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【発明の名称】 ポリカーボネート樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品
【発明者】 【氏名】小野 隆

【氏名】黒木 貴志

【氏名】玉井 正司

【要約】 【課題】■1.70以上の高屈折性、■ガラス転移温度130℃以上の耐熱性、■耐薬品性・耐溶剤性を併せ持つポリカーボネート樹脂及びそれを含んで構成される光学部品を提供する。

【解決手段】式(1)及び式(2)の単位を主鎖に有し、式(1)及び式(2)の単位の分子内におけるモル比が、数式(A)で示されるポリカーボネート樹脂(M1、M2は式(1)、式(2)の単位のモル数)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 化学式(1)及び化学式(2)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有し、化学式(1)で表される繰り返し単位、及び化学式(2)で表される繰り返し単位の分子内におけるモル比が、数式(A)で示されるポリカーボネート樹脂(化学式(1)及び化学式(2)において、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン原子であり、それぞれ独立して同じでも異なってもよい。また化学式(2)において、それぞれ独立して同じでも異なってもよく、R5及びR6は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン原子であり、a及びbは置換基数を表し、0〜4の整数である。数式(A)において、M1及びM2は、それぞれ、分子内における化学式(1)で表される繰り返し単位のモル数、及び分子内における化学式(2)で表される繰り返し単位のモル数である。)。
【化1】

0.6 ≦ M1/(M1+M2) ≦ 1 (A)
【請求項2】 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(3)で表される繰り返し単位である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
【化2】

【請求項3】 化学式(2)で表される繰り返し単位が、化学式(4)で表される繰り返し単位である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
【化3】

【請求項4】 請求項1〜3の何れか一項記載のポリカーボネート樹脂を含んで構成される光学部品。
【請求項5】 光学部品が、レンズであることを特徴とする請求項4記載の光学部品。
【請求項6】 レンズが、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズまたはOHP用レンズであることを特徴とする請求項5記載のレンズ。
【請求項7】 光学部品が、光ファイバーであることを特徴とする請求項4記載の光学部品。
【請求項8】 光学部品が、光導波路であることを特徴とする請求項4記載の光学部品。
【請求項9】 光学部品が、光フィルターであることを特徴とする請求項4記載の光学部品。
【請求項10】 光学部品が、光学用接着剤であることを特徴とする請求項4記載の光学部品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なポリカーボネート樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品に関し、より詳細には、高屈折性、耐熱性及び透明性に優れたポリカーボネート樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品(例えば、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズ、OHP用レンズ等)、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光学用接着剤、光ディスク基盤、ディスプレー基盤、コーティング材、プリズム等)に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高度情報化社会の実現に向けたオプトエレクトロニクスの研究が精力的に行われている。それと共に、光通信、光記録、光加工、光計測、光演算等、オプトエレクトロニクスの様々な展開を支える基礎材料として、有機光学材料、特に樹脂材料に対する期待が高まっている。光学用樹脂材料は、軽量で可とう性に優れる、電気的誘導を受けない、成形加工が容易であるなどの多くの特徴を有し、光ファイバー、光導波路、光ディスク基盤、光フィルター、レンズ、光学用接着剤等の用途に向けた展開が図られている。
【0003】光学用樹脂材料には次のような特性が求められている。すなわち、高屈折性、耐熱性、無色透明性、クリーン性、易成形性、耐薬品性・耐溶剤性、軽量等である。
【0004】代表的な光学用樹脂材料としてポリカーボネート樹脂があり、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]を原料としたものは、透明性に優れているうえにガラスに比べて軽く、耐衝撃性に優れ、大量生産が容易である等の特徴から、多くの分野において、様々な光学部品として用いられている。しかし、屈折率は1.58程度と低く、また耐薬品性・耐溶剤性に乏しい欠点を有しており、その用途が限られているのが現状である。例えば、レンズの薄膜化などによる光学部品の小型化や軽量化などが必要である用途では、特に屈折率1.70以上が望まれており、これらの用途に適用することはできない。
【0005】これに対応して屈折率を向上させる多くの試みがこれまでになされており、例えば芳香環を導入したビスフェノールA構造を有するポリカーボネート樹脂(特開昭63−108023、特開平2−18501)、フルオレン構造を有するポリカーボネート樹脂(特開平6−25398)、スルフィド構造を有するポリカーボネート樹脂(特開昭53−89752)、ハロゲン化カーボネートを含む樹脂組成物(特開平5−9372)等が提案されている。しかし、芳香環を導入したビスフェノールA構造を有するポリカーボネート樹脂、及びフルオレン構造を有するポリカーボネート樹脂は、アセトンや熱トルエン、N,N−ジメチルアセトアミドなど一般に用いられる有機溶剤への耐薬品性・耐溶剤性が乏しく、例えば有機溶剤による洗浄や研磨等が必要な用途に用いることができないという問題点を有する。また、スルフィド構造を有するポリカーボネート樹脂はガラス転移温度が120℃以下と低いため、耐熱性を要求される用途に用いることができないという問題点を有する。さらには、ハロゲン化カーボネートは高い屈折率を有するものの、重原子であるハロゲンを含むために比重が大きく、例えば軽量化が要求される光学レンズ用途には適さない問題がある。さらには、提案されているいずれのポリカーボネート樹脂においても、屈折率は1.66程度が上限であり、屈折率が1.70以上のポリカーボネート樹脂は未だ見出されていない。
【0006】さらには、例えば光ファイバーや光導波路、一部のレンズのように、異なる屈折率を有する複数の材料を併用したり、屈折率に分布を有する材料の開発も望まれている。これらの材料に対応するためには、屈折率を任意に調節できることが不可欠となる。
【0007】従って、高屈折性、耐熱性、及び耐薬品性・耐溶剤性を併せ持ち、さらには屈折率を任意に調節できる光学用樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品の開発が望まれてきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、■1.70以上の高屈折性、■ガラス転移温度130℃以上の耐熱性、■耐薬品性・耐溶剤性(例えば、アセトン(50℃)、トルエン(80℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(50℃)、N−メチル−2−ピロリドン(50℃)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(50℃)、テトラヒドロフラン(50℃)に、30秒〜10時間浸漬した後に、溶解、白化、クラック(ひび割れ)、膨潤等の表面や形状に変化を呈さない性能)を併せ持つポリカーボネート樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造から成るポリカーボネート樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品が、高屈折性、耐熱性及び耐薬品性・耐溶剤性を併せ持ち、さらに屈折率を任意の調節できることをを見い出し、本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]に記載した事項により特定される。
【0011】[1] 化学式(1)及び化学式(2)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有し、化学式(1)で表される繰り返し単位、及び化学式(2)で表される繰り返し単位の分子内におけるモル比が、数式(A)で示されるポリカーボネート樹脂(化学式(1)及び化学式(2)において、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン原子であり、それぞれ独立して同じでも異なってもよい。また化学式(2)において、それぞれ独立して同じでも異なってもよく、R5及びR6は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン原子であり、a及びbは置換基数を表し、0〜4の整数である。数式(A)において、M1及びM2は、それぞれ、分子内における化学式(1)で表される繰り返し単位のモル数、及び分子内における化学式(2)で表される繰り返し単位のモル数である。)。
【0012】
【化4】

0.6 ≦ M1/(M1+M2) ≦ 1 (A)
[2] 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(3)で表される繰り返し単位である[1]記載のポリカーボネート樹脂。
【0013】
【化5】

[3] 化学式(2)で表される繰り返し単位が、化学式(4)で表される繰り返し単位である[1]記載のポリカーボネート樹脂。
【0014】
【化6】

[4] [1]〜[3]の何れか記載のポリカーボネート樹脂を含んで構成される光学部品。
[5] 光学部品が、レンズであることを特徴とする[4]記載の光学部品。
[6] レンズが、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズまたはOHP用レンズであることを特徴とする[5]記載のレンズ。
[7] 光学部品が、光ファイバーであることを特徴とする[4]記載の光学部品。
[8] 光学部品が、光導波路であることを特徴とする[4]記載の光学部品。
[9] 光学部品が、光フィルターであることを特徴とする[4]記載の光学部品。
[10] 光学部品が、光学用接着剤であることを特徴とする[4]記載の光学部品。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明のポリカーボネート樹脂は、化学式(1)及び化学式(2)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有するポリカーボネート樹脂である。但し、化学式(1)及び化学式(2)において、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン原子であり、それぞれ独立して同じでも異なってもよい。また化学式(2)において、それぞれ独立して同じでも異なってもよく、R5及びR6は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン原子であり、a及びbは置換基数を表し、0〜4の整数である。
【0016】
【化7】

また、本発明のポリカーボネート樹脂は、化学式(1)で表される繰り返し単位、及び化学式(2)で表される繰り返し単位の分子内におけるモル比が、数式(A)で示されるポリカーボネート樹脂である。但し、数式(A)において、M1及びM2は、それぞれ、分子内における化学式(1)で表される繰り返し単位のモル数、及び分子内における化学式(2)で表される繰り返し単位のモル数である。数式Aにおける『M1/(M1+M2)』の値が0.6未満である場合、屈折率が1.70未満となる問題などが生じる恐れがある。
0.6 ≦ M1/(M1+M2) ≦ 1 (A)
本発明のポリカーボネート樹脂において、化学式(1)で表される繰り返し単位は、光学特性や耐熱性等を勘案して、化学式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0017】
【化8】

本発明のポリカーボネート樹脂において、化学式(2)で表される繰り返し単位は、光学特性や耐熱性等を勘案して、化学式(4)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0018】
【化9】

本発明のポリカーボネート樹脂は、公知の製造方法で製造することができ、その方法は特に限定されない。例えば、化学式(5)、または化学式(5)及び化学式(6)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、炭酸ジエステル化合物を用いて重合する方法、また、化学式(5)、または化学式(5)及び化学式(6)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、ホスゲンを用いて重合する方法などが好適に用いることができる。但し、化学式(5)及び化学式(6)において、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン原子であり、それぞれ独立して同じでも異なってもよい。また化学式(6)において、それぞれ独立して同じでも異なってもよく、R5及びR6は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は、ハロゲン原子であり、a及びbは置換基数を表し、0〜4の整数である。
【0019】
【化10】

化学式(5)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ジブロモメタン、ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ジヨードメタン等が挙げられる。光学特性や耐熱性等を勘案して、化学式(7)で表される2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いることが好ましい。これらの純度は特に規定されるものではないが、90質量%以上のものを用いるのが好ましい。
【0020】
【化11】

化学式(6)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ビスフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。光学特性や耐熱性等を勘案して、化学式(8)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]を用いることが好ましい。これらの純度は特に規定されるものではないが、90質量%以上のものを用いるのが好ましい。
【0021】
【化12】

化学式(5)、または化学式(5)及び化学式(6)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、炭酸ジエステル化合物を用いて重合する場合、塩基性触媒存在下での溶融重縮合させるエステル交換法が好適に用いられる。触媒の種類や反応条件等は特に規定されることはなく、公知の触媒や反応条件等を適用できる。触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化亜鉛などの塩基性金属化合物、各種金属の炭酸塩、酢酸塩、水素化物、第四級アンモニウム、ホスホニウム塩、有機塩基などが挙げられる。一般的な重合法としては、まず不活性雰囲気下、200〜250℃、2700〜4000パスカル(約20〜30Torr)の減圧下で行われ、この段階でエステル交換反応により生成するフェノールやアルコール類の90%程度が留出してオリゴマーが形成される。次いで温度を300℃付近までゆっくり上げ、同時に130パスカル(約1Torr)以下まで減圧することにより、高分子量のポリマーが得られる。高温での熱履歴による色調の悪化等を防止するために、ハイドロサルファイト等の酸化防止剤を添加してもよい。
【0022】本発明で用いる炭酸ジエステル化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられ、好適にはジフェニルカーボネートが用いられる。
【0023】化学式(5)、または化学式(5)及び化学式(6)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、ホスゲンを用いてポリカーボネート樹脂を重合する場合、ピリジン溶媒中もしくはハロゲン化炭化水素溶媒中にピリジンなどの有機塩基を加えて重合を行う溶液重合法、有機溶媒とアルカリ水溶液の二相系を用いる界面重合法が好適に用いられる。溶媒や有機塩基、アルカリの種類や反応条件等は特に規定されることはなく、公知の方法を適用できる。
【0024】溶液重合法で行う場合、溶媒としてはピリジンもしくはハロゲン化炭化水素が用いられる。ハロゲン化炭化水素としては、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2―ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1―ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素を溶媒として用いる場合には有機塩基が併せて用いられ、ピリジン、トリエチルアミンなどが好適である。一般的な重合法としては、有機塩基存在下に芳香族ジヒドロキシ化合物を溶媒に溶解し、これにホスゲンを10〜30℃に維持しながら導入する。重合は中間体にクロロホルメートと有機塩基錯体を生成して進行するので、よく脱水した溶媒及び有機塩基を用いることが望ましい。また、理論量よりやや過剰のホスゲンや有機塩基を用いた方が、高分子量体を得やすい。
【0025】界面重合法で行う場合、有機塩基の代わりにアルカリ水溶液を用いる。有機溶媒としては、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2―ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1―ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が主に用いられる。一般的な重合法としては、芳香族ジヒドロキシ化合物を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液に溶解し、これに有機溶媒を加えて激しくかき混ぜながらホスゲンを導入する。まず、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンの反応でクロロホルメート末端を有するオリゴマーが生成しする。この際、ホスゲンやビスクロロホルメート基がアルカリ水溶液により加水分解されて一部消費されるので、20%程過剰にホスゲンを加えることが好ましい。次いで起こるオリゴマーからの反応は遅いので、相間移動触媒を用いる。相間移動触媒としては、トリエチルアミン、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、ヨウ化メチルトリフェニルアルソニウム、ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウム、塩化ベンジルトリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
【0026】本発明においては、場合によって複数種類の芳香族ジヒドロキシ化合物を用いるが、これらの仕込方法は、いずれの方法で重合する際にも、特に規定されるものではないが、本発明の効果をよりよく得るためには、同時に仕込む方法が望ましい。また、一括して仕込んでも、連続的に仕込んでも問題はない。
【0027】また、着色の抑制や溶融成形における流動性の改善などを目的として、フェノールやtert−ブチルフェノールといった芳香族モノヒドロキシ化合物などの末端封止用化合物を併用してもよい。
【0028】本発明のポリカーボネート樹脂の分子量に特に制限はなく、用途や加工方法に応じ、任意の分子量とすることができる。本発明のポリカーボネート樹脂は、用いる芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物もしくはホスゲンとの量比、反応時間、反応温度などによって調節することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂を0.5g/100ミリリットルの濃度でクロロホルムに溶解した後、35℃で測定した対数粘度の値を、0.1〜3.0デシリットル/gの任意の値とすることができる。
【0029】本発明のポリカーボネート樹脂は、構成単位の繰り返しに特に制限はなく、交互構造、ランダム構造、ブロック構造等のいずれの場合でも良い。また、通常用いられる分子形状は線状であるが、分岐している形状を用いても良い。また、グラフト状でも良い。
【0030】本発明のポリカーボネート樹脂は熱可塑性であり、通常の溶融成形により成形することができる。すなわち、押し出し成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、圧縮成型、ブロー成形、カレンダー成形、積層成形等により、ディスク、ファイバー等の様々な成形体を得ることができる。
【0031】本発明のポリカーボネート樹脂は、汎用溶剤に対して耐薬品性・耐溶剤性を有する。光学部品は、成形した後に部品として用いる段階で、離形剤や付着したゴミ、油脂分を除去する方法として、汎用溶剤による洗浄が一般に用いられる。また、一部の光学レンズはハードコートを施すため、ハードコート剤を溶かす有機溶剤に対する耐薬品性・耐溶剤性が求められる。現在もっとも広範に用いられている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]を原料とするポリカーボネート樹脂は、汎用溶剤であるアセトンや熱トルエンに接触させると、白化やクラックの発生が見られ、またN,N−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に、容易に溶ける。前述のこれまで開示されている高屈折性を有するポリカーボネート樹脂についても、これらの汎用溶剤に対する耐薬品性・耐溶剤性は乏しい。本発明のポリカーボネート樹脂は、これらの汎用溶剤に対して耐薬品性・耐溶剤性を有する。
【0032】本発明のポリカーボネート樹脂は、屈折率1.70以上の高屈折性、ガラス転移温度130℃以上の耐熱性、及び汎用溶剤に対する耐薬品性・耐溶剤性を併せ持ち、これらの優れた性能を損なうことなく、さらに屈折率を1.70〜1.74の範囲で任意に調節ができる。屈折率の調節は、用いる芳香族ジヒドロキシ化合物の組成比を調節することにより、精度よく調節することができる。
【0033】本発明のポリカーボネート樹脂は、高屈折性、耐熱性及び耐薬品性・耐溶剤性を併せ持ち、さらには屈折率を任意に調節できる、光学特性に優れたポリカーボネート樹脂であり、光学用部品に好適に使用できる。
【0034】本発明のポリカーボネート樹脂を含んで構成される光学部品に特に制限はなく、例えば、部品の一部あるいは全部に使用することができ、高屈折性を必要とされる部品、あるいは高屈折性と耐熱性を必要とされる部品、高屈折性と耐薬品性・耐溶剤性が必要とされる部品等が挙げられる。また、任意に屈折率を調節できるため、例えば光ファイバーや光導波路、一部のレンズのように、異なる屈折率を併用したり、屈折率に分布を必要とする光学用部品にも好適に用いることができる。より具体的には、例えば、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズ、OHP用レンズ等)、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光学用接着剤、光ディスク基盤、ディスプレー基盤、コーティング材、プリズム等が挙げられる。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、実施例中のポリカーボネート樹脂の物性及び耐薬品性・耐溶剤性は以下の方法により測定した。
■ 対数粘度(ηinh):ポリカーボネート樹脂をクロロホルム溶媒に、0.5g/100ミリリットルの濃度で溶解した後、35℃において測定した。
■ ガラス転移温度(Tg):DSC(島津DT−40シリーズ,DSC−41M)により測定した。
■ 屈折率:ポリカーボネート樹脂を20質量%の濃度でクロロホルムに溶解させ、この溶液をシリコンウェハにスピンコーティングした後、窒素雰囲気下、60℃で2時間し、その後110℃まで昇温してさらに2時間乾燥した。この操作により、シリコンウェハ上に膜厚5〜20μmのポリカーボネート樹脂膜が得られた。プリズムカップリング法により、この膜の波長633nmでの屈折率を測定した。
■ 耐薬品性・耐溶剤性:溶媒100gに対して厚さ約1mmの板状のポリカーボネート樹脂5gを浸し、トルエンは80℃で、その他の有機溶剤は50℃で10時間、溶剤を撹拌した。静置後、サンプルを取り出し、乾燥させて質量の測定及び形状観察を行った。溶解による質量減少が見られた場合(×)、白化やクラック、膨潤など表面や形状変化が見られた場合(△)、質量及び形状に変化が見られない場合(○)に分け、耐薬品性・耐溶剤性を判断した。薬品は、汎用溶剤であるアセトン(A)、熱トルエン(B)、N,N−ジメチルアセトアミド(C)、N−メチル−2−ピロリドン(D)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(E)及びテトラヒドロフラン(F)を使用した。
■ モル比[M1/(M1+M2)]:M1及びM2は、それぞれ、分子内における化学式(1)で表される繰り返し単位のモル数、及び、分子内における化学式(2)で表される繰り返し単位のモル数である。
【0036】<実施例1>まず、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び2,6−ジフェニルフェノールを原料に、従来公知の方法(Z.Y.Wang, Synthesis 1989 (6) 471〜472頁)に従い、2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを合成した。窒素導入ライン、攪拌機、温度計を備えた容器に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン27.4g(0.12mol)、2,6−ジフェニルフェノール236.2g(0.96mol)、及び乾燥したクロロホルム350ミリリットルを仕込み、この混合物にメタンスルホン酸39ミリリットル(0.6mol)を滴下した。得られた混合液を室温にて100時間攪拌し、その後クロロホルム3リットルで希釈、そして1規定のNaOH水溶液1.5リットルで洗浄を2回行った。油層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、その後真空を用いて溶媒を除去した。次いで、10パスカル、250℃の条件での蒸留により余剰の2,6−ジフェニルフェノールを除去し、シクロヘキサンを用いた再結晶で2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン50gを得た。
【0037】ポリカーボネート樹脂を溶液重合法にて合成した。窒素導入ライン、攪拌機、温度計を備えた重合容器に、2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン10.6g(0.02mol)、及びピリジン100gを仕込み、撹拌して完全に溶解させた。溶液を激しく撹拌させながら、ホスゲンを約0.05g/分の速度で吹き込み、その間、溶液を水浴で25〜30℃に保った。約25分後にピリジン塩酸塩が析出し始め、さらに約15分後、溶液の粘性が徐々に増し始めた。さらに10分ホスゲンを吹き込んだ後に供給を止め、そのまま1時間激しく撹拌を続けた。その後、その状態で上部よりメタノール300gを5分かけて導入し、析出したポリカーボネート樹脂を濾別した。ピリジン塩酸塩などの残留物を除くため、得られたポリカーボネート樹脂をメタノール800gに懸濁させ、ホモミキサーを用いて激しく撹拌し、再度濾別した。この操作を3回繰り返した後、110℃で2時間真空乾燥させて、モル比[M1/(M1+M2)]=1の化学式(9)で表されるポリカーボネート樹脂10.5gを得た。モル比[M1/(M1+M2)]=1であることは、H−NMRを用い、芳香族性プロトンとメチル基に起因するプロトンの数の比が、4:1であることより確認した。
【0038】
【化13】

得られたポリカーボネート樹脂について、上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0039】<実施例2>2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン10.6g(0.02mol)に代えて、2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン9.01g(0.017mol)及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン0.69g(0.003mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして合成を行い、モル比[M1/(M1+M2)]=0.85の化学式(10)で表されるポリカーボネート樹脂9.9gを得た。モル比[M1/(M1+M2)]=0.85であることは、実施例1と同様にH−NMRを用いて確認した。
【0040】
【化14】

得られたポリカーボネート樹脂について、実施例1と同様に上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0041】<実施例3>2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン10.6g(0.02mol)に代えて、2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン6.89g(0.013mol)及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.56g(0.007mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして合成を行い、モル比[M1/(M1+M2)]=0.65の化学式(11)で表されるポリカーボネート樹脂8.2gを得た。モル比[M1/(M1+M2)]=0.65であることは、実施例1と同様にH−NMRを用いて確認した。
【0042】
【化15】

得られたポリカーボネート樹脂について、実施例1と同様に上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0043】<比較例1>2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン10.6g(0.02mol)に代えて、2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン5.3g(0.01mol)及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.28g(0.01mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして合成を行い、モル比[M1/(M1+M2)]=0.5の化学式(12)で表されるポリカーボネート樹脂8.2gを得た。モル比[M1/(M1+M2)]=0.5であることは、実施例1と同様にH−NMRを用いて確認した。
【0044】
【化16】

得られたポリカーボネート樹脂について、実施例1と同様に上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0045】<比較例2>特開昭63−108023に従い、化学式(13)で表される単位から成るポリカーボネート樹脂を合成した。得られたポリカーボネート樹脂について、実施例1と同様に上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0046】
【化17】

<比較例3>特開平2−18501に従い、化学式(14)で表される単位から成るポリカーボネート樹脂を合成した。得られたポリカーボネート樹脂について、実施例1と同様に上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0047】
【化18】

<比較例4>特開平6−25398に従い、化学式(15)で表される単位から成るポリカーボネート樹脂を合成した。得られたポリカーボネート樹脂について、実施例1と同様に上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0048】
【化19】

<比較例5>特開昭53−89752に従い、化学式(16)で表される単位から成るポリカーボネート樹脂を合成した。得られたポリカーボネート樹脂について、実施例1と同様に上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0049】
【化20】

<比較例6>2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]を用い、最も汎用に用いられている化学式(17)で表される単位から成るポリカーボネート樹脂を合成した。得られたポリカーボネート樹脂について、実施例1と同様に上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度、屈折率、及び耐薬品性・耐溶剤性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0050】
【化21】

【0051】
【表1】

【0052】
【発明の効果】本発明のポリカーボネート樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品は、■1.70以上の高屈折性、■ガラス転移温度130℃以上の耐熱性、■耐薬品性・耐溶剤性(例えば、アセトン(50℃)、トルエン(80℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(50℃)、N−メチル−2−ピロリドン(50℃)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(50℃)、テトラヒドロフラン(50℃)に、30秒〜10時間浸漬した後に、溶解、白化、クラック(ひび割れ)、膨潤等の表面や形状に変化を呈さない性能)を併せ持つポリカーボネート樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品であり、例えば、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズ、OHP用レンズ等)、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光学用接着剤、光ディスク基盤、ディスプレー基盤、コーティング材、プリズム等の用途に好適である。
【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【出願日】 平成12年12月28日(2000.12.28)
【代理人】 【識別番号】100088328
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 暢之 (外2名)
【公開番号】 特開2002−201262(P2002−201262A)
【公開日】 平成14年7月19日(2002.7.19)
【出願番号】 特願2000−399896(P2000−399896)