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【発明の名称】 エポキシ樹脂組成物及び半導体装置
【発明者】 【氏名】廣兼 大介

【要約】 【課題】離型性、連続成形性、耐半田クラック性に優れた特性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供すること。

【解決手段】(A)ジフェニレン骨格を含むフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中に50〜100重量%、(B)ジフェニレン骨格を含むフェノール樹脂を全フェノール樹脂中に50〜100重量%、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填材及び(E)グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)一般式(1)で示されるエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中に50〜100重量%、(B)一般式(2)で示されるフェノール樹脂を全フェノール樹脂中に50〜100重量%、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填材及び(E)グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基から選択される基であり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。nは、平均値で1〜3の正数)
【化2】

(Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基から選択される基であり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。nは、平均値で1〜3の正数)
【請求項2】グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルが、全エポキシ樹脂組成物中に0.02〜0.5重量%含まれる請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】 請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、離型性、連続成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び耐半田クラック性に優れた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の高度化、軽薄短小化が求められる中、半導体素子の高集積化、表面実装化が進んでいる。これに伴い、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しくなっているのが現状である。特に半導体装置の薄型化に際しては、金型とエポキシ樹脂組成物の硬化物との間の離型不足に伴う応力の発生により、半導体装置内部の半導体素子自体にクラックを生じたり、硬化物と半導体素子との界面における密着性を低下させるといった問題が生じている。又環境問題に端を発した半田の脱鉛化による半田リフロー温度の上昇に伴い、半導体装置中に含まれる水分の気化によって発生する爆発的な応力による耐半田クラック性が、以前にもまして大きな問題となってきている。
【0003】このため耐半田クラック性を向上させるための種々の提案がされている。例えば、一般式(1)で示されるエホキシ樹脂と一般式(2)で示されるフェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物が提案されており、この樹脂は、その骨格中に疎水性の構造を多く含むことから硬化物の吸湿率が低く、又架橋密度が低いためガラス転移温度以上の高温域での弾性率が小さい特徴を有し、このエポキシ樹脂組成物の硬化物は低吸水率を示し、半田リフロー時における水分の気化による爆発的な応力を低減でき、又熱時に低弾性率であることから半田リフロー時に発生する熱応力が小さくなり、結果として耐半田クラック性に優れる特性を有しているが、この樹脂は、疎水部を多く含むために金属部材との密着性に劣り、従来の離型剤を用いると密着力の更なる減少に伴う耐半田クラック性の低下を引き起こすといった問題がある。このため上記エポキシ樹脂組成物の硬化物と金属部材との密着力を損ねることなく、離型性に優れた新規の離型剤の開発が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、低吸湿、低応力の樹脂成分と特定の離型剤を用いた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置であり、半導体装置の成形時の離型性、連続成形性に優れ、かつ耐半田クラック性に優れた半導体装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、[1](A)一般式(1)で示されるエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中に50〜100重量%、(B)一般式(2)で示されるフェノール樹脂を全フェノール樹脂中に50〜100重量%、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填材及び(E)グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、【化3】

(Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基から選択される基であり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。nは、平均値で1〜3の正数)
【0006】
【化4】

(Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基から選択される基であり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。nは、平均値で1〜3の正数)
[2]グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルが、全エポキシ樹脂組成物中に0.02〜0.5重量%含まれる第(1)項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、[3] 第(1)項又は(2)項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、である。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明で用いられる一般式(1)で示されるエポキシ樹脂は、樹脂骨格中に疎水性の構造を多く含むことから硬化物の吸湿率が低く、又架橋密度が低いため、ガラス転移温度以上の高温域での弾性率が小さいといった特徴を有する。そのための樹脂を用いた半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物は低吸水率を示し、半田リフロー時における水分の気化による爆発的な応力を低減できる。又熱時に低弾性率であることから半田リフロー時に発生する熱応力が小さくなり、結果として耐半田クラック性に優れる。一般式(1)で示されるエポキシ樹脂の低吸水率、低弾性率、低熱応力等の特徴を最大限発現させるには、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中に50重量%以上含む必要がある。併用する場合の他のエポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン骨格を含む)型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等があり、これらは単独でも混合して用いてもよい。一般式(1)で示されるエポキシ樹脂の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0008】
【化5】

(nは、平均値で1〜3の正数)
【0009】本発明で用いられる一般式(2)で示されるフェノール樹脂は、樹脂骨格中に疎水性の構造を多く含むことから硬化物の吸湿率が低く、又架橋密度が低いため、ガラス転移温度以上の高温域での弾性率が小さいといった特徴を有する。そのためこの樹脂を用いた半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物は低吸水率を示し、半田リフロー時における水分の気化による爆発的な応力を低減できる。又熱時に低弾性率であることから半田リフロー時に発生する熱応力が小さくなり、結果として耐半田クラック性に優れる。一般式(2)で示されるフェノール樹脂の低吸水率、低弾性率、低熱応力等の特徴を最大限発現させるには、一般式(2)で示されるフェノール樹脂を全フェノール樹脂中に50重量%以上含む必要がある。併用する場合の他のフェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等があり、これらは単独でも混合して用いてもよい。一般式(1)で示されるエポキシ樹脂の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0010】
【化6】

(nは、平均値で1〜3の正数)
本発明に用いられる全エポキシ樹脂のエポキシ基と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基の当量比としては、好ましくは0.5〜2であり、特に0.7〜1.5が望ましい。0.5〜2を外れると耐湿性、硬化性等が低下するので好ましくない。
【0011】本発明で用いられる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応の触媒となり得るものを指し、例えばトリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0012】本発明で用いられる無機質充填材としては、例えば溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機質充填材の配合量を特に多くする場合は、溶融シリカを用いるのが一般的である。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布がより広くなるように調整することが望ましい。
【0013】本発明で用いられるグリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルは、エポキシ樹脂組成物に充分な流動性を付与し、更に離型性を向上する機能を有している。具体的には、グリセリントリリグノセリン酸エステル、グリセリントリセロチン酸エステル、グリセリントリモンタン酸エステル等が挙げられる。これらは、単独でも混合して用いてもよい。エステル化に用いる飽和脂肪酸が、炭素数23以下では十分な離型性が得られないため好ましくない。炭素数37以上では分子量が大きいため流動性が低下したり、過度に染み出すことにより金型汚れの原因となるので好ましくない。又モノエステル、ジエステルでは、残存する水酸基の影響によってエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐湿性が低下し、その結果として耐半田クラック性に悪影響を及ぼすので好ましくない。なお本発明での飽和脂肪酸の炭素数とは、飽和脂肪酸中のアルキル基とカルボキシル基の炭素数を合計したものを指す。
【0014】本発明で用いられるグリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルの特性を損なわない範囲で他の離型剤を併用することもできる。例えばカルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩類等が挙げられる。又グリセリンと炭素数24〜36の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルの配合量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.02〜0.5重量%が好ましい。0.02重量%未満の場合では十分な離型性が得られない。0.5重量%を越えると成形時に半導体装置内部の半導体素子やそれを搭載するリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に移行するため、密着性を著しく損ない耐湿性を低下させ、その結果として耐半田クラック性に悪影響を及ぼす。更に過度に染み出すことで金型汚れが発生するので好ましくない。
【0015】本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分を必須成分とするが、これ以外に必要に応じてカップリング剤、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム、合成ゴム等の低応力剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて混合後、加熱ニーダ、熱ロール、押し出し機等を用いて加熱混練し、続いて冷却、粉砕して得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例で具体的に説明する。配合割合は重量部とする。
実施例1 式(3)のエポキシ樹脂(軟化点58℃、エポキシ当量273)8.0重量部 式(5)のフェノール樹脂(軟化点67℃、水酸基当量203)6.0重量部 1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという) 0.2重量部 球状溶融シリカ 85.2重量部 グリセリントリモンタン酸エステル(脂肪酸の炭素数29) 0.3重量部 カーボンブラック 0.3重量部をミキサーを用いて混合した後、表面温度が95℃と25℃の2軸ロールを用いて20回混練し、得られた混練物シートを冷却後粉砕して、エポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物の特性を以下の方法で評価した。
【0017】評価方法スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
離型性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で144pQFP(20×20×1.7mm厚さ)を10回連続で成形した。この10回の成形で、離型時に金型に付着したり、硬化物に割れ・欠けが発生した回数が5回以上のものを×、1〜4回のものを△、発生なしのものを○と判定した。
連続成形性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で144pQFP(20×20×1.7mm厚さ)を連続で成形した。カル落ち、パッケージ欠け等の成形不良が発生した時の成形ショット数を示した。
耐半田クラック性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で144pQFP(20×20×1.7mm厚さ)を成形し、175℃、8時間で後硬化させ、85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後260℃の半田槽に10秒間浸漬した。その後超音波探傷装置で内部を透視し、[(剥離発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]]を求め、0%のものを○、20%未満のものを△、20%以上のものを×とした。n=10個。
【0018】実施例2〜5、比較例1〜7実施例1以外に用いた各成分は、以下の通りである。ビフェニル型エポキシ樹脂(融点105℃、エポキシ当量191)、フェノールノボラック樹脂(軟化点80℃、水酸基当量105)、グリセリントリセロチン酸エステル(炭素数26)、グリセリントリステアリン酸エステル(炭素数18)、グリセリントリ長鎖脂肪酸エステル(炭素数37以上)、グリセリンモノモンタン酸エステル(炭素数29)、グリセリンジモンタン酸エステル(炭素数29)。表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1、表2に示す。
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
【発明の効果】本発明のエポキシ樹脂組成物は、離型性、耐半田クラック性に優れた特性を有しており、これを用いて半導体素子を成形封止する時の離型性、連続成形性に優れ、かつ耐半田クラック性に優れた半導体装置を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
【出願日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−220434(P2002−220434A)
【公開日】 平成14年8月9日(2002.8.9)
【出願番号】 特願2001−18479(P2001−18479)