| 【発明の名称】 |
高ニトリル系重合体ラテックス、高ニトリル系重合体、及び基材−高ニトリル系重合体積層体 |
| 【発明者】 |
【氏名】石川 和眞
【氏名】金子 昌弘
【氏名】黒田 恭次
【氏名】成澤 宏彰
【氏名】秋山 聡
【氏名】染田 誠
【氏名】伊藤 信行
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| 【要約】 |
【課題】優れた低温造膜性及びガスバリア性を兼ね備えた高ニトリル系重合体、該高ニトリル系重合体が水媒体中に乳化したラテックス、及び該高ニトリル系重合体−基材の積層体を提供する。
【解決手段】不飽和ニトリル単位約65〜80重量%、及び一般式(1) |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水媒体中に高ニトリル系重合体が乳化したラテックスであって、高ニトリル系重合体が、不飽和ニトリル単位約65〜80重量%、及び、一般式(1)[化1] 【化1】
(式中、nは1〜4の整数、R1はOH、又はCNを示す)で表されるアクリル酸エステル単位約20〜35重量%を含むことを特徴とする高ニトリル系重合体ラテックス。 【請求項2】 不飽和ニトリル単位がアクリロニトリル単位である請求項1記載の高ニトリル系重合体ラテックス。 【請求項3】 高ニトリル系重合体の固形分濃度が約10〜50重量%である請求項1記載の高ニトリル系重合体ラテックス。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高ニトリル系重合体ラテックスを乾燥させて得られる高ニトリル系重合体であって、温度23℃、相対湿度0〜85%の条件下における酸素透過率が0.3〜1.8cm3・mm/(m2・day・MPa)であることを特徴とする高ニトリル系重合体。 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高ニトリル系重合体ラテックスを基材表面に塗工、乾燥させて得られる基材−高ニトリル系重合体積層体であって、温度23℃、相対湿度0〜85%の条件下における酸素透過率が2.5〜30cm3・mm/(m2・day・MPa)であることを特徴とする基材−高ニトリル系重合体積層体。 【請求項6】 基材が、ポリエステル、ポリアミド、及びポリオレフィンから選ばれた樹脂フィルムであり、積層体の酸素透過率が2.5〜20cm3・mm/(m2・day・MPa)である請求項5記載の基材−高ニトリル系重合体積層体。 【請求項7】 樹脂フィルムが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、積層体の酸素透過率が2.5〜8cm3・mm/(m2・day・MPa)である請求項6記載の基材−高ニトリル系重合体積層体。 【請求項8】 基材の厚みが10〜60μm、高ニトリル系重合体の厚みが2〜10μmである請求項5記載の基材−高ニトリル系重合体積層体。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高ニトリル系重合体ラテックス、該高ニトリル系重合体ラテックスを乾燥させて得られる高ニトリル系重合体、及び、該高ニトリル系重合体ラテックスを基材表面に塗工、乾燥させて得られる基材−高ニトリル系重合体積層体に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、不飽和ニトリル単位を高い割合で含む高ニトリル系共重合体を鋼板等の基材に塗工して、基板との積層体を製造する技術は公知である。例えば、米国特許第4,329,401号公報には、NBRゴム、あるいはSBRゴムにアクリロニトリル及びアクリル酸メチルをグラフト重合させて得られた高ニトリル系乳化重合体ラテックスを鋼板、アルミニウム板等にコーティングすることを開示している。高ニトリル系乳化重合体ラテックスを鋼板、アルミニウム板等にコーティングすることにより、強い防錆効果を付与するとされている。 【0003】また、特開昭59−166517号公報には、オレフィン系不飽和ニトリルと少なくとも1種のアクリル酸エステル、特にアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルまたはその混合物との混合比率を変えて、2段に分けて共重合を行い、ポリオレフィン系不飽和ニトリルを含む、造膜性を示す高ニトリル系重合体ラテックスの製造方法が開示されている。該発明によれば、1段目の重合と2段目の重合で生成したラテックス同士の合着により、連続で完全なフィルムを形成し得る最低造膜温度(MFT)を少なくとも10℃以上下げる事が可能となり、低温造膜性に優れた高ニトリル系重合体ラテックスが製造することができることが開示されている。しかしながら、該発明に開示された高ニトリル系重合体ラテックスは、造膜性は良好であるが、ガスバリア性能が不十分であった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】通常、高ニトリル系重合体の造膜性を良好とするには、共重合体の分子量を低下させて、ガラス転移点を低くする方法が採られる。しかし、この方法のみでは、ガスバリア性能は改善されない。例えば、アクリロニトリルとアクリル酸アルキルエステル共重合体において、直鎖状アルキル基を持つアクリル酸エステルを使用した場合、共重合体の分子量を低下させると、造膜性は改善されるが、酸素透過度についてはほとんど改善されない。一方、アクリル酸アルキルエステルのアルキル鎖長を長くした場合、共重合体のガラス転移点が低下し、低温造膜性に優れる共重合体を得ることができる。しかし、アルキル基自身の嵩高さによるシアノ基同士の双極子相互作用の低下により、共重合体の酸素透過度は上昇する傾向を示し、ガスバリア性を改良する観点から好ましくない。 【0005】本発明の目的は、上記問題に鑑み、優れた低温造膜性及びガスバリア性を兼ね備えた高ニトリル系重合体、該高ニトリル系重合体が水媒体中に乳化したラテックス、及び該高ニトリル系重合体−基材の積層体を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、高ニトリル系共重合体の組成として、アルキル鎖末端に官能基を持つアクリル酸エステル共重合成分を導入することにより、ガスバリア性を低下させることなしに、重合体のガラス転移点を低下することができ、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到った。 【0007】即ち、本発明は、水媒体中に高ニトリル系重合体が乳化したラテックスであって、高ニトリル系重合体が、不飽和ニトリル単位約65〜80重量%、及び、一般式(1)[化2] 【0008】 【化2】
【0009】(式中、nは1〜4の整数、R1はOH、又はCNを示す)で表されるアクリル酸エステル単位約20〜35重量%を含むことを特徴とする高ニトリル系重合体ラテックスである。 【0010】上記本発明の好ましい態様として、不飽和ニトリル単位がアクリロニトリル単位である前記高ニトリル系重合体ラテックス、及び、高ニトリル系重合体の固形分濃度が約10〜50重量%である前記高ニトリル系重合体ラテックスが挙げられる。 【0011】本発明の第2発明は、前記各発明に係わる高ニトリル系重合体ラテックスを乾燥させて得られる高ニトリル系重合体であって、温度23℃、相対湿度0〜85%の条件下における酸素透過率が0.3〜1.8cm3・mm/(m2・day・MPa)である高ニトリル系重合体である。 【0012】また、本発明の第3発明は、前記各発明に係わる高ニトリル系重合体ラテックスを基材表面に塗工、乾燥させて得られる基材−高ニトリル系重合体積層体であって、温度23℃、相対湿度0〜85%の条件下における酸素透過率が2.5〜30cm3・mm/(m2・day・MPa)である基材−高ニトリル系重合体積層体である。該本発明の好ましい態様として、基材が、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリアミドから選ばれた樹脂フィルムであり、積層体の酸素透過率が2.5〜20cm3・mm/(m2・day・MPa)である前記基材−高ニトリル系重合体積層体、樹脂フィルムが、二軸延ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、積層体の酸素透過率が2.5〜8cm3・mm/(m2・day・MPa)である前記基材−高ニトリル系重合体積層体が挙げられる。本発明において、基材の厚みが10〜60μm、高ニトリル系重合体の厚みが2〜10μmであることが好ましい。 【0013】本発明の特徴は、高ニトリル系重合体が、上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル単位の特定量を含むことに有る。即ち、高ニトリル系重合体の構成成分として、アルキル鎖末端に官能基を持つアクリル酸エステル単位を導入することにより、高ニトリル系重合体のガラス転移点を低下させること、及び、高ニトリル系重合体の凝集エネルギー密度を高くすることが可能となるのである。そのため、本発明に係わる高ニトリル系重合体ラテックス、及び、該ラテックスを乾燥させて得られる高ニトリル系重合体は、優れた低温造膜性とガスバリア性を有する。また、本発明に係わる高ニトリル系重合体ラテックスを基材表面に塗工、乾燥させて得られる基材−高ニトリル系重合体積層体は、優れたとガスバリア性を有する。よって、これらは、各種包装資材などとして極めて有用である。 【0014】 【発明の実施形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明に係わる高ニトリル系重合体ラテックスは、水、乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤、pH調節剤などを含む反応系において、特定量の不飽和ニトリル、及び上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステルを含む単量体混合物を共重合することにより製造される。重合機構としては乳化重合が好ましい。単量体混合物には、不飽和ニトリル、又は上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体を含んでも良い。 【0015】本発明に用いる不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−メチレンペンタンジニトリル、2−ブテンニトリル等が挙げられる。好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリルである。更に好ましくはアクリロニトリルである。 【0016】本発明に係わる高ニトリル系重合体は、上記不飽和ニトリルに対し、特定量の上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステルを共重合することにより得られる。一般式(1)において、ここで、nは1〜4の整数であり、R1はOH、又はCNを示す。具体的には、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸4−シアノブチル等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−シアノエチルである。これらは単独で用いても良いし、また、混合して用いてもよい。 【0017】不飽和ニトリル、及び一般式(1)で表されるアクリル酸エステルの使用量は、得られる重合体のガスバリア性、及び低温造膜性を考慮すると、不飽和ニトリル65〜80重量%、及び一般式(1)で表されるアクリル酸エステル20〜35重量%を含む単量体混合物が好ましい。かかる組成の単量体混合物を用いることにより、単量体組成にほぼ等しい組成の共重合体が得られる。 【0018】本発明には、不飽和ニトリル、及び一般式(1)で表されるアクリル酸エステルの他、本発明の目的を損なわない範囲において、これらと共重合し得る他の単量体を共重合しても良い。他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これら、他の単量体の使用量は、不飽和ニトリル、及び一般式(1)で表されるアクリル酸エステルの総量100重量部に対し、約0〜10重量部程度が好ましい。 【0019】本発明に使用する重合開始剤について特に制限はなく、乳化重合に適用可能な公知のラジカル重合開始剤が用いられる。例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物に代表される単一開始剤、あるいは、過酸化水素、有機過酸化物等からなる酸化剤と、還元糖、還元糖の酸誘導体、還元性硫黄化合物、遷移金属化合物で形成される群から選定される還元剤の系からなるレドックス開始剤を含む二元系開始剤の使用が好ましい。一方、重合開始剤の添加量は、全単量体混合物100重量部に対して単一開始剤では0.02〜0.2重量部、二元系開始剤では酸化剤、還元剤の総量として0.04〜0.5重量部の使用が好ましい。 【0020】本発明に使用する分子量調節剤としては、アルキルメルカプタン類、例えば、n−ドデシルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、n−ドデシルチオールアセタート、ペンタエリスリトールテトラキス(β―メルカプトプロピオネート)、リモネンジメルカプタン等が挙げられる。これらのうち、好ましくは揮発性が低く、メルカプタン臭気が実質的にない点から1分子内に2個以上のメルカプト基を含有する有機メルカプト化合物、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(β―メルカプトプロピオネート)、リモネンジメルカプタン等が挙げられる。そのうち、好ましいものは、ペンタエリスリトールテトラキス(β―メルカプトプロピオネート)である。分子量を低分子量側に調整するために必要な分子量調節剤添加量の好ましい範囲は、単量体総量100重量部に対して約2〜10重量部である。さらに好ましくは約5〜7重量部である。 【0021】本発明における乳化重合は空気の存在下で実施可能であるが、反応速度は通常、酸素が無い方が好ましく、真空容器中、あるいは、還流下において、あるいは窒素、二酸化炭素などの不活性な雰囲気下で重合を行う事が好ましい。重合を行う温度については、約40℃〜約80℃の温度範囲が好ましい。また、重合系のpHはシアノ基の分解を抑えるため、好ましくはpHを2〜7、さらに好ましくは2.5〜3.5の範囲で制御されることが好ましい。 【0022】本発明において、高ニトリル系重合体ラテックスを得るための乳化重合反応を実施するには、この他に乳化剤、分散剤等が使用される。その種類及び量は公知のものが適用される。その他、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、無機充填剤、造膜助剤、界面活性剤、金属酸化物のコロイドまたは粉末、染料、着色顔料等の添加剤を必要に応じて重合前や重合中、重合後に添加する事も可能である。 【0023】重合反応系に添加する水の量は、得られる重合体ラテックスの固形分濃度に関係する。重合体ラテックスの固形分濃度が低いと、これを基材に塗工して積層体を製造する際に塗膜の厚みを厚くし難くなる。また、固形分濃度が高いとラテックスの安定性が低下して安定なラテックスが得難い。かかる観点から、本発明に係わる高ニトリル系重合体ラテックスの固形分濃度は10〜50重量%であることが好ましい。そのため、重合反応系に添加する水の量は、全単量体量100重量部に対し、約100〜900重量部が好ましい。 【0024】本発明に係わる高ニトリル系乳化重合体ラテックスは、上記原料を用いて、通常、約40〜80℃において、約6〜24時間重合することにより製造される。重合機構は乳化重合が好ましい。単量体の転化率は87重量%以上が好ましい。未反応の単量体は可能な限り系外に除去する。 【0025】本発明に係わる高ニトリル系乳化重合体は、前記高ニトリル系乳化重合体ラテックスから重合体を分離、乾燥することにより得られる。重合体を分離する方法には特に制限はなく、公知の方法が適用できる。例えば、硫酸アルミニウム等の塩析剤を添加して重合体を析出し、濾過、乾燥する方法、噴霧乾燥機等を用いてラテックスを直接乾燥する方法等が挙げられる。 【0026】本発明に係わる高ニトリル系重合体は、不飽和ニトリル単位65〜80重量%、及び上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル単位20〜35重量%を含む。かかる組成の高ニトリル系重合体は、温度23℃、相対湿度0〜85%の条件下において、酸素透過度が0.3〜1.8cm3・mm/(m2・day・MPa)である。また、重量平均分子量は10000〜60000であることが好ましい。さらに好ましくは20000〜40000である。 【0027】高ニトリル系重合体の酸素透過率、及び低温造膜性は、不飽和ニトリル単位の含量、及び上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル単位の含量に大きく影響される。即ち、不飽和ニトリル単位の含量が65重量%未満、該アクリル酸エステル単位の含量が35重量%を超えると、高ニトリル系重合体ラテックスを乾燥させて得られる塗膜単体の酸素透過率は1.8cm3・mm/(m2・day・MPa)(23℃、RH85%)を超えて、ガスバリア性が低下する。また、不飽和ニトリル単位の含量が80重量%を超え、該アクリル酸エステル単位の含量が20重量%未満であると、塗膜単体の酸素透過率は0.3cm3・mm/(m2・day・MPa)(23℃、RH85%)未満となり、ガスバリア性は向上する。しかし、重合体のガラス転移点が上昇し、高ニトリル系重合体ラテックスの加熱乾燥における低温造膜性が著しく悪くなり、低温において塗膜の形成が困難となる。かかる点を考慮すると、高ニトリル系乳化重合体は、65〜80重量%の不飽和ニトリル単位、20〜35重量%の上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル単位を含有することが好ましい。さらに好ましくは、不飽和ニトリル単位の含量が65〜75重量%、及び該アクリル酸エステル単位の含量が25〜35重量%である。 【0028】最後に本発明に係わる基材−高ニトリル系重合体積層体について説明する。本発明に係わる基材−高ニトリル系重合体積層体は、基材の少なくとも片面に、前記高ニトリル系重合体ラテックスを塗工、乾燥して、高ニトリル系重合体の塗膜を形成することにより製造される。塗工方法には特に制限はなく、公知の塗布方法が適用できる。 【0029】本発明の高ニトリル系重合体ラテックスは、低温における塗膜性、即ち、低温造膜性に優れる。そのため、約100〜200℃の乾燥温度において、塗膜を乾燥することにより、均質な高ニトリル系重合体塗膜を形成することができる。 【0030】本発明に用いる基材としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂のシート、又はフィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂等が挙げられる。 【0031】熱硬化性樹脂としては、ノボラック等のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの内、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリアミド樹脂が好ましい。特に好ましくは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。 【0032】通常、基材の厚みは約10〜60μm、その少なくとも片面に形成される高ニトリル系重合体塗膜の厚みは約2〜10μmである。本発明に係わる基材−高ニトリル系重合体積層体の酸素透過率は、基材の種類及び高ニトリル系重合体塗膜の厚みに影響を受けるが、上記基材、塗膜厚み及び塗膜の酸素透過率が0.3〜1.8cm3・mm/(m2・day・MPa)(23℃、RH0〜85%)であれば、約2.5〜20cm3・mm/(m2・day・MPa)(23℃、RH0〜85%)程度である。また、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)フィルムと高ニトリル系重合体との積層体の酸素透過率は、約2.5〜8cm3・mm/(m2・day・MPa)(23℃、RH0〜85%)程度である。 【0033】 【実施例】以下、実施例を示して本発明について更に詳細に説明する。尚、実施例に示した特性は下記方法により測定した値である。 【0034】(1)単量体転化率(重量%)、 及び重合体組成(重量%) <転化率>:重合系に最終的に添加される各単量体の総量を基準とした、所定の時点または重合終了時点までに、重合により生成したポリマーの累積量の割合を重量%で示し、重合系における単量体の添加総量と重合系に残存する各単量体濃度から算出する。 <重合体組成>:重合終了時点で、各単量体の添加量と重合系内の各単量体残存量から各単量体の反応量を算出し、その合計量に対する各単量体の反応量(各単量体単位)の重量比をポリマー組成とする。なお、重合系に存在する各単量体の量は、当該時点における乳化重合液をガスクロマトグラフ(島津製作所製、型式:GC−9A、GC−14A)により分析して求める。 【0035】(2)高ニトリル系重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn) 実施例及び比較例で得られたラテックスを乾燥して得られた高ニトリル系重合体約7.0mgを、純度99.8重量%臭化リチウム10mmolを超音波振動により予め溶解させた純度99.5重量%以上のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液約3.0mlに溶解静置し、その溶液をゲル浸透クロマトグラフ(Waters社製、型式:GPC150−C)を用いて23℃で分離して、ポリメタクリル酸メチル換算重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布指数(Mw/Mn)を求める。 【0036】(3)基材−高ニトリル系重合体積層体の乾燥塗膜外観実施例及び比較例で得られた積層体の塗膜の表面を目視にて観察し、以下のように判定する。○:完全に造膜しており問題なし、△:造膜しているが一部白くモヤがかかった状態、×:塗膜のほとんどで白くモヤがかかって造膜が不完全である。 【0037】(4)積層体及び塗膜層の酸素透過率(cm3・mm/(m2・day・MPa)) 実施例及び比較例で得られた基材−高ニトリル系重合体積層体、及び、該積層体の塗膜層について、酸素透過度測定装置(Modern Controls社製、形式:OX−TRAN100)を用いて、温度23℃、相対湿度0%、50%、85%における酸素透過度(cm3/(m2・day・MPa))をASTMD3985、及びJIS K7126(B法)に準拠して測定する。この酸素透過度と、実測により得られた積層体の全体厚みL(total)を掛けて積層体の酸素透過率P (total)を算出し、これを元に、以下の計算式により、塗膜層の酸素透過率P(coat)を算出する。試料3個について測定し、その平均値で示す。 L(total)/P(total) =L(coat)/P(coat)+L(base)/P(base)ここで、L(total):積層体の全体厚み(μm)、P(total):積層体の酸素透過率(cm3・mm/(m2・day・MPa))、L (coat):塗膜層厚み(μm)、P(coat):塗膜層の酸素透過率(cm3・mm/(m2・day・MPa))、L(base):基材フィルムの厚み(μm)、P(base):基材フィルムの酸素透過率(cm3・mm/(m2・day・MPa))。 【0038】(5)高ニトリル系重合体ラテックス中の重合体粒子径(キュムラント径、nm) 実施例及び比較例で得られた高ニトリル系重合体ラテックスに含まれる高ニトリル系重合体について、レーザー粒子径解析システム(大塚電子株式会社製、形式:LPA−3000)を用いて動的光散乱法により、粒子のブラウン運動によるレーザー光の散乱スペクトルの広がりから光子相関法により解析を行い、Einstein−Stokesの式による粒子のストークス半径を求め、直径をキュムラント値として測定する。試料毎について測定した値で示す。 【0039】(6)高ニトリル系重合体のガラス転移点(℃) 示差熱分析計(Perkin−Elmer社製、形式:DSC−7)を用いて、実施例及び比較例で得られたラテックスを乾燥して得られた高ニトリル系重合体粉末5〜7mgをサンプルパンに装入し、窒素雰囲気、窒素流量20ml/min.において30℃から180℃まで10℃/min.で昇温後、30℃まで100℃/min.で降温させ、以降3回昇温と降温を自動的に繰り返した後、4回目の昇温時における熱流束の変化から測定を行った。 【0040】《高ニトリル系乳化重合体ラテックスの製造》 実施例(A−1) 下記組成の原料をステンレス製重合反応器に装入し、窒素雰囲気、攪拌下、58℃で9時間、乳化重合を行い、転化率87.7重量%でラテックス状高ニトリル系共重合体(固形分含有量;30.5重量%)334重量部を得た。得られた高ニトリル系重合体ラテックスを乾燥させて樹脂粉末102重量部を得た。上記方法により、単量体総転化率、重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mn、ガラス転移点、及びキュムラント粒子径を測定した。得られた結果を表1に示す。 【0041】<重合原料>アクリロニトリル(以降ANと略す);65重量部、アクリル酸2−シアノエチル(以降2−CEAと略す);30重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(以降2−HEAと略す);5重量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(日本乳化剤(株)製、商品名:N−271A、以降N−271Aと略す);2.16重量部、リン酸;0.25重量部、過硫酸カリウム(以降KPSと略す);0.1重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)(以降PEMPと略す);6.0重量部、イオン交換水;235重量部。 【0042】実施例(A−2)〜(A−6)、比較例(B−1)〜(B−6) 原料のうち、単量体の仕込み組成を表1、又は表2記載の通りに変更した以外は、実施例(A−1)と同様にして乳化重合を行った。実施例(A−1)と同様にして、単量体総転化率、重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mn、ガラス転移点、及びキュムラント粒子径を測定した。得られた結果を表1、又は表2に示す。 【0043】 【表1】
【0044】 【表2】
【0045】<表1及び2の記載の説明>MA:アクリル酸メチル、phm:単量体100重量部に対する重量部。 【0046】《基材−高ニトリル系重合体積層体の製造》 実施例(AA−1)〜(AA−6)、比較例(BB−1)〜(BB−6) 基材として、片面にコロナ処理を施した二軸延伸PETフィルム(米国デュポン社製、商品名:マイラー50OL)を用い、高ニトリル系重合体ラテックスとして、実施例(A−1)〜(A−6)、及び比較例(B−1)〜(B−6)で得られた高ニトリル系乳化重合体ラテックスを用いた。外径6mmのステンレススチール棒に外径0.2mmのステンレス線を巻いた、所謂メイヤーバーを用いて、塗工盤に固定した二軸延伸PETフィルムの片面に、乾燥後の厚みが2μmとなるようにラテックスを塗工した後、160℃、180℃、又は200℃のオーブン中に入れて60秒間又は90秒間乾燥・造膜して、基材−高ニトリル系重合体積層体を得た。得られた積層体の酸素透過度を上記方法により測定し、積層体の厚み、基材厚み、及び塗膜厚みから塗膜の酸素透過率を算出した。得られた結果を表3、又は表4に示す。 【0047】 【表3】
【0048】 【表4】
【0049】<実施例の考察>実施例(A−1)〜(A−6)、比較例(B−1)〜(B−6)で得られた高ニトリル系重合体ラテックスを用いて製造した積層体の酸素透過度、酸素透過率、及び塗膜層の酸素透過率について比較を行う。比較例(BB−3)と実施例(AA−5)、比較例(BB−4)と実施例(AA−4)を比較すると、ANのコモノマーであるアクリル酸エステルをMAから2−CEAにする事により、積層体の酸素透過度、酸素透過率、及び塗膜層の酸素透過率はいずれもMA使用時の約55〜64%に低減され、湿度依存性もほとんど認められない。また、重合体のガラス転移点も低下することが認められ、低温造膜性が改良されることを示している。アクリル酸エステルのエステル部におけるアルキル鎖とアルキル鎖末端シアノ基の存在が、重合体ラテックスの基材に対する低温造膜性の向上、及び積層体における酸素透過度低減に強く影響したものと推測される。 【0050】比較例(BB−5)、(BB−6)と実施例(AA−3)を比較すると、アクリル酸エステルのエステル部におけるアルキル鎖末端に水酸基を持つ2−HEAを導入した場合、比較例(BB−5)、(BB−6)では2−HEAの導入量に依存して積層体の酸素透過度、酸素透過率、及び塗膜層の酸素透過率について湿度依存性が認められ、特に高湿度下では酸素透過度の上昇が起こり比較例(BB−3)を超える値になるが、一方実施例(AA−3)では2−HEA5部程度の導入でも酸素透過度の湿度依存性はほとんど認められない。しかしながら、2−HEA5部を固定したままAN含量を低減させると比較例(BB−1)、(BB−2)と実施例(AA−1)、(AA−2)に示すように、2−CEA、2−HEAを含む系では積層体の酸素透過度、酸素透過率、及び塗膜層の酸素透過率にやや湿度依存性が出てくるが、酸素透過率の湿度依存性としては非常に軽微であると考えられる。 【0051】 【発明の効果】本発明によれば、湿度依存性がほとんどなく、安定して低い酸素透過率を示し、且つ、良好な低温造膜性を示す高ニトリル系重合体ラテックスが得られる。また、この高ニトリル系重合体ラテックスを乾燥させることにより形成される高ニトリル系重合体塗膜は、ガスバリア性が要求される用途への応用が可能であり、食品、医療品、化粧品等の包装資材として極めて有用である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005887 【氏名又は名称】三井化学株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年5月1日(2001.5.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100076613 【弁理士】 【氏名又は名称】苗村 新一
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| 【公開番号】 |
特開2002−327020(P2002−327020A) |
| 【公開日】 |
平成14年11月15日(2002.11.15) |
| 【出願番号】 |
特願2001−133806(P2001−133806) |
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