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【発明の名称】 ポリエステルの製造方法及びそれに用いるポリエステル用触媒
【発明者】 【氏名】内田 実

【氏名】尾▲さき▼ 美沙

【氏名】青山 雅俊

【要約】 【課題】従来のポリトリメチレンテレフタレートに比べて、エステル化、エステル交換、および重縮合反応性に優れ、色調が良好でジプロピレングリコール含有量、カルボキシル末端基量および不溶性異物の少ないポリエステル用触媒を提供する。

【解決手段】テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とプロピレングリコール主成分とのエステル化反応又はエステル交換反応により得られた生成物を重縮合せしめて、ポリエステルを製造するに際し、エステル化又はエステル交換、および/又は重縮合触媒として、アルカリ化合物を含有する水、有機溶媒、又は水および有機溶媒の混合物でチタン化合物を処理し、得られた該処理液を添加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体および1,3−プロパンジオールを主成分とするジオールとのエステル化反応又はエステル交換反応により得られた生成物を重縮合せしめて、主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルを製造するに際し、エステル化又はエステル交換、および/又は重縮合触媒として、アルカリ化合物を含有する水、有機溶媒、又は水および有機溶媒の混合物でチタン化合物を処理し、得られたチタン化合物を含む処理液を添加することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】チタン化合物がチタンアルコキシド、チタンアシレートおよびチタンキレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機チタン化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】アルカリ化合物が、含窒素化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】含窒素化合物が第3級アミン化合物又は第4級アンモニウム化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】チタン化合物およびアルカリ化合物を含有してなる処理液であって、媒体が水、有機溶媒、又は水および有機溶媒の混合物からなるポリエステル用触媒。
【請求項6】チタン化合物をチタン原子換算で0.02〜10重量%、アルカリ化合物を0.05〜20重量%、それぞれ含有することを特徴とする請求項5記載のポリエステル用触媒。
【請求項7】予めアルカリ化合物を含有する水、有機溶媒、又は水および有機溶媒の混合物とし、その後チタン化合物を添加することを特徴とする請求項5又は6記載のポリエステル用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルを製造する方法及びそれに用いるポリエステル用触媒に関する。さらに詳しくは、エステル化、又はエステル交換、および/又は重縮合反応性に優れると共に、ポリマー色調が良好であり、ジプロピレングリコール(以下DPGという)含有量、末端カルボキシル基(以下COOHという)及び不溶性異物の少ないポリエステルの製造方法及びそれに用いるポリエステル用触媒に関するものである。
【0002】なお、ここでいうDPGとは下記の構造式を示すものである。
【0003】
HO−CH2CH2CH2−O−CH2CH2CH2−OH【0004】
【従来の技術】ポリプロピレンテレフタレート(慣用名ポリトリメチレンテレフタレート、以下PTTという)は結晶化速度が高く、成形性に優れていることからエンジニアリングプラスチックとしてポリブチレンテレフタレートと同様に有用であり、大きな市場が期待されている。
【0005】近年、安価な1,3−プロパンジオール(以下PGという)の製造法が開発されるにつれて、PTTは安価に製造される可能性が高くなってきたが、PTTはその分子構造上、ポリエチレンテレフタレートに比べて、重合反応速度が遅いため高分子量の重合体を製造することが困難であり、重合触媒としては従来から低温活性のあるチタン化合物が主に使用されてきた(例えば、特開昭51−140992号公報、特開平8−120521号公報、特開平11−172525公報等)。
【0006】しかしながら、触媒としてチタン化合物を用いると、ポリマーが黄味に着色するだけでなく、重合反応時に副反応が生成し易く、分解反応も促進(溶融熱安定性の悪化)されるため、DPG量の増加やCOOH量が増加し、耐加水分解性が低下する等の問題があった。また、上記のチタン化合物は、PG等のグリコールやポリエステルの反応系への溶解性が劣るため、単純にこれを触媒として添加した場合には、十分な重合活性を得ることができないばかりでなく、不溶性異物としてポリマー中に残存するため、成形加工時のフィルターのろ圧上昇、紡糸時の糸切れ、あるいは製膜時のフィルム破れの原因になる等の好ましくない特性を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来技術の問題点を克服し、エステル化、又はエステル交換、および/又は重縮合反応性に優れると共に、色調が良好であり、DPG含有量、COOH量及び不溶性異物の少ないPTTの製造方法及びそれに用いるポリエステル用触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記した課題を解決するために、テレフタル酸(以下TPAという)を主成分とする芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体およびPGを主成分とするジオールとのエステル化反応又はエステル交換反応により得られた生成物を重縮合せしめて、主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルを製造するに際し、エステル化又はエステル交換、および/又は重縮合触媒として、アルカリ化合物を含有する水、有機溶媒、又は水および有機溶媒の混合物でチタン化合物を処理し、得られたチタン化合物を含有する該処理液を添加することを特徴とする、ポリエステルの製造方法により達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルは、酸成分としてTPAを主成分とする芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体であり、グリコール成分としては、PGを主成分とするジオールから構成される。
【0010】また、本発明のポリエステルには、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のホスホニウム塩等のジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体等を共重合してもよい。
【0011】本発明のチタン化合物は、アルカリ化合物を含有する水、有機溶媒、又は水および有機溶媒の混合物でチタン化合物を処理し、得られたチタン化合物を含有する該処理液を添加することが必要である。
【0012】本発明におけるチタン化合物は、特に限定されない。チタンアルコキシド、チタンアシレートおよびチタンキレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機チタン化合物が好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート(以下TnPTという)、テトライソプロピルチタネート(以下TPTという)、テトラ−n−ブチルチタネート(以下TBTという)、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート、テトラステアロキシチタネート、テトラ−n−プロピルチタネートポリマー、テトライソプロピルチタネートポリマー、テトラ−n−ブチルチタネートポリマー、テトラ−t−ブチルチタネートポリマー等のチタンアルコキシド、あるいはこれらの混合チタネート、トリ−n−ブトキシチタンステアレート、イソプロポキシステアレート等のチタンアシレート、あるいはこれらの混合チタネート、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート、ジヒドロキシ・ビスラクタトチタン等のチタンキレート、あるいはこれらの混合チタネートが挙げられる。
【0013】これらのうち比較的安価で、分子量が低くチタン原子の含有比率の高いTnPT、TPT、TBTが好ましく、TBTが最も好ましい。また、これらのチタン化合物の2種以上を併用してもよい。
【0014】本発明のアルカリ化合物とは広義のアルカリ化合物であって、例えば理化学辞典(第3版増補版、岩波書店、1982)等で示されるように水溶液で塩基性を示すものの総称であり、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、それ以外にアルカリ金属炭酸塩、アンモニア、アミン及びその誘導体からなる群等を含めたもの全体をいう。
【0015】本発明においては、これらアルカリ化合物のうち、含窒素化合物を用いると、得られるポリマーの色調が特に良好となり、好ましい。
【0016】本発明の好ましい含窒素化合物は、例えば次の式1または式2で表される化合物を挙げることができる。
【0017】
【式1】

(但し、式1中、R1 、R2 およびR3 は水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基から選ばれる基を表す。)
【0018】
【式2】

(但し、式2中、R1 、R2 、R3 およびR4 は水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基から選ばれる基を表す。)
より具体的には、式1の化合物としては、アンモニアや、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン(以下TEAという)、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、等が挙げられる下。式2の化合物としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム(以下EAHという)、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、等を挙げることができる。
【0019】また、式1又は式2以外の化合物として、式1又は式2の化合物の誘導体や、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピリジン、キノリン、ピロリン、ピロリドン、ピペリジン等を用いてもよい。
【0020】本発明の含窒素化合物としては、上記した化合物の中でも、第3級アミン化合物または第4級アンモニウム化合物が、得られるポリエステル中での異物生成が少なく好ましい。さらに好ましくは、280℃以下の温度で揮発する化合物であると、最終的に得られるポリエステル中の残留量が少なくなり、該ポリエステルの色調がより良好となり好ましい。このような化合物としてはトリメチルアミン、TEA、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン化合物や、水酸化テトラメチルアンモニウム、EAH、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、等の第4級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0021】本発明のアルカリ化合物を含有する水、有機溶媒、又は水および有機溶媒の混合物でチタン化合物を混合処理した処理液を添加することが必要であるが、特にアルカリ化合物を水と混合し、水溶液とした後、該水溶液にチタン化合物を混合処理すると、チタン化合物が水溶液に均一に分散あるいは溶解し、ポリエステル中での異物生成が抑制されるため好ましい。また、このチタン化合物を含有する処理液をPG等のポリエステルを形成するジオール成分で希釈した後、反応系に添加すると、急激な温度変化による局部的な濃縮等が起こりにくくなるため、不溶性異物の生成がなく、さらに好ましい。
【0022】このようにチタン化合物を予めアルカリ化合物を含有する水、有機溶媒又は水及び有機溶媒の混合物に対してアルカリ化合物の濃度が、0.05〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%にすると、その後に添加するチタン化合物が分散あるいは溶解がより容易に進行するため、好ましい。
【0023】また、ポリエステルの反応系、すなわちエステル化、又はエステル交換反応、及び/又は重縮合反応系に添加する上記の処理液としては、チタン化合物をチタン原子換算で0.02〜10重量%、アルカリ化合物を0.05〜20重量%の濃度にすると、得られるポリマー中の不溶性異物が少なくなり、好ましい。また、アルカリ化合物が含窒素化合物の場合には窒素原子換算で0.005〜10重量%の濃度にすると、得られるポリマー中の不溶性異物が少なく好ましい。
【0024】本発明におけるアルカリ化合物で処理したチタン化合物を含有した処理液の反応系への添加時期は、エステル化反応開始前、エステル化反応中、エステル化反応後、又はエステル交換反応開始前、エステル交換反応中、エステル交換反応後、および/又は重縮合開始前等であるが、特に限定されるものではない。
【0025】本発明におけるポリエステルは、以下のような方法によって得られる。例えば、(1)ジメチルテレフタレートとPGを原料とし、エステル交換反応によって低重合量体を得、さらにその後の重縮合反応によって製造する、(2)TPAとPGを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のPTTまたはそのオリゴマーを得、さらにその後の重縮合反応によって製造する等、によって得ることができる。ここでエステル化、又はエステル交換、および/又は重縮合触媒として、アルカリ化合物で処理したチタン化合物を含有した処理液を使用するが、少量のアンチモン化合物、スズ化合物やゲルマニウム化合物、あるいはマンガン、コバルト、亜鉛等の化合物を触媒に用いて進行させてもよく、また、エステル化又はエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加してもよい。また、重縮合反応はエステル化、又はエステル交換反応に用いたチタン化合物の活性をそのまま利用して重縮合せしめるか、新たにチタン化合物を添加、あるいは各種触媒化合物を添加して進行させてもよい。
【0026】本発明の製造方法は、(1)又は(2)の一連のエステル化、又はエステル交換反応の初期から反応終了後、および/又は重縮合反応の初期に、本発明の特定のアルカリ化合物で処理したチタン化合物を含有する処理液を添加し、エステル化、又はエステル交換反応を行い、さらに重縮合反応を進行させて、PTTを得るものである。
【0027】また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式で実施されるが、本発明の製造方法はそのいずれの形式にも適用し得る。
【0028】
【実施例】以下本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法によって求めた。
(1)ポリマーの極限粘度(以下IVという)
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)ポリマー中の金属含有量蛍光X線により求めた。
(3)ポリマーの色調スガ試験機(株)社製の色差計(SMカラーコンピュータ型式SM−3)を用いて、ハンター値(L,a,b値)として測定した。
(4)ポリマーのDPG量VARIAN社UNITYINOVA600型を用いて、1H−NMRを測定し、得られたシグナルの積分比から定量した。
(5)ポリマーのCOOH量Mauriceらの方法[Anal.Chim.Acta,22,p363(1960)]によった。
(6)不溶性異物(透明性)の有無重合操作終了後、ガラス重合管中の溶融ポリマーを観察して、不溶性異物の有無を判定した。
【0029】○ :不溶性異物は認められない。
【0030】× :不溶性異物がみられる。
【0031】実施例1予めPG80部に、EAHを20重量%含有する水溶液10部を添加、撹拌し均一混合液を得た。さらに該混合液にTBT10部を添加・混合し、EAH、水及びTBTを含有する均一な処理液を調整した。
【0032】一方、高純度TPA98重量部、PG61重量部を反応器に仕込み、エステル化反応触媒として、先に調整したPG、EAH、水及びTBTを含有する均一な処理液を添加(TBT0.01重量部)し、140〜240℃まで撹拌しながら4時間かけて昇温、撹拌し、その後、水の留出が認められなくなるまで、さらに240℃で撹拌を行い、エステル化反応を進行させた。エステル化反応終了後、先に調整した処理液(TBT0.075重量部)を追添加した。
【0033】その後、低重合体を30rpmで撹拌しながら、反応系を240から260℃まで徐々に昇温すると共に、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間は60分とした。所定のトルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッテングしてポリエステルのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルクまでの時間は3時間05分であった。
【0034】得られたポリマーの固有粘度は0.88、DPG量1.1モル%、COOH量は18当量/トン、ポリマーの色調は、L値61.6、a値0.4、b値6.4であり、不溶性異物は認められなかった。重合反応性、ポリマー特性とも良好なポリエステルのペレットを得た。
【0035】実施例2〜7、比較例1〜2金属化合物又はアルカリ化合物の種類、量を変更して調整した処理液を用い、実施例1と同様にしてエステル化および重合した。結果を表1に示した。
【0036】本発明の特許請求の範囲にあるものは、いずれも良好なポリマー特性を有するものが得られたが、チタン化合物をアルカリ化合物で処理せず、そのまま用いたもの(比較例1)や、三酸化アンチモンを用いて重合したもの(比較例2)は、実施例1〜7に比べてエステル化および重合反応性が劣るばかりでなく、ポリマー色調の悪化、DPG量、COOH量の増加や不溶性異物が認められた。
【0037】
【表1】

【0038】
【発明の効果】本発明のポリエステルの製造方法及びポリエステル用触媒によって、エステル化、又はエステル交換、および/又は重縮合反応性に優れ、色調が良好であり、DPG含有量、COOH量および不溶性異物の少ないポリマを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成12年12月21日(2000.12.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−187942(P2002−187942A)
【公開日】 平成14年7月5日(2002.7.5)
【出願番号】 特願2000−388484(P2000−388484)