| 【発明の名称】 |
架橋性シクロオレフィン系重合体組成物からなる成型品の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】富岡 敏康
【氏名】黒谷 康幸
|
| 【要約】 |
【課題】新重合体(架橋性ノルボルネン型モノマー)組成物からなる成型品の開発において、従来技術のFRP成型物の品質を凌駕すること。
【解決手段】金型は、上型(メス型)10と対となる下型(オス型)20とから構成され、両者を組み合わせることによって空洞部キャビティ30を形成する。キャビティの注入口32にモノマー組成物流動体が注入され、開環重合を経た後、更に熱処理が施され、金型は解体され、成型品が取出される。上型の底面(又は天井)12にはガス抜き穴16が設けられ、周壁フランジ14にはテーパ面が形成され、解体時の型離れを容易にする。組成物中に占める微細な石炭灰と発泡ガラスとが、成型品の表面を滑らかにし、離型を容易にする二重の効果をもたらし、更に難燃性を呈する。しかも炭酸カルシウムが加わると機械的強度も一層増す。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】メタセシス重合触媒が配合された架橋性ノルボルネン型シクロオレフィン系モノマーを、石炭灰、炭酸カルシウム微粉末及び/又は発泡性ガラスと共に、成形金型内において、該成形金型を加熱するかまたは加熱せずに、重合せしめ、継いで加熱炉において熱処理を施した後、該成形金型を解体して成型品として取出すことを含む架橋性シクロオレフィン系重合体組成物からなる成型品の製造方法。 【請求項2】請求項1に記載のメタセシス重合触媒の存在下に架橋性ノルボルネン型シクロオレフィン系モノマー(以下母材という)100重量部と、シリカ及びアルミナを成分とする、平均粒径が10−30μmの範囲の石炭灰50−250重量とを混合して、成形型内に注入することを特徴とする架橋性シクロオレフィン系重合体組成物からなる成型品の製造方法。 【請求項3】請求項1に記載のメタセシス重合触媒が配合された架橋性ノルボルネン型シクロオレフィン系モノマー(母材)と、平均粒径が15−45μmの範囲にあり、母材100重量部に対し5−40重量を占める発泡性ガラスと、を配合することを特徴とする架橋性シクロオレフィン系重合体組成物からなる成型品の製造方法。 【請求項4】請求項1に記載した成形金型が、有底容器を製造するためのものであって、オス型(下型)とメス型(上型)とからなり、何れか一方の型にモノマー(未硬化反応の前駆体)流動体の注入口及びガス抜き口が設けられ、前記有底容器の側面が底面から上方に沿って拡張されており、該拡張角度(テーパ角)が少なくとも5度であることを特徴とする架橋性シクロオレフィン系樹重合体組成物からなる成型品の製造方法。 【請求項5】請求項4に記載した成形金型が、有底容器の底面において局部的に厚肉部分を備えてなることを特徴とする架橋性シクロオレフィン系重合体組成物からなる成型品の製造方法。 【請求項6】成形金型を組み立てる工程、モノマー組成物を準備し混合する工程、他の充填物及び添加物を混練する工程、前記組み立てた成形金型に混練物を注入する工程、前記成形金型を成形炉に投入して熱処理を施す工程、硬化処理の終了した前記成形金型を搬出する工程、型を解体して成型品を取り出す工程とからなる架橋性シクロオレフィン系重合体組成物からなる成型品の製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、架橋性シクロオレフィン系モノマー組成物を成形金型内で開環重合せしめ、継いでこの成形金型内にある重合体を熱処理して硬化せしめ、型を解体して成型品を取り出すことからなるRIM技術に関する。 【0002】 【従来技術及びその問題点】メタセシス重合触媒の存在下に、ジシクロペンタジエンで代表される架橋性ノルボルネン型シクロオレフィン系モノマーを開環重合する技術は公知である。この重合法は金型内にノルボルネン型モノマーとメタセシス重合触媒とをケトン系溶媒とともに注入することにより、型通りの成型物が得られる特徴がある。金型内に注入する触媒及びノルボルネン型モノマーが予め混合されている一液法と、触媒と反応性モノマーとを別々に準備し、両者を混合手段(例えばスタティックミキサー)により混合しながら、金型内に注入する二液法とがある。 【0003】重合反応は発熱を伴うので、金型の温度制御が重要であり、また成型物の歪みを取るため熱処理も必要となる。金型内で開環重合と熱処理とを施した後、型を解体して成型品を取り出すので、成型品の熱履歴を如何に設計・設定するかが、成型品の品質と作業性・コストに絡んで、この技術の生産性を決定付け、事業性を左右する。従来技術では、ノルボルネン型シクロオレフィン系重合体母材への添加材として炭酸カルシウム及び発泡性シラスが使用され、特に前者は成形品の機械的強度を補強するため、また後者は成形品を軽量化するために添加されており、何れも成形品の原料コストを低減できるので、実用化されている。 【0004】ところで、モノマーが安定していれば一液法を採用する方が有利である。従来技術では金型内にモノマー以外の補強材を組み込んでおき、重合触媒とモノマーとを注入する方式が採られていた。そして、補強材が比較的小さい形状であって、特殊な構造でない限り、一液法では補強材を重合触媒配合モノマー液と共に金型に注入することができ、この場合生産性が高い。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明では、メタセシス重合触媒が配合された架橋性ノルボルネン型シクロオレフィン系モノマー、殊にジシクロペンタジエン(モノマー)を主成分とするものであり、メタセシス重合触媒としては、例えば、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリドを用いた一液法の成形・重合法である。また、本発明の成型品の製造方法の重合体組成物には少量のアクリレート、メタクリレート等により変性したものも対象となる。本発明の製造方法の対象重合体は、具体的には、日立化成工業株式会社の製造に係わる「メタセン(登録商標)樹脂」を含む。 【0006】この対象重合体に補強材を添加して組成物とすることで、従来技術である補強ポリエステル樹脂(FRP)と遜色のない性能を備えた重合体組成物を得ることが本発明の第1の課題である。 【0007】また、本発明では、比較的大型の成型品、例えばシンク(流し)、浴槽、洗面所、ユニットバス、浄化槽等々を対象とするので、金型の構造・形状を含めて、成形技術を開発する必要がある。つまり、新たな重合体組成物を、新しい成形技術を開発しながら上記の成型品として製造できるよう、技術を確立することが第2の課題である。 【0008】従って、新重合体組成物(新素材)からなる成型品が、従来技術であるFRP成型物の品質を凌駕し、しかも成形法が比較的容易であることが開発のテーマである。 【0009】 【課題を解決しようとする手段】上述の課題を達成するために、請求項1の発明では,メタセシス重合触媒が配合された架橋性ノルボルネン型シクロオレフィン系モノマー(重合前の液状物)を、石炭灰(石炭火力発電所で使用された粉末状石炭の燃焼に伴って生じる粒子状の灰。主成分は二酸化珪素とアルミナで70−80%を占める。株式会社電発コール・テックが「フライアッシュ」と言う商品名で製造販売している。)、炭酸カルシウム及び/又は発泡性ガラスと共に、成形金型内において、該成形金型を加熱するかまたは加熱せずに(重合反応は発熱反応であるので、重合初期は加熱、反応が進むと放熱して反応状態を制御するとよい)、開環重合せしめ、継いで加熱炉において金型のままの成型物に熱処理を施した後、該成形金型を解体して成型品として取出すことからなる。 【0010】この発明は、母材となる架橋性ノルボルネン型シクロオレフィン系モノマーに、微細な石炭灰と、要すれば、炭酸カルシウムと発泡ガラスとが、本発明の重合体成型品の表面に微妙な効果をもたらすと言う知見に基づくものである。また、請求項2の発明は、母材100重量部に配合する石炭灰の量は50−250重量部である。また、母材には石炭灰の一部を炭酸カルシウムに置換して配合することができる。つまり、石炭灰の量と炭酸カルシウムの量との総計が50−250重量部である。 【0011】そして、さらに添加する発泡性ガラスの量は5−40重量部程度が好ましく、石炭灰又は炭酸カルシウムの何れかの添加量が40重量部以下であるときはその量をを上限とし、効果が発現できる約5重量%が下限となる。 【0012】即ち、これら石炭灰炭を含む成分が、単に成形品の機械的強度を増強するに止まらず、成形品の表面を滑らかにする効果と、離型を容易にするという二重の効果をもたらすことが判明している。詳細にわたる理由は不明であるものの、成形収縮が低く抑えられ、しかも滑材としても作用しているらしい。更に、炭酸カルシウムが存在すると、石炭灰が炭酸カルシウムの一部と水和して水酸化カルシウムに変化し、耐久性や水密性を向上させているらしい。従って、炭酸カルシウムを配合することは好ましい態様となる。 【0013】更に、請求項3の発明は、請求項1に記載のメタセシス重合触媒が配合された架橋性ノルボルネン型シクロオレフィン系モノマー(母材)100重量部に、成形金型に注入する際に添加する発泡性ガラスは平均粒径が15−45μm程度であり、母材に対し5−40重量部の範囲で発泡性とそれに基づく軽量化をもたらすものである。 【0014】請求項1で述べた効果は、石炭灰に対する炭酸カルシウム又は発泡性ガラスの比率、及び母材との全体の比率が適切であるとき、一層効果的であることが判明している。その要件は、上述の量比の範囲であって、使用し、選択する石炭灰の産地・提供者、炭酸カルシウムの銘柄、発泡性ガラスの発泡状態と粒度分布等を勘案し、試行することにより、容易に決定できよう。 【0015】またさらに、請求項4の発明は、請求項1に記載した成形金型が、有底容器を製造するためのものであって、オス型(下型)とメス型(上型)とからなり、何れか一方の型に重合体(未硬化反応の前駆体)流動体の注入口及びガス抜き口が設けられ、前記有底容器の側面が底面から上方に沿って拡張されており、該拡張角度(テーパ角度)が少なくとも5度であることを特徴とする。従来技術ではテーパ角度は3−4度であるが、本発明の製造方法では通常7度程度の成形品を造ることができる。浄化槽や浴槽の如き大型の成型品は、このようなテーパを持つ末広がり構造とするとき、成形収縮に伴う型離れを容易にする利点がある。更に空気を遁がす穴(ガス抜き口)を設けているので樹脂液(モノマー組成物)が円滑に注入される利点がある。殊に、重合成形した後に熱処理を施して成形収縮が進んだときに、このガス抜き口は真空に吸引する穴としても使用でき、型離れを一層容易にする。 【0016】加えて、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載した成形金型が、ユニットバスの如き比較的面積が広く、有底容器の場合に、その容器の底面において部分的に厚肉部分を備えたものであって、補強効果をもたらす。通常比較的面積が広い有底容器では中央部分に所謂「ひけ」が発生しやすく、フラットな表面が得難い。そこで、裏面を肉厚になるように成型すると、フラットな表面を容易に形成できる。この請求項5の発明は裏面にリブを造り表を平滑化する一手段である。 【0017】最後の、請求項6の発明は、成形金型を組み立てる工程、請求項1に記載したような重合体組成物を準備し混合する工程、他の充填物及び添加物を混練する工程、前記組み立てた成形金型に混練物を注入する工程、前記成形金型を成形炉に投入して熱処理を施す工程、硬化処理の終了した前記成形金型を搬出する工程、型を解体して成型品を取り出す工程とからなる架橋性シクロオレフィン系重合体組成物からなる成型品の一貫した製造方法を特定したものである。 【0018】 【実施の態様】図面を引用して本発明を説明する。 【0019】図1は本発明の実施例を示す模式図であり、上型(メス型)10と対となる下型(オス型)20とから構成され、両者を組み合わせることによって空洞部キャビティ30が形成される。この空洞部キャビティ30にモノマー組成物流動体が注入される。 【0020】図2は上型10と下型20とを解体した状態を示す斜視図である。 【0021】一方、上型10は底面(又は天井)12と周壁フランジ14とから構成される船型の形状を呈し、周壁フランジ14は上方に向かって末広がりの拡張された壁面(テーパ面)を構成する。底面(又は天井)12にはガス抜き穴16が設けられている。 【0022】他方、下型20は、上型10との間において所定の形状・寸法となるように、空洞部キャビティ30を形成する。 【0023】モノマー組成物の流動体は、両者の型を組み立てた時に形成されるモノマー注入口32からキャビティ30に注入される。モノマー組成物に開環重合が起き、更に熱処理が施され、冷却された後、これらの上・下の型は解体される。そのようにして、成型品が取り出される。 【0024】これらの型は従来から金属製であったため、「金型」と呼ばれてきているが、常温常圧下で注入・成形が可能な本発明のモノマー組成物を用いる成型法では、このモノマーの重合の際の到達温度(特に加熱冷却等の処理を施すことなく、自然に放置した時)が高々150℃であるので、その温度(150℃)までの耐熱性を有する樹脂、例えば上記のFRPを金型素材と為し得る。 【0025】図3は両方の型を組み合わせて締付具(図は省略)で締め付けた際における状態を、モノマー組成物(重合体)が成形される場合の注入口32とガス抜き穴16との関係を模式的に示す断面図である。注入口32とガス抜き穴16とが、それぞれ1個の場合、対角線状に配置される。空気抜き穴が複数の場合にはバランスよく配置すべきである。 【0026】また、下型20と成型品とにおいて、成形収縮が起き、型離れが困難とならないように、このガス抜き穴16を再使用し、真空吸引して、離型を促進することができる。 【0027】図4は成型品の底面又は天井の一部分を厚くして、補強する必要がある場合の金型の形状を示す模式図(部分)である。必要な面積、必要な形状に応じ、また補強の程度に従って厚い部分の厚みを決定できる。 【0028】<実施例1>先ず、平板を成形して、本発明の重合体組成物の成型品の機械的特性(押圧強度)等を測定した。 【0029】原料母材には、日立化成工業株式会社製造の「メタセン(登録商標)」モノマー100重量部と、平均粒径30μmの石炭灰(見掛け比重:2.2g/cm3)170重量部と、開環重合触媒1重量部とを充分に混練して、テストピースに注型した。このテストピースの寸法は、縦150mm、横100mm、及び厚み5.3mmであり、成型固化後90分間硬化炉に置き、更に、120±5℃において24時間熟成したものである。 【0030】強度試験には、島津製作所製造の「AUTOGRAPH AG1000E」を用い、室温常湿条件(20.5℃、相対湿度60%)で、テストピースを縦に配置し、支点間距離を130mmとして、テストスピード5mm/minの条件で押圧を負荷した。この押圧試験では82kgfの破壊強度を記録した。綺麗な縦割れをを観察できた。本発明の成型品は軽量化されており、その見掛け比重は1.6g/cm3である。 【0031】同様な試験を「メタセン(登録商標)」モノマー100重量部と、炭酸カルシウム(平均粒径30μm)150重量部の組成物において実施したところ、破壊強度は96kgfであった。 【0032】<実施例2>図1に示した大型のパーン(ユニットバスの下に敷く皿状のもの)を製造する。金型には、ガラス繊維で補強された熱硬化性エポキシ樹脂を使用している。 【0033】この例では、上型(メス型)と下型(オス型)とで構成されるキャビティのフランジ(周壁)の高さHを200mmとし、テーパ角(型抜き角度:θ)を7度とした。上型10は底面(又は天井)12と周壁フランジ14とから構成される船型であって、その底面(又は天井)12にはガス抜き穴16が設けられている。 【0034】また、下型20には、上型10との間において所定の形状・寸法となるように、空洞部キャビティ30を形成し、図2、図3に示したように、直径約20mmφのモノマー組成物の注入口32が設けられている。成型品パーンの縦及び横の寸法は種々あるが、比較的小さいサイズ(横950mm、縦1400mm)の成型品を製造した。 【0035】本発明では、モノマー組成物100重量部に、石炭灰150重量部、(又は炭酸カルシウム150重量部)及び重合触媒1重量部を配合した。上記の形状を有し、厚みが5.3mmである成型品が製造できた。 【0036】注型後、発熱が起き、この実施例では120℃まで昇温したが、モノマー量比が多いと、140−150℃程度まで昇温するようである。硬化後、成型品の歪みを取るために、熱処理を施すとよく、この条件は120−140℃で5−30分間程度で充分であることが判った。なお、本実施例の組成では、難燃剤や離型剤等は特に使用していないにも拘わらず、成型品は難燃性を備え、型との離型も良好であった。 【0037】 【発明の効果】請求項1の発明は、微細な石炭灰や炭酸カルシウムと発泡ガラスとが、本発明の重合体成型品の表面に微妙な作用をもたらすこと、殊に、これら成分が表面を滑らかにする効果と、離型を容易にするという効果をもたらす。 【0038】請求項2及び3の発明は、微細な石炭灰と発泡ガラスとの量比が適切であると、成形収縮が低く抑えられ、しかも滑材としても作用する利点がある。更に炭酸カルシウムが配合されると、相互作用から機械的強度、表面平滑性が改良・向上する効果が増す。加えて、本発明の成型品は難燃性を呈する。難燃剤は成型品の表面に析出して白化を生じやすいが、本発明の組成物は難燃剤を含むことなく、かような問題がない。 【0039】請求項4の発明は、請求項1に記載した成形金型が、オス型(下型)またはメス型(上型)にモノマー流動体の注入口及びガス抜き口が設けてあるので、モノマー液が円滑に注入される利点がある。殊に、重合成形した後に熱処理を施して成形収縮が生じたときに、このガス抜き口は真空に吸引する穴としても作用し、型離れを容易にする。更に、これら割型はテーパ角が適宜に設けられているので、大型の成型品であっても成形収縮に伴う型離れが容易となる。 【0040】請求項5に記載の発明は、有底容器の場合に、その容器の底面において部分的に厚肉部分を備えたものであって、その部分の補強効果をもたらすと共に、成型品表面はヒケのない平滑面となる。 【0041】請求項6の発明に従えば、一貫した本発明の成型品の製造が可能となる効果をもたらす。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】501011772 【氏名又は名称】株式会社トネックス
|
| 【出願日】 |
平成13年1月9日(2001.1.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072604 【弁理士】 【氏名又は名称】有我 軍一郎
|
| 【公開番号】 |
特開2002−201258(P2002−201258A) |
| 【公開日】 |
平成14年7月19日(2002.7.19) |
| 【出願番号】 |
特願2001−1767(P2001−1767) |
|