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【発明の名称】 改質ポリエステル樹脂
【発明者】 【氏名】大栗 弘之

【氏名】松本 正博

【氏名】梅本 弘俊

【要約】 【課題】回収ポリエステルを再利用することによって、塗料、接着剤やインク等のバインダーとしても適用可能な改質ポリエステル樹脂を提供する。

【解決手段】テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)、ポリオール(b)及び多塩基酸(c)の合計を100重量部として、前記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部と、前記ポリオール(b)5〜40重量部とをエステル交換反応をさせ、ついで前記多塩基酸(c)10〜60重量部を反応させるポリエステルチップの再利用方法により得られ、用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上であり、数平均分子量1000〜10000、酸価1〜100、OH価30〜200であることを特徴とする改質ポリエステル樹脂。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)、ポリオール(b)及び多塩基酸(c)の合計を100重量部として、前記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部と、前記ポリオール(b)5〜40重量部とをエステル交換反応をさせ、ついで前記多塩基酸(c)10〜60重量部を反応させるポリエステルチップの再利用方法により得られ、用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上であり、数平均分子量1000〜10000、酸価1〜100、OH価30〜200であることを特徴とする改質ポリエステル樹脂。
【請求項2】 テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)、ポリオール(b)及び多塩基酸(c)の合計を100重量部として、前記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部と、前記多塩基酸(c)10〜60重量部とをエステル交換反応をさせ、ついで前記ポリオール(b)5〜40重量部を反応させるポリエステルチップの再利用方法により得られ、用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上であり、数平均分子量1000〜10000、酸価1〜100、OH価30〜200であることを特徴とする改質ポリエステル樹脂。
【請求項3】 テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)が、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートからなるものである請求項1又は2記載の改質ポリエステル樹脂
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、資源リサイクルを目的として回収された容器あるいは産業廃棄物のポリエステルチップの利用方法から得られる改質ポリエステル樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ポリエステル樹脂、特にテレフタル酸とジオールとを共重合したポリエステル樹脂は、繊維、フィルム、その他の成型用品用途として広範にかつ多量に用いられている。通常、ポリエステル樹脂の繊維、フィルム、その他の成型品等の物品を製造するための種々の工程では、不良品あるいは屑が多かれ少なかれ発生する。資源の有効利用の見地から、そのような不良品および屑、並びに上記ポリエステル物品そのものを再利用することが極めて重要となってきている。また、近年、リサイクル運動が活発になるにつれて、家庭のゴミから回収されるポリエチレンテレフタレート(PET)製品の量も大幅に増加してきていることから、それらの回収・再利用も現在取り組まなければならない重要な課題の一つである。
【0003】上記不良品および屑、並びに廃棄および回収されたポリエステル物品(以下、これらをまとめて「回収ポリエステル」と呼ぶ。)の再利用方法は、既にいくつか報告されており、例えば、特開平6−166747号公報には、PET解重合を利用した再生PETの製造方法について開示されている。この方法によって再生されたPETは、解重合時に高粘度状態で加熱することから着色し易く、この方法で得られたPETは通常の繊維やフィルム用にしか利用することができない。
【0004】また、特公昭62−56893号公報には、医療用繊維として用いられるポリエチレンテレフタレートの難染性の欠点を改良するために、ポリエチレンテレフタレートからなる繰り返し単位20モル以下を含有する改質原料を用いて染色性を改良した改質ポリエステル樹脂繊維の製造方法が記載されている。しかしながら、このPET含有改質ポリエステル樹脂は、繊維用であって、分子量が大きく、溶剤溶解性がほとんど無く、また室温から少なくとも190℃までは流動性が無いため、薄膜(20〜60μm)形成が不可能である。
【0005】このように、回収ポリエステルを改質して得られた樹脂の用途は繊維やフィルムに限られており、塗料、接着剤やインク等のバインダーとして利用できるものはほとんどなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、回収ポリエステルを再利用することによって、塗料、接着剤やインク等のバインダーとしても適用可能な改質ポリエステル樹脂を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、良好な薄膜形成性を有し、かつ室温〜140℃において優れた流動性を示し、更に架橋剤と反応し得るに十分な官能基量を有する改質ポリエステル樹脂を得る方法を見い出した。
【0008】本発明は、テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)、ポリオール(b)及び多塩基酸(c)の合計を100重量部として、上記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部と、上記ポリオール(b)5〜40重量部とをエステル交換反応をさせ、ついで上記多塩基酸(c)10〜60重量部を反応させるポリエステルチップの再利用方法により得られ、用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上であり、数平均分子量1000〜10000、酸価1〜100、OH価30〜200であることを特徴とする改質ポリエステル樹脂を提供する。
【0009】本発明は、また、テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)、ポリオール(b)及び多塩基酸(c)の合計を100重量部として、上記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部と、上記多塩基酸(c)10〜60重量部とをエステル交換反応をさせ、ついで上記ポリオール(b)5〜40重量部を反応させるポリエステルチップの再利用方法により得られ、用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上であり、数平均分子量1000〜10000、酸価1〜100、OH価30〜200であることを特徴とする改質ポリエステル樹脂を提供する。
【0010】なお、本発明において「ポリエステルチップ」、「回収ポリエチレンテレフタレート(回収PET)」および「回収ポリブチレンテレフタレート」とは、資源リサイクルを目的として回収された容器ポリエチレン(ブチレン)テレフタレートあるいは産業廃棄物ポリエチレン(ブチレン)テレフタレートを意味し、ポリエステル製品(例えば、繊維、フィルムおよびその他の成型品等の物品)を製造するための種々の工程で発生する不良品あるいは屑の粉砕物をも含むものとする。本発明において「改質ポリエステル樹脂」とは、上記「ポリエステルチップ」を再利用して合成されたポリエステル樹脂を意味する。以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】本発明の第1の態様は、テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)、ポリオール(b)及び多塩基酸(c)の合計を100重量部として、上記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部と、上記ポリオール(b)5〜40重量部とをエステル交換反応をさせ、ついで上記多塩基酸(c)10〜60重量部を反応させるポリエステルチップの再利用方法により得られ、用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上であり、数平均分子量1000〜10000、酸価1〜100、OH価30〜200であることを特徴とする改質ポリエステル樹脂である。
【0012】上記ポリエステルチップ(a)とポリオール(b)と多塩基酸(c)の量については、それらの合計量を100重量部とした場合の配合量を意味する。本発明でリサイクルの対象となるのは、テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)である。ポリエステルは一般的に多塩基酸とジオールとによって得られるが、上記ポリエステルチップ(a)は、テレフタル酸を多塩基酸の主成分として用いて得られたものである。上記ポリエステルチップ(a)は、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートからなる。また、上記ポリエステルチップ(a)は後述するように、それが加水分解して得られる水酸基とカルボキシル基の量を知るため、これを得るのに用いられた原料およびその構成比が既知である必要がある。
【0013】上記ポリエステルチップ(a)は、使用後の繊維、フィルムおよびその他の成型品等の物品、並びにそれらの製造工程で発生する不良品や屑から得られるものであり、その大きさが20mm角以下のペレット、チップまたは粉砕物の形態であることが望ましい。上記ポリエステルチップ(a)の大きさが20mm以下であれば、工程中における溶解時間を短縮することができ、また、上記のようなペレット等とすることで、見掛けの比重を大きくすることができる。
【0014】本発明の第1の態様である改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法においては、上記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部とポリオール(b)5〜40重量部とをエステル交換反応させる。上記ポリエステルチップ(a)の量が、5重量部未満では、再利用されるポリエステル樹脂の改質効果が期待できず、また、本発明の目的である資源のリサイクルに効を奏しない。反対に60重量部を超えると、溶剤溶解性が極めて悪くなるとともに140℃以下の温度における流動性が著しく低下するために塗料等用のバインダーとして適さない。上記ポリエステルチップ(a)の量は、好ましくは10〜50重量部であり、より好ましくは15〜40重量部である。
【0015】また、ポリオール(b)の量が5重量部より少なければ、得られる改質ポリエステル樹脂が塗料等用のバインダーとしては分子量が高すぎ、十分な溶剤溶解性、流動性を確保するのが難しく、また硬化剤と反応させるに十分な官能基量を導入できない。反対に40重量部を超えると官能基量が多くなりすぎたり、分子量が低くなりすぎるため好ましくない。上記ポリオール(b)の量は、好ましくは15〜40重量部である。
【0016】上記ポリオール(b)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリオール類を使用してもよい。さらに、ヒドロキシル基末端ポリアルカジエンジオール類を使用してもよく、それは、例えば、1,4−ポリイソプレンジオールおよび1,2−ポリブタジエンジオール並びにそれらの水素添加物であり得る。
【0017】上記ヒドロキシル基末端ポリアルカジエンジオールの市販品の例としては、エポール(水素化ポリイソプレンジオール、分子量1,860、平均重合度26、出光石油化学社製)、PIP(ポリイソプレンジオール、分子量2,200、平均重合度34、出光石油化学社製)、ポリテールHA(水素化ポリブタジエンジオール、分子量2,200、平均重合度39、三菱化学社製)、R−45HT(ポリブタンジオール、分子量2,270、平均重合度42、出光石油化学社製)等が挙げられる。なお、上記ポリオール(b)は、それぞれ2種以上を混合して用いることができる。
【0018】上記ポリエステルチップ(a)とポリオール(b)とのエステル交換反応は、上記ポリエステルチップ(a)とポリオール(b)とを混合し、これを加熱することによりエステル交換反応を進行させる。この反応には油脂成分を併用してもよい。これらの油脂成分が系内に存在すると、ポリエステルチップ(a)と油脂成分とのエステル交換反応が同時に進行するため有利である。上記油脂成分の配合量は、上記ポリエステルチップ(a)、ポリオール(b)、多塩基酸(c)及び油脂成分の合計量100重量部に対して、油脂成分が脂肪酸の場合には5〜15重量部、油脂の場合には5〜70重量部であることが好ましい。
【0019】上記脂肪酸としては、炭素数6〜24のものを用いることができる。これらは直鎖でも分枝でもよく、飽和でも不飽和であってもよい。好ましくは炭素数12〜18のものが用いられる。これらの脂肪酸の例は、ヒマシ油、アマニ油、桐油、サフラワー油、大豆油、トール油、ヤシ油、パーム核油、ぬか油の脂肪酸を挙げることができる。また、油脂については、例えば、上記脂肪酸とグリセリンとのトリグリセリドを主成分とするもの等を用いることができる。また、エステル交換触媒を、上記ポリエステルチップ(a)の配合量に対し所定量、例えば0.005〜5重量%使用することができる。
【0020】上記エステル交換触媒としては、例えば、ジブチルスズオキサイド、モノブチルスズ−2−エチルヘキサノエート、モノブチルスズオキサイド等の有機スズ化合物および三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の公知の触媒を使用することができる。
【0021】このエステル交換反応は、例えば、220〜250℃で加熱するものであるが、上記ポリエステルチップ(a)の塊が目視で認められなくなり、得られる反応物が均一で透明になった時を反応の終点とする。このステップの所要時間は、例えば、加熱温度が235℃の場合、20分程度である。
【0022】本発明の改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法においては、ついで先に得られた反応物に多塩基酸(c)10〜60重量部を反応させる。上記多塩基酸(c)が10重量部より少なければ、得られる改質ポリエステル樹脂中の分子量が低くなり好ましくなく、60重量部を超えると、分子量が高くなりすぎるため好ましくない。上記多塩基酸(c)の量は、好ましくは30〜55重量部である。
【0023】上記多塩基酸(c)としては、一般的にポリエステル製造方法で用いられるカルボン酸および/または酸無水物を用いることができる。これら多塩基酸(c)の例としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、等の芳香族多価カルボン酸および酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、1,4−および1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式多価カルボン酸および酸無水物;無水マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の脂肪族多価カルボン酸および酸無水物が挙げられる。また、少量であれば、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸等の3官能以上のカルボン酸を使用してもよい。上記多塩基酸(c)は、2種以上を混合して用いることができる。
【0024】この反応では、上記多塩基酸(c)の他に、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシピバリン酸、1,2−ジヒドロキシステアリン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等の水酸基とカルボキシル基とを有する化合物、あるいは、安息香酸、t−ブチル安息香酸等のモノカルボン酸を少量、例えば、上記多塩基酸(c)に対して10重量%以下で添加してもよい。これらは、2種以上を混合して用いることができる。
【0025】さらに先に述べた成分以外に、例えば、カージュラーE(商品名:シェル化学社製)等のモノエポキサイド化合物、およびラクトン類をポリオールと併用できる。ラクトン類は、多価カルボン酸およびポリオールのポリエステル類へ開環付加してグラフト鎖を形成し得るものであり、例えば、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリラクトン、クロトラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン等が挙げられるが、中でもε−カプロラクトンがもっとも好ましい。これらの成分は、改質ポリエステル樹脂を得るのに用いた、溶剤以外の原料中で5〜30重量%となる量を用いることができる。
【0026】本発明の第1の態様である改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法においては、上記改質ポリエステル樹脂を得るのに用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上になるように配合する必要がある。上記総水酸基モル数が上記総カルボキシル基モル数の1.03倍未満では反応時間が必要以上に長くなり、また塗料用樹脂として用いる場合に必要な官能基量を確保できなくなるため好ましくない。上記総水酸基モル数は、上記総カルボキシル基モル数の1.05倍以上であることが好ましい。ここで、上記改質ポリエステル樹脂を得るのに用いる原料とは、上記ポリエステルチップ(a)、上記ポリオール(b)及び上記多塩基酸(c)、並びに、上述のように必要に応じて加える上記油脂成分、上記水酸基とカルボキシル基とを有する化合物、上記モノカルボン酸、上記モノエポキサイド化合物及び上記ラクトン類やその他の成分である。なお、揮発成分である溶剤は、ここでいう原料には含めない。
【0027】なお、原料中の総水酸基モル数及び総カルボキシル基モル数は以下のようにして計算するものとする。上記ポリエステルチップ(a)については、これを完全に加水分解して得られる水酸基とカルボキシル基のモル数を計算して求め、これを上記ポリエステルチップ(a)の水酸基モル数とカルボキシル基モル数とする。このためにポリエステルチップ(a)を得るのに用いられた原料及びその構成比が既知である必要がある。また、ポリオール(b)、多塩基酸(c)、上記水酸基とカルボキシル基とを有する化合物及び上記モノカルボン酸については、それぞれが有する水酸基及びカルボキシル基のモル数が計算の対象となる。さらに油脂成分のうち、脂肪酸については、ポリオール(b)及び多塩基酸(c)と同様に考え、一方、油脂については、上記ポリエステルチップ(a)と同様に、これを完全に加水分解して得られる水酸基とカルボキシル基のモル数を計算して求めて水酸基モル数とカルボキシル基モル数とする。また、モノエポキサイド化合物は1分子に水酸基を1つ有する化合物として水酸基モル数を求め、ラクトン類は1分子に水酸基とカルボキシル基とをそれぞれ1つずつ有する化合物として水酸基及びカルボキシル基のモル数を求める。このようにして得られたそれぞれの成分の水酸基モル数とカルボキシル基モル数とを合計することにより、原料中の総水酸基モル数及び総カルボキシル基モル数が求められる。
【0028】本発明の第1の態様である改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法における、先に得られたエステル交換反応物と上記多塩基酸(c)との反応は、エステル交換反応物を200℃以下に冷却し、所定量の多塩基酸(c)および必要に応じて、上記油脂成分やその他の成分、並びにキシレン等の水と共沸する溶剤を加えて200〜240℃で所定の酸価、粘度になるまで反応させる。上記溶剤は、上記エステル交換反応物、上記多塩基酸(c)および必要に応じて加える上記油脂成分やその他の成分とからなる反応混合物の重量に対して、例えば1〜10重量%加えることができる。
【0029】本発明の第2の態様は、テレフタル酸を多塩基酸の主成分とするポリエステルチップ(a)、ポリオール(b)及び多塩基酸(c)の合計を100重量部として、上記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部と、上記多塩基酸(c)10〜60重量部とをエステル交換反応をさせ、ついで上記ポリオール(b)5〜40重量部を反応させるポリエステルチップの再利用方法により得られ、用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上であり、数平均分子量1000〜10000、酸価1〜100、OH価30〜200であることを特徴とする改質ポリエステル樹脂である。
【0030】上記反応においても、上記ポリエステルチップ(a)とポリオール(b)と多塩基酸(c)の量については、それらの合計量を100重量部とした場合の配合量を意味する。上記ポリエステルチップ(a)についての説明は、上記本発明の第1の態様におけるポリエステルチップ(a)についてのものと同様である。
【0031】本発明の第2の態様である改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法においては、まず、上記ポリエステルチップ(a)5〜60重量部と、多塩基酸(c)10〜60重量部とをエステル交換反応させる。上記多塩基酸(c)の量が10重量部より少なければ得られる改質ポリエステル樹脂中の分子量が高くなるため好ましくなく、60重量部を超えると上記分子量が低くなり好ましくない。上記多塩基酸(c)の量は、好ましくは30〜55重量部である。
【0032】上記多塩基酸(c)としては、上記本発明の第1の態様において例示したものを使用することができる。上記の反応では、上記多塩基酸(c)の他に、上記本発明の第1の態様において説明したような、水酸基とカルボキシル基とを有する化合物、又は、モノカルボン酸が少量含まれていてもよい。なお、上記多塩基酸(c)、上記水酸基とカルボキシル基とを有する化合物及び上記モノカルボン酸は、それぞれ2種以上を混合して用いることができる。
【0033】上記ポリエステルチップ(a)と多塩基酸(c)とのエステル交換反応は、上記ポリエステルチップ(a)と多塩基酸(c)とを混合し、これを加熱することによりエステル交換反応を進行させる。多塩基酸(c)として酸無水物を使用する場合には、無水基を開き、遊離のカルボン酸を生成するに必要なポリオールを同時に使用する必要がある。例えば無水フタル酸1モルを使用する場合、0.5〜1.5モル量の水酸基を有するポリオールを用いる必要がある。
【0034】この反応には、上記本発明の第1の態様におけるエステル交換反応と同様の理由から、脂肪酸を併用してもよい。上記脂肪酸の好ましい含有量、並びに、使用し得る脂肪酸は、上記第1の態様における脂肪酸と同様である。なお、油脂はカルボキシル基が過剰になってしまうため、ここでは通常使用しない。この反応には、また、エステル交換触媒を使用することができ、その含有量及び使用し得るエステル交換触媒は、上記本発明の第1の態様におけるエステル交換触媒と同様である。
【0035】このエステル交換反応は、例えば、220〜250℃で加熱するものであるが、上記ポリエステルチップの塊が目視で認められなくなり、得られる反応物が均一で透明になった時を反応の終点とする。このステップの所要時間は、例えば、加熱温度が235℃の場合、10〜40分程度である。
【0036】本発明の改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法においては、ついで先に得られた反応物にポリオール(b)5〜40重量部、及び必要に応じて上記脂肪酸を反応させる。上記ポリオール(b)としては、上記本発明の第1の態様におけるポリオール(b)と同様のものを使用することができ、これらは、2種以上を混合して用いることができる。
【0037】本発明の第2の態様である改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法においては、上記ポリオール(b)は、5〜40重量部使用する。上記ポリオール(b)が5重量部より少なければ得られる改質ポリエステル樹脂中の官能基量が少なくなり好ましくない。他方、40重量部を超えると官能基量が多すぎたり、低分子量となりすぎたりするため好ましくない。
【0038】本発明の第2の態様である改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法においても、モノエポキサイド化合物及びラクトン類をポリオールと併用することができ、その含有量及び使用し得るモノエポキサイド化合物及びラクトン類は、上記本発明の第1の態様におけるものと同様である。
【0039】本発明の第2の態様である改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法においては、上記多塩基酸(c)と上記ポリオール(b)は、上記改質ポリエステル樹脂を得るのに用いる原料において、総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍以上、好ましくは1.05倍以上になるように配合する必要がある。総水酸基モル数が総カルボキシル基モル数の1.03倍未満では、反応時間が必要以上に長くなり、また、塗料用樹脂として用いる場合に必要な官能基量を確保できなくなるため好ましくない。なお、総水酸基モル数及び総カルボキシル基モル数については、本発明の第1の態様における説明がそのまま適用される。
【0040】本発明の第2の態様である改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法における、先に得られたエステル交換反応物と上記ポリオール(b)との反応は、エステル交換反応物を200℃以下に冷却し、所定量のポリオール(b)および必要に応じて、上記脂肪酸やその他の成分、並びにキシレン等の水と共沸する溶剤を加えて200〜240℃で所定の酸価、粘度になるまで反応させる。上記溶剤は、上記エステル交換反応物、上記多塩基酸(c)および必要に応じて加える上記その他の成分とからなる反応混合物の重量に対して1〜10重量%加えることが好ましい。
【0041】このようにして、本発明の第1の態様又は第2の態様により、改質ポリエステル樹脂が得られる。この改質ポリエステル樹脂は、使用形態に合わせて所定の溶剤で希釈されて用いられるが、その樹脂特数は、数平均分子量が1000〜10000、好ましくは1000〜3000、樹脂酸価が1〜100、好ましくは2〜50、OH価が30〜200、好ましくは30〜150、脂肪酸含有量が0〜70重量%であり得る。上記脂肪酸含有量は、本発明の改質ポリエステル樹脂を得るのに用いた、原料中に占める脂肪酸の割合を意味する。なお、油脂を用いた場合には、その油脂中に含まれる脂肪酸の量により計算を行う。これらの範囲外では、塗料等用のバインダーとして使用することが困難である。また、上記改質ポリエステル樹脂は、高粘度状態で加熱されないことから、着色しにくいので、塗料用等のバインダーとして好適である。このような樹脂特数を有することにより、本発明の改質ポリエステル樹脂は、特に、塗料用樹脂として用いることが好ましい。
【0042】
【実施例】以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1加熱装置、撹拌機、窒素導入管および分留管を装備した反応容器に、5mm角に粉砕した回収PET25.56重量部、トリメチロールプロパン13.11重量部、ネオペンチルグリコール20.48重量部、エステル交換触媒としてジブチルスズオキサイド0.027重量部を仕込み240℃で反応させた。昇温後20分で回収PETの塊が無くなったため180℃まで冷却し、無水フタル酸19.92重量部、アジピン酸19.92重量部、さらに反応で生成する水を除くために仕込み量の3重量%のキシレンを加え220℃で反応させ、樹脂酸価15となるところまで反応を継続させた。反応終了後、生成物を冷却し、得られた樹脂にキシレン/n−ブタノール−8/2(容積比)の混合溶剤を加え、樹脂の不揮発分を60%に調整した。その結果、粘度Y、酸価14.5、OH価100、GPCでの重量平均分子量53000、数平均分子量1800、脂肪酸含有量0重量%の改質ポリエステル樹脂溶液を得た。用いた原料において、総水酸基モル数は総カルボキシル基モル数の1.18倍であった。
【0043】実施例2加熱装置、撹拌機、窒素導入管および分留管を装備した反応容器に、5mm角に粉砕した回収PET17.0重量部、ペンタエリスリトール11.9重量部、ネオペンチルグリコール6.3重量部、大豆油41.9重量部、エステル交換触媒としてジブチルスズオキサイド0.02重量部を仕込み240℃で反応させた。昇温後20分で回収PETの塊が無くなったため180℃まで冷却し、無水フタル酸25.5重量部、さらに反応で生成する水を除くために仕込み量の3重量%のキシレンを加え230℃で反応させ、樹脂酸価10となるところまで反応を継続させた。反応終了後、生成物を冷却し、得られた樹脂にキシレン/n−ブタノール=8/2(容積比)の混合溶剤を加え、樹脂の不揮発分を60%に調整した。その結果、粘度Y、酸価9.8、OH価80、GPCでの重量平均分子量51000、数平均分子量2000、脂肪酸含有量40重量%の改質ポリエステル樹脂溶液を得た。用いた原料において、総水酸基モル数は総カルボキシル基モル数の1.19倍であった。
【0044】実施例1、2で得られた改質ポリエステル樹脂溶液は、透明で、それぞれガードナー色数1及び3のほとんど無色の流動性液体であり、溶剤型塗料用ポリエステル樹脂としての用途に適していた。
【0045】実施例3加熱装置、撹拌機、窒素導入管および分留管を装備した反応容器に、5mm角に粉砕した回収PET24.19重量部、アジピン酸24.19重量部、エステル交換触媒としてジブチルスズオキサイド0.03重量部を仕込み240℃で反応させた。昇温後20分で回収PETの塊が無くなったため180℃まで冷却し、ぬか油脂肪酸35.00重量部、ペンタエリスリトール11.43重量部、ネオペンチルグリコール12.94重量部、さらに反応で生成する水を除くために仕込み量の3重量%のキシレンを加え220℃で反応させ、樹脂酸価15となるところまで反応を継続させた。反応終了後、生成物を冷却し、得られた樹脂にキシレン/n−ブタノール=8/2(容積比)の混合溶剤を加え、樹脂の不揮発分を60%に調整した。その結果、粘度Y、酸価14.6、OH価80、GPCでの重量平均分子量55000、数平均分子量1800、脂肪酸含有量35重量%の改質ポリエステル樹脂溶液を得た。用いた原料において、総水酸基モル数は総カルボキシル基モル数の1.18倍であった。
【0046】実施例4加熱装置、撹拌機、窒素導入管および分留管を装備した反応容器に、5mm角に粉砕した回収PET18.1重量部、無水フタル酸27.1重量部、ぬか脂肪酸35.0重量部、ネオペンチルグリコール10.6重量部、エステル交換触媒としてジブチルスズオキサイド0.02重量部を仕込み240℃で反応させた。昇温後20分で回収PETの塊が無くなったため180℃まで冷却し、ペンタエリスリトール14.3重量部、さらに反応で生成する水を除くために仕込み量の3重量%のキシレンを加え220℃で反応させ、樹脂酸価15となるところまで反応を継続させた。反応終了後、生成物を冷却し、得られた樹脂にキシレン/n−ブタノール=8/2(容積比)の混合溶剤を加え、樹脂の不揮発分を60%に調整した。その結果、粘度W、酸価14.8、OH価80、GPCでの重量平均分子量60000、数平均分子量1900、脂肪酸含有量35重量%の改質ポリエステル樹脂溶液を得た。用いた原料において、総水酸基モル数は総カルボキシル基モル数の1.20倍であった。
【0047】実施例3、4で得られた改質ポリエステル樹脂溶液は、透明でガードナー色数3のほとんど無色の流動性液体であり、溶剤型塗料用ポリエステル樹脂としての用途に適していた。
【0048】参考例1実施例1で使用したものと同じ反応容器に、無水フタル酸26.57重量部、大豆油脂肪酸37.92重量部、ペンタエリスリトール15.29重量部、ネオペンチルグリコール8.84重量部、更に、反応で生成する水を除くために仕込み量の3重量%のキシレンを加え、230℃で反応させ、酸価10となるまで反応を行った後、冷却した。得られた樹脂にキシレン/n−ブタノール=8/2容積比)の混合溶剤を加え、樹脂の不揮発分が60%となるように調整した。その結果、粘度X、酸価9.5、GPCでの重量平均分子量52000、数平均分子量1950、脂肪酸含有量45重量%のポリエステル樹脂溶液を得た。用いた原料において、総水酸基モル数は総カルボキシル基モル数の1.22倍であった。得られたポリエステル樹脂溶液は、透明でガードナー色数4のほとんど無色の流動性液体であり、実施例1〜4で得られた、本発明の改質ポリエステル樹脂の特性と同等の特性を有することが分かった。
【0049】
【発明の効果】本発明の改質ポリエステル樹脂は、資源のリサイクルを容易に行うことができる方法により得られるものであって、テレフタル酸を多塩基酸の主成分とする、容器や産業廃棄物としてのポリエステルチップから、特殊な設備を必要とせずに得ることができるものである。これにより、これまで用途が限定されていた改質ポリエステル樹脂を塗料等のバインダーに利用することができる。本発明の改質ポリエステル樹脂を得るポリエステルチップの再利用方法では、小さな寸法のポリエステルチップを使用するため、解重合前のポリエステル溶解時間を著しく短縮することができ、かつ生産効率も高い。また、上記溶解時のオーバーヒートによる原料の焦げ付きおよび黄変等の不都合も生じない。また、本発明の改質ポリエステル樹脂は、特定の樹脂特数値を有しており、塗料等のバインダーに適している。
【出願人】 【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【出願日】 平成12年8月28日(2000.8.28)
【代理人】 【識別番号】100086586
【弁理士】
【氏名又は名称】安富 康男
【公開番号】 特開2002−187944(P2002−187944A)
【公開日】 平成14年7月5日(2002.7.5)
【出願番号】 特願2001−312309(P2001−312309)