応開始から4時間後原料が均一に溶解していることを確認した。その後、さらに昇温減圧し、反応開始から6時間後、系内を320℃、約66.7Pa(約0.5mmHg)とした。同条件下で1時間重合反応を行い、ポリマーを得た。得られたポリマーは淡黄色透明であり透明性が良好で、還元粘度は0.50dl/gであった。
【0067】[実施例2]テレフタル酸498.4部、イソフタル酸498.4部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1370部、ジフェニルカーボネート2571部、4−ジメチルアミノピリジン1.466部、ジ−n−ブチルスズジアセテート0.7部を攪拌装置および窒素導入口を備えた真空留出系を有する反応容器に入れ、180℃、40.0kPa(300mmHg)で反応を開始した。90分後、徐々に昇温、減圧を開始し、反応開始から3時間後220℃、26.7kPa(200mmHg)になった。同温度で1時間反応させるとともに13.3kPa(100mmHg)まで減圧した。その後約100Pa(約0.75mmHg)まで減圧した後310℃まで昇温した。反応開始から10時間後、ポリマーを得た。得られたポリマーは淡黄色透明であり、還元粘度は0.68dl/gであった。
【0068】[実施例3]テレフタル酸33.2部、イソフタル酸33.2部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン91.2部、ジフェニルカーボネート171.2部、4−ジメチルアミノピリジン0.049部、ジ−n−ブチルスズジアセテート0.013部および酸化ゲルマニウム0.0005部を攪拌装置および窒素導入口を備えた真空留出系を有する反応容器に入れ、200℃で反応を開始した。0.5時間後、220℃に昇温し、同温度にてフェノールの留出を確認した後、系内を徐々に減圧した。反応開始から3時間後、原料が均一に溶解していることを確認した。その後、さらに昇温、減圧し、反応開始から5時間後、系内の最終到達温度を320℃、圧力を約66.7Pa(約0.5mmHg)とした。同条件下にて2時間重合を行い、非晶性の全芳香族ポリエステルを得た。この時昇華物はほとんど生じなかった。得られたポリマーは淡黄色透明であり、還元粘度は0.72dl/g、ガラス転移温度は193℃であった。
【0069】[比較例1]ジ−n−ブチルスズジアセテートを用いず、反応開始から6時間後系内を320℃、約66.7Pa(約0.5mmHg)とし、同条件下で90分反応を行った以外は、実施例1と同様に行った。得られたポリマーは淡黄色透明であったが、還元粘度は0.21dl/gであり、十分な重合度のポリマーは得られなかった。
【0070】[比較例2]ジ−n−ブチルスズジアセテートの代わりに塩化カリウム0.01部を用い、反応開始から6時間後系内を320℃、約66.7Pa(約0.5mmHg)とし、同条件下で90分反応を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたポリマーは黄色透明であるが、透明性が十分でなく、還元粘度は0.37dl/gであった。
【0071】[比較例3]ジ−n−ブチルスズジアセテートの代わりに水酸化カルシウム0.07部を用い、反応開始から6時間後系内を320℃、約66.7Pa(約0.5mmHg)とし、同条件下で90分反応を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたポリマーは黄色透明であるが、透明性が十分でなく、還元粘度は0.16dl/gであった。
【0072】[比較例4]ジ−n−ブチルスズジアセテートの代わりに酸化ゲルマニウム0.02部を用い、反応開始から6時間後系内を320℃、約66.7Pa(約0.5mmHg)とし、同条件下で90分反応を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたポリマーは黄色透明であるが、透明性が十分でなく、還元粘度は0.19dl/gであった。
【0073】[比較例5]ジ−n−ブチルスズジアセテートの代わりに三酸化アンチモン0.026部を用い、反応開始から6時間後系内を320℃、約0.5mmHgとし、同条件下で90分反応を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたポリマーは淡黄色透明であるが、還元粘度は0.49dl/gであった。
【出願人】 【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【出願日】 平成13年1月29日(2001.1.29)
【代理人】 【識別番号】100077263
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開2002−220450(P2002−220450A)
【公開日】 平成14年8月9日(2002.8.9)
【出願番号】 特願2001−19683(P2001−19683)