トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 エポキシ樹脂組成物及び半導体装置
【発明者】 【氏名】八木 達也

【要約】 【課題】熱時強度に優れ、半導体素子、リードフレーム等の各種部材との接着性、基板実装時の耐半田性、特に半田処理温度が従来よりも高い場合の耐半田性に優れ、又Ni、Ni−Pd、Ni−Pd−Au等のプリプレーティングフレームとの密着性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供すること。

【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物及び/又は該有機化合物の加水分解物、(D)無機充填材、及び(E)硬化促進剤を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物及び/又は該有機化合物の加水分解物、(D)無機充填材、及び(E)硬化促進剤を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】 シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物が一般式(1)で示される化合物から選ばれる1種以上である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1炭素数1〜5のアルコキシ基、R2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基である。mは平均値で1〜3の正数、nは1〜10の整数である。)
【請求項3】 エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上である請求項1、又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】 エポキシ樹脂が、一般式(2)から選ばれる1種以上である請求項1、又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化2】

(式中、R3、R4は炭素数1〜6のアルキル基で、それらは同一もしくは異なっていても良い。nは0〜3の整数、mは0〜4の整数。pは平均値で1〜10の正数。)
【請求項5】 フェノール樹脂が、一般式(3)から選ばれる1種以上である請求項1、2、3、又は4記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化3】

(式中、R5、R6は炭素数1〜6のアルキル基で、それらは同一もしくは異なっていても良い。nは0〜3の整数、mは0〜4の整数。pは平均値で1〜10の正数。)
【請求項6】 シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物及び/又は該有機化合物の加水分解物が、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂の全部又は一部に予め加熱混合されている請求項1、2、3、4、又は5記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】 無機充填材が、シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物及び/又は該有機化合物の加水分解物で予め表面処理されたものである請求項1、2、3、4、5、又は6記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】 請求項1〜7記載のいずれかの半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐半田性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】IC、LSI等の半導体素子の封止方法としてエポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適しており、採用されて久しく、信頼性の点でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノール樹脂の改良により特性の向上が図られてきた。しかし、近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化も年々進み、又、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では解決できない問題点も出てきている。その最大の問題点は、表面実装の採用により半導体装置が半田浸漬、あるいはリフロー工程で急激に200℃以上の高温にさらされ、吸湿した水分が爆発的に気化する際の応力により、半導体装置にクラックが発生したり、半導体素子、リードフレーム、インナーリード上の各種メッキされた各接合部分とエポキシ樹脂組成物の硬化物の界面で剥離が生じ、信頼性が著しく低下する現象である。
【0003】半田処理による信頼性低下を改善するために、エポキシ樹脂組成物中の無機充填材の充填量を増加させることで低吸湿化、高強度化、低熱膨張化を達成し耐半田性を向上させるとともに、低溶融粘度の樹脂成分を使用して、成形時に低粘度で高流動性を維持させる手法が一般的となりつつある。一方、半田処理による信頼性において、エポキシ樹脂組成物の硬化物と半導体装置内部に存在する半導体素子やリードフレーム等の基材との界面の接着性は非常に重要になってきている。この界面の接着力が弱いと、半田処理後の基材との界面で剥離が生じ、更にはこの剥離に起因し半導体装置にクラックが発生する。
【0004】従来から耐半田性の向上を目的として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ―アミノプロピルトリエトキシシラン等のカップリング剤がエポキシ樹脂組成物中に添加されてきた。しかし近年、鉛フリー化による半田処理温度の上昇や、Ni、Ni−Pd、Ni−Pd−Au等のプリプレーティングフレームの出現等で、益々厳しくなっている耐半田性に対する要求に対して、これらのカップリング剤では充分に対応できなくなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、吸湿後の半田処理においても硬化物の半導体装置にクラックや基材との剥離が発生しない耐半田性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物及び/又は該有機化合物の加水分解物、(D)無機充填材、及び(E)硬化促進剤を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、[2]シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物が一般式(1)で示される化合物から選ばれる1種以上である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、【化4】

(式中、R1炭素数1〜5のアルコキシ基、R2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基である。mは平均値で1〜3の正数、nは1〜10の整数である。)
【0007】[3]エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上である第[1]、又は[2]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、[4]エポキシ樹脂が、一般式(2)から選ばれる1種以上である第[1]、[2]、又は[3]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、【化5】

(式中、R3、R4は炭素数1〜6のアルキル基で、それらは同一もしくは異なっていても良い。nは0〜3の整数、mは0〜4の整数。pは平均値で1〜10の正数。)
【0008】[5]フェノール樹脂が、一般式(3)から選ばれる1種以上である第[1]、[2]、[3]、又は[4]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、【化6】

(式中、R5、R6は炭素数1〜6のアルキル基で、それらは同一もしくは異なっていても良い。nは0〜3の整数、mは0〜4の整数。pは平均値で1〜10の正数。)
[6]シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物及び/又は該有機化合物の加水分解物が、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂の全部又は一部に予め加熱混合されている第[1]、[2]、[3]、[4]、又は[5]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、[7]無機充填材が、シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物及び/又は該有機化合物の加水分解物で予め表面処理されたものである第[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、又は[6]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、[8]第[1]〜[7]記載のいずれかの半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるエポキシ樹脂は、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。耐湿信頼性向上のために、本発明に使用されるエポキシ樹脂中に含まれる塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは、極力少ないことが望ましい。これらの内では、無機充填材の充填量を増加できる結晶性エポキシ樹脂、又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0010】結晶性エポキシ樹脂の内では、融点が150℃以下のものが好ましい。150℃を越えると、溶融混練時に十分に融解しないので均一分散できず、この溶融混合物を用いたエポキシ樹脂組成物の成形品は不均一となり、強度が各部分によって異なるために半導体装置の性能が低下する可能性がある。これらの条件を満たす結晶性エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0011】ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、一般式(4)で示されるものが挙げられる。
【化7】

(式中、R7は炭素数1〜6のアルキル基で、それらは同一もしくは異なっていてもよい。mは0〜4の整数)具体例としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルビフェニル、又は4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルビフェニル等(置換位置の異なる異性体を含む)のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0012】ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、一般式(5)で示されるものが挙げられる。
【化8】

具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−ターシャリブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、又はビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0013】スチルベン型エポキシ樹脂としては、例えば、一般式(6)で示されるものが挙げられる。
【化9】

(式中、R10は水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基で、それらは同一もしくは異なっていてもよい。R11は炭素数1〜6のアルキル基で、それらは同一もしくは異なっていてもよい。mは0〜4の整数)
具体例としては、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,3’−ジメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,6−ジメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン、又は4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルスチルベン等(置換位置の異なる異性体を含む)のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0014】これらの内では、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドのグリシジルエーテル化物(以上7種のエポキシ樹脂を、以下a群という)、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベンのグリシジルエーテル化物(以上3種のエポキシ樹脂を、以下b群という)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、又は4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベンのグリシジルエーテル化物(以上6種のエポキシ樹脂を、以下c群という)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0015】a群の内、ビフェニル型エポキシ樹脂では、低粘度化効果が大きく、且つ反応性に富む4,4’−ジヒドロキシビフェニルの骨格が含まれているものが特に好ましい。その他のa群では、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドのグリシジルエーテル化物が特に好ましい。又、スチルベン型エポキシ樹脂では、b群から選ばれる1種以上と、c群から選ばれる1種以上との混合物が、融点が低くなるため好ましい。これらの混合比、混合方法等は特に限定しない。例えば、スチルベン型エポキシ樹脂の原料であるスチルベン型フェノール類をグリシジルエーテル化する前に混合しておいたり、両方のスチルベン型エポキシ樹脂を溶融混合する方法等がある。
【0016】ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の内では、一般式(2)で示されるものが好ましい。一般式(2)のエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であり、エポキシ基間にビフェニレン骨格を有することを特徴とする。一般式(2)のエポキシ樹脂とフェノール樹脂とを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、架橋密度が低いため可撓性が高く、かつ疎水性の構造を多く含むことから吸湿率が低いため、エポキシ樹脂組成物の成形時の熱応力、あるいは成形品である半導体装置の吸湿後の半田処理における発生応力が低減されるので、耐半田性が向上する。一方、エポキシ基間の疎水性構造が剛直なビフェニレン骨格であることから、架橋密度が低い割には耐熱性の低下が少ないという特徴を有しているので、熱時強度の低下が少ない。一般式(2)のエポキシ樹脂の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化10】

【0017】本発明に用いられるフェノール樹脂としては、分子内にフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。耐湿信頼性向上のためには、フェノール樹脂中に含まれる塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは、極力少ないことが望ましい。
【0018】これらの内では、一般式(3)で示されるフェノール樹脂が好ましい。一般式(3)のフェノール樹脂は、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有するフェノール樹脂であり、フェノール性水酸基間にビフェニレン骨格を有することを特徴とする。エポキシ樹脂と一般式(3)のフェノール樹脂とを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、架橋密度が低いため可撓性が高く、かつ疎水性の構造を多く含むことから吸湿率が低いため、エポキシ樹脂組成物の成形時の熱応力、あるいは成形品である半導体装置の吸湿後の半田処理における発生応力が低減されるので、耐半田性が向上する。一方、フェノール性水酸基間の疎水性構造が剛直なビフェニレン骨格であることから、架橋密度が低い割には耐熱性の低下が少ないという特徴を有しているので、熱時強度の低下が少ない。一般式(3)で示されるフェノール樹脂の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化11】

全エポキシ樹脂のエポキシ基と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基との当量比としては、好ましくは0.5〜2.0、特に好ましくは0.7〜1.5である。0.5〜2.0の範囲を外れると、硬化性、耐湿信頼性等が低下する可能性がある。
【0019】本発明のシラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物と、シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物の加水分解物からなる群から選ばれる1種以上は、シランカップリング剤として用いられる。一般的にシランカップリング剤はシラノール基と有機官能基を同一分子内に有することを特徴とする化合物であるが、本発明のシラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物は、有機官能基としてイソシアネート基を有することを特徴とする。イソシアネート基はリードフレーム等の基材、特に銅リードフレームやNi、Ni−Pd、Ni−Pd−Au等のプリプレーティングフレーム等と反応し易いため、半導体装置内部の各種基材とエポキシ樹脂組成物の硬化物との密着性を向上させるので耐半田クラック性が改善される。従来からアミノ基を有する化合物を使用すると耐半田クラック性が向上することが知られているが、アミノ基は反応性が高いため、エポキシ樹脂組成物の保存性を低下させるという欠点があった。しかし本発明のシランカップリング剤では、各種基材との反応性がアミノ基と同等ながら、エポキシ樹脂組成物の保存性が損なわれないといった特徴を持つ。シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物としては、シラノール基の加水分解性や保存性の観点から、一般式(1)で示される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0020】本発明のシラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物の加水分解物は、予めアルコキシ基が加水分解されているため、容易に無機充填材や各種基材表面の水酸基と水素結合あるいは共有結合を形成し、耐半田性を向上させることが可能となる。加水分解の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、シラノール基とイソシアネート基を同一分子内に有する有機化合物と純水を混合し、混合物が2層に分離しなくなるまで十分攪拌混合する方法等が挙げられる。
【0021】本発明のシランカップリング剤は、他のシランカップリング剤と併用できる。併用できるシランカップリング剤としては、1分子中にアルコキシシリル基と、エポキシ基等の有機官能基を有するシラン化合物全般を指し、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のメタクリル基を有するシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。本発明のシランカップリング剤の配合量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜2重量%が好ましく、特に0.1〜0.4重量%が好ましい。
【0022】通常、カップリング剤はインテグラルブレンドによりエポキシ樹脂組成物中に混合されるが、本発明のシランカップリング剤は、予めエポキシ樹脂やフェノール樹脂の全部又は一部に加熱混合しても良い。本発明のシランカップリング剤は、半導体装置の内部に存在する各種基材とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面での親和性の向上や、化学結合の形成による界面の接着性の向上にも効果がある。この場合は、配合されたシランカップリング剤が、エポキシ樹脂組成物の成形時に各種基材との界面に効率的に移行しやすいことが必要になる。このために有効な手法が、本発明のシランカップリング剤を予め樹脂成分に加熱混合させる方法である。
【0023】又、本発明のシランカップリング剤は、無機充填材表面に存在することにより、無機充填材とエポキシ樹脂組成物中の有機成分を化学的に結合させ、界面の接着性の向上に有効であると考えられる。このように無機充填材と有機成分との界面の接着性を向上させるためには、本発明のシランカップリング剤が無機充填材表面に存在すること、より好ましくは吸着又は固定化していることが必要で、このため、本発明のシランカップリング剤で無機充填材表面を処理すると、界面の接着性が向上するので、熱時強度や耐半田性の向上に効果がある。無機充填材表面に本発明のシランカップリング剤を処理する方法としては、例えば、攪拌している無機充填材にシランカップリング剤、あるいはそのアルコール等の溶液を噴霧し、更に攪拌を行った後、室温に放置したり、あるいは加熱することにより表面処理無機充填材を得る方法等を挙げることができる。又、表面処理した無機充填材を用いる他に、本発明のシランカップリング剤をインテグラルブレンド又は樹脂成分と予め加熱混合する手法とを併用しても良い。
【0024】本発明に用いられる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。特に溶融球状シリカが好ましい。形状は限りなく真球状であることが好ましく、又、粒子の大きさの異なるものを混合することにより充填量を多くすることができる。無機充填材の含有量としては、全エポキシ樹脂組成物中に65〜94重量%が好ましく、より好ましくは75〜91重量%である。65重量%未満だと、無機充填材による補強効果が十分に発現せず、且つ吸湿要因である樹脂成分の配合量が多くなるので、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿量が増大してしまうため、半田処理時に半導体装置にクラックが発生しやすくなる可能性がある。94重量%を越えると、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、成形時に充填不良やチップシフト、パッドシフト、ワイヤースイープが発生しやすくなる可能性がある。
【0025】本発明に用いられる硬化促進剤としては、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応を促進するものであれば良く、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。
【0026】本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化剤、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分、及びその他の添加剤等をミキサーを用いて混合後、熱ロール、加熱ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形すればよい。特に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、半田処理温度が従来よりも高い場合や、Ni、Ni−Pd、Ni−Pd−Au等のプリプレーティングフレームを用いた半導体装置に適している。
【0027】以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1 式(7)のビフェニル型エポキシ樹脂を主成分とする樹脂(エポキシ当量190、融点105℃) 6.2重量部【化12】

【0028】
式(8)のフェノールアラルキル樹脂(水酸基当量174、軟化点75℃)
5.7重量部【化13】

【0029】
式(9)のシランカップリング剤(以下、シランカップリング剤Aという)
0.4重量部【化14】

【0030】
溶融球状シリカ 87.0重量部 1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという) 0.2重量部 カーボンブラック 0.2重量部 カルナバワックス 0.3重量部をミキサーを用いて常温で混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて混練し、冷却後粉砕して、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0031】評価方法スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
熱時強度:240℃での曲げ強さをJIS K 6911に準じて測定した。単位はN/mm2
耐半田性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、射出圧力7.4MPa、硬化時間120秒で100ピンTQFP(パッケージサイズは14×14mm、厚み1.4mm、シリコンチップサイズは8.0×8.0mm、リードフレームはNi−Pd−Au製)を成形し、175℃、8時間で後硬化させた。得られたパッケージを85℃、相対湿度85%の環境下で72時間又は168時間放置し、その後260℃の半田槽に10秒間浸漬した。顕微鏡で外部クラックを観察し、クラック発生率[(クラック発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を%で表示した。又、チップとエポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率[(剥離面積)/(チップ面積)×100]として、5個のパッケージの平均値を求め、%で表示した。
【0032】(実施例2〜9、比較例1〜3)表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。なお実施例1以外で用いたエポキシ樹脂、フェノール樹脂、加水分解物、加熱混合物、表面処理した無機充填材の詳細を以下に示す。
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量196、軟化点55℃)、・式(10)のスチルベン型エポキシ樹脂を主成分とする樹脂(エポキシ当量187、融点110℃)、【化15】

【0033】・式(11)のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量272、軟化点58℃)、【化16】

【0034】・式(12)のフェノールアラルキル樹脂(水酸基当量200、軟化点65℃)、【化17】

・フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、軟化点105℃)
【0035】・式(13)のシランカップリング剤(以下、シランカップリング剤Bという)
【化18】

【0036】[加水分解物の製造例]シランカップリング剤Aと純水を重量比80:20で混合し、この混合物が2層に分離しなくなるまで十分攪拌混合し、加水分解物Aを得た。
【0037】[加熱混合物の製造例]
(溶融混合物A)式(7)のビフェニル型エポキシ樹脂を主成分とする樹脂6.2重量部と式(8)のフェノールアラルキル樹脂5.7重量部を110℃で完全に溶融混合させた後、シランカップリング剤Aを0.4重量部加えて溶融混合物Aを得た。
(溶融混合物B)式(8)のフェノールアラルキル樹脂5.7重量部を110℃で完全に溶融させた後、シランカップリング剤Bを0.2重量部加えて溶融混合物Bを得た。
【0038】[表面処理した無機充填材の製造例]
(処理シリカA)溶融球状シリカ87重量部をミキサーで攪拌しながら、シランカップリング剤Aを0.4重量部滴下し加えた。そのまま攪拌を15分間継続したのち、室温で8時間放置し、処理シリカAを得た。
(処理シリカB)溶融球状シリカ87重量部をミキサーで攪拌しながら、シランカップリング剤Bを0.2重量部滴下し加えた。そのまま攪拌を15分間継続したのち、70℃で2時間加熱し、処理シリカBを得た。
【表1】

【0039】
【発明の効果】本発明に従うと、熱時強度に優れ、半導体素子、リードフレーム等の各種部材との接着性、基板実装時の耐半田性、特に半田処理温度が従来よりも高い場合の耐半田性に優れ、又Ni、Ni−Pd、Ni−Pd−Au等のプリプレーティングフレームとの密着性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置が得られる。
【出願人】 【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
【出願日】 平成13年1月11日(2001.1.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−206021(P2002−206021A)
【公開日】 平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願番号】 特願2001−3184(P2001−3184)