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【発明の名称】 塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法
【発明者】 【氏名】奥原登志夫

【氏名】塩田裕啓

【氏名】鈴木毅之

【氏名】山根一正

【氏名】一色実

【要約】 【課題】塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で塩素化するにあたり、加工時の色調・熱安定性を犠牲にせずに、塩素化反応時間が短く生産性に優れる塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を得る。

【解決手段】塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で塩素化するにあたり、実質的に抗酸化剤を含まない塩化ビニル系樹脂を用いて塩素化塩化ビニル系樹脂を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】実質的に抗酸化剤を含まない塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で塩素化することを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項2】水銀灯を用いて塩素化することを特徴とする請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項3】塩化ビニル系樹脂が、0.01重量%以下の抗酸化剤を含有する請求項1または2記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項4】塩化ビニル系樹脂が、0.005重量%以下の抗酸化剤を含有する請求項1または2記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項5】塩化ビニル系樹脂が、部分鹸化のポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および、ポリエチレンオキサイドから選択される少なくとも1種の分散剤を使用し懸濁重合で得られた塩化ビニル系樹脂である請求項1、2,3、または4記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項6】塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下、20〜35重量%の樹脂濃度で塩素化することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法に関し、更に詳しくは、塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で塩素化するにあたり、加工時の色調・熱安定性を犠牲にせずに、塩素化反応時間が短く生産性に優れる塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂の軟化温度を向上させるという性質を有しており、塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で塩素化して製造される。
【0003】塩素化塩化ビニル系樹脂の原料樹脂としての塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルの単独重合体、または塩化ビニルと他の共重合可能な単量体(例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化アリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸エステル、ビニルエーテル等)との共重合体を示す。該樹脂は、これらの単量体を部分鹸化のポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキサイドなどの分散剤及びラウロイルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α、α’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどの油溶性重合開始剤を使用して重合され、更に得られる塩化ビニル樹脂の初期着色や熱安定性を向上するために抗酸化剤を添加して、懸濁重合法にて重合されるのが一般的である。
【0004】また、塩素化塩化ビニル系樹脂は前記の塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で塩素ガスを供給して水銀灯照射あるいは触媒添加により塩素化することが一般的におこなわれている。
【0005】これまで、塩素化反応の反応時間を短縮して塩素化塩化ビニル系樹脂の生産性を向上する試みがおこなわれてきた。例えば、塩素化反応温度を上げることにより塩素化反応時間が短縮される。また、照射する水銀灯光量を上げることにより塩素化反応時間は短縮される。更に、仕込量増大の観点で、塩素化反応開始時の樹脂濃度を20〜35重量%に最適化することで、仕込量と反応速度のバランスにより生産性を向上する試みもある。しかし、これらいずれの方法も塩素化塩化ビニル系樹脂の加工時の初期着色と熱安定性を悪化させ、好ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で塩素化して塩素化塩化ビニル系樹脂を製造するにあたり、加工時の初期着色性と熱安定性を犠牲にせずに、塩素化反応時間を短縮して生産性を向上する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、塩素化塩化ビニル系樹脂の原料樹脂である塩化ビニル系樹脂に着目して鋭意検討した結果、実質的に抗酸化剤を含まない塩化ビニル系樹脂を用いた場合、予期しないことに、加工時の初期着色性と熱安定性を維持でき、かつ塩素化反応時間を短縮できることを見いだし本発明を完成した。
【0008】即ち、本発明は、(1)実質的に抗酸化剤を含まない塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で塩素化することを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項1)、(2)水銀灯を用いて塩素化することを特徴とする請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項2)、(3)塩化ビニル系樹脂が、0.01重量%以下の抗酸化剤を含有する請求項1または2記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項3)、(4)塩化ビニル系樹脂が、0.005重量%以下の抗酸化剤を含有する請求項1または2記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項4)、(5)塩化ビニル系樹脂が、部分鹸化のポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および、ポリエチレンオキサイドから選択される少なくとも1種の分散剤を使用し懸濁重合で得られた塩化ビニル系樹脂である請求項1、2,3、または4記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(5)、および(6)塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下、20〜35重量%の樹脂濃度で塩素化することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項6)、に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明における塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルの単独重合体、または塩化ビニルと他の共重合可能な単量体(例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化アリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸エステル、ビニルエーテル等)との共重合体を示す。これらの単量体を部分鹸化のポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキサイドなどの分散剤及びラウロイルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α、α’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどの油溶性重合開始剤を使用して懸濁重合で重合される。
【0010】本発明は、この塩化ビニル系樹脂に実質的に抗酸化剤が含まれないことを特徴とする。ここで、実質的に抗酸化剤が含まれない塩化ビニル系樹脂とは、懸濁重合の添加剤として、あるいは後処理において、抗酸化剤を添加しないか、またはこれら工程で抗酸化剤を添加する場合は、得られた塩化ビニル樹脂の乾燥重量に対し、抗酸化剤の含有量が0.01重量%以下、好ましくは0.005重量%、更に好ましくは0.003重量%以下で製造された塩化ビニル系樹脂を示す。また、本発明でいう抗酸化剤とは、通常塩化ビニル系樹脂の初期着色および熱安定性の向上のために一般に使用され、塩化ビニル系樹脂に対して通常0.015〜0.035重量%程度使用される酸化防止剤であり、例えばブチルヒドロキシアニソール(BHA)、3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、あるいはチバ・ガイギー社製のIrganox245, Irganox1076, Irganox1010等のヒンダード・フェノール系酸化防止剤、和光純薬社製のp−ベンゾキノン, TBHQ等のキノン系酸化防止剤、和光純薬社製のフェニレンジアミン等の芳香族アミン系酸化防止剤、和光純薬社製のメルカプタン,ジチオカーバメート等のイオウ化合物系酸化防止剤、和光純薬社製のQ−1300等のクロペン系酸化防止剤が知られている。
【0011】本発明は、このようにして得られた塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で20〜35重量%の樹脂濃度で塩素化して塩素化塩化ビニル系樹脂を得るのが望ましい。塩素化反応には特別の制限はなく、水銀灯を照射する塩素化方法、あるいは触媒を用いて塩素化する方法、更にはその組み合わせが可能である。特に、熱安定性の向上の観点から、水銀灯を照射する塩素化方法が好ましい。
【0012】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0013】以下の実施例及び比較例において、部および%は特に断らない限り重量基準である。
【0014】尚、実施例及び比較例における初期着色、熱安定性、ビカット軟化点の測定又は評価方法は、下記の通りである。
(イ)初期着色8インチのロールにて195℃で3分間混練して得られたシートを200℃で10分間プレスして得られた3mm厚みの板を目視にて判断した。
(ロ)熱安定性8インチのロールにて195℃で3分間混練して得られたシートを縦3cm、横5cmに切り取り、200℃のオーブンにて加熱後に黒化した時間を測定した。
(ハ)ビカット軟化点JIS K 6766に準じた。但し、荷重は5kgとした。
【0015】(実施例1)攪拌翼を装備したステンレスオートクレーブに120部のイオン交換水と、0.08部のポリビニルアルコール(鹸化度:79.5モル%、濃度4%水溶液の20℃での粘度:41.0CPS)と0.04部の油溶性重合開始剤t−ブチルパーオキシネオデカノエートとを投入し、オートクレーブ内を真空脱気したのち100部の塩化ビニルを圧入した。その後、攪拌下で58℃で5時間重合をおこない、後処理、乾燥工程を経て、塩化ビニル系樹脂を得た。この塩化ビニル系樹脂の重合度は1000であった。
【0016】反応器に230部の純水と100部の塩化ビニル系樹脂を投入し、攪拌下で真空脱気及び窒素置換をおこない、真空脱窒素後塩素ガスを吹き込み、200ワットの高圧水銀灯を照射して85℃で塩素化反応をおこなった。塩素含有量が67%に達したとき、水銀灯の照射を停止して塩素化反応を停止した。反応時間は3.8時間だった。窒素にて未反応塩素を追い出した後、残存塩酸を水洗にて除去し、乾燥して塩素化塩化ビニル系樹脂を得た。
【0017】上記で得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、B31(鐘淵化学工業株式会社製のMBS樹脂)を10重量部、錫系安定剤を2重量部、滑剤を1.7部配合して、ロールとプレスをおこない、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0018】(実施例2)攪拌翼を装備したステンレスオートクレーブに120部のイオン交換水と、0.08部のポリビニルアルコール(鹸化度:79.5モル%、濃度4%水溶液の20℃での粘度:41.0CPS)と0.04部の油溶性重合開始剤t−ブチルパーオキシネオデカノエートおよび3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.001部とを投入し、オートクレーブ内を真空脱気したのち100部の塩化ビニルを圧入した。その後、攪拌下で58℃で5時間重合をおこない、後処理、乾燥工程を経て、塩化ビニル系樹脂を得た。この塩化ビニル系樹脂の重合度は1000であった。
【0019】反応器に230部の純水と100部の塩化ビニル系樹脂を投入し、攪拌下で真空脱気及び窒素置換をおこない、真空脱窒素後塩素ガスを吹き込み、200ワットの高圧水銀灯を照射して85℃で塩素化反応をおこなった。塩素含有量が67%に達したとき、水銀灯の照射を停止して塩素化反応を停止した。反応時間は3.8時間だった。窒素にて未反応塩素を追い出した後、残存塩酸を水洗にて除去し、乾燥して塩素化塩化ビニル系樹脂を得た。
【0020】上記で得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、B31(鐘淵化学工業株式会社製のMBS樹脂)を10重量部、錫系安定剤を2重量部、滑剤を1.7部配合して、ロールとプレスをおこない、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0021】(実施例3)3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.003部とした他は実施例2と同様にして、重合度1000の塩化ビニル樹脂を得た。このものを用い塩素化反応時間を3.9時間とした以外は、実施例2と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0022】得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、B31(鐘淵化学工業株式会社製MBS樹脂)を10重量部、錫系安定剤を2重量部、滑剤を1.7部配合して、ロールとプレスをおこない、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0023】(実施例4)3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.01部とし、重合時間を5.1時間とした他は、実施例2と同様にして、重合度1000の塩化ビニル樹脂を得た。このものを用い塩素化反応時間を4.0時間とした以外は得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、B31(鐘淵化学工業株式会社製MBS樹脂)を10重量部、錫系安定剤を2重量部、滑剤を1.7部配合して、ロールとプレスをおこない、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0024】(比較例1)3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.015部とし、重合時間を5.3時間とした他は、実施例2と同様にして、重合度1000の塩化ビニル樹脂を得た。このものを用い塩素化反応時間を4.7時間とした以外は、実施例2と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0025】得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、B31(鐘淵化学工業株式会社製のMBS)を10重量部、錫系安定剤を2重量部、滑剤を1.7部配合して、ロールとプレスをおこない、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0026】(比較例2)3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.02部とし、重合時間を5.5時間とした他は、実施例2と同様にして、重合度1000の塩化ビニル樹脂を得た。このものを用い塩素化反応時間を5.6時間とした以外は、実施例2と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂を得た。
【0027】得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、B31(鐘淵化学工業株式会社製のMBS)を10重量部、錫系安定剤を2重量部、滑剤を1.7部配合して、ロールとプレスをおこない、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0028】
【表1】

【0029】
【発明の効果】実施例および比較例から明らかなように、抗酸化剤を実質的に含まない塩化ビニル系樹脂を塩素化することにより、塩素化塩化ビニル系樹脂の加工時の初期着色性と熱安定性を犠牲にせずに、反応時間を短縮して生産性を向上できる。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−30111(P2002−30111A)
【公開日】 平成14年1月31日(2002.1.31)
【出願番号】 特願2000−214012(P2000−214012)