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【発明の名称】 ポリエステルの連続的製造法
【発明者】 【氏名】勝浦 章夫

【氏名】波多野 俊雄

【氏名】渡部 芳邦

【要約】 【課題】ソルビン酸の原料となるポリエステルの製造法に関し、クロトンアルデヒドとケテンとのラクトン化反応を連続的に行って工業的有利にポリエステルを製造する技術を提供する。

【解決手段】2個以上の反応機を用いてクロトンアルデヒドとケテンとをラクトン化反応させてポリエステルを連続して製造するに当たり、第1の反応機にクロトンアルデヒドとケテンを供給してラクトン化反応を開始し、得られるポリエステルを順次第2以降の反応機に導入すると共に、第2以降の反応機にはいずれもケテンを供給し、且つ最後の反応機のみで系の撹拌を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 2個以上の反応機を用いてクロトンアルデヒドとケテンとをラクトン化反応させてポリエステルを連続して製造するに当たり、第1の反応機にクロトンアルデヒドとケテンを供給してラクトン化反応を開始し、得られるポリエステルを順次第2以降の反応機に導入すると共に、第2以降の反応機にはいずれもケテンを供給し、且つ最後の反応機のみで系の撹拌を行うことを特徴とするポリエステルの連続的製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ソルビン酸の原料となるポリエステルの製造法に関し、クロトンアルデヒドとケテンとのラクトン化反応を連続的に行って工業的有利にポリエステルを製造する技術を提供する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ソルビン酸は、抗微生物作用を有するため、食品等の保存剤として多用されている。かかるソルビン酸を得るにはまず、クロトンアルデヒドをケテンと反応させることにより中間体としてのβ−ラクトンを経てポリエステルが製造され、通常工業的な方法としては回分方式、つまり1個の反応機にクロトンアルデヒドとケテンを仕込んでポリエステルが製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリエステルの生成反応は大きな発熱を伴う反応であり且つ系の溶液粘度が経時的に上昇していくため、回分方式の反応で温度のコントロールや系の撹拌動力のコントロール等、工業的規模の生産では厳しい管理が必要である。従ってかかる工程管理面の課題が解決できれば極めて能率良くポリエステルが生産できるわけであり、本発明者は製造法を連続化することに着目して検討を行った。
【0004】
【課題を解決するための手段】その結果本発明者は、2個以上の反応機を用いてクロトンアルデヒドとケテンとをラクトン化反応させてポリエステルを連続して製造するに当たり、第1の反応機にクロトンアルデヒドとケテンを供給してラクトン化反応を開始し、得られるポリエステルを順次第2以降の反応機に導入すると共に、第2以降の反応機にはいずれもケテンを供給し、且つ最後の反応機のみで系の撹拌を行うことにより、工業的有利にポリエステルの連続反応が実施可能であることを見いだし本発明の完成に至った。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の製造法について具体的に説明する。本発明では亜鉛(イソ吉草酸亜鉛や金属亜鉛)、酸化亜鉛、カドミウム、ニッケル、銅、酸化銅、コバルト等の触媒を用い、加熱下でクロトンアルデヒドとケテンを重合反応させてポリエステルを得るのであるが、反応機を2個以上連結して連続反応を行う。
【0006】第1の反応機にクロトンアルデヒドとケテンを供給してラクトン化反応を開始し、得られるポリエステルを順次第2以降の反応機に導入すると共に、第2以降の反応機にはいずれもケテンを供給する。触媒はすべての反応機で使用される。ポリエステルの生成反応が進むに連れて系の温度や粘度が漸次上昇するが、本発明では反応機を複数個に分けているので、それぞれの反応機の温度条件や混合条件を一定の範囲に設定しておけば、その条件を変更する必要はほとんどなく、回分方式の如く反応の経過に応じて温度や撹拌条件をいちいちコントロールする煩わしさが解消できる特徴がある。
【0007】第2以降の反応機にはいずれもケテンが供給され、前の反応機から送り込まれるポリエステルと更に反応が継続される。本発明ではケテンの仕込み量や仕込み速度を調整することによって、系の撹拌効果も兼用させることができるため、ケテンの無効消費を避け、反応率を高めることも可能である。最後の反応機は系がかなりの高粘度となっているので撹拌が必要となる。
【0008】反応条件は反応機の数によって多少変動するが、例えば反応機を2個使用する場合、第1の反応機に触媒を仕込みクロトンアルデヒドを続いてケテンを導入する。クロトンアルデヒド1モルに対してケテンは30〜50モル%反応させるのが適当である。反応温度は30〜50℃が実用的である。触媒はクロトンアルデヒドに対して金属換算で0.01〜0.5重量%程度使用される。第1の反応機と第2の反応機とにおけるケテンの仕込み量の割合は第1の反応機に30〜90モル%好ましくは40〜70モル%とするのが適当である。
【0009】系の粘度が70〜200cps程度まで反応が進行した後、生成ポリエステルは第2の反応機に送られると共に、この反応機にケテンを導入して反応を終了させる。前記と同様に反応温度は30〜50℃である。系の粘度が150〜300cps程度になった時点で反応は終了する。この間ケテンの仕込みだけでは反応の進行が不完全になるので、撹拌が必要である。得られるポリエステルは必要により未反応ケテンの除去等公知の精製が行われる。
【0010】又、反応機を3個使用する場合、第1の反応機に触媒を仕込みクロトンアルデヒドを続いてケテンを導入する。クロトンアルデヒド1モルに対してケテンは9〜23モル%が適当であり、触媒使用量はクロトンアルデヒドに対して金属換算で0.01〜0.5重量%である。
【0011】系の粘度が50〜150cps程度まで反応が進行した後、生成ポリエステルは第2の反応機に送られると共に、この反応機にケテンを導入して更に反応を継続させる。ケテンはクロトンアルデヒド1モルに対して20〜35モル%が適当であり、反応温度は前記と同様に30〜50℃である。
【0012】系の粘度が100〜200cps程度になるまで反応を行い、第3の反応機にポリエステルが導入される。ケテンの反応割合はクロトンアルデヒド1モル当たり40〜70モル%が適当であり、反応温度は30〜50℃である。ケテンの全使用量の内で各反応機におけるケテンの仕込み量の割合は第1の反応機が40〜60%、第2の反応機が20〜50%、第3の反応機が5〜30%が適当である。系の粘度が150〜300cps程度になった時点で反応は終了する。前記と同じくこの間ケテンの仕込みだけでは反応の進行が不完全になるので、撹拌が必要である。得られるポリエステルは必要により未反応ケテンの除去等公知の精製が行われる。
【0013】本発明で得られたポリエステルは常法により分解してソルビン酸とされる。分解は熱分解、塩酸又は硫酸等の強酸をもちいた酸分解が実施される。工業的に好ましくは塩酸中で(加水)分解が実施される。通常はかかる分解の後、生成されたcis,cis−ソルビン酸、cis,trans−ソルビン酸、trans,cis−ソルビン酸等のソルビン酸の異性体をtrans,trans−ソルビン酸に転換するために異性化反応が行われる。即ち塩酸濃度を塩酸分解時と異性化時の二工程に分けて調整することが有利であり、塩酸分解時に系へ仕込み塩酸濃度を20〜40重量%、好ましくは25〜36重量%、異性化反応時には系の溶液中の塩酸濃度を5〜35重量%、好ましくは20〜33重量%、且つ塩酸分解時の仕込み塩酸濃度より低く、好ましくは1〜5重量%程度低くするのである。ここで言う異性化反応時の系の溶液中の塩酸濃度とは、系中の不溶解成分、例えばヒルビン酸、その異性体、原料ポリエステルやタール分等を除いた溶液中における塩酸濃度を意味する。
【0014】塩酸分解時の仕込み塩酸濃度が20重量%未満では反応温度を高くする必要があり、その結果タール分が増えたり、一方40重量%を越えると塩酸の濃度調整に塩化水素ガスを用いたり、加圧条件での反応が必要となり実用性に問題がでるので好ましくない。また、異性化反応時の系の溶液中の塩酸濃度が5重量%未満では異性化反応に時間がかかり過ぎ、35重量%を越えるとタール分が増えるという難点が起こる。更に異性化では塩酸分解時の仕込み塩酸濃度より低い塩酸濃度の使用、好ましくは1〜5重量%程度低くすることが不可欠でこの条件を満たさないと異性化反応の長時間化やタール分の増加が顕著になる。異性化時の塩酸濃度の調整は塩酸分解時の条件にもよるが、塩酸分解で塩酸濃度が低下して異性化時に必要な濃度範囲になったときは反応をそのまま継続してもよく、範囲から外れる時は水を添加して塩酸を希釈すれば良い。
【0015】塩酸分解の時間は特に限定されるものではなく、塩酸濃度と反応温度により適宜決定されるが塩酸分解時の発熱が終了するまで続けられる。また、異性化の時間も特に限定されないが、通常は10分〜5時間、好ましくは1時間〜3時間程度の範囲より任意に選択される。かかる時間が10分未満では十分に異性化が進まず、逆に5時間を越えるとタール分が増えてソルビン酸の収率が低下して好ましくない。上記の方法で異性化された反応終了液はに粗ソルビン酸が分散しており、その後系外に取り出されて、吸引ろ過、加圧ろ過等の方法によりソルビン酸が単離されるのである。必要に応じて活性炭処理、再結晶等公知の精製が行われ製品化される。
【0016】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に説明する。尚、以下「%」とあるのは、特にことわりのない限り、重量基準を表す。
実施例120m3の反応機2個とタービン翼型撹拌機を上下2段に設けた40m3の反応機を連結して設置した。第1の反応機に亜鉛を0.1%含むクロトンアルデヒドを9m3/hrの速度で仕込むと共に、系の温度を40℃にし、ケテンを0.75m3/hrの速度で仕込み反応を開始した。
【0017】系の粘度が80cpsとなった時点でポリエステルを第2の反応機に導入すると共に、ケテンを0.45m3/hrの速度で仕込み温度40℃で反応を継続した。系の粘度が150cpsとなった時点でポリエステルを第3の反応機に移しケテンを0.3m3/hrの速度で仕込みながら、温度40℃、撹拌下に反応を更に継続した。ケテンの各反応機への仕込み割合は50:30:20であった。得られたポリエステル含有反応液の粘度は180cpsでポリエステル濃度は62%であった。クロトンアルデヒドに対する収率は52%であった。
【0018】反応終了後、30〜40mmHgの減圧下、120℃まで加熱して未反応のクロトンアルデヒド及び副生物を留去したポリエステルを使用して以下の方法でソルビン酸を製造した。ポリエステル100g(0.89モル)と30%塩酸430g(3.54モル)を反応器に仕込み、内温73〜75℃で40分間反応させたところで加水分解の発熱が終了(系の温度上昇が停止)したので、系の塩酸濃度を28%に調整し、約0.35℃/分の速度で140分間冷却しながら異性化を行って25℃として反応液を得た。
【0019】次に得られた反応生成液を吸引ろ過により、ソルビン酸と塩酸母液に分離して含水ソルビン酸を得た。かかるソルビン酸を乾燥させて純度97.3%の粗ソルビン酸93.7gを得た。これには異性体が0.3%、タール分が2.4%含まれており、ポリエステルに対するソルビン酸の収率は91.2%であった。
【0020】比較例1実施例1において、第3の反応機での撹拌を省略したところ、ケテンの無効消費が顕著であり、反応液中のポリエステル濃度は54%にすぎなかった。
【0021】比較例280m3の撹拌機付き反応機に亜鉛を0.1%含むクロトンアルデヒドを64m3を仕込むと共に、系の温度を40℃にした。そこにケテンを19kg仕込み回分方式で反応を開始した。反応温度が急激に変化するため、系の温度を40℃にコントロールの厳密な工程管理が必要とされ、しかも長時間にわたって強力な撹拌も不可欠であった。ケテンの無効消費も多く反応液中のポリエステル濃度は40%にすぎなかった。
【0022】
【発明の効果】本発明では2個以上の反応機を用いてクロトンアルデヒドとケテンとをラクトン化反応させてポリエステルを連続して製造するに当たり、第1の反応機にクロトンアルデヒドとケテンを供給してラクトン化反応を開始し、得られるポリエステルを順次第2以降の反応機に導入すると共に、第2以降の反応機にはいずれもケテンを供給し、且つ最後の反応機のみで系の撹拌を行うことにより、工業的有利にポリエステルの連続反応が実施可能である。
【出願人】 【識別番号】000004101
【氏名又は名称】日本合成化学工業株式会社
【出願日】 平成12年12月21日(2000.12.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−187940(P2002−187940A)
【公開日】 平成14年7月5日(2002.7.5)
【出願番号】 特願2000−388642(P2000−388642)