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【発明の名称】 塩化ビニル系重合体の製造方法
【発明者】 【氏名】高井 淳

【氏名】平松 謙

【氏名】山根 一正

【要約】 【課題】高生産性である温水後仕込み法において低鹸化PVAを用いる方法の有する重合安定性及びこれに付随する生産性低下という問題点を伴うことなく、可塑剤の吸収能力に優れかつこれまでの方法以上にフィッシュアイの少ない塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供する。

【解決手段】塩化ビニル系単量体を仕込んだ後脱気温水を仕込む工程からなり、脱気温水所定量のうち0〜30重量%を仕込む間に(a)及び(b)を仕込み、その後31〜80重量%仕込む間に(c)及び(d)を仕込み開始することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩化ビニル系単量体を油溶性開始剤の存在下、水性媒体中で懸濁重合させるに際し、塩化ビニル系単量体を重合機に仕込んだ後、脱気温水を仕込む工程からなる塩化ビニル系重合体の製造方法であって、脱気温水を所定量のうち0〜30重量%を仕込む間に下記の(a)及び(b)の少なくとも50重量%を仕込み、その後脱気温水を所定量のうち31〜80重量%仕込む間に下記の(c)及び(d)の少なくとも50重量%を仕込むことを特徴とする、塩化ビニル系重合体の製造方法。
(a);鹸化度が33〜70mol%である部分鹸化ポリ酢酸ビニル(b);ヒドロキシプロポキシメチルセルロース(c);鹸化度が70〜85mol%である部分鹸化ポリ酢酸ビニル(d);ポリエチレンオキサイド【請求項2】 脱気温水を所定量のうち0〜30重量%を仕込む間に(a)及び(b)の全量を仕込み、その後脱気温水を所定量のうち31〜80重量%仕込む間に(c)及び(d)の全量を仕込むことを特徴とする、請求項1記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
【請求項3】 脱気温水を所定量のうち0〜10重量%を仕込む間に(a)及び(b)の全量を仕込み、その後脱気温水の35〜80重量%を仕込む間に(c)及び(d)の全量を仕込むことを特徴とする、請求項2記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
【請求項4】 脱気温水を所定量のうち0〜10重量%を仕込む間に(a)及び(b)の全量を仕込み、その後脱気温水の40〜70重量%を仕込む間に(c)及び(d)の全量を仕込むことを特徴とする、請求項3記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
【請求項5】 脱気温水が予め40〜80℃に調節された脱気温水であることを特徴とする、請求項1記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
【請求項6】 (b)成分であるヒドロキシプロポキシメチルセルロースが2重量%水溶液の20℃における粘度が20〜20000mPa・sであり、(d)成分であるポリエチレンオキサイドが5重量%水溶液の25℃における粘度が2500cps以上あるいはこれと同等粘度であることを特徴とする、請求項1〜5記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
【請求項7】 (a),(b),(c)及び(d)の使用部数が、塩化ビニル系単量体100重量部に対し、(a);0.01〜0.05重量部(b);0.003〜0.02重量部(c);0.03〜0.08重量部(d);0.001〜0.02重量部であることを特徴とする、請求項1〜6記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は塩化ビニル系重合体の製造方法に関するものであり、更に詳しくは可塑剤の吸収能力に優れ、かつフィッシュアイが少ない軟質用塩化ビニル系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル系樹脂は安価でかつ品質バランス及び加工性に優れている為、軟質分野、硬質分野等種々の広範な分野で利用されている熱可塑性樹脂であり、その用途の例として、軟質分野では被覆電線、ラップフィルム、シート等、が挙げられる。一般に軟質用途分野では、塩化ビニル系樹脂を可塑化し加工を容易にするとともに製品を柔軟化させる目的で、塩化ビニル系樹脂100重量部に対しおよそ30重量部以上、典型的には40〜100重量部の可塑剤が配合される。
【0003】このように大量の可塑剤を用いることから、軟質用途向けの塩化ビニル系樹脂の特性として、該可塑剤が素早く樹脂内部に吸収され、いわゆるドライアップ状態となることが求められる。特に近年、フィルムやシート製品から可塑剤が抜け出す、いわゆるブリードアウトや、その結果これらの製品と接触している材料への可塑剤の移行を低減させる目的で、より分子量の高い非移行性の可塑剤が用いられる傾向にあることから、樹脂内部への可塑剤の吸収を速めることは加工メーカーにとっていっそう重要な問題となってきている。これは、低分子すなわち低粘度の場合に比べて、このような高分子量可塑剤ではその粘度が高く、樹脂への吸収が困難なためであり、これがさらにドライアップ時間の延長やドライアップに要するエネルギーの増加、すなわち生産性の低下やコストアップにつながるためである。
【0004】さらにフィルムやシート加工ではこれら製品の表面が均一でなくてはならず、特にフィッシュアイと呼ばれる表面のブツの発生は致命的となるため絶対に避けなければならない。フィッシュアイとなる粒子に関しては、重合時に生じるスケール成分によるものや、コンタミ等樹脂以外の異物が原因の一つであるが、これらは永久フィッシュアイと呼ばれ、混錬時間を長くしても消失しない場合が多い。本発明は、このような永久フィッシュアイの解消を目的としたものではなく、重合で生成する塩化ビニル系重合体粒子そのものをフィッシュアイとなり難くすることを目的としたものである。
【0005】これらの軟質向け塩化ビニル系樹脂に要求される特性は、次のように整理出来る。すなわち、・より低温かつ短時間で樹脂に可塑剤が吸収され、ドライアップ状態となること。
・カレンダー、ロール等による混錬時に、より短時間でフィッシュアイ状物が消失し、均一な製品表面が得られること。
【0006】このような要求特性を改良するために当業者の間では、これまで様々な工夫がなされている。例えば、特開平8−3206号公報には、重合に使用する懸濁安定剤(以下、分散剤と略記する)として低重合度かつ低鹸化度の部分鹸化ポリ酢酸ビニル(以下、PVAと略記する)と特定のヒドロキシプロポキシメチルセルロース(以下、HPMCと略記する)を併用する方法、特開平7−179507号公報には、低重合度、低鹸化度のPVAを用いて重合を開始し、ある程度重合反応が進んでから比較的高鹸化度、高重合度のPVAを添加するとともに攪拌動力を制御する方法、特開平8−120007号公報には、比較的高鹸化度のPVAと特定の界面活性剤及び特定の高級脂肪酸を併用する方法、等が挙げられている。
【0007】しかしながら特開平8−3206号の方法では、分散剤の単量体油滴を保護する能力が弱いために重合安定性に乏しく、用いる分散剤の使用部数が増えてしまい、その結果生成する塩化ビニル系樹脂表面は分散剤の厚い膜に覆われる。このような樹脂表面膜は可塑剤と接触した際に可塑剤の樹脂内部への吸収を妨げることから、所望の製品は得がたくなる。
【0008】また特開平7−179507号の方法においても、重合初期に系内に存在する分散剤は重合安定性には乏しいため、重合途中で分散剤を追加したり、また攪拌動力を変化させるといった操作が煩雑であるため、重合制御が困難となりやすい。
【0009】さらに特開平8−120007号の方法においては、添加する界面活性剤や高級脂肪酸が重合安定性を損なわせる上に、成型体の電気的特性を低下させるため、軟質用途の一つである電線被覆向けとしては致命的となる。
【0010】これら従来技術の特徴は、懸濁重合による塩化ビニル系重合体の製造において、分散剤として比較的低鹸化度のPVAを用いることにあると言える。この理由は、低鹸化度PVAの界面活性能力の高さや油溶性のために樹脂内部が高度に多孔質となることによるものと考えられる。このような高多孔質樹脂が可塑剤をより内部まで吸収し易い構造であることは想像に難しくない。また、このように可塑剤をより内部まで吸収しやすい構造の樹脂は全体が可塑化され易いということが出来、混錬時に溶融し易くなるためフィッシュアイの発生が抑えられる。
【0011】このような従来の方法によれば、樹脂内部の多孔性は確かに向上する。我々も先に特開平11−217405号公報に示す如く、後記する本発明に用いる低鹸化PVAを含む特定分散剤の組み合わせによる可塑剤吸収性及びフィッシュアイ改良樹脂の製造方法を発明した。
【0012】しかしこのような従来技術では、所望の樹脂を得るのに非常に有効である反面、重合を安定に実施するという面からは必ずしも有利ではない。これは低鹸化PVAが極めて高い界面活性能力を有することや油溶性を示すため、塩化ビニル系樹脂の懸濁重合における、単量体油滴同士の凝集を妨げる作用に乏しいためであると考えられる。
【0013】一方、塩化ビニル系樹脂は汎用樹脂であるため、当業者にとっては品質とともに製造コストや重合生産性が重要な課題である。
【0014】バッチ方式で製造される塩化ビニル系樹脂の重合生産性を向上させる方策としては、重合に要する時間(以下、直接重合時間とする)を短縮させる、単量体仕込み量を増やす、といった方法があるが、これらは逆に重合安定性を低下させるといった欠点を併せ持つ。
【0015】さらに塩化ビニル系樹脂の重合生産性を左右する時間としては、先述した直接重合時間以外にも、主副原料の仕込みに関する時間、所定重合温度まで昇温するのに要する時間(以下、昇温時間とする)、未反応単量体を除去するのに要する時間等が挙げられる。これらの合計時間がいわゆるサイクル時間と呼ばれるものである。そこでこのサイクル時間のうち、直接重合時間以外、言わば重合時間外の短縮も非常に重要であり、特に全サイクル時間が短縮される傾向にある昨今においては、例えば昇温時間を分単位で短縮することで重合生産性に大きく影響する。
【0016】従来塩化ビニル系樹脂の製造は、重合機に仕込んだ水に塩化ビニル系単量体を仕込み、昇温して重合を開始する方法が主流であった。この方法では単量体の仕込み開始直後から、単量体油滴が水中に分散され、重合安定化と言う面では優れていたが、主副原料仕込み終了後の内温はせいぜい大気温と同程度であり、所定重合温度まで昇温するのに非常に時間がかかるという欠点があった。
【0017】そこでこのような昇温時間を短縮する目的で、塩化ビニル系単量体を先に仕込み、続いて脱気された温水を連続的に仕込むことにより昇温時間を短縮して生産性を上げる方法(以下、温水後仕込み法とする)が既に知られている。この方法では、仕込む温水の温度によって温水仕込み終了時点の内温をある程度調節することが可能となり、究極的には仕込み終了時点での内温を所定重合温度付近にすることによって実質的に昇温時間を短縮することが出来る。
【0018】しかしこの方法は従来の方法に比べ一般的に重合安定性が低く、特に軟質向け塩化ビニル系重合体においては、先に述べたような分散剤の処方の特徴と相俟って、重合安定性の確保は一層困難なものであった。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記従来技術に鑑みてなされたものであり、高生産性である温水後仕込み法において低鹸化PVAを用いる方法の有する重合安定性及びこれに付随する生産性低下という問題点を伴うことなく、可塑剤の吸収能力に優れかつこれまでの方法以上にフィッシュアイの少ない塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このような実情に鑑み、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の分散剤を用い、かつその仕込み方法を工夫することによってこれらの課題を解決し得る方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】すなわち本発明は、塩化ビニル系単量体を油溶性開始剤の存在下、水性媒体中で懸濁重合させるに際し、塩化ビニル系単量体を重合機に仕込んだ後、脱気温水を仕込む工程からなる塩化ビニル系重合体の製造方法であって、脱気温水を所定量のうち0〜30重量%を仕込む間に下記の(a)及び(b)の少なくとも50重量%を仕込み、その後脱気温水を所定量のうち31〜80重量%仕込む間に下記の(c)及び(d)の少なくとも50重量%を仕込むことを特徴とする、塩化ビニル系重合体の製造方法に関する(請求項1)。
【0022】(a);鹸化度が33〜70mol%である部分鹸化ポリ酢酸ビニル(b);ヒドロキシプロポキシメチルセルロース(c);鹸化度が70〜85mol%である部分鹸化ポリ酢酸ビニル(d);ポリエチレンオキサイドさらには、脱気温水を所定量のうち0〜30重量%を仕込む間に(a)及び(b)の全量を仕込み、その後脱気温水を所定量のうち31〜80重量%仕込む間に(c)及び(d)の全量を仕込むことを特徴とする、請求項1記載の塩化ビニル系重合体の製造方法に関する(請求項2)。
【0023】さらには、脱気温水を所定量のうち0〜10重量%を仕込む間に(a)及び(b)の全量を仕込み、その後脱気温水の35〜80重量%を仕込む間に(c)及び(d)の全量を仕込むことを特徴とする、請求項2記載の塩化ビニル系重合体の製造方法に関する(請求項3)。
【0024】さらには、脱気温水を所定量のうち0〜10重量%を仕込む間に(a)及び(b)の全量を仕込み、その後脱気温水の40〜70重量%を仕込む間に(c)及び(d)の全量を仕込むことを特徴とする、請求項3記載の塩化ビニル系重合体の製造方法に関する(請求項4)。
【0025】さらには、脱気温水が予め40〜80℃に調節された脱気温水であることを特徴とする、請求項1記載の塩化ビニル系重合体の製造方法に関する(請求項5)。
【0026】さらには、(b)成分であるヒドロキシプロポキシメチルセルロースが2重量%水溶液の20℃における粘度が20〜20000mPa・sであり、(d)成分であるポリエチレンオキサイドが5重量%水溶液の25℃における粘度が2500cps以上あるいはこれと同等粘度であることを特徴とする、請求項1〜5記載の塩化ビニル系重合体の製造方法に関する(請求項6)。
【0027】さらには、(a),(b),(c)及び(d)の使用部数が、塩化ビニル系単量体100重量部に対し、(a);0.01〜0.05重量部(b);0.003〜0.02重量部(c);0.03〜0.08重量部(d);0.001〜0.02重量部であることを特徴とする、請求項1〜6記載の塩化ビニル系重合体の製造方法に関する(請求項7)。
【0028】なお、本発明で言う塩化ビニル系単量体とは、塩化ビニル単量体または塩化ビニルと共重合可能な単量体と塩化ビニル単量体の混合物を意味する。また、本発明で言うところの分散剤とは、水溶性高分子懸濁分散安定剤を意味する。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明では脱気温水を用いるが、脱気後予め40〜80℃に調節された温水を用いることが好ましい。この温度が40℃未満であると、仕込み終了時点での内容液温度が低いために所定重合温度まで昇温するのに時間がかかり、生産性向上効果が低い傾向にある。またこの温度が80℃を超えると、初期重合速度があまりにも速すぎで粗粒が発生したり、場合によっては正常に重合を実施できなくなる傾向にある。脱気は真空ポンプなどにより水中の溶存酸素などの空気を除去することにより行う。
【0030】次に分散剤(a)は前述のように樹脂内部を高多孔質とするのに適したPVAと言えるが、単独では重合が不安定となり易く、(c)のようなPVA等を併用することが必要である。(a)のような分散剤は単量体油滴の保護という面ではそれほど効果は高くないため、単量体油滴同士の衝突によるいわゆる合一や、攪拌剪断による油滴の再分散頻度は共に高くなると言われている。さらにこの合一再分散頻度の向上が油滴間ばらつきを低減し、ひいては最終粒子間のばらつき低減とフィッシュアイ改良につながることも知られている。
【0031】分散剤(b)はPVAに次いでよく用いられる分散剤であり単量体油滴表面の安定化効果も比較的優れているため単独でも用いられる場合がある。この分散剤の特徴は、その界面活性の高さに由来する、塩化ビニル系単量体の水性媒体中への分散効果や単量体への溶解による多孔性のアップである。
【0032】分散剤(c)は塩化ビニル系重合体を製造する際、最も一般的に用いられるPVAと言っても良く、主に重合安定性を確保する目的で用いられるものである。しかし、あまり多く用いると前述のように樹脂表面の分散剤膜が厚くなり、可塑剤の吸収を妨げやすい。
【0033】分散剤(d)のポリエチレンオキサイド(以下、PEOと略記する)は他の分散剤とは異なり界面活性能力がほとんどない。また分子量、すなわち粘度が非常に高く著しい増粘効果を示すことが特徴であり、水/単量体油滴界面に存在し、PVA等で覆われた単量体油滴同士が衝突によって凝集するのを抑制する効果が非常に高い。また著しい高粘度のゆえにごく少量でこの凝集抑制効果を示す。この作用によって他の分散剤の使用量を大幅に減らすことが可能となり、特にここで用いる(c)のような分散剤量を減らすことは塩化ビニル系樹脂表面の分散剤膜を薄くすることにつながり、所望の製品を得るのに有益である。さらにこの分散剤はそれ自身の溶融温度が低いためにフィッシュアイにはなり難いという利点も有している。
【0034】用いる分散剤(a)の鹸化度は33〜70mol%である。鹸化度が33mol%未満では水に対する溶解性、あるいは膨潤性があまりにも低下しすぎて樹脂内部の多孔性を高める効果が発現し難くなる。また鹸化度が70mol%を超えると単量体への溶解性が実質的に期待できなくなり、樹脂内部を多孔性にする効果が低くなる。(a)の量は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して好ましくは0.01〜0.05重量部、更に好ましくは0.02〜0.04重量部である。この量が0.01重量部未満では樹脂内部の多孔性が必ずしも十分ではないため、所望の樹脂特性が必ずしも得られず、また0.05重量部を超えると重合が不安定になる傾向にある。さらに(a)の平均重合度は200〜1000、特に300〜700が好ましい。平均重合度が200未満では単量体への溶解度があまりにも大きすぎて初期に生成する単量体油滴が不安定となり、重合が不安定となる傾向がある。平均重合度が1000を超えると逆に単量体への溶解度が低すぎて生成する樹脂内部の多孔度を高くできないため、可塑剤の吸収能力が改良されない傾向がある。
【0035】分散剤(a)は鹸化度が低い故に、変性してある場合を除き水溶性に乏しいが、例えば水や他の分散剤水溶液に懸濁させて用いることができる。本発明での分散剤(a)は変性、未変性を問わず問題なく使用することが出来る。
【0036】次に(b)の量は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して好ましくは0.003〜0.02重量部、更に好ましくは0.005〜0.015重量部である。この量が0.003重量部未満では樹脂内部の多孔性アップ効果が低い傾向にあり、また0.02重量部を超えると重合が不安定になったり、樹脂表面の分散剤膜が硬くなってフィッシュアイが増加する傾向にある。さらにこの(b)は2重量%水溶液の20℃における粘度が20〜20000mPa・sであることが好ましく、この粘度が20mPa・s未満であると重合が不安定となり、逆にこの粘度が20000mPa・sを超えると樹脂内部の多孔性アップ効果が期待できない傾向にある。この粘度はB型粘度計によって測定することができる。
【0037】(b)のメトキシル基含有量、ヒドロキシルプロポキシル基含有量には特に制限はなく、市販されている範囲のものを用いれば良い。
【0038】さらに、(c)の鹸化度は70〜85mol%である。鹸化度が70mol%未満では界面活性が強くなりすぎると共に油溶性が強くなるため重合安定性が低下する。また鹸化度が85mol%を超えると重合安定性は向上するものの、生成する重合体粒子の粒度分布が広くなる。また親水性の強い樹脂表面膜が形成されるために、一般に油である可塑剤が浸透し難くなる。さらに(c)の平均重合度は1500〜2500、特に1800〜2200が好ましい。平均重合度が1500未満では十分な重合安定性を確保するために使用量を増やすことが必要で、結果として樹脂表面分散剤膜の厚みが厚くなりすぎて可塑剤の吸収能力が低下する傾向にある。平均重合度が2500を超えると生成する重合体粒子の粒度分布が広くなる傾向にある。
【0039】(c)の量は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して好ましくは0.03〜0.08重量部、更に好ましくは0.04〜0.06重量部である。この量が0.03重量部未満では重合安定化効果が低くなる傾向にあり、また0.08重量部を超えると生成する樹脂表面の分散剤膜が厚くなる傾向がある。
【0040】(d)は5重量%水溶液の25℃における粘度が2500cps以上あるいはこれと同等粘度であることが好ましい。同等粘度なる用語を用いる意味は高粘度になると5重量%水溶液でなく0.5重量%水溶液の25℃における粘度を測定することになるからである。好ましい粘度範囲は0.5重量%水溶液の25℃における粘度が20〜1000cps、特には100〜500cpsである。5重量%水溶液の25℃における粘度が2500〜5500cpsのものも使用可能である。粘度はB型粘度計で測定できる。粘度が低すぎると前述のような十分な増粘効果を得る為にその使用量を増やしたり(c)のような分散剤の使用量を増やす必要があるため、結果として生成する樹脂表面の分散剤膜が厚くなりすぎて好ましくない。粘度が高すぎると樹脂表面の分散剤膜が厚くなりすぎるとともに水溶液粘度が著しく高くなるために扱い難くなるといった問題が生じる傾向にある。さらに(d)の量は、塩化ビニル系単量体に対して好ましくは0.001〜0.02重量部、更に好ましくは0.003〜0.008重量部である。この量が0.001重量部未満ではこの分散剤の増粘効果が乏しい傾向にあり、他の分散剤、特に(c)タイプの分散剤量を多く必要とする傾向がある。また0.02重量部を超えると重合安定性向上効果が飽和する上に、生成する樹脂の粒度分布が広くなる傾向がある。
【0041】本発明では予め、好ましくは40℃〜80℃に調節された脱気温水を仕込む工程で、脱気温水を所定量のうち0〜30重量%を仕込む間に(a)及び(b)のそれぞれの少なくとも50重量%を仕込み、その後脱気温水を所定量のうち31〜80重量%仕込む間に(c)及び(d)のそれぞれの少なくとも50重量%を仕込む。好ましくは、脱気温水を所定量のうち0〜30重量%を仕込む間に(a)及び(b)のそれぞれの70重量%、さらには85重量%、特には全量を仕込み、その後脱気温水を所定量のうち31〜80重量%仕込む間に(c)及び(d)のそれぞれの70重量%、さらには85重量%、特には全量を仕込む。さらに好ましくは、脱気温水を所定量のうち0〜10重量%を仕込む間に(a)及び(b)を仕込み、その後脱気温水を所定量のうち35〜80重量%、特には、40〜70重量%仕込む間に(c)及び(d)を仕込む。
【0042】さらに(a)、(b)、(c)、及び(d)は、温水の仕込みと並行して連続的に仕込むのが望ましい。一括あるいは断続的に仕込んだ場合は、(a)、(b)、(c)、及び(d)が重合器系内で均一に拡散されず、重合安定性が低下したり、所望の樹脂特性が得られ難い傾向にある。
【0043】脱気温水を仕込む工程で仕込む所定温水量のうち、30重量%を仕込み終えてから(a)及び(b)を仕込むと、単量体に水が分散した状態、いわゆるW/Oエマルジョンの状態で重合が進行し、異常粒子が生成し易い。
【0044】また、脱気温水を仕込む工程で仕込む所定温水量のうち30重量%を仕込み終えるまでの間に(c)および(d)を仕込むと、フィッシュアイ及び可塑剤吸収改良効果が低くなる。
【0045】また、脱気温水を仕込む工程で仕込む所定温水量のうち、80重量%を仕込み終えてから(c)及び(d)を仕込むと、単量体に水が分散した状態、いわゆるW/Oエマルジョンの状態で重合が進行し、異常粒子が生成し易い。
【0046】本発明に使用する単量体は塩化ビニルを主成分とする単量体であり、具体的には、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニルを70重量%以上含有する、塩化ビニルと共重合可能な単量体と塩化ビニル単量体との混合物である。
【0047】塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、エチレン、プロピレン、イソブチルビニルエーテル等のα−オレフィン類、1−クロロプロピレン、2−クロロブチレン等のクロル化オレフィン類、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン等が挙げられ、これらは単独で用いることも、2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0048】本発明の塩化ビニル系重合体製造における重合反応熱の除去は、従来の方式、例えば外部あるいは内部ジャケットによる除熱、還流凝縮器による方法等を利用すればよい。
【0049】さらに従来塩化ビニル系単量体の重合または共重合に使用される重合開始剤、重合度調節剤、連鎖移動剤、pH調節剤、ゲル化性改良剤、帯電防止剤、乳化剤、安定剤、スケール防止剤等やこれらの仕込み方法も公知の技術をなんら支障なく任意に用いることができ、その使用量も従来公知の方法に従うことが出来る。
【0050】
【実施例】本発明をさらに具体的に説明するために、以下に実施例及び比較例を示す。なお、以下の実施例では特にことわりのない限り、「部」は重量部、同様に「%」は重量%を表す。また以下の実施例では部分鹸化ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロポキメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、をそれぞれPVA、HPMC、PEOと略記する。さらに、本実施例の水は全てイオン交換水を用いた。
【0051】以下の実施例、比較例で得られた塩化ビニル系樹脂の特性値は次の方法により測定し、その結果については表1にまとめて示した。
(1)平均粒子径、粒度分布JIS K−6721に準拠し、42、60、80、100、120、145、200メッシュの篩を使用し、篩振とう器にて篩分けを行い、50%通過径をもって平均粒子径(μm)とした。また粒度分布は、各メッシュに残留した塩化ビニル系樹脂の重量を測定し、重量百分率で示した。このうち42メッシュ上に残留した樹脂の量は百分率に含めず粗粒分とし、200メッシュを通過した量はパス分とした。
(2)多孔度米国AMINCO社製の水銀圧入式ポロシティーメーター(5−7118型)を用いて、絶対圧31〜1011psi(ポア口径0.175〜5.65μm)の間で塩化ビニル系樹脂に圧入される水銀の容量を測定し、塩化ビニル系樹脂100g当りの圧入水銀量(cc)を算出した。
(3)可塑剤吸収性容積20Lのスーパーミキサーに塩化ビニル系樹脂2000gと炭酸カルシウム500gを同時に投入し、内温30℃、1000rpmで1分間攪拌混合した後、直ちにアジピン酸系ポリエステル可塑剤1400gを1分間かけて投入した。これら一連の操作の間、ミキサーの攪拌トルク変化を攪拌機の電流値変化で検出するとともに、内温変化を検出した。可塑剤投入後一旦攪拌トルクが上昇し、可塑剤が樹脂に吸収されるに従って攪拌トルクが低下して一定となった時点をドライアップ点と判断した。可塑剤投入を開始した時点からこのドライアップ点までの時間を可塑剤吸収時間(分)、またドライアップ点での内温をドライアップ温度(℃)と定義した。
(4)フィッシュアイ塩化ビニル系樹脂100部にトリメリット酸トリオクチル可塑剤50部、三塩基性硫酸鉛系安定剤3部、ステアリン酸鉛1部、及びカーボンブラック0.05部を配合し、十分混合した後、表面温度を150℃に調節した8インチテストロールに投入混錬し、4分、5分、6分で厚み約0.3mmのロールシートを切りだした。採取したロールシート表面の面積25cm2中に観察される透明粒子の数を計数してフィッシュアイとした。
(実施例1)攪拌機を付設した内容積2000Lのステンレス製重合器に、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを濃度70%で溶解したイソパラフィン溶液0.418kgを仕込み、密閉した後重合機内部を真空ポンプで脱気し、次いで塩化ビニル系単量体585kgを仕込んだ。その後攪拌機を起動し、60℃に温度調節した脱気温水を約43kg/分の速度で仕込み始め、ほぼ同時に鹸化度が56mol%、平均重合度が400であるPVA(これをPVA1という)0.176kgと、メトキシル基含有が28mol%、ヒドロキシルプロポキシル基含量が6mol%、2%水溶液粘度の20℃における粘度が56mPa・sであるHPMC(これをHPMC1という)0.0585kgの混合水溶液を温水と並行して仕込み始めた。PVA1/HPMC1水溶液の仕込みは約30秒で終了し、この仕込み終了時点での温水仕込み量は、所定仕込み量の3%相当であった。さらに、温水仕込み開始後8分目に鹸化度が74mol%、平均重合度が2000であるPVA(これをPVA2という)0.234kgの水溶液と、0.5重量%水溶液の25℃における粘度が250〜430cpsであるポリエチレンオキサイド(これをPEO1という)0.0234kgの水溶液を温水と並行して仕込み始め、約2分で仕込みを終了した。PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点での温水仕込み量は、所定温水量の54%相当であった。さらに仕込み温水の総量は645kgとした。PVA1、PVA2、HPMC1、PEO1の仕込み量は、塩化ビニル系単量体100重量部に対してそれぞれ、0.03、0.04、0.01、0.004部とした。
【0052】次に外部ジャケットにより重合器内温を51.5℃に昇温後、内温をこの温度に維持し、重合器内圧が定常圧より0.15MPa低下した時点で重合を停止し、未反応単量体を回収して重合を終了した。得られたスラリーを脱水、乾燥して塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(実施例2)PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の27%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の54%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(実施例3)PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の7%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の60%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(実施例4)PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の2%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の40%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(実施例5)PVA2の使用部数を0.0325部とし、PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の8%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の56%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(実施例6)PEO1の使用部数を0.002部とし、PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の7%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の54%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(実施例7)HPMC1の使用部数を0.005部とし、PVA2の使用部数を0.05部とし、PEO1の使用部数を0.002部とし、PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の8%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の56%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(実施例8)HPMC1の使用部数を0.005部とし、PVA2の使用部数を0.045部とし、PEO1の使用部数を0.0015部とし、PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の7%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の55%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(比較例1)PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の10%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の7%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(比較例2)PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の68%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の7%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(比較例3)PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の29%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の78%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(比較例4)PVA1は使用せず、HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の8%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の56%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(比較例5)HPMC1は使用せず、PVA1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の8%相当、PVA2/PEO1水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の54%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(比較例6)PEO1は使用せず、PVA1/HPMC1水溶液の仕込み終了時点での温水仕込み量を所定温水仕込み量の11%相当、PVA2水溶液の仕込み開始時点を所定温水仕込み量の55%相当とした以外は実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
(比較例7)攪拌機を付設した内容積2000Lのステンレス製重合器に、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを濃度70%で溶解したイソパラフィン溶液0.393kg、PVA1水溶液0.165kg、HPMC1水溶液0.055kg、PVA2水溶液0.248kg、PEO1水溶液0.022kgを仕込み、密閉した後重合機内部を真空ポンプで脱気し、次いで塩化ビニル系単量体550kgを仕込んだ。その後攪拌機を起動し、60℃に温度調節した脱気温水を725kgを仕込んだ。PVA1、PVA2、HPMC1、PEO1の仕込み量は、塩化ビニル系単量体100重量部に対してそれぞれ、0.03、0.045、0.01、0.004部となる。次に外部ジャケットにより重合器内温を51.5℃に昇温後、内温をこの温度に維持し、この後実施例1と同様に塩化ビニル重合体を得、各種特性値の測定に提供した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【発明の作用・効果】表1の実施例及び表2の比較例に示した通り、本発明の実施例ではいずれも可塑剤の吸収性に優れ、かつ非移行性可塑剤配合でのフィッシュアイも少ないことが分かる。
【0056】従って本発明の方法で得られる塩化ビニル系樹脂は可塑剤の吸収能力に優れ、かつフィッシュアイが少ない為、特に軟質用途向けとして好適に使用することができ、すなわち本発明の工業的価値はすこぶる大きいものである。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成12年12月27日(2000.12.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−220404(P2002−220404A)
【公開日】 平成14年8月9日(2002.8.9)
【出願番号】 特願2000−397935(P2000−397935)