トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 スルホン酸基含有ポリオキサゾール及びそれを主成分とする膜
【発明者】 【氏名】北村 幸太

【氏名】田口 裕朗

【氏名】坂口 佳充

【氏名】中尾 淳子

【要約】 【課題】耐熱性のみならず、導電性及び加工性にも優れている高分子電解質となりうる高分子材料の提供。

【解決手段】分子中に少なくとも1個以上のスルホン酸基を含有し、0.05dl/gのメタンスルホン酸溶液の25℃における対数粘度が0.1dl/g以上であり、80℃、95%RHにおける10000Hzの交流インピーダンスを測定して求められる導電率が0.3[S/cm]以上であることを特徴とするスルホン酸基含有ポリオキサゾール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 分子中に少なくとも1個以上のスルホン酸基を含有し、0.05dl/gのメタンスルホン酸溶液の25℃における対数粘度が0.1dl/g以上であり、40℃でのジメチルスルホキシドへの溶解度が1重量%以上であり、且つ80℃、95%RHにおける10000Hzの交流インピーダンスを測定して求められる導電率が0.3[S/cm]以上であることを特徴とするスルホン酸基含有ポリオキサゾール。
【請求項2】 下記一般式(1)で示される構造であることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有ポリオキサゾール。
【化1】

[式(1)において、nは0.85以上1.00以下の数を、mは1〜4の整数を、B1は2価の芳香族基を、A1及びA2は下記一般式(2)又は(3);
【化2】

【化3】

で表される構造より選ばれる2価の基を、それぞれ表す。A1及びA2は同一であっても異なっていてもよい。スルホン酸基のうち、10モル%以下はアルカリ金属などの塩であってもよい。]
【請求項3】 請求項1又は2に記載のポリマーを主成分とすることを特徴とする成形体。
【請求項4】 請求項1又は2に記載のポリマーを主成分とすることを特徴とする膜。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子電解質膜として有用なスルホン酸基含有ポリオキサゾール系ポリマー及びそれを主成分とする膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液体電解質のかわりに高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を上げることができる。これらに用いられる高分子膜は、カチオン交換膜としてプロトン導電率と共に化学的、熱的、電気化学的及び力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとしては、主に米デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。しかしながら、100℃を越える条件で運転しようとすると、膜の含水率が急激に落ちるほか、膜の軟化も顕著となる。このため、将来が期待されるメタノールを燃料とする燃料電池においては、膜内のメタノール透過による性能低下が起こり、十分な性能を発揮することはできない。また、現在主に検討されている水素を燃料として80℃付近で運転する燃料電池においても、膜のコストが高すぎることが燃料電池技術の確立の障害として指摘されている。
【0003】このような欠点を克服するため、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した高分子電解質膜が種々検討されている。例えば、ポリアリールエーテルスルホンをスルホン化したもの(Journal of Membrane Science, 83, 211(1993))、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの(特開平6−93114号公報)、スルホン化ポリスチレン等である。しかしながら、ポリマーを原料として芳香環上に導入されたスルホン酸基は酸又は熱により脱スルホン酸反応が起こりやすく、燃料電池用電解質膜として使用するには耐久性が十分であるとは言えない。
【0004】ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリスチレン等に比べてさらに耐熱性を有するポリマーとして、ポリオキサゾールが挙げられる。
【0005】スルホン酸基含有のポリベンズオキサゾールについては、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールと3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸によるものが特開平10−158213号公報に、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールとテレフタル酸などからなるものをスルホン化したものが特開平4−353533号公報に、2,5−ジカルボキシスルホン酸と各種ジアミンジオールやジアミンジチオールからなるものが米国特許第5492996号公報に見られる。しかしながら、これらのいずれにおいてもスルホン酸基をプロトンイオンを伝導させる官能基として着目しているものはない。例えば、米国特許第5492996号公報においては、ポリマーのアルコール溶解性を引き出すためにスルホン酸基をアルキルアンモニウム化処理することが特徴となっているが、上述のメタノール燃料型燃料電池などへの応用でアルコール溶解性があることは致命的欠点であることからも明らかである。またこれらの例では、アルコール以外の有機溶媒への溶解性は部分的には示されているものの定量的に検討されてはいなかった。
【0006】このように耐熱性に優れる芳香族環含有ポリマーについて、プロトン伝導性と加工性の両方を改善することは、これまで検討されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、耐熱性だけでなく、イオン伝導性及び加工性にも特に優れている高分子電解質となりうる高分子材料を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、スルホン酸基を含有しながら、一定レベル以上のジメチルスルホキシドへの溶解性を有し、かつ一定レベル以上のイオン伝導性を有するポリオキサゾールにより、耐熱性のみならず、イオン伝導性及び加工性にも特に優れた高分子電解質を得るに至った。
【0009】すなわち本発明は、(1) 分子中に少なくとも1個以上のスルホン酸基を含有し、メタンスルホン酸を溶媒とした0.05g/dlについて25℃で測定される対数粘度が0.1dl/g以上であり、40℃でのジメチルスルホキシドへの溶解度が1重量%以上であり、80℃、95%RHにおける10000Hzの交流インピーダンスを測定して求められる導電率が0.3[S/cm]以上であることを特徴とするスルホン酸基含有ポリオキサゾール、(2) 下記一般式(1)で示される構造であることを特徴とする(1)に記載のスルホン酸基含有ポリオキサゾール、【0010】
【化4】

[式(1)において、nは0.85以上1.00以下の数を、mは1〜4の整数を、B1は2価の芳香族基を、A1及びA2は下記一般式(2)又は(3);
【0011】
【化5】

【0012】
【化6】

で表される構造より選ばれる2価の基を、それぞれ表す。A1及びA2は同一であっても異なっていてもよい。スルホン酸基のうち、10モル%以下はアルカリ金属などの塩であってもよい。]
(3) (1)又は(2)に記載のポリマーを主成分とすることを特徴とする成形体、(4) (1)又は(2)に記載のポリマーを主成分とすることを特徴とする膜、である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明する。
【0014】本発明でいうスルホン酸基含有ポリオキサゾールとは、一般的には下記一般式(4)のような繰り返し単位構造で示すことができる。
【0015】
【化7】

〔但し、一般式(4)において、Rはオキサゾール環を形成できる4価の芳香族基を示し、XはOを表す。R’は二価の芳香族基を示し、R’のすべて又は一部にスルホン酸基を有している。スルホン酸基の一部は塩を形成していてもよい。R、R’はいずれも単環であっても、複数の芳香環の結合体、あるいは縮合環であってもよく、スルホン酸基以外の安定な置換基を有していてもよい。また、R、R’の芳香環中にN,S,O等が存在するヘテロ環構造を有していてもかまわない。〕
【0016】また、一般式(4)と共に下記一般式(5)で示すような繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0017】
【化8】

(ここでXはOを表し、R”はオキサゾール環を形成できる三価の芳香族基を示す)
【0018】上記一般式(4)で示す本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールを合成する経路は特には限定されないが、通常は式中Rで示すオキサゾール環を形成できる4価の芳香族基単位を形成する芳香族ジアミンジオール、R’で示す二価基を形成するジカルボン酸及びその誘導体から選ばれる化合物の反応により合成することができる。その際、使用するジカルボン酸の中にスルホン酸基を含有するジカルボン酸を使用することで、得られるポリオキサゾール中にスルホン酸基を導入することができる。
【0019】芳香族ジアミンジオールの具体例としては、2,5−ジヒドロキシパラフェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシメタフェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジオール、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、等が挙げられるがこれらに限定されることはない。また、これらの化合物を同時に複数使用することもできる。中でも、2,5−ジヒドロキシパラフェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシメタフェニレンジアミンが好ましい。これらの芳香族ジアミンジオールは、必要に応じて塩酸、硫酸、リン酸などの酸との塩でもあってもよく、塩化すず(II)や亜リン酸化合物など公知の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0020】スルホン酸基含有ジカルボン酸は、芳香族系ジカルボン酸中に1個から4個のスルホン酸基を含有するものを選択することができる。スルホン酸基含有芳香族ジカルボン酸としては、例えば、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、4,6−ジカルボキシ−1,3−ジスルホン酸、などのスルホン酸基含有ジカルボン酸及びこれらの誘導体を挙げることができる。中でも2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸とその誘導体が好ましい。これらのスルホン酸基含有ジカルボン酸基のスルホン酸基は、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アンモニア、アミンなどと塩を形成していてもよい。これらのスルホン酸基含有ジカルボン酸は1種類だけでなく数種類を混合したり、スルホン酸基を含有しないジカルボン酸と共に共重合の形で導入することができる。
【0021】スルホン酸基を含有するジカルボン酸の純度は特に制限されるものではないが、98%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。スルホン酸基を含有するジカルボン酸を原料として重合されたポリオキサゾールは、スルホン酸基を含有しないジカルボン酸を用いた場合に比べて、重合度が低くなる傾向が見られるため、スルホン酸基を含有するジカルボン酸はできるだけ純度が高いものを用いることが好ましい。
【0022】上記スルホン酸基含有ジカルボン酸と共に使用できるジカルボン酸例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ターフェニルジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等ポリエステル原料として報告されている一般的なジカルボン酸及びその誘導体を使用することができ、ここで例示したものに限定されるものではない。中でもテレフタル酸が好ましい。スルホン酸基を含有しないジカルボン酸量は特に限定されるものではないが、ジメチルスルホキシドに対する溶解度及びイオン伝導性が本発明の範囲にあるためには、全ジカルボン酸に対して0〜15モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがさらに好ましい。
【0023】上記のスルホン酸基含有ジカルボン酸及びそれと共に使用するジカルボン酸の誘導体とは、酸クロライド、酸無水物、金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、エステル、アミドなどを挙げることができる。また、カルボキシル基の代わりにシアノ基やトリハロメチル基など同等の反応をすることができる基を有していてもよい。
【0024】上記一般式(5)で示すポリオキサゾール単位を導入する経路は特には限定されないが、通常は式中Rで示すオキサゾール環を形成できる三価の芳香族基単位を形成するオルト位の関係でアミノ基とヒドロキシル基を持つ芳香族カルボン酸及びそれらの誘導体の重合により得ることができる。
【0025】本発明におけるより好ましいスルホン酸基含有ポリオキサゾールは、一般式(1)で表すことができる。
【0026】
【化9】

[式(1)において、nは0.85以上1.00以下の数を、mは1〜4の整数を、B1は2価の芳香族基を、A1及びA2は下記一般式(2)又は(3);
【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

で表される構造より選ばれる2価の基を、それぞれ表す。A1及びA2は同一であっても異なっていてもよい。スルホン酸基のうち、10モル%以下はアルカリ金属などの塩であってもよい。]
【0029】一般式(1)において、nは0.90以上であることがより好ましく、nが1であることが最も好ましい。またmは1又は2であることが好ましい。スルホン酸基の一部は、ジメチルスルホキシドへの溶解性とイオン伝導性が本発明の範囲であれば一部がアルカリ金属などの塩であってもよい。一般式(1)における二価の芳香族基B1の例としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、ナフタレン基、ジフェニレンエーテル基、ジフェニレンスルホン基、ビフェニレン基、ターフェニル基、2,2−ビス(4−カルボキシフェニレン)ヘキサフルオロプロパン基などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。中でもp−フェニレン基が好ましい。またA1及びA2は同一であることが好ましく、一般式(2)で表される構造であることがさらに好ましい。
【0030】一般式(1)において2種類以上の繰り返し単位を有する場合には、それぞれの繰り返し単位が、ランダム、交互、ブロックのいずれの形式で結合していてもよい。イオン伝導性など高分子電解質としての性能をより発揮するためには、ランダムもしくは交互に結合していることが好ましい。
【0031】これらのスルホン酸基含有ポリオキサゾールを上記モノマー類から合成する手法は、特には限定されないが、J.F.Wolfe, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd Ed., Vol.11, P.601(1988)に記載されるようなポリリン酸を溶媒とする脱水、環化重合により合成することができる。また、ポリリン酸のかわりにメタンスルホン酸/五酸化リン混合溶媒系を用いた同様の機構による重合を適用することもできる。他に、適当な有機溶媒中や混合モノマー融体の反応でポリアミド構造などの前駆体ポリマーとしておき、その後の適当な熱処理などによる環化反応で目的のポリオキサゾール構造に変換する方法なども使用することができる。
【0032】ポリマー中に2種類以上の繰り返し単位を導入する目的で、複数のモノマーを用いる場合には、全てのモノマーを一度に反応させてランダムもしくは交互共重合体を得ることもできるし、一部のモノマーを先に反応させて、その後残りのモノマーを反応させてブロック共重合体を得ることもできる。また、予め重合しておいた組成の異なるポリマー同士を反応させてブロック共重合体を得ることもできる。
【0033】原料のスルホン酸基含有ジカルボン酸のスルホン酸基が塩を形成している場合、ポリマーのスルホン酸基も塩を形成している場合がある。必要に応じて、塩を形成しているスルホン酸基の一部又は全部を再沈や酸・塩基処理によって遊離のスルホン酸基にすることもできる。また、遊離のスルホン酸基の一部又は全部を動揺の処理で塩にすることもできる。本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールは、スルホン酸基の一部がアルカリ金属などと塩を形成していてもよい。
【0034】また、予め重合しておいたスルホン基を含有しないポリオキサゾールにスルホン酸基を導入してもよい。例えば、発煙硫酸、濃硫酸、無水硫酸及びその錯体、プロパンサルトンなどのスルトン類、α−ブロモトルエンスルホン酸などを用いることができる。例えば、高分子加工,49,146(2000)に記載されているようなN,N’−ジメチルアセトアミド中でポリベンズイミダゾールに1,3−プロパンサルトンを開環付加させることによるアルキルスルホン化や、特開平4−353553号公報に記載された、無水硫酸によるポリベンズオキサゾールのスルホン化などを挙げることができる。これらの化合物は、ポリオキサゾールに直接反応させてもよいし、ポリオキサゾールを適当な溶媒に溶解して反応させてもよい。
【0035】本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールは、0.05dl/gのメタンスルホン酸溶液の25℃における対数粘度が0.1dl/g以上であることが好ましい。より好ましいのは、0.5〜50dl/gの範囲である。0.1dl/gよりも小さいと、水への溶解など成形体から脱落してしまう恐れがある。50dl/gよりも大きいと、溶液の粘度が大きくなりすぎるなど、加工性に悪影響を及ぼす恐れがある。対数粘度の測定は後で述べる方法で行なうことができる。
【0036】本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールは、重合溶液又は単離したポリマーから押し出し、紡糸、圧延、キャストなど任意の方法で繊維やフィルムに成形したり、コーティング材料などに使用したりすることができる。成形する際には、適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。溶解する溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなど非プロトン極性溶媒や、ポリリン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの強酸を用いることができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。また、溶解性を向上させる手段として、臭化リチウム、塩化リチウム、塩化アルミニウムなどのルイス酸を有機溶媒に添加したものを溶媒としてもよい。溶液中のポリマー濃度は0.1〜30重量%の範囲であることが好ましい。低すぎると成形性が悪化し、高すぎると加工性が悪化する。好ましくは0.5〜5重量%である。
【0037】溶液から成形体を得る方法は公知の方法を用いることができる。例えば加熱、減圧乾燥、ポリマーを溶解する溶媒と混和できるポリマー非溶媒への浸漬などによって、溶媒を除去しスルホン酸基含有ポリオキサゾールの成形体を得ることができる。溶媒が有機溶媒の場合は、加熱又は減圧乾燥で溶媒を留去させることが好ましい。溶媒が強酸の場合には、水、メタノール、アセトンなどに浸漬することが好ましい。この際、必要に応じて他のポリマーと複合された形で繊維やフィルムに成形することもできる。溶解性挙動が類似するポリアゾール系ポリマーと組み合わせると、良好な成形をするのに都合がよい。
【0038】本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールを主成分とする膜を成形する好ましい方法は、溶液からのキャストである。キャストした溶液から前記のように溶媒を除去してスルホン酸基含有ポリオキサゾールの膜を得ることができる。溶媒の除去は乾燥によることが膜の均一性からは好ましい。また、ポリマーや溶媒の分解や変質をさけるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することが好ましい。キャストする基板には、ガラス板やテフロン板などを用いることができる。溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1000μmであることが好ましい。薄すぎると膜としての形態を保てなくなり、厚すぎると不均一な膜ができやすくなる。より好ましくは100〜500μmである。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどしてポリマーの凝固速度を調整することができる。
【0039】本発明の膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には200μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが最も好ましい。
【0040】本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールはイオン伝導性に優れているため、フィルム、膜状にして燃料電池などのイオン交換膜として使用するのに適している。さらに、本発明のポリマーを主成分にすることにより、本発明のイオン交換膜と電極との接合体を作製するときのバインダー樹脂として利用することもできる。
【0041】本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールは、耐熱性に優れるポリオキサゾールから構成されているため、耐熱性などの耐久安定性に優れている。構造により違いはあるものの、熱重量分析における熱減量温度はおおむね300℃以上を示す。
【0042】本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールは、40℃でのジメチルスルホキシドへの溶解度が1重量%以上であることを必須要件の一つとしている。1重量%以下では所望の厚みの成形体を得るために多量の溶液を要するため、均一性が損なわれやすい。40℃で1重量%以上の溶解度があると、40℃付近の比較的低温でゆっくりと乾燥することができ、均質性のある緻密な成形体を得ることができる。高温でしか溶解しない場合には、溶解中の分解などが起こる場合があり好ましくない。試験の具体的方法は後に述べる。
【0043】本発明のスルホン酸基含有ポリオキサゾールは、80℃、95%RHにおける10000Hzの交流インピーダンスを測定して求められる導電率が0.3[S/cm]以上であることを必須要件の一つとしている。測定の具体的方法は後に述べる。仮に、これまで述べてきたようなスルホン酸基を含むポリオキサゾール構造に含まれるものであっても、80℃、95%RHにおける10000Hzの交流インピーダンスを測定して求められる導電率が0.3[S/cm]未満しか示さないものでは、高温時における保水性が本発明のポリマーに比べて劣ることもあり、本発明の目的を達成することはできない。
【0044】
【実施例】以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
【0045】各種測定は次のように行った。
溶解度試験:50mlフラスコにジメチルスルホキシド10.00g及びポリマー0.10gを取り、40℃のオイルバス中で窒素雰囲気下3日間攪拌し、1G2のガラスフィルターで濾過した。目視によりフィルター上に残留物が認められなければ溶解度が1重量%以上であると判定した。
イオン伝導性測定:自作測定用プローブ(テフロン(登録商標)製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃95%RHの恒温・恒湿オーブン((株)ナガノ科学機械製作所、LH−20−01)中に試料を保持し、白金線間の10KHzにおける交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離と抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
ポリマー対数粘度:ポリマー濃度0.05g/dlのメタンスルホン酸溶液について、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
IR測定:分光器にBiorad社FTS−40、顕微鏡にBiorad社UMA−300Aを用いた顕微透過法により測定した。
【0046】(実施例1)200mlガラス製セパラブルフラスコに、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩(略号:DAR)8.135g(3.818×10-2mol)、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム(略号:STA)10.240g(3.818×10-2mol)、ポリリン酸(五酸化リン含量84%)32.874g、五酸化リン14.660gを秤量し、窒素気流下70℃で0.5時間、120℃で5時間、130℃で17時間、155℃で17時間、190℃で5時間の順に攪拌しながらオイルバス中で加熱すると、黒緑色で不透明の曳糸性のあるドープが得られた。ドープはイオン交換水中に投入し、pH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。ポリマーの対数粘度は、1.72dl/gを示した。ポリマーのIRスペクトルを図1に示す。ジメチルスルホキシドに対する溶解度試験でガラスフィルター上に不溶物は認められなかった。得られたポリマー0.155gを8mlのジメチルスルホキシドに室温で一晩攪拌して溶解した。溶液はガラス板上に約300μmの厚みに流延し、40℃で一晩、次いで80℃で2日間それぞれ減圧乾燥した。その後、ガラス板を水に浸漬してフィルムを剥離し、80℃で一晩減圧乾燥してイオン伝導性測定用フィルムを作製した。得られたフィルムは透明で厚みも均一で強度もあった。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.78S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0047】(実施例2)STA10.240gの代わりに、STA9.830g(3.665×10-2mol)及びテレフタル酸(略号TPA)0.254g(1.527×10-3mol)を用いた他は実施例1と同様にして深緑色の不透明な曳糸性のあるドープを得た。得られたポリマーの対数粘度は1.88dl/gだった。ジメチルスルホキシドに対する溶解度試験でガラスフィルター上に不溶物は認められなかった。得られたポリマーから実施例1と同様にイオン伝導性測定用フィルムを作製した。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.73S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0048】(実施例3)STA10.240gの代わりに、STA9.216g(3.436×10-2mol)及びTPA0.634g(3.818×10-3mol)を用いた他は実施例1と同様にして深緑色の不透明な曳糸性のあるドープを得た。得られたポリマーの対数粘度は1.58dl/gだった。ポリマーのIRスペクトルを図2に示す。ジメチルスルホキシドに対する溶解度試験でガラスフィルター上に不溶物は認められなかった。得られたポリマーから実施例1と同様にイオン伝導性測定用フィルムを作製した。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.70S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0049】(実施例4)STA10.240gの代わりに、STA8.908g(3.322×10-2mol)及びTPA0.825g(4.964×10-3mol)を用いた他は実施例1と同様にして深緑色の不透明な曳糸性のあるドープを得た。得られたポリマーの対数粘度は1.85dl/gだった。ジメチルスルホキシドに対する溶解度試験でガラスフィルター上に不溶物は認められなかった。得られたポリマーから実施例1と同様にイオン伝導性測定用フィルムを作製した。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.68S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0050】(実施例5)TPA0.254gの代わりに4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸0.468g(1.527×10-3mol)を用いた他は実施例2と同様にして褐色の不透明な曳糸性のあるドープを得た。得られたポリマーの対数粘度は1.63dl/gだった。ジメチルスルホキシドに対する溶解度試験でガラスフィルター上に不溶物は認められなかった。得られたポリマーから実施例1と同様にイオン伝導性測定用フィルムを作製した。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.67S/cmを示し、測定イオン伝導度は長期にわたり安定した性能を保った。
【0051】(比較例1)STA10.240gの代わりに、STA3.379g(1.260×10-2mol)及びTPA4.250g(2.558×10-2mol)を用いた他は実施例1と同様にして金色の不透明な曳糸性のあるドープを得た。得られたポリマーの対数粘度は5.72dl/gだった。ジメチルスルホキシドに対する溶解度試験でガラスフィルター上に不溶物が認められた。得られたポリマー0.155gを7.5gのメタンスルホン酸に室温で溶解した。溶液はガラス板上に約400μmの厚みに流延し、水中にガラス板を浸した。水を時々交換し、数日水浸漬を続けた。フィルムを取り出し、減圧乾燥機により80℃終夜乾燥して、イオン伝導性測定用フィルムを作製した。得られたフィルムは不透明で厚みむらがあった。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.052S/cmを示した。
【0052】(比較例2)3,3’,4,4‘−テトラアミノジフェニルスルホン2.000 g(7.186×10-3mol)、STA1.542g(5.749×10-3mol)、TPA0.239g(1.437×10-3mol)、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)25.08g、五酸化リン19.99gを重合容器に量り取った。窒素を流し、オイルバス上ゆっくり撹拌しながら100℃まで昇温した。100℃で1時間保持した後、150℃に昇温して1時間、200℃に昇温して4時間重合した。重合終了後放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いてpH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。ポリマーの対数粘度は、1.12を示した。ジメチルスルホキシドに対する溶解度試験でガラスフィルター上に不溶物は認められなかった。得られたポリマーから実施例1と同様にイオン伝導性測定用フィルムを作製した。80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.017S/cmを示した。
【0053】(比較例3)既存のイオン交換膜であるデュポン社製ナフィオン117について80℃95%RHにおけるイオン伝導度を測定したところ、0.17S/cmだった。
【0054】
【発明の効果】耐熱性のみならず、イオン伝導性及び加工性に優れた本発明のポリマーにより、燃料電池などの高分子電解質としても際立った性能を示す材料を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【出願日】 平成13年1月10日(2001.1.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−206026(P2002−206026A)
【公開日】 平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願番号】 特願2001−2662(P2001−2662)