トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 環状オレフィン系開環重合体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】田口 和典

【氏名】角替 靖男

【要約】 【課題】弾性回復性が大きく、適度な弾性率を有し、透明性及び耐熱性の優れた環状オレフィン系開環重合体を提供すること。

【解決手段】炭素数2個以上の直鎖と炭化水素環とが交互に並ぶ重合体であって、全直鎖に対する炭素数3個以上の直鎖の割合が5〜95重量%であり、直鎖中の全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合が50%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜1,000,000であり、クロロホルム不溶分が0.1重量%以下である環状オレフィン系開環重合体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 炭素数2個以上の直鎖と炭化水素環とが交互に並ぶ重合体であって、全直鎖に対する炭素数3個以上の直鎖の割合が5〜95重量%であり、直鎖中の全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合が50%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜1,000,000であり、クロロホルム不溶分が0.1重量%以下である環状オレフィン系開環重合体。
【請求項2】 開環反応によって炭素数2個の直鎖を形成する環状オレフィン系単量体と、開環反応によって炭素数3個以上の直鎖を形成する環状オレフィン系単量体とを、周期表4〜9族の遷移金属を含有するカルベン化合物を用いて開環重合して炭素数2個以上の直鎖と炭化水素環とが交互に並ぶ重合体を得る工程と、前記重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化して直鎖中の全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合を50%以下にする工程とを有する環状オレフィン系開環重合体の製造方法。
【請求項3】 請求項1記載の環状オレフィン系開環重合体及び酸化防止剤を有する環状オレフィン系開環重合体組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、弾性回復性の大きな成形品を与える環状オレフィン系開環重合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系重合体を押出成形又はインフレーション成形して得られるフィルムやシートは、緩衝シート、テープなどの包装資材やトレー、カップなどの民生資材として幅広く使用されている。しかし、これらのフィルム、シートは、弾性回復性が不十分であること、弾性率が高すぎること、金属や他の樹脂又はゴムとの密着性に劣ること、透明性が低いことなどの問題があった。特開平5−97933号公報には、特定の組成比のα−オレフィン/環状オレフィン付加共重合体が弾性回復性に優れ、適度な弾性率を有することが記載されている。しかしながら、この共重合体は、結晶成分を含んでいるため、依然として透明性が不十分で、また、耐熱性に問題があった。
【0003】一方、下記式[1]で示されるノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、耐熱性、透明性、低吸水性などに優れる樹脂として注目されている。
【0004】
【化1】

【0005】(式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数が1〜20個の炭化水素基、又は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子のいずれかの原子を含む置換基を示し、RとR、又は、RとRは互いに結合して別の環を形成してもよい。nは0、1又は2である。)
この樹脂は炭化水素環と直鎖とが交互に配列する構造を持ち、その直鎖の炭素数が2個と短い。すなわち、ノルボルネン系単量体は、開環重合で重合体に、下記式[2]で表わされる炭素数2個の直鎖の構成単位と下記式[4]で表わされる炭化水素環の構成単位を形成するが、下記式[3]で表わされる炭素数3個の直鎖の構成単位以上の大きさの直鎖を形成しない。
【0006】
【化2】

【0007】(炭素−炭素間の実線と破線とで構成される結合は、単結合又は二重結合を表す。各Rは、独立に水素原子、炭素数が1〜20個の炭化水素基、又は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子のいずれかの原子を含む置換基を示す。Ri の添字i は、単結合のときは2個を、二重結合のときは1個を意味する記号である。)
【0008】
【化3】

【0009】(各記号の意味は式[2]と同様である。)
【0010】
【化4】

【0011】(Aは炭化水素環を表し、好ましくは4〜8員環、より好ましくは5〜6員環であり、さらに別の環を1つ又は2〜5個付帯した多環でもよい。)
ノルボルネン系開環重合体水素化物の成形品は剛性が大きくて弾性率が高すぎ、また、弾性回復率が小さすぎてフィルムやシートとして使用するには困難な場合があった。この重合体の弾性率を下げる例としては、米国特許第4,002,815号公報や同4,025,708号公報に記載されているシクロペンテンとジシクロペンタジエンとを開環共重合して得られる、炭化水素環をつなぐ直鎖を長くした重合体が挙げられる。しかし、これら公報が記載しているように、それらの重合体は不溶成分(ゲル成分)を多く含むため水素化することが困難で、透明性や耐熱性に劣るものであった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、弾性回復性が大きく、適度な弾性率を有し、透明性及び耐熱性に優れた環状オレフィン系開環重合体及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、炭素数が2個以上の直鎖と炭化水素環とが交互に並ぶ重合体で、全直鎖に対する炭素数3個以上の直鎖の割合が5〜95重量%で、また、直鎖中の全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合が50%以下で、架橋重合体を含有しない環状オレフィン系開環重合体が、弾性回復性が大きく、適度な弾性率を有し、透明性及び耐熱性に優れる重合体であることを見出した。本発明はこの知見に基いて完成されたものである。かくして本発明によれば、(1)炭素数2個以上の直鎖と炭化水素環とが交互に並ぶ重合体であって、全直鎖に対する炭素数3個以上の直鎖の割合が5〜95重量%であり、直鎖中の全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合が50%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜1,000,000であり、クロロホルム不溶分が0.1重量%以下である環状オレフィン系開環重合体、(2)開環反応によって炭素数2個の直鎖を形成する環状オレフィン系単量体と、開環反応によって炭素数3個以上の直鎖を形成する環状オレフィン系単量体とを、周期表4〜9族の遷移金属を含有するカルベン化合物を用いて開環重合して炭素数2個以上の直鎖と炭化水素環とが交互に並ぶ重合体を得る工程と、前記重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化して直鎖中の全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合を50%以下にする工程とを有する環状オレフィン系開環重合体の製造方法、並びに、(3)上記(1)記載の環状オレフィン系開環重合体及び酸化防止剤を有する環状オレフィン系開環重合体組成物、が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の環状オレフィン系開環重合体は、炭素数2個以上の直鎖と炭化水素環とが交互に並ぶ重合体であって、全直鎖に対する炭素数3個以上の直鎖の割合が5〜95重量%であり、直鎖中の全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合が50%以下であり、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000であり、クロロホルム不溶分(ゲル)が0.1%以下である環状オレフィン系開環重合体である。本発明の環状オレフィン系開環重合体は、炭化水素環と炭化水素環をつなぐ直鎖が炭素数2個の直鎖の他に炭素数3個以上の直鎖を上記のように適量含有するので、得られる成形品は適度な弾性率と大きな弾性回復率とを有する。また、本発明の重合体は、環状オレフィン系開環重合体本来の特性に加えて二重結合が少ないこと、ゲルが少ないこと等から、優れた透明性及び耐熱性を有している。
【0015】本発明の環状オレフィン系開環重合体の一つの構成要素である炭化水素環は、炭素数が、好ましくは4〜8個、より好ましくは5〜6個である。炭化水素環の炭素数が少なすぎると重合体が高温で分解するおそれがあり、また、多すぎると弾性回復率が発現しない可能性がある。炭化水素環は、ジシクロペンタジエン開環重合体のように、さらに別の環を1つ又は2〜5個付帯した多環でも良い。各付帯環の炭素数も上記の範囲であることが好ましい。また、環には置換基が含まれてもよい。炭化水素環の構成単位は、下記式[4]で示される。
【0016】
【化5】

【0017】(Aは炭化水素環を表し、好ましくは4〜8員環、より好ましくは5〜6員環であり、さらに別の環を1つ又は2〜5個付帯した多環でもよい。)
炭化水素環としてシクロアルカン、シクロアルケン及び芳香環があるが、本発明においては特にシクロアルカンが好ましい。
【0018】本発明の環状オレフィン系開環重合体は、もう一つの構成要素として、炭化水素環と炭化水素環とを直接連結する直鎖を有する。直鎖は、最小炭素数が2個である。炭素数3個以上の直鎖は、直鎖全体に対して5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%存在する。直鎖中の炭素−炭素結合には二重結合があってもよい。本発明の環状オレフィン系開環重合体の直鎖中の全炭素−炭素結合数に対する二重結合数の割合は、50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下である。二重結合の割合が多すぎると成形品の耐熱性が低下するおそれがある。また、炭化水素環中の二重結合数の全炭素−炭素結合数に対する割合も好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、特に好ましくは20%以下である。直鎖の構成単位として、式[2]及び式[3]が挙げられる。
【0019】
【化6】

【0020】(炭素−炭素間の実線と破線とで構成される結合は、単結合又は二重結合を表す。各Rは、独立に水素原子、炭素数が1〜20個の炭化水素基、又は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子のいずれかの原子を含む置換基を示す。Ri の添字i は、単結合のときは2個を、二重結合のときは1個を意味する記号である。)
【0021】
【化7】

【0022】(各記号の意味は式[2]と同様である。)
炭素数3個以上の直鎖の割合が少なすぎると、即ち、炭素数2個の直鎖が多すぎると、成形品は剛性が強すぎて弾性率が高くなりすぎるおそれがあり、逆に、炭素数3個以上の直鎖の割合が多すぎると、即ち、炭素数2個の直鎖が少なすぎると弾性回復性を示さない可能性がある。
【0023】本発明の環状オレフィン系開環重合体の、THFを溶剤とするGPCによるポリスチレン換算のMwは、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜800,000、より好ましくは7,000〜500,000、特に好ましくは10,000〜200,000である。Mwが小さすぎると機械的特性が劣るおそれがあり、逆に、Mwが大きすぎると成形時の溶融性が悪くなる可能性がある。また、本発明の環状オレフィン系開環重合体は、架橋重合体をほとんど含有しない。従って、環状オレフィン系開環重合体1部をクロロホルム9部に溶解させ、10ミクロンのテフロンフィルターで濾過して回収される不溶分は、0.1重量%以下であり、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下である。クロロホルム不溶分が多すぎると、水素化反応が十分進行しなかったり、フィルムなどに成形した際に未溶融物による欠陥を生じたり、機械的強度が低下したり、また、透明性が低下する。
【0024】本発明の上記重合体の製造方法は特に限定されないが、好ましい製造方法は特定の環状オレフィン系単量体を開環重合し、それを水素化する方法である。かくして、本発明の環状オレフィン系開環重合体を製造する方法は、開環反応によって炭素数2個の直鎖を形成する環状オレフィン系単量体Aと、開環反応によって炭素数3個以上の直鎖を形成する環状オレフィン系単量体Bとを開環共重合させ、しかる後に二重結合を水素化するものである。環状オレフィン系単量体が開環反応によって炭素数何個の直鎖を形成するかは、開環重合する際に開環する環を構成する炭素原子の中で、開環する環のみを構成する炭素原子の数Nで決まる。Nが2であれば直鎖の炭素数は2個であり、Nが3個以上であれば直鎖の炭素数は3個以上である。
【0025】環状オレフィン系単量体Aの例として、下記式[1]で表わされるノルボルネン系単量体、あるいは、下記式[5]で表される3,4−ジ置換シクロブテンが挙げられる。
【0026】
【化8】

【0027】(式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数が1〜20個の炭化水素基、又は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子のいずれかの原子を含む置換基を示し、RとR、又は、RとRは互いに結合して別の環を形成してもよい。nは0、1又は2である。)
【0028】
【化9】

(式中、Ra及びRbは互いに結合して、環状オレフィンの外部に別の環を形成している。)
なお、3,4−ジ置換シクロブテンの3位と4位の炭素原子は別の環の構成にも関与しているので、開環反応によって形成される直鎖の炭素数は1位と2位の炭素の2個である。
【0029】環状オレフィン系単量体Bとしては、例えば下記式[6]で表される単量体が挙げられる。
【0030】
【化10】

【0031】(式中、R、R、R71、R72、R73 、R81、R82及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜20個の炭化水素基、又は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子のいずれかの原子を含む置換基を示す。mは0〜10の整数、mは0〜5の整数、(m+2m)は0〜10である。(m+2m−1)個の炭素−炭素結合の一部が二重結合のものも含まれる。R72 とR73、又は、R82とR83が結合して環を形成してもよく、その場合は単環又は多環が形成される。)
【0032】式[6]で表わされる環状オレフィン系単量体Bは、環状オレフィン系単量体Aのノルボルネン系単量体と開環共重合して下記式[7]で示されるように炭素数が3個以上、好ましくは3〜10個の直鎖を形成する。
【0033】
【化11】

【0034】環状オレフィン系単量体Aの具体例であるノルボルネン系単量体としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネンなどの無置換またはアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネンなどの芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシイソプロピルノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン、などの酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;
【0035】5−シアノノルボルネン、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;ジシクロペンタジエン、トリシクロ[4.3.12,5 .0]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.12,.0]ウンダ−3−エンなどを挙げることができる。さらに、テトラシクロ[6.5.12,5 .01,6 .08,13]トリデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[6.6.12,5 .01,6 .08,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)などの芳香環を有するノルボルネン類;
【0036】テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセンなどの無置換またはアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセンなどの環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセンなどの芳香環を有するテトラシクロドデセン類;
【0037】8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物などの酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセンなどのハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセンなどのケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
【0038】ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセンなどの無置換またはアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセンなどの環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセンなどの芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
【0039】12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン−12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン−12,13−ジカルボン酸無水物などの酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン−12,13−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセンなどのハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセンなどのケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類などが挙げられる。
【0040】開環反応によって炭素数が3個以上の直鎖を形成する環状オレフィン系単量体Bの具体例としては、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエンなどの環状ジオレフィン;ビシクロ[3.3.0]オクテン(式[8])、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−3−エン(式[9])、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエン(式[10])などを挙げることができる。
【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】本発明の製造法によれば、環状オレフィン系単量体Aと環状オレフィン系単量体Bとの開環共重合によって、炭化水素環と炭化水素環の間には、次に記す炭素数の直鎖が形成される。2個の環の間に形成される直鎖の長さ(炭素数)は、環状オレフィン系単量体A由来の直鎖の長さと環状オレフィン系単量体B由来の直鎖の長さによって決まる。2つの環状オレフィン系単量体Aが開環重合した場合、環の間の直鎖の炭素数は2個である。環状オレフィン系単量体Bが上記式[6]におけるR72、R73間、又は、R82、R83間で炭化水素環を形成しないときは、2つの環状オレフィン系単量体A由来単量体単位の環の間に環状オレフィン系単量体B由来単量体単位をr個挟む配列において、2つの環状オレフィン系単量体A由来単量体単位の向きがhead to tailかhead to headかにより直鎖の炭素数は、[2+r×(3+m+2m)]個又はr×(3+m+2m)個もしくは[4+r×(3+m+2m)]個である。また、環状オレフィン系単量体Bが上記R72、R73間、又は、R82、R83間で炭化水素環を形成するときは、2つの環状オレフィン系単量体B由来単量体単位の環の間の直鎖の炭素数は、2つの環状オレフィン系単量体B由来単量体単位の結合の向きにより(3+m)個又は2×(3+m)個であり、環状オレフィン系単量体A由来単量体単位の環と環状オレフィン系単量体B由来単量体単位の環の間の直鎖の炭素数は、結合の向きにより(3+m)個もしくは2個、又は(5+m)個である。ここで、mは0〜10の整数、mは0〜5の整数、(m+2m)が0〜10であり、rは1〜数百の整数である。
【0045】重合反応を行う際の環状オレフィン系単量体Aと環状オレフィン系単量体Bとの仕込み割合は、生成する開環重合体の全直鎖に対する炭素数3個以上の直鎖の割合が5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%になるように決定する必要がある。両単量体の仕込み割合と直鎖中の炭素数3個以上の直鎖の割合との関係は、予備実験をすることにより把握することができる。炭素数が2個の直鎖の割合は、単純な場合は得られた重合体のH−NMR分析などにより両単量体単位の割合を求めることにより存在範囲を割り出すことができる。また、13C−NMR分析により、環に直接結合する炭素(炭素数が2個の直鎖は2個とも該当)と環に直接結合しない炭素のそれぞれの割合を求め、これらと両単量体単位の割合とから算出することができる。炭素数が3個以上の直鎖の割合は、炭素数が2個の直鎖の割合の残余として求まる。
【0046】環状オレフィン系単量体Aと環状オレフィン系単量体Bとを開環共重合させるためのメタセシス重合触媒は、周期表第4〜9族遷移金属を含有するカルベン化合物である。周期表第4〜9族遷移金属含有カルベン化合物を用いると、架橋重合体が極めて少なくて、従ってクロロホルム不溶成分が0.1重量%以下である環状オレフィン系開環重合体を得ることができるからである。周期表第4〜9族遷移金属含有カルベン化合物は、式[11]で示すことができる。
【0047】
【化15】

【0048】(式中、Mは周期表第4〜9族遷移金属を示し、RとR10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1〜20個の炭化水素基、又は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子のいずれかの原子を含む置換基を示す。Xは任意の配位子である。pは0、1又は2である。)
周期表第4〜9族遷移金属としては、Ti、Nb、Ta、Mo、W、Re、Ru、Os、Rh、Irが好ましく、Mo、W、Ruが特に好ましい。Mo含有カルベン化合物又はW含有カルベン化合物の好ましい例としては、Mo又はWと結合するイミド基を少なくとも一つ有し、さらに、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミド基及びアリールアミド基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基を有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記式[12]で示される化合物を挙げることができる。
【0049】
【化16】

【0050】(式中、R11はアルキル基又はアリール基を表し、X及びXは、互いに独立してアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミド基又はアリールアミド基を表す。XとXは互いに結合していてもよい。R12及びR13は、互いに独立して水素原子、炭素数が1〜20個の炭化水素基、又は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子のいずれかの原子を含む置換基を示す。Lは電子供与性の中性配位子であり、qは0、1又は2である。Nは窒素原子であり、MはMo又はWである。)
式中のR11がアルキル基の場合は、好ましくは炭素数が1〜20個の直鎖または分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜20個のシクロアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、又はシクロヘキシル基などが挙げられる。また、R11がアリール基の場合は、好ましくは炭素数が6〜20個のものであり、例えば、フェニル基または2、3、4、5、6位のいずれかに置換基を有する1〜5置換フェニル基である。
【0051】また、X、Xは、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミド基またはアリールアミド基であり、XとXは互いに結合していてもよい。アルコキシ基は、好ましくは炭素数が1〜20個のものであり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基またはシクロヘキシル基などが挙げられる。アリールオキシ基は、好ましくは、例えば、フェノキシ基または2、3、4、5、6位のいずれかに置換基を有する1〜5置換フェノキシ基である。上記置換フェニル基及び置換フェノキシ基の有する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基又はシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などのアルキル基もしくはアルキルアリール基;フッ素、塩素、臭素又はヨウ素などのハロゲン;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;シアノ基;ナフチル基または2〜8位のいずれかに上記同様の置換基を有する1〜7置換ナフチル基などが挙げられる。
【0052】さらにアルキルアミド基又はアリールアミド基としては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20個のアルキルアミド基又はアリール基の炭素数が6〜20個のアリールアミド基であり、例えば、N,N−ジメチルアミド基、N−メチル(N−tert−ブチル)アミド基、N−メチル(N−トリメチルシリル)アミド基、N−フェニル−N−メチルアミド基、N−フェニル(N−トリメチルシリル)アミド基、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−メチルアミド基、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−メチルアミド基、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−(トリメチルシリル)アミド基、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(トリメチルシリル)アミド基などが挙げられる。
【0053】さらに上記式〔12〕のR12及びR13の具体例としては、水素、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基などを挙げることができる。なかでも、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基が重合活性が高くて好ましい。さらに、Lは電子供与性の中性配位子である。電子供与性の中性配位子は中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよく、一般的にはヘテロ原子を有する電子供与性化合物で、具体的には、ホスフィン類、エーテル類、アミン類を挙げることができる。ホスフィン類としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの、炭素数が6〜20個のアリール基を含有してもよい、アルキル基の炭素数が1〜20個のトリアルキルホスフィン、又は炭素数が6〜20個のトリアリールホスフィンが挙げられる。エーテル類としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどが挙げられ、アミン類としてはトリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ピリジン、ルチジンなどが挙げられる。
【0054】Ru含有カルベン化合物の好ましい例としては、電子供与性の強い中性配位子を有し、さらに、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミド基及びアリールアミド基からなる群から選ばれる置換基を2個有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記式[13]
【0055】
【化17】

【0056】(式中、R14及びR15は、互いに独立して水素原子、炭素数が1〜20個の炭化水素基、又は、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子のいずれかを含む置換基を示す。XおよびXは、お互いに独立に任意のアニオン性配位子を示す。LおよびLはお互いに独立に任意の電子供与性の中性配位子を示す。R14、R15、X、X、LおよびLから選択される複数個の置換基がお互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。)
ここで、アニオン性配位子は中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。X、Xの具体例としては、F、Br、Cl又はIなどのハロゲン原子;水素、アセチルアセトン、ジケトネート基、シクロペンタジエニル基、アリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボキシル基、カルボキシル基、アルキル又はアリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基又はアルキルスルフィニル基を挙げることができる。なかでも、ハロゲン原子、シクロペンタジエニル基、アリル基、アルキル基又はアリール基が重合活性の点で優れている。
【0057】また、上記式〔13〕におけるL及びLの具体例としては、酸素、水、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エ−テル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スチビン類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族類、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネ−ト類、複素環式カルベン化合物などが挙げられる。なかでも、ピリジン類、ホスフィン類、芳香族類、環状ジオレフィン類、複素環式カルベン化合物が、重合活性が高いので好ましい。さらに、上記式〔13〕におけるR14及びR15の具体例としては、水素、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基を挙げることができる。なかでも、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基が重合活性が高くて好ましい。
【0058】本発明においては、重合反応を溶媒中で行っても、無溶媒で行ってもよいが、溶媒中で重合する方が重合反応後に水素化反応を行いやすいので好ましい。重合溶媒は、重合体を溶解し、かつ重合反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。重合に使用できる溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素系炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの含ハロゲン系炭化水素などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に汎用な脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素又はエーテル類が好ましく、重合や水素化反応に不活性であること、重合体の溶解性に優れることなどの観点から、脂環族炭化水素が最も好ましい。
【0059】重合を溶媒中で行う場合には、単量体(環状オレフィン系単量体A及び環状オレフィン系単量体B)の濃度は、1〜60重量%が好ましく、2〜55重量%がより好ましく、5〜50重量%が特に好ましい。単量体の濃度が過度に低いと生産性が悪くなり、逆に、過度に高いと重合後の反応溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となる可能性がある。環状オレフィン系単量体に対して使用する重合触媒のモル比は、好ましくは1:100〜1:2,000,000であり、より好ましくは1:500〜1:1,000,000であり、特に好ましくは1:1,000〜1:500,000である。触媒量が多すぎると重合反応後の触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られない。重合反応は、上記単量体と重合触媒を混合することにより開始される。重合温度は特に制限はないが、通常、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、通常1分〜100時間である。
【0060】本発明においては、環状オレフィン系開環重合体の分子量を調整するために、重合反応時に分子量調整剤を添加することができる。分子量調整剤の具体例としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート、アクリル酸メチルなど酸素含有ビニル化合物;アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。分子量調整剤の使用量は、環状オレフィン系単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。さらに、重合終了時に上記のビニル化合物を添加して、重合体分子鎖末端から触媒を遊離させることもできる。本発明においては、上記の触媒を用いて環状オレフィン系単量体A及び環状オレフィン系単量体Bの開環共重合を行うことにより、専らメタセシス開環重合による線状重合体生成反応が遂行されるので、3次元的な架橋重合体がほとんど生成しない。そのため、重合体には良溶媒に不溶のゲル成分は実質的に存在しない。得られる重合体の分子量は、後続の水素化反応を考慮すると、THFを溶離液とするGPCによるポリスチレン換算のMwは、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜800,000であり、より好ましくは7,000〜500,000である。本発明において、重合触媒としてルテニウム含有カルベン化合物を用いた場合には、残留するルテニウム含有カルベン化合物を水素化触媒とすることができ、新たに水素化触媒を添加する必要はない。また、水素化反応溶媒も重合反応溶媒をそのまま使用することができる。
【0061】本発明の環状オレフィン系開環重合体は、重合反応の後に水素化することにより、直鎖における二重結合の割合が50%以下、好ましくは40%、より好ましくは20%とすることができる。水素化に用いられる水素化触媒は、一般にオレフィン類や芳香族化合物の水素化反応に使用されるものであれば格別の制限はなく、その具体例として、(1)パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム又はルテニウムなどの遷移金属を、カーボン、アルミナ、シリカ又はケイソウ土などの担体に担持してなる担持型金属触媒;(2)チタン、コバルト又はニッケルなどの有機遷移金属化合物と、リチウム、マグネシウム、アルミニウム又はスズなどの有機金属化合物とからなる均一系触媒;(3)ロジウム、ルテニウムなどの金属錯体触媒などを挙げることができる。
【0062】(1)の担持型金属触媒の具体例としては、「遷移金属/担体」の形式で表記すると、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ、白金/シリカ、白金/アルミナ、ロジウム/シリカ、ロジウム/アルミナ、ルテニウム/シリカ、ルテニウム/アルミナなどの触媒が挙げられる。
(2)の均一系触媒としては、「有機遷移金属化合物/有機金属化合物」の形式で表記すると、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムなどの組み合わせが挙げられる。
(3)の金属錯体触媒としては、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジヒドリドテトラ(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド(アセトニトリル)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド(テトラヒドロフラン)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどが挙げられる。
【0063】水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で実施する。不活性有機溶媒は、生成する環状オレフィン系開環重合体水素化物の溶解性に優れるものであればよい。このような有機溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカリンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。水素化反応に用いる溶媒を、重合反応に用いた溶媒と同一にすると、重合反応後に、重合体溶液にそのまま水素化触媒を添加して水素化反応を行うことができるので好都合である。
【0064】水素化反応の最適な条件は、用いる水素化触媒の種類によって異なるが、水素化温度は、通常−20℃〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃であり、水素圧力は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜7.5MPa、より好ましくは0.10〜5MPaである。水素化反応の温度が低すぎると反応速度が遅くなるおそれがあり、逆に、温度が高すぎると副反応が起こる可能性がある。また、水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなるおそれがあり、逆に、水素圧力が高すぎると副反応が起こりやすくなる可能性がある。上記の水素化反応を0.1〜10時間行うと、環状オレフィン系開環重合体の直鎖における炭素−炭素二重結合の割合が50%以下に、好ましくは40%以下に、より好ましくは20%以下にすることができる。また、同重合体の炭化水素環に炭素−炭素二重結合がある場合、上記の水素化反応条件で二重結合の割合は、50%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、特に好ましくは30%以下にすることができる。
【0065】水素化反応終了後の水素化触媒は、上記(1)の担持型金属触媒を使用した場合は、水素化反応後の反応溶液をフィルターで濾過することによって除去することができる。上記(2)の均一系触媒又は上記(3)のロジウム、ルテニウムなどの金属錯体触媒を使用した場合の反応後の触媒除去法としては、反応溶液に吸着剤を添加して吸着させて分離する方法、又は、反応溶液に有機酸及び/又は無機酸並びに水もしくは低級アルコールを添加して洗浄して除去する方法などが採用できる。
【0066】本発明の環嬢オレフィン系開環重合体は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、白濁防止剤、帯電防止剤、有機又は無機フィラー充填剤などの各種の配合剤を適宜配合して調製された樹脂組成物として成形加工に供される。
【0067】酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、低吸水性を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による成形物の着色や強度低下を防止できるので配合剤として特に重要である。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキスメチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、トリエチレングリコールビス{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート}などのアルキル置換フェノール系化合物;2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−{1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル}フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられる。
【0068】リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’イソプロピリデン−ビス〔フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト〕などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−β−ラウリル−チオ−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は適宜選択されるが、環状オレフィン系開環重合体100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0069】紫外線吸収剤及び耐候安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−1−{2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系化合物;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベゾエート系化合物などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤及び耐候安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。紫外線吸収剤および耐候安定剤の量は、環状オレフィン系開環重合体100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
【0070】また本発明の環嬢オレフィン系開環重合体には、軟質重合体又はアルコール性化合物を配合することにより、透明性、低吸水性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下で使用しても白濁しにくい成形品にすることができる。また、これらを多量配合すれば耐衝撃性を向上することができる。上記軟質重合体は、通常30℃以下のTgを有する重合体であり、Tgが複数存在する場合には、少なくとも最も低いTgが30℃以下であればよい。これらの軟質重合体の具体例としては、例えば、液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;
【0071】ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、などのケイ素含有軟質重合体; ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコールおよびアミンまたはそのアシル誘導体またはアセタールからなる軟質重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム、などのエポキシ系軟質軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
【0072】また、上記アルコール性化合物は、分子内に少なくとも1つの非フェノール性水酸基を有する化合物で、好適には、少なくても1つの水酸基と少なくとも1つのエーテル結合又はエステル結合を有する。このような化合物の具体例としては、例えば2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、さらに好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基の1つがエーテル化またはエステル化されたアルコール性エーテル化合物やアルコール性エステル化合物が挙げられる。2価以上の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ジペンタエリスリトール、1,6,7−トリヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−4−オキソヘプタン、ソルビトール、2−メチル−1,6,7−トリヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−オキソヘプタン、1,5,6−トリヒドロキシ−3−オキソヘキサンペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、特に3価以上の多価アルコール、さらには3〜8個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。またアルコール性エステル化合物を得る場合には、α、β−ジオールを含むアルコール性エステル化合物が合成可能なグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどが好ましい。
【0073】このようなアルコール性化合物として、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどの多価アルコール性エステル化物;3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロオキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物などが挙げられる。これらの多価アルコール性化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。これらの多価アルコール性化合物の分子量は特に限定されないが、通常500〜2000、好ましくは800〜1500のものが、透明性の低下も少ない。上記軟質重合体又はアルコール性化合物の配合量としては、環状オレフィン系開環重合体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜5重量部、特に好ましくは0.05〜2重量部である。
【0074】帯電防止剤としては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの長鎖アルキルアルコール;アルキルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルスルホン酸ホスホニウム塩;ステアリン酸グリセリンエステルなどの脂肪酸エステル;ヒドロキシアミン系化合物;アルキルホスフェートアミン;ポリオキシエチレンアルキルアミン;アルキルジエタノールアミド;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体;有機ホウ素系界面活性剤;カチオン界面活性剤;無定形炭素、酸化スズ粉、アンチモン含有酸化スズ粉などを例示することができる。帯電防止剤の量は、環状オレフィン系開環重合体100重量部に対して、通常0.1〜5重量部の範囲である。
【0075】有機フィラーとしては、通常の有機重合体粒子または架橋有機重合体粒子を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン; ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル重合体;ポリアリレート、ポリメタクリレートなどのα,β‐不飽和酸から誘導された重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの不飽和アルコールから誘導された重合体;ポリエチレンオキシド、またはビスグリシジルエーテルからから誘導された重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリスルフォンなどの芳香族縮合系重合体;ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;アルデヒド・フェノール系樹脂;天然高分子化合物などの粒子または架橋粒子を挙げることができる。無機フィラーとしては、例えば、フッ化リチウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの2族元素化合物; 二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタンなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデンの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;沃化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物;酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の粒子が挙げられる。
【0076】本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、その他の配合剤として、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、アンチブロッキング剤、蛍光増白剤、防臭剤などを配合することができ、これらは単独で、あるいは2種以上混合して用いることができ、その配合量は本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0077】本発明の環状オレフィン系開環重合体の成形品は、優れた透明性及び耐熱性を有することに加えて、適度な弾性率及び高い弾性回復率を有する。引張り弾性率は、通常、10kgf/cm 〜2,000kgf/cm 、好ましくは50kgf/cm 〜1,500kgf/cm であり、弾性回復率は、通常、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上と高い。これらの特性を有することにより本発明の環状オレフィン系開環重合体は、押出成形法、インフレーション成形法、真空成形法、キャスト成形法、射出成形法、プレス成形法などの各種の成形法により種々の成形品に成形される。本発明の環状オレフィン系開環重合体は、テープ、緩衝シートなどの包装資材;トレー、カップ、文具、整理箱、押入収納箱などの民生資材;商品収容用透明ケース;食品ラップフィルム、シュリンクフィルム、シーラントフィルム、パレットストレッチフィルム、農業用フィルムなどの各種フィルム;制振材;パイプ、チューブ、発泡チューブ;電線被覆材;サイドモール、マッドガード、バンパーなどの自動車部品;照明用部品、家電部品;玩具;遮水シート、ドレーン材などの土木資材;建材;家具材;ポリオレフィン用耐衝撃性改良剤などに使用できる。これらの用途のうち、テープ、シート、フィルム、チュ−ブなどに特に好適であり、従来のオレフィン系重合体、α−オレフィン/環状オレフィン付加共重合体などでは実現できなかった柔軟かつ強靭なオレフィン系樹脂成形品を提供することができる。
【0078】
【実施例】以下に、実施例、及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、部および%は、特記のない限り重量基準である。測定法は以下によった。
(1)環状オレフイン系開環重合体(水素化物を含む)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はTHFを溶離液とするGPCによるポリスチレン換算値として測定した。
(2)水素化率は、 H−NMRスペクトルにより測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)は示差走査熱量計(DSC)により測定した。
(4)引張弾性率は、オートグラフを用いてJIS K 7113に従って測定した。
(5)弾性回復率は、キャスト法により作製した厚み0.5mmのフィルムを幅6mm、長さ60mmの短冊状にしたサンプルを用意し、オートグラフを用いて、クランプ間50mm(L0)のサンプルを1分間で150%伸ばして5分間保持した後、元の50mmに戻し、一分後のクランプ間のサンプル長さ(L1)を測定して、以下の式により求めた。
弾性回復率=[1−{(L1−L0)/L0}]×100【0079】〔実施例1〕攪拌機付きガラス反応器に、シクロヘキサン110部、ジシクロペンタジエン(DCPD)12部、シクロペンテン(CPE)18部、分子量調整剤の1−ヘキセン0.3部を仕込んだ。次に、シクロヘキサン10部に溶解したビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウムジクロリド0.029部を添加し、60℃で3時間重合した後、重合反応液を多量のイソプロパノールに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、室温で40時間減圧乾燥した。得られた環状オレフィン系開環重合体の収量は15.5部で、Mnは16,900、Mwは30,900で、H−NMRスペクトルによって測定した同共重合体中のDCPD/CPE構成単量体比は、56/44(モル/モル)であった。また、得られた上記開環共重合体1部をクロロホルム9部に溶解したところ、重合体は完全に溶解した。10ミクロンのテフロンフィルターで濾過して回収された不溶分は、0.01%以下であった。
【0080】続いて、攪拌機付きオートクレーブに、上記開環共重合体10部とシクロヘキサン90部を仕込み、ニッケル/アルミナ担持水素化触媒1.0部を添加し、水素圧力4.0MPa、温度160℃で5時間水素化反応を行った。反応終了後、冷却し、フィルターにより反応溶液を濾過し、水素化触媒を除去して、無色透明の濾液を得た。濾液を多量のイソプロパノールに注いでポリマ−を完全に析出させ、これを濾別洗浄した後、室温で40時間減圧乾燥した。得られた環状オレフィン系開環重合体水素化物の収量は9.8部で、Mn17,800、Mw31,100で、水素化率は99.4%で、直鎖における二重結合の数の割合は0.1%であった。DSC測定の結果、Tgは5.5℃で、Tmは観測されなかった。また、上記開環共重合体水素化物1部をクロロホルム9部に溶解したところ、重合体は完全に溶解し、10μmのテフロンフィルターで濾過して回収された不溶分は、0.01%以下であった。得られた上記開環重合体水素化物10部を四塩化炭素15部に溶解した後、ガラス板に開け、厚み0.5mmのキャストフィルムを作製した。得られたフィルムは無色透明であった。このフィルムの引張弾性率は320kgf/cm 、弾性回復率は93%で、エラストマー状であった。得られた水素化された環状オレフィン系開環重合体は、構成単量体単位ごとにまとめて記載すると、二重結合がほぼ総て水素化されたと見なせるので下記式[14]のようになる。
【0081】
【化18】

【0082】式[14]は、重合体の主鎖が炭素数5個の炭化水素環(ただし、環の外部に5員環を付帯している)と炭素数2以上の直鎖とから成る。CPEがブロック状に多数結合すると直鎖の炭素数は数十、数百と大きくなる。重合体構造単位1モル当たりの直鎖の総炭素数は、下式の計算から3.32個である。
2×0.56+5×0.44=3.32個また、直鎖の内の炭素数が2個の直鎖の重量割合を見ると、最大のときはDCPDが総てブロックで連結したときで、下式の計算から33.7重量%である。
(2×0.56)/3.32=0.337また、炭素数が2個の直鎖の割合が最小のときは、CPEが等モルのDCPDと交互共重合したときの残余のDCPDブロックにおける直鎖の割合であるから、56モル%と44モル%の差の12モル%が炭素数が2個であり、その重量割合は下式の計算から7.2重量%である。
(2×0.12)/3.32=0.072実際の炭素数が2個の直鎖の重量割合は7.2〜33.7重量%の間にあり、炭素数が3個以上の直鎖の割合は、66.3〜92.8重量%の間にある。
【0083】〔比較例1〕実施例1において、CPEを加えず、DCPDを30部仕込んで開環重合を行った他は実施例1と同様に行った。得られた環状オレフィン系開環重合体の収量は29部で、Mnは12,400、Mwは28,200であった。また、クロロホルム不溶分は、0.01%以下であった。また、水素化された環状オレフィン系開環重合体の収量は28部で、Mnは18,100、Mwは42,700で、直鎖部分の二重結合の割合は0.1%であった。Tgは92℃で、Tmは観測されなかった。クロロホルム不溶分は、0.01%以下であった。厚み0.5mmのキャストフィルムは無色透明で、引張弾性率は2100kgf/cm で、サンプルは延伸中に切断してしまったため弾性回復率は測定できなかった。重合体の主鎖は、5員環と炭素数2個の直鎖とが交互に並ぶ構造である。従って直鎖総てが炭素数2個であり、成形品の弾性率は過度に大きく、弾性回復性は小さいものとなった。
【0084】〔実施例2〕実施例1において、DCPD12部に代えて8−エチルテトラシクロドデセン(以下、ETCDと記す。)12部を用いた他は実施例1と同様に行った。得られた環状オレフィン系開環重合体の収量は18部で、Mnは14,100、Mwは30,400であった。同共重合体中の構成単量体比ETCD/CPEは、45/55(モル/モル)であった。また、クロロホルム不溶分は、0.01%以下であった。また、水素化された環状オレフィン系開環重合体の収量は18部で、Mnは16,600、Mwは33,200で、直鎖の二重結合の割合はは0.05%であった。Tgは24.5℃で、Tmは観測されなかった。クロロホルム不溶分は、0.01%以下であった。厚み0.5mmのキャストフィルムは無色透明で、引張弾性率は410kgf/cm 、弾性回復率85%であった。実際の炭素数が3個以上の直鎖の重量割合は、実施例1と同様にして求めて、25〜87重量%の間にある。
【0085】〔比較例2〕CPEを加えず、DCPDの代わりにETCD30部を用いた以外は、実施例1と同様にして重合した。得られた環状オレフィン系開環重合体の収量は28.5部で、Mnは32,200、Mwは68,100であった。得られた環状オレフィン系開環重合体1部をクロロホルム9部に溶解したところ、重合体は完全に溶解した。10ミクロンのテフロン(登録商標)フィルターで濾過して回収された不溶分は、0.01%以下であった。続いて,実施例1と同様にして水素化された環状オレフィン系開環重合体を得た。収量は9.8部で、Mnは33,200、Mwは68,800で、水素化率は99.2%であった。また、Tgは145.5℃で、Tmは観測されなかった。得られた同開環重合体水素化物10部を四塩化炭素15部に溶解した後、ガラス板に開け、厚み0.5mmのキャストフィルムを作製した。得られたフィルムは無色透明であった。また、重合体の主鎖の直鎖総てが炭素数2個であるため、引張弾性率は21,000kgf/cmと剛性が極めて大きく、弾性回復率は測定できなかった。
【0086】
【発明の効果】本発明により、弾性回復性が大きく、適度な弾性率を有し、透明性及び耐熱性の優れた環状オレフィン系開環重合体及びその製造方法が提供される。
【出願人】 【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
【出願日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【代理人】 【識別番号】100097180
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 均 (外2名)
【公開番号】 特開2002−220440(P2002−220440A)
【公開日】 平成14年8月9日(2002.8.9)
【出願番号】 特願2001−18751(P2001−18751)