| 【発明の名称】 |
マレイミド系共重合体及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】上田 賢一
【氏名】山口 稔
|
| 【要約】 |
【課題】マレイミド系共重合体が特定量のN置換マレイミド系単量体基、芳香族ビニル系単量体基及び不飽和モノカルボン酸単量体基を持ち、耐熱性や流熱安定性に優れ、更にアルカリ可溶性にも優れた新規なマレイミド系共重合体を得る。
【解決手段】N置換マレイミド単量体、芳香族ビニル単量体および、不飽和モノカルボン酸系単量体を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体(1)を含み、アルカリ水溶液不溶分が10%以下で、下記一般式(1)で示される特定構造の化合物(2)の含有量が10%以下である事を特徴とするマレイミド系共重合体。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】N置換マレイミド系単量体(a)10〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)10〜80重量%および不飽和モノカルボン酸系単量体(c)1〜70重量%を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体であって、アルカリ水溶液不溶分が10重量%以下である事を特徴とするマレイミド系共重合体(1)。 【請求項2】N置換マレイミド系単量体(a)10〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)10〜80重量%および不飽和モノカルボン酸系単量体(c)1〜70重量%を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体であって、下記一般式(1)で示される特定構造の化合物(2)の含有量が10重量%以下である事を特徴とするマレイミド系共重合体(1)。 【化1】
(但し上記一般式(1)において、R1は互いに独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基またはハロゲン置換アリール基を表し;R2は水素またはメチル基を表し;R3〜R6はそれぞれ独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基またはハロゲン置換アリール基を表す。) 【請求項3】N置換マレイミド系単量体(a)10〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)10〜80重量%および不飽和モノカルボン酸系単量体(c)1〜70重量%を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体(1)を製造する方法において、単量体(b)および単量体(c)及び必要に応じて溶剤を反応器に供給後、重合を開始するとともに残った単量体(b)および単量体(c)と、単量体(a)を連続的又は断続的に重合系中に供給しながら重合反応を行うことを特徴とするマレイミド系共重合体の製造方法。 【請求項4】単量体(b)および単量体(c)及び必要に応じて溶剤を反応器に供給後、重合を開始するとともに残った単量体(b)および単量体(c)と、単量体(a)を連続的又は断続的に重合系中に供給しながら重合反応を行う際に、単量体(a)と単量体(b)は予め混合することなく供給することを特徴とする請求項3記載のマレイミド系共重合体の製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、新規なマレイミド系共重合体に関する。より詳しくは、マレイミド系共重合体が特定量のN置換マレイミド系単量体基、芳香族ビニル系単量体基及び不飽和モノカルボン酸単量体基を持ち、耐熱性や流熱安定性に優れ、更にアルカリ水溶液可溶能にも優れた新規なマレイミド系共重合体に関する。 【0002】 【従来の技術】N置換マレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体を共重合してなる共重合体は、高い耐熱性と熱安定性を有するため、各種プラスチックの耐熱向上剤として用いられたり、そのもの自体をフィルム状や成形体として耐熱性と透明性を有する樹脂材料とすることが出来る。 【0003】例えば、N置換マレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体を共重合してなる共重合体が、AS樹脂との相溶性に優れていることから、これら2種類の樹脂をABS樹脂に配合してなる組成物(特開昭63−159458)が提案されている。また、アルキルマレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体からなる共重合体で透明性に優れた耐熱樹脂(特開平2−127407)が提案されている。一方、アルカリ可溶性重合体は、塩基性液体で溶解除去されるので、包装、表面保護、接着層など種々の用途に利用し、不要になれば内容物や被保護物表面を損傷することなく容易に除去できる。これまで、(メタ)アクリル酸エステルと不飽和カルボン酸とを共重合してなる重合体で塩基性液体に溶解可能なフィルム用材料(特開平7−149837)が提案されている。また、マレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体のラジカル重合を行ってマレイミド系共重合体を作る場合、マレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体のデイールスアルダー反応を経由して化合物(1)が副生することが知られており、その量を出来るだけ少なくする方法も提案されている。(特開平6−93044)しかし、これら共重合体の製造方法を持ってしても、耐熱性や流熱安定性に優れ、しかもアルカリ水溶液可溶能にも優れたマレイミド系共重合体を得ることはできなかった。また、一般的にマレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体は交互重合性が高く、通常のラジカル重合下で重合を行った場合、まず交互共重合体が生成する傾向がある。第3成分として不飽和モノカルボン酸系単量体を導入した場合も同様に重合初期にマレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体を多く含んだ共重合体を生成し、その結果、不飽和モノカルボン酸系単量体が残存しやすく、重合後半に不飽和モノカルボン酸系単量体を多く含んだ共重合体が生成しやすいという傾向がある。その結果、得られた共重合体は、組成分布が多いものとなり、熱安定性やアルカリ水溶液可溶能に劣った成分を含み、重合体全体としても性能が劣ったものとなる。そのため、単にマレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体及び不飽和モノカルボン酸系単量体を共重合しても、耐熱性や流熱安定性に優れ、しかもアルカリ水溶液可溶能にも優れたマレイミド系共重合体組成物を得ることはできなかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、マレイミド系重合体の優れた耐熱性、熱安定性を有し、更に優れたアルカリ水溶液可溶能を合わせ持った重合体を提供することを課題とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本願発明者は、上記従来の問題点を解決すべく、マレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体の共重合体の製造方法について鋭意検討した結果した。その結果、 N置換マレイミド系単量体(a)10〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)10〜80重量%および不飽和モノカルボン酸系単量体(c)1〜70重量%を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体(1)を製造する方法において、単量体(b)および単量体(c)及び必要に応じて溶剤を反応器に供給後、重合を開始するとともに残った単量体(b)および単量体(c)と、単量体(a)を予め混合することなく連続的又は断続的に重合系中に供給しながら重合反応を行うことにより、重合体の組成分布を少なくし、その結果アルカリ水溶液可溶能のない成分の生成をできるだけ抑えることができることを見出した。そして、上記方法を採用することにより、耐熱性や熱安定性に優れ、しかもアルカリ水溶液可溶能にも優れたマレイミド系共重合体組成物を得ることが出来ることを見出して、本発明を完成させるに至った。即ち、請求項1のマレイミド系共重合体は、上記の課題を解決する為に、 N置換マレイミド系単量体(a)10〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)10〜80重量%および不飽和モノカルボン酸系単量体(c)1〜70重量%を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体であって、アルカリ水溶液不溶分が10重量%以下であるであることを特徴としている。また、請求項2記載のマレイミド系共重合体組成物は、上記の課題を解決する為に、 N置換マレイミド系単量体(a)10〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)10〜80重量%および不飽和モノカルボン酸系単量体(c)1〜70重量%を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体であって、下記一般式(1)で示される特定構造の化合物(2)の含有量が10重量%以下であるマレイミド系共重合体であることを特徴としている。 【0006】 【化2】
【0007】(但し上記一般式(1)において、R1は互いに独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基またはハロゲン置換アリール基を表し;R2は水素またはメチル基を表し;R3〜R6はそれぞれ独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基またはハロゲン置換アリール基を表す。)である。 【0008】更に、請求項3記載のマレイミド系共重合体の製造方法は、上記の課題を解決する為に、 N置換マレイミド系単量体(a)10〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)10〜80重量%および不飽和モノカルボン酸系単量体(c)1〜70重量%を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体(1)を製造する方法において、単量体(b)および単量体(c)及び必要に応じて溶剤を反応器に供給後、重合を開始するとともに残った単量体(b)および単量体(c)と、単量体(a)を連続的又は断続的に重合系中に供給しながら重合反応を行うことを特徴としている。 【0009】また、請求項4記載のマレイミド系共重合体の製造方法は、上記の課題を解決する為に、 N置換マレイミド系単量体(a)10〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)10〜80重量%および不飽和モノカルボン酸系単量体(c)1〜70重量%を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体(1)を製造する方法において、単量体(b)および単量体(c)及び必要に応じて溶剤を反応器に供給後、重合を開始するとともに残った単量体(b)および単量体(c)と、単量体(a)を連続的又は断続的に重合系中に供給しながら重合反応を行う際に、単量体(a)と単量体(b)は予め混合することなく供給することを特徴としている。 【0010】以下本発明を詳しく説明する。マレイミド系共重合体(1)を構成するN置換マレイミド系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)及び、不飽和モノカルボン酸系単量体(c)を含む単量体成分等の構成割合としては、 N置換マレイミド系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)及び、不飽和カルボン酸系単量体(c)を含む単量体成分が、さらに必要に応じて共重合可能なその他の単量体(d)を含んでなる場合、その単量体成分の総量を100重量%とした時に、各単量体成分の構成割合が、 (a)10〜80重量%、(b)10〜80重量%及び(c)1〜70重量%、及びその他共重合可能な単量体(d)0〜20重量%である事が好ましい。さらに好ましくは、(a)20〜60重量%、(b)20〜60重量%、(c)5〜60重量%、(d)0〜15重量%である。 さらに好ましくは、(a)30〜50重量%、(b)30〜50重量%、(c)10〜50重量%、(d)0〜10重量%である。 【0011】不飽和モノカルボン酸系単量体(c)の含有量が上記範囲を下回る場合、アルカリ水溶液可溶能が低下する恐れがある。上記範囲を超えると、耐熱性や熱安定性が低下する恐れがある。また、N置換マレイミド系単量体(a)の含有量が上記範囲以下であると、耐熱性が低下する恐れがあり、上記範囲を超えると、本発明のマレイミド系共重合体(1)のアルカリ水溶液可溶能が低下する他、包装、表面保護、接着層等の用途に用いた場合、機械強度が低下する恐れがある。 【0012】本発明の、マレイミド系共重合体(1)は、アルカリ水溶液不溶分が10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることが更に好ましく、3重量%以下であることが最も好ましい。上記のアルカリ水溶液不溶分は、本発明のマレイミド系共重合体(1)の0.5%−KOH水溶液に対する溶解性で評価した。より具体的には、本発明のマレイミド系共重合体(1)からなる厚さ50μmのフィルムの、50℃における200mlの0.5%KOH水溶液に対する溶解性テストでアルカリ不溶分の存在量を求め、評価する事ができる。 【0013】マレイミド系共重合体(1)中に含まれる、下記一般式(1)で表わされる特定構造の化合物(2)は、10重量%以下が好ましく、5重量%以下が更に好ましく、2重量%以下が更に好ましく、1重量%以下であることが最も好ましい。一般式(1)で表わされる化合物(2)が上記範囲より多いと、マレイミド系共重合体の熱安定性やアルカリ水溶液可溶能が低下する恐れがある。 【0014】 【化3】
【0015】(但し上記一般式(1)において、R1は互いに独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基またはハロゲン置換アリール基を表し;R2は水素またはメチル基を表し;R3〜R6はそれぞれ独立に水素、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基またはハロゲン置換アリール基を表す。) 上記、 N置換マレイミド系単量体(a)としては、具体的には、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミドなどの芳香族置換マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのアルキル置換マレイミドが挙げられる。これらマレイミド系単量体は、1種または2種以上混合して使用することも出来る。このなかで、工業的な入手のし易さ、及び単量体の毒性が比較的少ないことから、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドが好ましい。更に、透明性、熱安定性の観点からシクロヘキシルマレイミドがもっとも好ましい。シクロヘキシルマレイミドを使用する場合は、シクロヘキシルマレイミド中に副生物として含まれるシクロヘキシルアミノ無水コハク酸の含有量を1重量%以下に低減した上で使用することが好ましい。 【0016】上記、芳香族ビニル系単量体(b)としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレンなどが挙げられる。これら芳香族ビニル系単量体は、1種または2種以上混合して使用することも出来る。この中で、工業的入手のし易さ、及び重合性の点からスチレンが好ましい。 【0017】上記、不飽和モノカルボン酸系単量体(c)としては、具体的にはメタアクリル酸、アクリル酸などが挙げられる。これら不飽和モノカルボン酸系単量体は、1種または2種混合して使用することができる。 【0018】上記(a)、(b)、(c)以外の、その他共重合可能な単量体(d)は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に限定はないが、具体的には、メタクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これら、その他共重合可能な単量体は1種または2種以上混合して使用することも出来る。マレイミド系共重合体(1)の分子量は、アルカリ可溶能を発揮させるために、重量平均分子量が5,000〜200,000の範囲である事が好ましく、5,000〜100,000の範囲である事が更に好ましく、10,000〜50,000が更に好ましい。重量平均分子量が上記範囲を上回ると、アルカリ水溶液可溶能が低下する恐れがある。一方、上記範囲を下回ると、耐熱性や熱安定性が低下する恐れがある。 【0019】また、本発明の、マレイミド系共重合体(1)の、GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、4.0以下が好ましく、3.0以下がさらに好ましく、2.5以下が最も好ましい。Mw/Mnが4.0を超えると、熱安定性やアルカリ水溶液可溶能が低下する恐れがある。 【0020】マレイミド系共重合体(1)は、50〜300mgKOH/g 、好ましくは70〜200mgKOH/g の酸価を持つ。重合体(1)の酸価が前記範囲を下回ると重合体にアルカリ水溶液可溶能がなくなり、前記範囲を上回ると重合体(1)がもろくなり、各種成形品にした場合強度物性が出にくくなる。例えば、フィルムや、被覆材、コート材用途においては、フィルム強度が出にくくなり,やぶれやすくなる。 【0021】マレイミド系共重合体(1)の製造方法としては、公知の溶液重合、懸濁重合、乳化重合を採用することが出来るが、懸濁重合、乳化重合では、懸濁剤や乳化剤が混入するため、透明性低下の原因となる恐れがある。また、懸濁重合、乳化重合では、特定不純物(2)が生成する恐れがある他、組成分布が出来やすく、アルカリ水溶液可溶能が低下する恐れがある。更に、懸濁重合法、乳化重合法では、水中での分散状態で反応させるため、後述する、本発明に好適な原料単量体の供給方法の工夫を行っても、後から供給する単量体が十分混合せず、アルカリ可溶能や熱安定性が低下する恐れがある。従って、本発明のマレイミド系共重合体(1)としては、マレイミド系単量体を用いて、溶剤存在下でその重合が行われる溶液重合方法によって得られた重合体である事が好ましい形態である。更に、マレイミド系単量体を用いた回分式溶液重合方法によって得られた共重合体である事が最も好ましい形態である。 【0022】上記重合反応における重合温度は、使用する重合開始剤等に合わせて設定すれば良く、特に限定されないが、50℃〜200℃が好ましく、80〜150℃が更に好ましい。重合温度が上記範囲を下回ると、分解温度の低い開始剤を用いる必要があり、開始剤を冷却保存する設備が必要となるなど工業的製造に不利である。上記範囲を上回ると、重合温度に昇温する途中でモノマーが熱重合を始めるため好ましくない。 【0023】上記溶液重合で使用する溶剤は特に限定なく、例えば上記の溶液重合反応に支障がなく、また本発明の重合体を得るための上記単量体と生成した本発明の重合体の両方を溶解しうる液体であれば特に制限はなく、たとえば、メタノール、エタノール、グリコールなどの炭素原子数1〜3個の脂肪族アルコール、テトラヒドロフランなどの環状エーテルやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性を有する有機溶剤が挙げられる。非水系の分散重合に用いられる溶剤は、この発明の重合体を得るための上記単量体が溶解可能で、かつ、生成した本発明の重合体が不溶である液体であれば特に制限はなく、たとえば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンのような液状の炭化水素などの非極性の有機溶剤が挙げられる。上記溶液重合や非水系の分散重合に用いられる溶剤の量は、単量体の合計重量に対して、20〜80重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましい。前記範囲を下回ると重合終了時に増粘のため攪拌が不充分になるおそれがあり、上回ると生成する重合体の分子量が上記範囲内にまで上がらないおそれがある。重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤である過酸化物、アゾ化合物が好適に用いられ、重合温度に応じて適宜決定で、単量体の合計重量に対して、通常、0.001〜1.0重量%の割合で使用される。 【0024】本発明の重合方法では、分子量の調整に連鎖移動剤を用いることができる。例えば、αメチルスチレンやメルカプタン系の連鎖移動剤を用いることができる。 【0025】本発明におけるマレイミド系共重合体(1)の重合方法は、使用する単量体の供給方法に特別な工夫をすることが好ましい。上記単量体(b)および単量体(c)及び必要に応じて溶媒を反応器に供給後、開始剤を加えて重合を開始すると共に残った単量体(b)および単量体(c)と、(a)を予め混合することなく連続的又は断続的に重合系中に供給しながら重合反応を行い、全ての単量体を供給し終えてから0.5時間以上反応を継続する事が最も好ましい。上記、N置換マレイミド系単量体(a)の、重合開始前に予め反応系に供給する量と、重合反応の開始後、連続的または断続的に供給する量の比は、0−5/100−95重量%の範囲の比が好ましく、0−1/100−99重量%の範囲の比が更に好ましいが、全量を連続的または断続的に供給する事が最も好ましい。 【0026】上記、芳香族ビニル系単量体(b)の、重合開始前に予め反応系に供給する量と、上記重合反応開始後、連続的または断続的に供給する量の比は、1−99/99−1重量%範囲の比が好ましく、5−90/95−10重量%の範囲の比が更に好ましく、15−75/85−25重量%の範囲の比が更に好ましく、30−60/70−40重量%の範囲の比が最も好ましい。 【0027】上記、不飽和モノカルボン酸系単量体(c)の、重合開始前に予め反応系に供給する量と、開始後連続的または断続的に供給する量の比は、1−99/99−1重量%の範囲の比が好ましく、10−90/90−10重量%の範囲の比が更に好ましく、25−75/75−25重量%の範囲の比が更に好ましく、30−70/70−30重量%の範囲の比が最も好ましい。 【0028】この重合方法を採用する事により、上記一般式(1)で示される特定構造の化合物(2)の生成を抑制することができ、アルカリ水溶液可溶能の低下を抑制するとともに、得られるマレイミド系共重合体中に残存するマレイミド単量体量を効果的に低減することが出来る。N置換マレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体を重合初期から設定量の全量が投入され重合を開始すると、重合初期に交互共重合体が優先的に生成し、その後、残った不飽和カルボン酸系単量体の構造単位を多く持つ重合体が生成するため、交互共重合体と、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の多いマレイミド系共重合体の混合物になる。その結果得られたマレイミド系共重合体は、組成分布が非常に大きくなり、アルカリ可溶能が低下する為好ましくない。さらに、N置換マレイミド系単量体(a)と芳香族ビニル系単量体(b)を予め重合系に仕込んで重合を開始すると、昇温中及び重合中に、上記一般式(1)で示される特定構造の化合物(2)が副生しやすくなる。 【0029】また、全てのN置換マレイミド系単量体(a)を供給し終えてから0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上重合反応を継続する事で、残存するN置換マレイミド系単量体(a)を低減することが出来る。またN置換マレイミド系単量体(a)は、使用する量の90重量%以上を、好ましくは95重量%以上、更に好ましくは全量を重合系に連続的または断続的に投入する条件で重合反応をする必要がある。N置換マレイミド系単量体(a)の初期仕込み量が、上記範囲以外の、10重量%を超えた条件で重合を開始すると、芳香族ビニル系単量体(b)とN置換マレイミド系単量体(a)の交互共重合体の生成量が多くなり、アルカリ可溶能が低減する恐れがあるからである。 【0030】またN置換マレイミド系単量体(a)と芳香族ビニル系単量体(b)は、混合せず別々に重合系に供給することが望ましい。混合供給すると、混合液中で上記一般式(1)で示される特定構造の化合物(2)が副生しやすくなる。重合反応終了後の溶液から揮発分を除去してマレイミド系共重合体(1)を分離する方法としては、真空下で加熱する方法、貧溶媒中に投入してマレイミド系共重合体(1)を沈殿させ、濾別する方法等を採用することが出来るが、貧溶媒に投入して濾別する方法は、設備が過大になり工業的には不向きである。よって真空下の加熱により溶剤及び残存モノマーを揮発除去することが好ましい。また、必要に応じて揮発除去されて溶剤及び残存モノマーは回収される設備を備えている事が好ましい。上記の加熱溶媒回収設備としては、脱揮槽での真空加熱、2軸押出機での脱溶媒などが好ましく用いられる。また、脱揮槽で予め予備濃縮を行い、2軸押出機で脱溶媒を完結させることも出来る。 【0031】本発明で使用することのできるマレイミド系共重合体(1)は、N置換マレイミド系単量体(a)以外の単量体成分、溶剤分などの残存する揮発分が2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下である。残存揮発分が多いと、熱安定性が低下したり着色の原因となるため好ましくない。また、本発明のマレイミド系共重合体(1)は、さらに好ましくは、残存するN置換マレイミド系単量体(a)の含有量が特定量以下である事が好ましい。具体的には、N置換マレイミド系単量体(a)の含有量としては、500ppm以下が好ましく、より好ましくは、200ppm以下である。さらに好ましくは、100ppm以下である。 【0032】本発明のマレイミド系共重合体(1)は、他の熱可塑性樹脂である、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリエステル、PPE樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂およびPBT樹脂から選択される1以上の樹脂と配合して用いてもよい。さらに、不飽和ポリエステル系アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド/多官能アミン硬化系などの熱硬化樹脂を配合してもよい。さらに、ガラス繊維、カーボンブラック、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤、ハロゲン系及び/またはリン系の難燃剤、ステアリン酸塩等の成形助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、染料および/または顔料等の着色剤、発泡剤などの各種添加剤を、使用目的に応じて添加することが出来る。これらの添加量は、目的に応じて適宜設定する事が可能であり、一般文献等の公知の使用量を採用することができる。また、本発明のマレイミド系共重合体(1)は、特定の単量体成分を用いて重合させ、特定の物性を保有しているので、耐熱性や強度と併せて良好なアルカリ水溶液可溶能を有している。そのため、各種カバーフィルム、コーテイング膜、基材保護マスク、保護用フィルム、被覆材として用いた後、アルカリ水溶液で容易にそのフィルムやカバーや被覆材を除去することができる。また、本発明のフィルム等の使用形態、用途、適応出来る分野は特に限定されるものではなく、アルカリ水溶液可溶性と耐熱性、熱安定性が必要な分野において使用することが出来る。 【0033】また、本発明のマレイミド系共重合体(1)からなるフィルムや被覆材等がカバーする基材の材質も特に限定されない。例えば、各種金属、銅、鉄、およびプラスチック材等、特に限定されるものではない。その被覆方法やコート方法も特に限定されるものではなく、例えば、本発明のマレイミド系共重合体(1)をコーター等で、薄い膜等に成形しコートしてもよい。また、キャストフィルムに成形して、対象物を被覆してもよい。また、基材に直接塗布してもよい。塗布や被覆やコートの各種方法に適応できる様に、必要に応じ、溶媒等に本発明のマレイミド系共重合体(1)を溶解させ、塗布、コート後、その溶媒を飛散させ、膜状態、フィルム状態にする事ができる。 【0034】また、本発明のマレイミド系共重合体(1)のカルボキシル基に、カルボキシル基と反応する事ができる官能基を持つ化合物を反応させて、本発明のマレイミド系共重合体に各種機能を持たせる事もできる。この場合、本発明のマレイミド系共重合体のアルカリ水への溶解性に支障のない範囲で、その変性量や、変性する化合物を選択する事ができる。上記のカルボキシル基と反応する事ができる官能基を持つ化合物としては、エポキシ化合物や、カルボキシル基とエステル交換で反応する官能基を持つ化合物や、各種アミンが例示される。例えば、アミンを反応させればアミドエステル構造を本発明のマレイミド系共重合体(1)に導入する事ができるが、特に限定されるものではない。 【0035】 【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。 【0036】本発明における、マレイミド系共重合体の、芳香族ビニル系単量体単位、N置換マレイミド系単量体単位の含有量は、元素分析法及びNMRから求めた。また、マレイミド系共重合体中の残存揮発分、残存マレイミド系単量体量は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。また、重量平均分子量(Mw)や数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒に用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィの溶出曲線からポリスチレンの標準重合体を規準として算出した。 【0037】マレイミド系共重合体中の、一般式(1)で示される特定構造の化合物(2)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定での面積比から含有量を求めた。また、GPCにより特定構造の化合物を分取し、質量分析であるMASSスペクトル、IRスペクトル、1H−NMRおよび13C−NMRスペクトルでその構造を確認した。 【0038】上記のNMR分析は、重水素化クロロホルム(CDCl3)中でテトラメチルシランを標準物質として測定を行い、1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルを得た。使用したNMR装置は、VXR−300S(バリアン株式会社製)であった。IR分析は、臭化カリウム錠剤法により赤外分析装置(FT/IR-3、島津製作所株式会社製)を用いて行った。質量分析は、M-2000A質量分析装置(日立製作所株式会社製)を用いて行った。 【0039】本発明の、マレイミド系共重合体のアルカリ水溶液可溶能は、以下の様に測定した。すなわち、共重合体をMIBKに溶解し、ダイコーターを用いてガラス板上に塗布後乾燥して、50μmのフィルムを作成し、ガラス板から剥離後、一片10cmの正方形に切断し、0.5%−KOH水溶液200mlに浸して、50℃において1時間攪拌するという操作により重合体のアルカリ水溶液溶解性を測定した。また不溶物が認められる場合、濾別した不純物を乾燥させてその重量を測定し、溶解前の上記フィルムの重量と比較し、アルカリ不溶分の含有量を求めた。また、上記フィルムが溶解した場合は、不溶分は0とした。 【0040】マレイミド系共重合体のガラス転移点(Tg)は、DSCにより中点法で測定を行った。すなわち、理学電気株式会社製のDSC-8230を用い、窒素気流下、α−アルミナをリファレンスとして昇温速度5℃/分で測定したDSC曲線から算出した。 【0041】<実施例1>2Lフラスコを窒素置換し、スチレン8部、メタクリル酸3部、メチルイソブチルケトン(MIBK)53部、αメチルスチレンダイマー1.0部を仕込み、重合系を110℃に昇温しMIBKが還流を開始した後、開始剤であるt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.003部を添加し重合を開始するとともに、滴下系(A)としてスチレン8部と、メタクリル酸2部、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.003部を、滴下系(B)としてN-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)13部をMIBK13部で、60℃で溶解したものを3時間かけて連続的に供給し、さらに2時間重合を継続した。その重合液をMIBKで希釈した後、ヘキサン中に注いで沈殿析出品としてマレイミド系共重合体(1−1)を得た。得られたマレイミド系共重合体(1−1)の物性を表1に示す。 【0042】<実施例2>初期仕込分のスチレンを6.5部、メタクリル酸5部、滴下系のスチレンを6.5部、メタクリル酸を6部、CHMIを10部に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、その重合液をMIBKで希釈した後、ヘキサン中に注いで沈殿析出品としてマレイミド系共重合体(1−2)を得た。得られたマレイミド系共重合体(1−2)の物性を表1に示す。 【0043】<実施例3>CHMIのかわりに、N−フェニルマレイミドを使用した以外は製造例2と同じ操作を行い、その重合液をMIBKで希釈した後、ヘキサン中に注いで沈殿析出品としてマレイミド系共重合体(1−3)を得た。得られたマレイミド系共重合体(1−3)の物性を表1に示す。 【0044】<比較例1>2Lフラスコを窒素置換し、メチルイソブチルケトン(MIBK)53部、αメチルスチレンダイマー1.0部を仕込み、重合系を110℃に昇温しMIBKが還流を開始した後、開始剤であるt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.0043部を添加するとともに、滴下系(A)としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.0043部とMIBK5部を、滴下系(B)としてスチレン13部と、メタクリル酸11部、N-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)13部をMIBK8部で、60℃で溶解したものを3時間かけて連続的に供給し、さらに2時間重合を継続した。その重合液をMIBKで希釈した後、ヘキサン中に注いで沈殿析出品としてマレイミド系共重合体(1−4)を得た。得られたマレイミド系共重合体(1−4)の物性を表1に示す。 【0045】<実施例4>実施例2で得られた重合液を、MIBKで希釈せずに、脱揮装置であるベント付き2軸押し出し機に導入し、減圧下、180℃で脱揮し、押し出し機でマレイミド系共重合体を押し出し、得られたストランドを粉砕して、マレイミド系共重合体(1−5)を得た。得られたマレイミド系共重合体(1−5)の物性を表1に示す。 【0046】<実施例5>初期仕込分のスチレンを7.5部、メタクリル酸10部、滴下系のスチレンを7.5部、メタクリル酸を10部、CHMIを15部に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、マレイミド系共重合体(1−6)を得た。得られたマレイミド系共重合体(1−6)の物性を表1に示す。なお表中の残存揮発分は、マレイミド系単量体以外の残存する単量体及び溶媒の合計量である。 【0047】 【表1】
【0048】<参考例>実施例2で得られたマレイミド系共重合体(1−2)をセロソルブアセテートに溶解し、ガラス板上にダイコーターを用いて塗布後、2日間自然乾燥し更に120℃で2時間乾燥することにより、膜厚50μmのフィルムを得た。本フィルムは、無色透明で、240℃1時間オーブン中で放置しても変色等の問題はなかった。また、本参考例におけるフィルムも、上記実施例と同様な条件で、アルカリ水溶液可溶能テストを行い、アルカリ不溶分が0である事を確認した。 【0049】 【発明の効果】本発明は、 N置換マレイミド系単量体 、芳香族ビニル系単量体および不飽和モノカルボン酸系単量体を含む単量体成分を重合してなるマレイミド系共重合体において、単量体成分の供給方法を工夫することで、 N置換マレイミド系単量体と芳香族ビニル系単量体からなる3量体の含有量が少なく、また組成分布が少ない為、アルカリ水溶液可溶能に優れたマレイミド系共重合体組成物を得ることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004628 【氏名又は名称】株式会社日本触媒 【識別番号】000002897 【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年7月14日(2000.7.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100073461 【弁理士】 【氏名又は名称】松本 武彦
|
| 【公開番号】 |
特開2002−30119(P2002−30119A) |
| 【公開日】 |
平成14年1月31日(2002.1.31) |
| 【出願番号】 |
特願2000−213684(P2000−213684) |
|