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【発明の名称】 水溶性熱硬化樹脂および該樹脂を有効成分とする湿潤紙力増強剤
【発明者】 【氏名】山本 敏

【氏名】吉田 義史

【氏名】車谷 昌彦

【氏名】浅野 哲

【要約】 【課題】高い湿潤紙力を与え、優れた保存安定性を有する水溶性熱硬化樹脂を提供する。

【解決手段】水溶性熱硬化樹脂における分子量10,000以下の成分の含有量が20重量%以下であることを特徴とする水溶性熱硬化樹脂。該水溶性熱硬化樹脂は、ポリアミドポリアミンに、水溶液中でエピハロヒドリンを反応せしめてなるポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂であることが好ましく、また、粗水溶液を半透膜で膜分離せしめてなるものが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】水溶性熱硬化樹脂における分子量10,000以下の成分の含有量が20重量%以下であることを特徴とする水溶性熱硬化樹脂。
【請求項2】水溶性熱硬化樹脂がポリアミドポリアミンに、水溶液中でエピハロヒドリンを反応せしめてなるポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性熱硬化樹脂。
【請求項3】水溶性熱硬化樹脂における分子量10,000以下の成分を20重量%よりも多く含有する水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液を、分画分子量2,000〜100,000を有する限外濾過膜、ナノ濾過膜および逆浸透膜から選ばれる少なくとも1種類の半透膜で膜分離せしめてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性熱硬化樹脂。
【請求項4】水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液が、半透膜で膜分離された透過液に含有される低分子量成分を再重合して得られる粗水溶液であることを特徴とする請求項3に記載の水溶性熱硬化樹脂。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性熱硬化樹脂において、該樹脂の水溶液の固形分濃度が10〜40重量%であることを特徴とする水溶性熱硬化樹脂の水溶液。
【請求項6】請求項1〜4いずれかに記載の水溶性熱硬化樹脂を有効成分とする湿潤紙力増強剤。
【請求項7】請求項6に記載の湿潤紙力増強剤を含有することを特徴とする紙。
【請求項8】請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性熱硬化樹脂を使用することを特徴とする紙の湿潤紙力の増強方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂などの水溶性熱硬化樹脂および該樹脂を有効成分とする湿潤紙力増強剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、湿潤した紙の強度を増強せしめる薬剤、すなわち湿潤紙力増強剤として、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂などの水溶性熱硬化樹脂が用いられることは、例えば、特公昭 58-53653 号公報、特開平 2-170825 号公報、特開平 9-278880 号公報などに報告されている。最近、紙の品質のさらなる向上が図られていることから、より一層の湿潤紙力を与える湿潤紙力増強剤が求められている。
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者らは、水溶性熱硬化樹脂を高分子量化せしめることにより、湿潤紙力を増強することを試みたところ、該樹脂の水溶液を高い固形分濃度において保存するとゲル化してしまう、すなわち保存安定性が低いという問題点があることが明らかになった。本発明の目的は、高い湿潤紙力を与え、優れた保存安定性を有する水溶性熱硬化樹脂を提供することである。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課題を解決するために水溶性熱硬化樹脂の分子量分布について鋭意検討したところ、水溶性熱硬化樹脂における低分子量成分を特定量以下含有する水溶性熱硬化樹脂が保存安定性に優れると共に、優れた湿潤紙力を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0004】すなわち、本発明は、水溶性熱硬化樹脂における分子量10,000以下の成分の含有量が20重量%以下であることを特徴とする水溶性熱硬化樹脂である。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明における水溶性熱硬化樹脂としては、例えば、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂などが挙げられる。本発明における水溶性熱硬化樹脂としてポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂を具体例として、以下に説明する。ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の製造方法としては、例えば、特公昭 58-53653 号公報、特開平2-170825号公報、特開平9-278880号公報などに記載のように、ポリアミドポリアミンに、エピハロヒドリンと反応せしめることによりポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液を得る方法などが挙げられる。
【0006】ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂に使用されるポリアミドポリアミンとしては、例えば、ジカルボン酸類およびポリアルキレンポリアミン類の縮合物などが挙げられる。ここで、ジカルボン酸類としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;マロン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル等のジカルボン酸エステル;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等のジカルボン酸無水物;アジピン酸クロライドなどのジカルボン酸ハロゲン化物などが挙げられる。ジカルボン酸類として、異なる2種類以上のジカルボン酸類を混合して使用しても良い。ジカルボン酸類の中でも、炭素数3〜10程度の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、とりわけアジピン酸が好適である。
【0007】ポリアルキレンポリアミン類としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、3−アザヘキサン−1,6−ジアミン、4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が挙げられる。ポリアルキレンポリアミン類として、異なる2種類以上のポリアルキレンポリアミン類を混合して使用しても良い。ポリアルキレンポリアミン類の中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンが好適である。
【0008】ポリアミドポリアミンを与える重縮合反応において、ジカルボン酸類の使用量は、通常、ポリアルキレンポリアミン類の1級アミノ基(末端アミノ基)1当量に対してジカルボン酸類0.9〜1.4当量程度、好ましくは0.9〜1.2当量程度である。また、該重縮合反応においてアミノカルボン酸類、ジアミン類、α,β−不飽和カルボン酸類などを併用しても良い。アミノカルボン酸類としては、例えば、グリシン、アラニン、アミノカプロン酸等のアミノカルボン酸、そのエステル、その酸ハロゲン化物、カプロラクタム等のラクタム類が挙げられる。ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、そのエステル及びその酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0009】ポリアミドポリアミンは、例えば、ジカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類とを、常圧下または減圧下、約50〜250℃程度にて、水などを除去しながら重縮合反応せしめる方法などが挙げられる。該重縮合反応は、該反応溶液を25℃、固形分濃度50重量%の水溶液に希釈して測定した粘度が、約100 mPas以上程度、好ましくは約400 mPas〜1000 mPas程度に達するまで実施される。
【0010】重縮合反応において、鉱酸およびスルホン酸類を触媒として用いることもできる。鉱酸の例としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられ、スルホン酸類の例としては、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等があげられる。中でも硫酸またはスルホン酸類が好ましい。触媒を用いる場合、その使用量としては、ポリアルキレンポリアミン1当量に対して、通常、0.005〜0.1当量程度、好ましくは0.01〜0.05当量である。
【0011】重縮合反応終了後、得られたポリアミドポリアミンは、通常、水で希釈したのち、水溶液として取り出すことができる。この水溶液に、エピハロヒドリンを反応せしめることによりポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液を得ることができる。ここで、エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロルヒドリンやエピブロムヒドリンなどが挙げられるが、中でもエピクロルヒドリンが好適である。エピハロヒドリンの使用量は、ポリアミドポリアミン中の第2級アミノ基(分子内アミノ基)1当量に対し、通常、約0.85〜1.4当量程度、好ましくは0.95〜1.3当量程度である。エピハロヒドリンが0.85当量に達しないと、陽イオン性熱硬化樹脂の湿潤紙力が低下する傾向にあり好ましくなく、1.4当量を超えると、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液における低分子有機ハロゲン化合物の含有量が増加する傾向にあり好ましくない。
【0012】ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応は、通常、水溶液中で実施される。該水溶液に占めるポリアミドポリアミンの固形分濃度、エピハロヒドリンの重量、および該反応生成物の固形分濃度の合計量(重量%、以下反応濃度という)としては、通常、20〜70重量%程度、好ましくは30〜60重量%程度である。該反応を20重量%よりも低い反応濃度で該反応を実施せしめると該反応速度が低下する傾向にあり好ましくなく、70重量%よりも高い反応濃度で実施せしめると反応速度が早くなる傾向にあり、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液がゲル化する傾向にあることから好ましくない。
【0013】ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応が、エピハロヒドリン消費量の70〜95%程度に達した段階で、反応濃度の重量%表示で5ポイント程度以上低く、ただし、その濃度が20重量%程度以上となるように水で希釈することが推奨される。例えば、反応濃度が30重量%で実施した場合には、20〜25重量%となるように、また例えば、反応濃度が70重量%で実施した場合には、20〜65重量%程度となるように希釈される。
【0014】ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応は、通常、10〜80℃程度の反応温度である。中でも、ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応が、エピハロヒドリン消費量の70〜95%程度に達するまでは、10〜55℃程度、とりわけ好ましくは10〜45℃程度で保温し、その後に、25〜70℃程度にて保温することが好ましい。
【0015】ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応は、得られたポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の固形分濃度25重量%にて測定した粘度が、50〜300mPas程度,好ましくは70〜250mPas程度に達するまで反応させる。この粘度が50mPasに達しないと、湿潤紙力が低下する傾向にあり好ましくなく、300mPasを超えると、該樹脂を使用して抄紙する際に発泡性が増加する傾向にあるため好ましくない。ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応が、上記の所望の粘度に達したのち、酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸などを加えて、pHを2〜5程度、好ましくは、2.5〜3.5程度に調整することにより、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液を得ることができる。
【0016】また、ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応の前、途中、あるいは終了後に、特表平11−504966号公報又は特願2000−272874号に準じてアルキル化剤を反応せしめても良い。具体的には、ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応終了後にアルキル化剤を反応せしめる方法について例示すると、粘度が50〜300mPas程度に達したポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応終了後の水溶液に、ハロゲン化炭化水素類、ハロゲン化酢酸エステル類、クロルヒドリン類、ハロゲンを含有しないエポキシ化合物、ならびに、硫酸ジメチルや硫酸ジエチルなどのアルキル硫酸エステル類などのアルキル化剤をポリアミドポリアミンの2級アミノ基(分子内アミノ基)1当量に対して0.1〜1.0当量程度反応せしめる方法などが挙げられる。
【0017】かくして得られたポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂などの水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液は、通常、重量平均分子量が100,000〜2,000,000程度、数平均分子量5,000〜50,000程度の水溶性熱硬化樹脂である。そして、該樹脂は分子量10,000以下の成分を、通常、20重量%より多く含有する。本発明における水溶性熱硬化樹脂の分子量10,000以下の成分であって、その含有量が20重量%以下である場合、該樹脂の粗水溶液をそのまま湿潤紙力増強剤として使用しても良い。また、水溶性熱硬化樹脂の分子量10,000以下の成分であって、その含有量が20重量%よりも多い場合、本発明の水溶性熱硬化樹脂を得る方法として、例えば、透析および浸透現象を利用した半透膜による膜分離する方法などが挙げられる。
【0018】ここで、透析現象を利用した膜分離としては、例えば、半透膜として透析膜を使用し、その膜の両側の濃度差を推進力として低分子量成分を分離する透析法や、半透膜としてイオン交換膜を使用し、その膜の両側に電位差を印加してイオン交換膜の両側の濃度差を生じせしめ、低分子量成分を分離する電気透析法などが挙げられる。透析法としては、例えば、水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の透析膜を介して反対側に水などを存在させて低分子量成分を水側に透析せしめる方法、水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液に水を加えて透析膜を経て低分子量成分を排出せしめる方法などが挙げられる。
【0019】浸透現象を利用した膜分離としては、例えば、半透膜としてナノ濾過膜、逆浸透膜、限外濾過膜などを使用し、その膜の片側に加圧して低分子量成分を分離する逆浸透法や限外濾過法などが挙げられる。また、逆浸透法としては、例えば、約5MPa 以下で加圧下し、低分子量成分を分離せしめる方法などが挙げられ、中でも0.1〜3MPa程度に加圧して実施する方法が好適である。この際、水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の固形分濃度は、通常、1〜50%程度である。また、低分子量成分とともに、半透膜から水を排出して水溶液の固形分濃度を上昇せしめてもよい。
【0020】水溶性熱硬化樹脂粗水溶液の膜分離の際に、水を添加しても良く、とりわけ、水を連続的に添加して膜分離する方法が好適である。ここで添加する水の量としては、通常、水溶性熱硬化樹脂粗水溶液の合計重量の約10倍以下程度、好ましくは5倍以下程度が好適である。添加する水の量が10倍を超えると膜分離の所要時間が長くなる傾向があり好ましくない。また、水を連続的に添加して膜分離する方法において、水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の固形分濃度を、通常、約5〜50重量%程度、とりわけ、約10〜30重量%程度になるように水の添加速度を調整することが好ましい。該固形分濃度が50重量%を上回ると、水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の粘度が高くなって分離速度が低下する傾向があるので好ましくない。また、該固形分濃度が5重量%を下回っても、分離速度が遅くなる傾向があり好ましくない。
【0021】膜分離に使用される半透膜は、通常、天然、合成、半合成などの高分子材料等が使用され、具体的には、セルロース、アセチル化セルロース、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミドなどが例示される。中でも、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミドなどが好ましい。半透膜の構造としては、例えば、非対称形・多孔質相転換膜、非対称相転換膜、複合膜、延伸膜などが挙げられる。
【0022】半透膜の分画分子量としては、具体的には処理される水溶性熱硬化樹脂の種類や分子量などに応じて異なるが、通常、2,000〜100,000 程度であり、中でも3,000〜50,000 程度が好ましく、とりわけ5,000〜20,000 程度が好適である。半透膜の分画分子量が2,000未満の場合には、低分子量成分の除去に要する時間が増加する傾向にあることから好ましくなく、半透膜の分画分子量が100,000を超える場合には、水溶性熱硬化樹脂の収率が低下する傾向にあり好ましくない。
【0023】膜分離は、通常、10〜70℃程度、好ましくは20〜60℃の温度で実施される。膜分離の温度が10℃よりも低いと、分離速度が遅くなる傾向があり、好ましくなく、温度が70℃を超えると、樹脂溶液がゲル化する傾向や、得られる湿潤紙力増強剤の湿潤紙力性能が低下する傾向があるので好ましくない。膜分離装置の形状は、特に制限されるものでなく、公知の各種膜分離装置を使用することができる。
【0024】膜分離して得られた透過液は、低分子量の水溶性熱硬化樹脂を含有していることから、該透過液を水溶性熱硬化樹脂の反応液に添加、反応せしめてなる水溶性熱硬化樹脂を粗水溶液としても良い。具体的には、水溶性熱硬化樹脂がポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂である場合には、膜分離して得られた透過液をポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応液および/またはアルキル化剤との反応液に添加し、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂と反応せしめてなるポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液などが例示される。また、再重合せしめる透過液は、蒸発濃縮、膜分離による濃縮などの方法により濃縮せしめてなる透過液が好適である。
【0025】ここで膜分離による濃縮についてさらに説明すると、膜分離に用いられる半透膜として、分画分子量が100〜10,000程度、好ましくは100〜5,000程度、とりわけ好ましくは150〜1,000程度の半透膜を使用する以外は、前記のポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂の粗水溶液を膜分離する方法と同様な方法により、水やエピハロヒドリンの加水分解物などを膜分離して濃縮する方法である。
【0026】かくして得られた水溶性熱硬化樹脂の水溶液は、通常、5〜50重量%程度の固形分濃度であり、必要に応じて、希釈又は蒸発濃縮する。蒸発濃縮は、常圧下あるいは減圧下でも行うことができるが、好ましくは、約1〜50kPa程度の減圧下、20〜70℃程度で実施する。さらに、水溶性熱硬化樹脂の水溶液は、必要により、酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸などを加えてpH2〜5程度、好ましく、pH2.5〜3.5程度に調整される。
【0027】本発明の水溶性熱硬化樹脂における低分子量成分の含有量(重量%)の測定方法は、水溶性熱硬化樹脂の水溶液を分画分子量10,000のポリエーテルスルホン製の限外濾過膜で分離し、次に、RI検出器を備えた液体クロマトグラフを使用して分離前の水溶液のピーク面積(a)と分離後の透過液のピーク面積(b)をそれぞれ測定し、(b/a×100、[%])で表わされる値を該樹脂における分子量10,000以下の成分含有量(重量%)とする方法である。また、低分子量成分の含有量を測定する簡便法としては、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)を用いる面積百分率法などが挙げられる。簡便法を使用する場合には、前記の膜分離による分子量10,000以下の成分の含量の測定方法の結果に基づいて、検量線を作成したのち求める。GPCを使用した簡便法について具体的に説明すると、分子量10,000以下の成分含有量の異なる複数のサンプルについて、前記の膜分離の方法により分子量10,000以下の成分含有量(重量%)を求める。次に、同じサンプルについてGPCで測定し、分子量10,000以下の成分の面積百分率(%)を求め、この結果と、膜分離の方法により分子量10,000以下の成分含有量の結果から検量線を作成する。以後は、GPCにより分子量10,000以下の成分の面積百分率と検量線から分子量10,000以下の成分含有量を求めることができる。
【0028】上記の測定方法により、分子量10,000以下の成分含有量が20重量%以下である水溶性熱硬化樹脂が、本発明の水溶性熱硬化樹脂である。本発明の水溶性熱硬化樹脂の水溶液は、湿潤紙力増強剤、製紙工程中に添加される填料の歩留向上剤、製紙速度を向上させるために使用される濾水性向上剤、あるいは工場排液などの汚水中に含まれる微粒子を除去するための沈殿凝集剤としても使用することができる。中でも、湿潤紙力増強剤として使用することが好適である。
【0029】本発明の湿潤紙力増強剤を含有せしめることにより、湿潤紙力に著しく優れた紙を得ることができる。紙に湿潤紙力増強剤を含有せしめる方法としては、例えば、該剤をパルプスラリーに添加する方法、抄紙された紙にサイズプレス、ゲートロールコーター等を用いて該剤を含浸加工する方法などが挙げられ、中でも該剤をパルプスラリーに添加する方法が好適である。
【0030】本発明の紙は、硫酸アルミニウムを用いる酸性系、または、硫酸アルミニウムを用いない中性系のいずれのパイプスラリーを用いても良い。また、パルプスラリーに対して、強化・非強化ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルもしくはアルキルコハク酸無水物などのサイズ剤などを添加しても良い。サイズ剤の添加方法としては、例えば、パルプスラリーにサイズ剤を添加した後、湿潤紙力増強剤を添加する方法、湿潤紙力増強剤を添加した後、サイズ剤を添加する方法、サイズ剤に湿潤紙力増強剤を希釈して添加する方法などが挙げられる。さらに、パルプスラリーにクレー、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン等の充填剤;サイズ定着剤;乾燥紙力増強剤;消泡剤;pH調整剤;染料;蛍光増白剤等を適宜含有せしめてもよい。また、製造される紙は、通常、坪量を10〜400g/m3程度である。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中の部および%は、特に断らないかぎり重量基準を意味する。なお、pHおよび粘度は、いずれも25℃で測定した値である。また、粘度はブルックフィールド粘度計により測定した値である。
【0032】(水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の製造例)温度計、リービッヒ冷却器および攪拌棒を備えたフラスコに、ジエチレントリアミン103部(2級アミノ基として3.33当量)、水10部、アジピン酸138.7部(3.17当量)および98%硫酸2部を仕込み、水を留出させながら昇温し、155〜160℃に保温しながら15時間攪拌した。次に水210部を徐々に加えて、固形分濃度50.7%、粘度680mPa・sのポリアミドポリアミンの水溶液を得た。別のフラスコに、ポリアミドポリアミンの水溶液を129部(2級アミノ基として1.0当量)および水53.3部を仕込み、反応液を25〜35℃に保温しながら、エピクロロヒドリン33.3部(1.2当量)を4時間かけて滴下し、さらに同温度を維持しながら4時間攪拌した。次に、上記の反応液に水60.8部を添加して、反応濃度35%に希釈したのち、40℃まで昇温させ、40〜60℃でさらに7時間反応させた。その後硫酸にてpH3.4に調整し、さらに水を加えて濃度15%に希釈したところ、粘度38mPasの粗水溶液が得られた。得られた粗水溶液に含まれる水溶性熱硬化樹脂の重量平均分子量は約340,000であった。
【0033】(実施例1)(水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の製造例)で得られた粗水溶液2,000部を、ポリエーテルスルホン製、分画分子量10,000の限外濾過膜を用いて、1MPaの加圧下、室温にて透過液の排出速度と同じ速度で水を加えながら、1200部の透過液が排出するように処理した後、上記と同様の膜を用いて、1MPaの加圧下室温で、930部の透過液を透過せしめた。その後、硫酸にてpH3.0に調整し、さらに水を加えて濃度25%に調整したところ、粘度134mPasの水溶液が得られた。この水溶液をpH3.0のリン酸緩衝液で希釈し、分画分子量10,000のポリエーテルスルホン製フィルター(ミリポア社製UFV4BGC25)を用いて、6000rpmで10分間遠心分離器で膜分離した。分離前の水溶液のピーク面積(a)と分離後の透過液のピーク面積(b)を液体クロマトグラフで測定し、分子量10,000以下の成分の含量(b/a×100)を求めたところ18.7%であった。得られた水溶液を50℃で28日間保存しても、ゲル化は認められなかった。
【0034】(液体クロマトグラフの分析条件)
溶離液:pH 3.0のリン酸緩衝溶液溶離液流量:1.0ml/minカラム:TSKgel(TOSOH製) G6000PWXL+ G3000PWXL+ G2500PWXL検出器:RI検出器【0035】(実施例2)(水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の製造例)で得られた粗水溶液2,000部を、ポリエーテルスルホン製、分画分子量10,000の限外濾過膜を用いて、1MPaの加圧下室温で、透過液の排出速度と同じ速度で水を加えながら、4,000部の透過液が排出するように処理したしたところ、固形分濃度11.4%の水溶性熱硬化樹脂水溶液が得られた。実施例1と同様に分子量10,000以下の成分の含量を求めたところ12.5%であった。得られた水溶液を2〜4kPaの減圧下、30〜40℃で蒸発濃縮した後、硫酸にてpH3.0に調整し、固形分濃度24.9%の水溶液を得た。この樹脂水溶液を50℃で保存したところ、28日経過してもゲル化は認められなかった。
【0036】(実施例3)実施例1と同様にして得られた透過液を、DK膜(Desal社製合成複合膜:分画分子量150〜300)を用いて2.5MPaの加圧下、室温にて濃縮し、固形分濃度30.5%の濃縮透過液を得た。この濃縮透過液169部と、(水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の製造例)と同様にして得られたポリアミドポリアミンの水溶液129部(2級アミノ基として1.0当量)をフラスコに仕込み、水酸化ナトリウムを用いて系内のpHを約9二調整した後、反応液を25〜35℃に保温しながら、エピクロロヒドリン33.3部(1.2当量)を4時間かけて滴下し、さらに同温度を維持しながら5時間攪拌した。次に、上記の反応液に水を添加して、反応濃度35%に希釈したのち、40℃まで昇温させ、40〜60℃でさらに5時間反応させた。その後硫酸にてpH3.4に調整し、さらに水を加えて濃度15%に希釈したところ、粘度43mPasの粗水溶液が得られた。得られた粗水溶液に含まれる水溶性熱硬化樹脂の重量平均分子量は約350,000であった。
【0037】この粗樹脂水溶液2000部を実施例1と同様の限外濾過膜を用いて、1MPaの加圧下、40〜50℃にて透過液の排出速度と同じ速度で水を加えながら、1200部の透過液が排出するように処理した後、上記と同様の膜を用いて、1MPaの加圧下40〜50℃で、950部の透過液を透過せしめた。その後、硫酸にてpH3.0に調整し、さらに水を加えて濃度25%に調整したところ、粘度138mPasの水溶液が得られた。実施例1と同様にこの水溶液における分子量10,000以下の成分の含量を求めたところ19.0%であった。得られた水溶液を50℃で28日間保存しても、ゲル化は認められなかった。
【0038】(比較例1)(水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液の製造例)で得られた粗水溶液の分子量10,000以下の成分の含量を実施例1と同様にして求めたところ25.7%であった。この水溶液を25%、50℃で保存したところ3日後にはゲル化(白濁)した。
【0039】(紙の製造例:実施例1および2、ならびに、比較例1および2)実施例1および2は、得られた水溶性熱硬化樹脂の水溶液をそのまま湿潤紙力増強剤として用い、TAPPI式標準抄紙法により、抄紙条件1で抄紙した。比較例1については、水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液を湿潤紙力増強剤として使用し、抄紙条件1で抄紙し、比較例2には湿潤紙力増強剤を使用することなく抄紙条件1で抄紙した。得られた紙の湿潤引張強さをは、いずれもJIS P 8135に準じて測定し、湿潤裂断長としてその結果を表1に示した。
【0040】<抄紙条件1>使用パルプ : N-BKP/L-BKP=1/1叩解度 : 400cc樹脂添加量 : 0.3%(固形分、対乾燥パルプ)
乾燥条件 : 110℃、4分間抄紙平均米坪量: 60g/m2【0041】
【表1】
分子量10,000以下の ケ゛ル化までの 湿潤裂断長 成分の含量(%) 所要時間*1 (Km) 実施例1 18.7 >28 1.41 実施例2 12.5 >28 1.48 比較例1 25.7 < 3 1.31 比較例2*2 (樹脂なし) 0.07 *1:水溶性熱硬化樹脂水溶液を約25%、50℃にて保温した場合の、ゲル化 に至るまでの所要時間(日)
*2:水溶性熱硬化樹脂水溶液を使用することなく抄紙した。
【0042】(紙の製造例:実施例3、ならびに、比較例1および2)実施例3は、得られた水溶性熱硬化樹脂の水溶液をそのまま湿潤紙力増強剤として用い、TAPPI式標準抄紙法により、抄紙条件2で抄紙した。比較例1については、水溶性熱硬化樹脂の粗水溶液を湿潤紙力増強剤として使用し、抄紙条件2で抄紙し、比較例2には湿潤紙力増強剤を使用することなく抄紙条件2で抄紙した。得られた紙の湿潤引張強さをは、いずれもJIS P 8135に準じて測定し、湿潤裂断長としてその結果を表2に示した。
(紙の製造例2)
抄紙条件使用パルプ : N-BKP/L-BKP=1/1叩解度 : 465cc樹脂添加量 : 0.6%(固形分、対乾燥パルプ)
乾燥条件 : 110℃、4分間抄紙平均米坪量: 58g/m2【表2】
分子量10,000以下の ケ゛ル化までの 湿潤裂断長 成分の含量(%) 所要時間*1 (Km) 実施例3 19.0 >28 1.61 比較例1 25.7 < 3 1.49 比較例2*2 (樹脂なし) 0.11 *1:水溶性熱硬化樹脂水溶液を約25%、50℃にて保温した場合の、ゲル化 に至るまでの所要時間(日)
*2:水溶性熱硬化樹脂水溶液を使用することなく抄紙した。
【0043】
【発明の効果】本発明の水溶性熱硬化樹脂は、優れた湿潤紙力を与える湿潤紙力増強剤として使用し得る。また、該樹脂の水溶液は保存安定性に優れ、とりわけ高い固形分濃度においても優れた保存安定性を有する。さらに、本発明の湿潤紙力増強剤を含有する紙は、例えばジアゾ感光紙等の印刷・情報用紙類、クラフト紙、片艶クラフト紙等の包装用紙類、ティッシュペーパー、タオル用紙等の衛生用紙類、化粧板原紙、壁紙原紙、食品容器原紙、積層板原紙等の加工原紙類、濾紙等の工業用雑種紙類、ティーバッグ等の家庭用雑種紙類、ライナー、中しん原紙等の段ボール原紙類、石膏ボード原紙等の建材原紙類、紙管原紙、新聞巻取り紙類、塗工原紙、各種印刷用紙等に使用し得る。
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学工業株式会社
【出願日】 平成12年12月20日(2000.12.20)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆 (外2名)
【公開番号】 特開2002−201266(P2002−201266A)
【公開日】 平成14年7月19日(2002.7.19)
【出願番号】 特願2000−386782(P2000−386782)