トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 硬化性樹脂組成物
【発明者】 【氏名】菅 和生

【要約】 【課題】−10〜5℃の低温領域でも、硬化性、物性、接着性に優れ、硬化表面のタックが早期に低減され、低臭気で作業性も良好である、2液型の硬化性樹脂組成物の提供。

【解決手段】少なくとも下記化合物(A)、(B)、(C)、および(D)を含む硬化性樹脂組成物;
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも下記化合物(A)、(B)、(C)、および(D)を含む硬化性樹脂組成物;
(A)エポキシ化合物が有するオキシラン環の全部または一部をチイラン環に置換してなるチイラン化合物(B)硫黄および/または含硫黄化合物(C)アミン系硬化剤(D)3級アミン。
【請求項2】前記化合物(A)が、ビスフェノールF型エポキシ化合物のオキシラン環の20〜60%をチイラン環に変性したチイラン化合物である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】さらに、亜リン酸エステルを添加してなる請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】前記化合物(C)が、活性水素を有する脂肪族、脂環式、芳香族、および複素環式アミン系硬化剤と、ポリアミン系硬化剤と、変性ポリアミン硬化剤と、ポリアミドアミンとからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン系硬化剤である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】前記化合物(D)が、脂肪族3級アミン、および、複素環式3級アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】前記化合物(D)が、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール以外のフェノール性水酸基を少なくとも1個持つ芳香環を有する脂肪族3級アミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、および、トリエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は硬化性樹脂組成物に関し、特に、氷点下(0℃以下)における硬化性、室温おける速硬化性に優れ、硬化後に表面タックがなく接着強度に優れる硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】低温用、もしくは室温速硬化のエポキシ系接着剤として、エポキシ樹脂に各種硬化剤、触媒や、各種オリゴマーを配合した接着剤が提案されている。例えば、メタクリル酸誘導体やチオール化合物、イソシアネート化合物、あるいは特殊な3級アミンを硬化剤として用いることが提案されている。さらに、エポキシ樹脂に硫黄を分散させたり、含硫黄化合物と反応させて得られるエピスルフィド樹脂が用いられている。
【0003】しかし、メタクリル酸誘導体やチオール化合物を用いた接着剤は、氷点下で硬化するが、硬化触媒量が適正でないと未硬化となったり、硬化物が脆弱になったりする。また、臭気が高く作業環境を悪化させるという問題がある。一方、イソシアネート化合物や特殊な3級アミン(特開平11−60695号公報)を硬化剤として用いると、ポットライフが短く作業時間が制限されたり、0℃前後での硬化性、強度発現が不十分である等の問題がある。また、特開平11−140188号公報には、エピスルフィド基(チイラン環)を有する化合物が硬化剤を選択することにより低温(例えば−15〜5℃)での硬化性を得ることができると報告されているが、具体的にどの硬化剤を用いれば低温硬化性が得られるのかについて具体的事例の記載がされていない。また、Int.Polym.Sci.Technol.,20[8](1993)(英)T.105〜T.109には、エポキシ樹脂に硫黄を配合してエピスルフィド樹脂化することが報告されているが、得られるエピスルフィド樹脂では低温硬化性が十分ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、−10〜5℃の低温領域でも、硬化性、硬化物強度、接着性に優れ、硬化表面のタックが早期に低減され、低臭気で作業性も良好である、2液型の硬化性樹脂組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、少なくとも下記化合物(A)、(B)、(C)、および(D)を含む硬化性樹脂組成物を提供する;
(A)エポキシ化合物が有するオキシラン環の全部または一部をチイラン環に置換してなるチイラン化合物(B)硫黄および/または含硫黄化合物(C)アミン系硬化剤(D)3級アミン。
【0006】前記化合物(A)が、ビスフェノールF型エポキシ化合物のオキシラン環の20〜60%をチイラン環に変性したチイラン化合物であるのが好ましい。
【0007】さらに、亜リン酸エステルを添加するのが好ましい。
【0008】前記化合物(C)が、活性水素を有する脂肪族、脂環式、芳香族、および複素環式アミン系硬化剤と、ポリアミン系硬化剤と、変性ポリアミン硬化剤と、ポリアミドアミンとからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン系硬化剤であるのが好ましい。
【0009】前記化合物(D)が、脂肪族3級アミン、および、複素環式3級アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが好ましい。
【0010】前記化合物(C)が、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)以外のフェノール性水酸基を少なくとも1個持つ芳香環を有する脂肪族3級アミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、および、トリエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の硬化性樹脂組成物(以下、本発明の組成物という)は、(A)チイラン環を含有する化合物および(B)硫黄および/または含硫黄化合物を含む主剤成分と、(C)アミン系硬化剤および(D)3級アミンを含む硬化剤成分とからなる二液型の樹脂組成物である。
【0012】(A)チイラン化合物本発明に用いられる化合物(A)は、エポキシ化合物が有するオキシラン環の全部または一部をチイラン環に置換してなる化合物であり、分子内のオキシラン環の全部がチイラン環に置換され、チイラン環のみを有する化合物(A−1)、あるいは分子内のオキシラン環の一部のみがチイラン環に置換され、チイラン環とオキシラン環とを併有する化合物(A−2)のいずれであってもよい。
【0013】化合物(A)はエポキシ化合物より合成することができる。化合物(A)を得るために用いられるエポキシ化合物は、例えば、下記式(a)、(b)、(d)、(e)または(f)において、置換基Yが全て下記式(1)で表されるオキシラン環である化合物や、下記式(c)において、Zが酸素原子である化合物が挙げられる。なお、下記式(a)、(b)において、nは0または1以上の整数である。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】また、これらのエポキシ化合物は、分子内の水素原子またはその他の基がハロゲン原子で置換されたものであってもよい。例えば、下記式(g):【化4】

(式中、Halはハロゲン原子を示す)で表される化合物であってもよい。ハロゲン原子としては、臭素、塩素、フッ素等が挙げられる。
【0018】本発明において、化合物(A)は、前記式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、または(g)において、2以上のYの少なくとも1つが、下記式(2)で表されるチイラン環であり、チイラン環以外のYは上記式(1)で表されるオキシラン環である化合物や、上記式(c)においてZの少なくとも1つがSであり、他のZがOである化合物が挙げられる。
【0019】
【化5】

【0020】この化合物(A)の具体例として、下記式で表されるものが挙げられる。下記のそれぞれの式において、2以上のYの少なくとも1つが上記式(2)で表されるチイラン環であり、チイラン環以外のYは上記式(1)で表されるオキシラン環である化合物、またはZの少なくとも1つがSであり、他のZがOである化合物である。また、nは、0または1以上の整数である。
【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】上述の列挙した式の中でも、ビスフェノールF型のエポキシ化合物、さらに、グリジシルエーテル基がオルト位とパラ位、もしくはオルト位とオルト位に結合したビスフェノールF型のエポキシ化合物の異性体、ビスフェノールF型エポキシ化合物とエピクロルヒドリン樹脂とから合成される樹脂、フェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリン樹脂とから合成される樹脂等のビスフェノールF型系のエポキシ化合物のオキシラン環の20〜60%をチイラン環に変性したチイラン化合物が好ましい。このような化合物は、5℃以下の低温においても低粘度であり、本発明の組成物の調整が容易である。このようなチイラン化合物を用いて得られる本発明の組成物は、低温においても低粘度で作業性に優れているにもかかわらず、硬化時に水酸基とメルカプト基の両方の基を発生させることができ、高接着力を有するので好ましい。高接着力を示す組成物が得られる点で、ビスフェノールF型系のエポキシ化合物のオキシラン環の50%をチイラン環に変性したチイラン化合物がより好ましい。
【0027】この化合物(A)の製造は、上述のエポキシ化合物と、エピスルフィド化剤とを、極性溶媒中で、強攪拌下に反応させる方法にしたがって行うことができる。用いられるエピスルフィド化剤としては、例えば、チオシアン酸カリウム(KSCN)、チオ尿素等が挙げられる。
【0028】極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、水、あるいはこれらの混合溶媒等を用いることができる。特に、エピスルフィド化剤としてKSCNを用いる場合、分子内のオキシラン環の50%をチイラン環に変性した化合物(A−2)を得るためには、水/エタノールの2/1混合溶媒を用いるのが好ましい。また、分子内のオキシラン環の100%をチイラン環に変性した化合物(A−1)を得るためには、溶媒としてアセトンを用いるのが好ましい。
【0029】反応は、通常、10〜35℃の温度範囲、例えば、室温下、10〜40時間程度、例えば、20時間程度の反応時間で行うことができる。また、反応の雰囲気は、空気中でもよいし、窒素等の不活性雰囲気でもよい。
【0030】本発明の組成物の主剤成分には、上述の化合物(A)に加えて、エポキシ化合物を配合してもよい。エポキシ化合物を配合することにより、得られる本発明の組成物が、より優れた接着力を発現することができ、硬化物強度が大きくなり好ましい。エポキシ化合物としては、前述の化合物(A)を得るために用いられるエポキシ化合物として例示されるエポキシ化合物の全てが利用可能である。具体的には、化合物(A)の具体例として挙げられている上記全ての式の置換基Yが上記式(1)で表されるオキシラン環である化合物、または、すべてのZがOである化合物が例示される。nは0または、1以上の整数である。これらの中でも、接着性の観点から、分子内にオキシラン環を2個持つ2官能エポキシ化合物が好ましく、分子内にオキシラン環を2個持つ芳香族系の2官能エポキシ化合物がより好ましく、ビスフェノールF型のエポキシ化合物が低粘度であり作業性が良好であるので特に好ましい。
【0031】エポキシ化合物の添加量は、化合物(A)100重量部に対し、0〜200重量部であるのが好ましく、50〜150重量部であるのがより好ましい。この範囲内であると、得られる本発明の組成物の接着強度、硬化物強度に優れるので好ましい。
【0032】<亜リン酸エステル>本発明の組成物の主剤成分には、上述の化合物(A)に加えて、亜リン酸エステルを含有することが出来る。主剤成分に亜リン酸エステルを配合することにより、得られる本発明の組成物の低温硬化性、接着性を損なうことなく、主剤成分の貯蔵安定性を良好とすることができる。チイラン環を有する化合物は、チイラン環が水分により開環して発生するチオール基が化学的に反応性の高い置換基であるため、チオール基とチイラン環との自己重合が起こりやすいが、チイラン環を有する化合物に亜リン酸エステルを配合すると、亜リン酸エステルに含まれるリン原子と、チイラン環が開環して生成するチオール基に含まれる硫黄原子との相互作用により、チオール基が安定化され、チオール基とチイラン環との自己重合が抑制されて、チイラン含有樹脂の貯蔵安定性が向上すると考えられる。また、亜リン酸エステルは、液状化合物で粘度が低い。一方、本発明に用いられる、チイラン環を有する化合物(A)は、チイラン環の代わりにオキシラン環を有するエポキシ化合物に比して、粘度が高く、また結晶化もしやすい。したがって、化合物(A)に、亜リン酸エステルを添加すると、化合物(A)が容易に結晶化することを低減でき、化合物(A)を含有する組成物の粘度を低くでき、作業性が良好となり、好ましい。
【0033】本発明に用いることのできる亜リン酸エステルは、ホスホン酸のエステルである各種の化合物が使用できるが、中でも、下記式(3)および(4)で表される亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の亜リン酸エステルを用いるのが好ましい。
【0034】
【化11】

【0035】式中、R1 〜R5 は、それぞれ炭素数30以下の炭化水素基を表す。
【0036】具体的には、式(3)で表される化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト等;式(4)で表される化合物としては、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等;が挙げられ、これらのトリエステル体、または、これらトリエステル体を部分的に加水分解したジ−、あるいはモノエステル体も用いることができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの亜リン酸エステルは、リン原子周辺の立体障害が小さい。
【0037】貯蔵安定性の観点から、上述の式(3)および(4)で表される亜リン酸エステルの中で、エステル部分(−P−O−R)の少なくとも1つが、ベンゼン環等の芳香環を含む構造であるものが、特に好ましい。芳香環が置換基を有する場合は、置換基は炭素数1〜6のアルキル基であるのが好ましく、置換位置はメタ位もしくはパラ位であるのが好ましい。また、式(4)で表される化合物では、エステル部分(−P−O−R)にアルキル基を含む構造であるものも好ましい。式(3)で表される化合物の中でも、ジアリールモノアルキルホスファイトが、また、式(4)で表される化合物の中でも、ジアリールペンタエリスリトールジホスファイト、あるいは、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイトの化学構造をとるものが、それぞれ貯蔵安定性の効果が大きく好ましい。具体的には、ジアリールモノアルキルホスファイトとしては、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が、ジアリールペンタエリスリトールジホスファイトとしては、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイトとしては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0038】また、相溶性の観点からは、上述の式(3)および(4)で表される亜リン酸エステルの中で、エステル部分(−P−O−R)の少なくとも1つが、ベンゼン環等の芳香環を含む構造であるものが好ましい。芳香環が置換基を有する場合は、置換基は炭素数1〜6のアルキル基であるのが好ましく、置換位置はメタ位もしくはパラ位であるのが好ましい。このような亜リン酸エステルとして、例えば、式(3)で表される化合物としては、ジアリールモノアルキルホスファイト、モノアリールジアルキルホスファイト等が、また、式(4)で表される化合物としては、アリールモノアルキルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。具体的には、ジアリールモノアルキルホスファイトとしては、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が、モノアリールジアルキルホスファイトとしては、フェニルジデシルホスファイト等が、アリールモノアルキルペンタエリスリトールジホスファイトとしては、ビスフェニルトリデシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0039】亜リン酸エステルとしては、市販品を利用することもでき、例えば、城北化学社製のJPM−308、JPM−311、JPM−313、JPP−13、JPP−31等が挙げられる。
【0040】亜リン酸エステルの添加量は、化合物(A)100重量部に対し、0.1〜30重量部であるのが好ましく、0.5〜30重量部であるのがより好ましく、3〜10重量部であるのが更に好ましい。0.1重量部未満では、貯蔵安定性の効果がなく、30重量部を超えると、硬化性および接着性が低下する。
【0041】(B)硫黄および/または含硫黄化合物本発明の組成物の主剤に含有される(B)硫黄および/または含硫黄化合物としては、各種硫黄、含硫黄化合物を用いることが出来、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、および、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸塩、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド、ポリフェニレンサルファイド等の含硫黄化合物が例示される。
【0042】本発明の組成物が(B)硫黄および/または含硫黄化合物を含有することにより、得られる本発明の組成物の室温硬化性が優れたものとなり、また、組成物硬化後の表面タックが早期に低減され、早期に硬化物強度が発現される。これは、硫黄および/または含硫黄化合物を配合することにより、硫黄および/または含硫黄化合物が、後述する(C)アミン系硬化剤から活性水素を奪い、アミン系硬化剤のカチオン性を高め、チイラン環とオキシラン環、特にチイラン環との反応性を高めるためと考えられる。室温速硬化性、硬化物表面タックの早期低減の観点より、硫黄および/または含硫黄化合物の添加量は、化合物(A)100重量部に対し、1〜40重量部であるのが好ましく、3〜15重量部であるのがより好ましい。
【0043】(C)アミン系硬化剤アミン系硬化剤としては、分子内に活性水素を少なくとも1個有するアミン化合物、すなわち、1級アミン、もしくは2級アミンを用いることができる。アミン系硬化剤の具体例としては、1級アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン(MDA)、イソフォロンジアミン(IPDA)、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン(N−AEP)、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン;等の脂環式ポリアミン;
【0044】メタキシリレンジアミン等の芳香環を含む脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ〔5.5〕ウンデカン等の複素環式ポリアミン;アミンアダクト(ポリアミンエポキシ樹脂アダクト)、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、シアノエチル化ポリアミン、脂肪族ポリアミンとケトンとの反応物であるケチミン等の変性ポリアミン;ダイマー酸やフェニル酢酸等のカルボン酸とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の飽和脂肪族、あるいは、脂環式ポリアミンとを反応させてなるポリアミドアミン;2級アミンとしてピペリジン等の脂環式アミン系硬化剤、N−メチルピペラジン、モルホリン等;などが挙げられる。
【0045】(C)アミン系硬化剤としては、上述の活性水素を有する脂肪族、脂環式、芳香族、および複素環式アミン系硬化剤と、ポリアミン系硬化剤と、変性ポリアミン硬化剤と、ポリアミドアミンとからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン系硬化剤であるのが好ましい。上述のアミン系硬化剤は、1種単独でも、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0046】好ましいアミン系硬化剤の中でも、特に、脂環式脂肪族ポリアミンを少なくとも1種配合すると、得られる組成物はポットライフが長く、かつ、低温でも硬化速度が速く、低温でもポットライフと硬化時間のバランスの良い組成物とすることができる。脂環式脂肪族ポリアミンは、他のアミン系硬化剤と併用してもよいし、単独で用いてもよい。脂環式脂肪族ポリアミンの具体例としては、メンセンジアミン(MDA)、イソフォロンジアミン(IPDA)、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン(N−AEP)等、その変性体である、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン・ビスフェノールAジグリシジルエーテル付加物等が挙げられる。
【0047】(D)3級アミンエポキシ化合物やチイラン化合物に、上述の1級アミン、あるいは2級アミンを硬化剤として加えた組成物は、常温(20℃)で良好な硬化性を示し、硬化物は高接着強度を示す。しかし、0℃といった低温では架橋反応を起こさず硬化物は得られない。硬化触媒としてさらに3級アミンを加えると、エポキシ化合物の場合は、常温では硬化物を得られるが硬化物強度が低く脆い。0℃といった低温では、架橋せず硬化物は得られない。これに対し、チイラン化合物の場合は、さらに3級アミンを加えることで、常温では高強度の硬化物が得られ、低温でも架橋反応を起こし、さらに優れた接着性を示す。
【0048】本発明に用いられる(C)3級アミンとしては、テトラメチルエチレンジアミン等の直鎖状ジアミン、ジメチルエチルアミン等の直鎖第3アミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン等のエタノールアミン、トリエチルアミン等のアルキルtertモノアミン、ベンジルジメチルアミン等の脂肪族3級アミンや2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)等のフェノール性水酸基を少なくとも1つ持つ芳香環を有する脂肪族第3アミン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザジシクロ(2,2,2)オクタン、トリエチレンジアミン(TEDA)、ピリジン、ピコリン、1.8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン(DBU)等の複素環式3級アミン等が挙げられる。
【0049】3級アミンとしては、脂肪族3級アミン、複素環式3級アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが好ましい。特に、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、DMP−30以外のフェノール性水酸基を少なくとも1つ含む芳香環を有する脂肪族第3アミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン(DBU)、および、トリエチレンジアミン(TEDA)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが、特に塩基性が高く硬化促進効果に優れるので好ましい。また、DBUとDMP−30との併用、TEDAとDMP−30との併用がさらに接着性、硬化性に優れ好ましい。
【0050】本発明の組成物の硬化剤成分としては、本発明の目的を損なわない範囲で、エポキシ化合物の硬化剤として一般的に用いられる、例えば、酸または酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、イミダゾール類、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(TMTP)等のポリチオール系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の紫外線硬化剤などを配合してもよい。
【0051】本発明の組成物を硬化させるために用いられる(C)アミン系硬化剤の配合量は、本発明の組成物の主剤成分に含まれるチイラン環とオキシラン環の合計に対して、当量比((C)アミン系硬化剤に含まれるアミノ基/主剤成分中のチイラン環とオキシラン環)で0.1〜1.5の割合となる量が好ましく、0.3〜0.8であるのがより好ましい。この範囲であれば、貯蔵安定性、硬化性ともに良好である。また得られる硬化物の接着強度も高いものとなり好ましい。なお、アミン系硬化剤以外の硬化剤をさらに用いる場合は、それらの硬化剤の硬化反応に関与する官能基をアミノ基に加えての当量比とする。
【0052】また、本発明の組成物に含有される(D)3級アミンの含有量は、硬化触媒であるので、含有量は一定せず、それぞれの3級アミン化合物により決定される。例えば、DMP−30であれば、(A)チイラン化合物に対し、もしくは、本発明の組成物がエポキシ化合物をさらに含有している場合は、(A)チイラン化合物とエポキシ化合物の合計100重量部に対し、0.5〜15重量部が好ましく、2〜8重量部がより好ましい。
【0053】本発明の組成物の主剤成分、硬化剤成分には、上述の必須の化合物(A)〜(D)以外に、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。例えば、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料、染料、チクソトロピー性付与剤、接着性付与剤、難燃剤、帯電防止剤、分散剤、溶剤等を配合することができる。
【0054】充填剤としては、各種形状のものを使用することができ、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグレシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラックなどの有機または無機充填剤が挙げられ、またこれらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。
【0055】可塑剤としては、ジオクチルフタレート(DOP) 、ジブチルフタレート(DBP) ;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT) 、ブチルヒドロキシアニソール(BHA) 等が挙げられる。老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
【0057】顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料などが挙げられる。
【0058】チクソトロピー性付与剤としては、例えば、エアロジル(日本エアロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)、炭酸カルシウム、テフロン(登録商標)等を、また帯電防止剤としては、一般的に、第4級アンモニウム塩、あるいはポリグリコールやエチレンオキサイド誘導体などの親水性化合物を挙げることができる。
【0059】接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペンーフェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0060】難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0061】本発明の組成物の製造方法は、特に限定されないが、好ましくは主剤成分に含まれる上述の各成分、硬化剤成分に含まれる各成分を、それぞれ減圧下または窒素雰囲気下に、混合ミキサー等の攪拌装置を用いて充分混練し、均一に分散させる方法が例示され、このようにして得られた主剤成分と硬化剤成分とを別体として密封容器に保存し、使用時に両者を所定の割合で混合して、組成物の調合して用いる。
【0062】本発明の硬化性樹脂組成物は、主剤成分である(A)チイラン化合物が、硬化時にチイラン環の開環により、水酸基よりも高い酸性度を有するチオール基を生じるため、従来のエポキシ樹脂系接着剤よりも高い接着力を示し、かつ、チイラン環がオキシラン環よりも高反応性であるため、5℃以下、さらには−10〜0℃の低温下においても優れた硬化性を示す。このため、本発明の組成物を土木建築用の接着剤として用いると冬季あるいは低温地での工事期間の短縮が可能である。また、チイラン環の反応性のために、用いる硬化剤の量が、チイラン環を含まないオキシラン環のみの場合よりも少量ですみ、原料コストを低くおさえることができる。また、従来の低温用の接着剤組成物と比べ、臭いが少ない。
【0063】また、本発明の硬化性樹脂組成物は、主剤成分に(A)チイラン化合物と共に(B)硫黄および/または含硫黄化合物を含有し、硬化剤成分として(C)アミン系硬化剤に(D)3級アミンからなる硬化触媒を併用することにより、低温領域でもチイラン化合物の架橋反応が起こり、完全なゲル状の硬化物を得ることが出来、硬化物表面のタックが早期に軽減され、室温下では速硬化性に優れる。また、室温ではもちろん低温でも、対モルタル、ゴム、金属、プラスチック、陶器、ガラス等の各種被着体との接着性に優れる。特に、(D)3級アミンとして、脂肪族3級アミン、複素環式3級アミン、具体的には、DMP−30、DMP−30以外のフェノール性水酸基を少なくとも1個以上持つ芳香環を有する脂肪族3級アミン、DBU、TEDAを用いることにより、氷点下においても接着性、硬化性に優れる組成物を得ることが出来る。
【0064】(A)チイラン化合物が、ビスフェノールF型エポキシ化合物のオキシラン環を特定割合、チイラン環に変性した化合物からなる本発明の組成物では、(A)チイラン化合物が常温でも氷点下といった低温でも粘度が非常に低く、加工性、作業性が良好で、貯蔵中に結晶化を起こしにくく好ましい。(A)チイラン化合物に亜リン酸エステルを添加してなる本発明の組成物では、反応性の高い(A)チイラン化合物が保存中、結晶化することを低減でき、また、得られる本発明の組成物の粘度を低くできる。このような本発明の組成物は、室温においても低温(例えば5℃以下)、特に氷点下(0℃以下)という低温においても硬化性に優れるので、ゴム、金属、プラスチック、陶器、またはガラス用、あるいは、土木建築用の低温硬化型の接着剤組成物として好適である。
【0065】
【実施例】以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0066】(実施例1〜3、比較例1〜2)下記第1表に示される配合で組成物を調整した。得られた組成物について、下記の方法により、室温における硬化性、低温における硬化性、接着性を評価した。
【0067】<室温硬化性(指触硬化性)>実施例、比較例で得られた組成物を、長さ30cm×巾2.5cmの寸法のガラス板に膜厚0.1mmで塗布した。室温(20℃)下、ドライビングレコーダーを用い、塗膜表面を針で引っかいて塗膜表面に傷がつき始めてから、塗膜の硬化が進み、塗膜に傷がつかなくなるまでの傷の長さを測定し、これより塗膜の指触硬化時間[min]を算出した。結果を第1表に示す。指触にて表面にタックが残っているかを確かめたところ、得られた組成物すべてについて、硬化時には表面のタックはなかった。
【0068】<低温硬化性(指触硬化性)>実施例1〜2、比較例1〜2で得られた組成物については0℃で、実施例3で得られた組成物については−10℃で、上述の室温硬化性の測定方法と同様にして測定を行い、指触硬化時間[hr]を算出した。結果を第1表に示す。指触にて表面にタックが残っているかを確かめたところ、実施例1〜3により得られた組成物について、硬化時に表面のタックはなかった。比較例1〜2で得られた組成物については、硬化時に表面のタックがあり、室温に戻すと、未硬化で液状であった。
【0069】<低温接着性(対モルタル接着性)>2個のモルタルブロック体を用意し、実施例、比較例で得られた組成物を、モルタルブロック体に1インチ(2.54cm)×1インチの面積にて塗布して2個のモルタルブロック体を接合し、0℃で16時間養生し、20℃で1時間養生後、JIS K 6852に記載の方法に準拠して、破壊試験を行った。結果を第1表に示す。
【0070】
【表1】

【0071】表中、「未硬化/24hr」とは、24時間経過後、未硬化であったことを示す。
【0072】<表中の各成分>チイラン化合物:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EP4901、旭電化社製)のオキシラン環の50%をチイラン環に変性した化合物100重量部に対し、亜リン酸エステル(ジフェニルモノデシルホスファイト)を3重量部含有するもの。
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EP4901、旭電化社製)、エポキシ当量170【0073】アミン系硬化剤■:変性脂肪族ポリアミン系硬化剤(EH−262W−2、旭電化社製)
アミン価420アミン系硬化剤■:変性ポリアミン系硬化剤(D−5654−D、大都産業社製)
アミン価3583級アミン■:1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン(DBU)
3級アミン■:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)
【0074】
【発明の効果】本発明の硬化性樹脂組成物は、5℃以下、更には氷点下(−10〜0℃以下)における硬化性に優れ、高い接着力を示し、室温下における速硬化性に優れる。また、完全なゲル状の硬化物を与え、早期に硬化物表面のタックが軽減され、硬化物強度を発現する。このような本発明の組成物は、ゴム、金属、プラスチック、陶器、ガラス用、あるいは、土木建築用の低温硬化型の接着剤組成物として好適である。
【出願人】 【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
【出願日】 平成12年12月6日(2000.12.6)
【代理人】 【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔 (外1名)
【公開番号】 特開2002−173533(P2002−173533A)
【公開日】 平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願番号】 特願2000−371385(P2000−371385)