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【発明の名称】 ケイ酸質肥料
【発明者】 【氏名】古川 洋一郎

【氏名】冨田 誠

【氏名】伊吹山 正浩

【氏名】清水 信行

【要約】 【課題】粒子崩壊性が早く、ケイ酸分を速やかに提供できる造粒されているケイ酸質肥料を提供する。

【解決手段】D90が0.6〜3.0mmでD50が37μm以上のケイ酸質組成物の粉末に、水への溶解速度が50%/5分以上有機質結合材を添加して造粒してなるケイ酸質肥料であり、イオン交換法で測定した時の1ヶ月以内のケイ酸分溶出量が16質量%以上であることを特徴とするケイ酸質肥料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】D90が0.6〜3.0mmでD50が37μm以上のケイ酸質組成物の粉末に、水への溶解速度が(50%/5分)以上の有機質結合材を添加して造粒してなるケイ酸質肥料であって、イオン交換法で測定した時の1ヶ月以内のケイ酸分溶出量が16質量%以上であることを特徴とするケイ酸質肥料。
【請求項2】ケイ酸質組成物が、主成分がMgO、SiO2、CaO、P25からなり、前記成分中にMgOを1〜20質量%、SiO2を30〜50質量%含有し、しかも非晶質であることを特徴とする請求項1記載のケイ酸質肥料。
【請求項3】イオン交換法で測定した時に、当該ケイ酸質肥料に含まれるケイ酸分の60%以上が2.5ヶ月以内に溶出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のケイ酸質肥料。
【請求項4】有機質結合材が蔗糖及び/又は廃糖蜜であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のケイ酸質肥料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物にとって吸収性のよいケイ酸分を多く含む稲作等に用いて好適なケイ酸質肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】稲作に有用なケイ酸肥料として、従来からケイカル(ケイ酸カルシウム)、並びにケイ酸カリ(ケイ酸カリウム)肥料が用いられている。ケイカルはスラグを原料として製造され、SiO2、CaO、Al23を主成分とする、主としてアルカリ分とケイ酸を補給するための土壌改質剤である。しかしケイカルは塩酸可溶性ケイ酸分が30質量%を越えるものの、実際の土壌のpHに近いpH=5〜7程度の領域では、ケイ酸の溶出量が極端に減少し、ケイ酸分の供給源としては非常に効率の悪い資材である。
【0003】従って、実際に使用する場合も、例えば稲作用に用いる場合、田1000m2当たり200kgと大量に施肥しなくてはならず、それに要する労力が農家の大きな負担になっている。ケイカルは肥料の三要素のいずれをも含まない資材であるため、他の肥料と混合して使用するのが一般的であり、例えばようりん40kgをケイカル200kgと混合して散布するのが広く用いられている処方である。
【0004】ようりんは、それに含まれるケイ酸分の中性に近いpH域での溶出性が高いことが知られており、燐酸質肥料であると同時にケイ酸質の供給源となっていることが認められている。
【0005】また、ケイ酸カリ肥料のケイ酸溶出性は、ケイカルに比べると高いと言われているが、ようりんに比べるとpH=5〜7では劣っており十分とは言えない。ケイ酸カリ肥料も、ケイカルの場合と同様に、ようりんと混合して施肥されることが多く、ここでもようりんがケイ酸質の供給源としての役割を果たしている。
【0006】ケイカルの欠点であるケイ酸質溶出性が低いことを改善するために各種の試みがなされ、中でもケイ酸カリ肥料の溶出性が比較的高いことに着目してカリ成分を加える方法に基づいた、例えばケイ燐酸カリを主成分とする新規肥料組成物(特公平1−24759号公報参照)や緩効性熔成ケイ酸カリ苦土肥料の製造法(特公平2−23514号公報参照)が開示されている。
【0007】カリウム成分は、一般に組成物をガラス化し易く、ケイ酸質の溶出性を改善するが、その反面、カリ原料が高価であるため得られた製品も高価になる、十分に高いケイ酸溶出性を確保するにはカリ含有量を高くしなければらなず不経済である、更に、カリウムが強アルカリであるため製造設備の炉材を浸食する、カリを加えると溶融物の粘度が上昇するため操業しにくく、それを下げようとして温度を上げるとカリが揮散する等の欠点を有している。
【0008】一方、ようりんに含まれるケイ酸分は溶出性が高く、植物による吸収性が高い事が知られている。市販されているようりんに含まれるSiO2は20〜25質量%程度であるが、ケイ酸含有量を増やすとその溶出性が低下する事が知られている。すなわち、溶成燐肥の一般的な原料配合に珪石を加えて加熱溶融・急冷して、2%クエン酸水溶液へのケイ酸の溶出性を測定した試験例(工業化学雑誌第60巻1109頁1957年)によれば、2%クエン酸水溶液(初期pHが約2)へのケイ酸溶出量は30質量%程度で頭打ちになると記載されている。
【0009】肥料のケイ酸分の溶出性を調べる方法としては、2%クエン酸水溶液(pHが約2)を用いる方法、pHの初期値が4の酢酸ソーダ緩衝液を用いる方法が知られているが、いずれも溶出時のpHが低く、土壌のpHに近いpH=5〜7付近でのケイ酸の溶出性の評価方法としては不適切である。本発明者らは、特願平10−205258号明細書の中で、4質量%クエン酸緩衝液(pHの初期値が5.5)を用いる方法を提案してきた。しかし、前記方法は水田のpHに近い条件での溶出試験であり且つ試験方法としては迅速であるものの、肥料のケイ酸分溶出量と実際の植物、特に稲のケイ酸分吸収量との相関は充分に満足できるほどに高いものではない。
【0010】また、本発明者らは、pH=5以上の高いpH域で高い溶出性を持つSiO2を含む組成を探求した結果、同じ組成であってもその結晶性によって、溶出性が大きく変化すること、そして、特定組成を有する非晶質の組成物が前記高pH域でケイ酸溶出性を示すことを見い出し、先に特願平10−205258号を出願した。
【0011】また、本発明者らは、ケイ酸分の溶出性の評価方法と肥料効果(稲による吸収性)について更に検討を続けた結果、水溶液のpH調節剤としてのイオン交換樹脂共存下で測定した(以下イオン交換法と略称する)一ヶ月後のケイ酸分溶出量が一定値以上のものが肥料効果が高いこと、加えて、肥料として使用する際に作業性、分散性を高めるために造粒することが望ましいが、造粒された肥料についてその肥料効果を確保するためには、操作時に用いる原料粉末の粒度を特定のものとすること、更に造粒用の結合材については水への溶解性を調節することが必須であるという知見を得て、本発明に至ったものである。
【0012】イオン交換法とは、中性(pH=7)付近でのケイ酸分の溶解性評価手法で、以下の手順で行う(参考文献:加藤 直人著「農林水産省・農業環境技術研究所報告」16巻,9−75頁(1998)、加藤,尾和共著 Soil Sci.Plant Nutr.,43巻,2号,351−359頁(1997))。
【0013】即ち、試料0.20gを、あらかじめ水酸化ナトリウム水溶液と希塩酸を用いて逆再生しておいたカルボン酸型イオン交換樹脂(例えばアンバーライトIRC−50)2gと純水1リットルを入れたポリエチレン瓶に加え、マグネチックスターラーで静かに数分間撹拌した後、所定日数静置する。所定日数経過後、再度マグネチックスターラーで静かに数分間撹拌した後、最低10分間静置し、上澄み液2mlをメスフラスコ20mlに分取し、塩酸(1+1)1mlを添加後、20mlに希釈する。これをICP発光分析法(例えば、日本ジャーレルアッシュICAP−575を使用、測定波長例:251.612nm、288.158nm他)によりSiを定量し、SiO2に換算する。市販原子吸光分析用標準原液1000mg/リットルを希釈して得られる検量線に基づいて定量する。
【0014】イオン交換樹脂を用いる目的は、ケイ酸質肥料から溶出するアルカリ土類金属等のアルカリ性物質が溶液に溶けて生ずるpHの上昇を、イオン交換樹脂のイオン交換能を利用して防止することにある。水田の土壌は、中性であり、pH緩衝能が高いと言われており、イオン交換法を用いると、実際の水田に近い環境下でのケイ酸分の溶出性を測定できると考えられる。
【0015】一方、稲がケイ酸分をよく吸収する期間は、田植え期から出穂期までと言われている。この2〜3ヶ月間にわたって、含有するケイ酸分が徐々に溶出し、継続的にケイ酸を供給し続ける肥料が好ましい。従って、イオン交換法で継続的に測定して得た溶出曲線が、初期は勾配がある程度以上大きく、日数が経過した後も、勾配があまり低下しない肥料が好ましい。
【0016】本発明者らは、ケイ酸分を含む肥料を用いて、稲の肥効試験を行ったところ、前記のイオン交換法による1ヶ月後のケイ酸溶出量が、稲による肥料由来のケイ酸分吸収量と相関を示すことを見いだした。しかし、ケイ酸分を多く含む市販の各種肥料を前記イオン交換法で評価したところ、1ヶ月後のケイ酸溶出量が15質量%を超えるものはなかった。
【0017】また、肥料の製品形態としては、一般的に、保存方法や施肥方法に応じて適度な粒度を持つことが望ましい。つまり、使用目的や施肥方法における散布形態に応じて、適度な粒度を持つことが望ましいし、製品の品質を高める意味でも粉体よりは粒子状が望まれるし、粒子状の場合には、その粒度分布幅は比較的狭い方が流動性が良く、作業性に富むことから、望ましい。
【0018】そのため、適度な粒子径を持たせるために、様々な手法が取られるが、肥料となる組成物の一次粒子が粉状に近い場合は、有機質或いは無機質の結合材などを添加し粒子同士を結合させ、目的の粒子径に調節することが一般的な手法として用いられている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであって、ケイ酸溶解性に優れるケイ酸質組成物の微細な粉末を用いて、作業性に富む粒度に造粒する際に、水への溶解速度が特定値以上の特性を有する有機質結合材を用いることにより、粒子崩壊性が早く、ケイ酸分を速やかに提供できる造粒されているケイ酸質肥料を提供することを目的としている。より詳細には、本発明の目的は、1ヶ月後のケイ酸溶出量が15質量%を超え、しかも、ケイ酸分を2〜3ヶ月間に渡って徐々に、継続的に供給し続け、更に作業性に富んだ粒状の稲作用肥料を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、D90が0.6〜3.0mmでD50が37μm以上のケイ酸質組成物の粉末に、水への溶解速度が(50%/5分)以上の有機質結合材を添加して造粒してなるケイ酸質肥料であって、イオン交換法で測定した時の1ヶ月以内のケイ酸分溶出量が16質量%以上であることを特徴とするケイ酸質肥料であり、その実施態様として、ケイ酸質組成物が、主成分がMgO、SiO2、CaO、P25からなり、前記成分中にMgOを1〜20質量%、SiO2を30〜50質量%含有し、しかも非晶質であることを特徴とする前記のケイ酸質肥料である。
【0021】また、本発明は、イオン交換法で測定した時に、当該ケイ酸質肥料に含まれるケイ酸分の60%以上が2.5ヶ月以内に溶出することを特徴とする前記のケイ酸質肥料であり、好ましくは、有機質結合材が蔗糖及び/又は廃糖蜜であることを特徴とする前記のケイ酸質肥料である。
【0022】
【発明の実施の形態】近年、農作業の省力化、機械化などの動向を考慮するに、取り扱う肥料の形態として粉体より粒状が望ましい。つまり、湿度などの影響を受けにくく長期保管にも有利であり、また必要量取り分ける分取や散布を行う場合に、取り扱いが容易であることなどの理由から、肥料の形態としては粒状が望まれている。しかし、肥料効果が満足できる粉体のケイ酸質肥料を造粒して粒状としたときに、しばしば、前記ケイ酸質肥料の本来有する肥料効果が発揮されないことがある。
【0023】本発明者は、いろいろ検討した結果、特定の粒度分布を有するケイ酸質組成物を用い、水への溶解速度が特定の値以上の有機結合材を用いるときに、1ヶ月後のケイ酸溶出量が16質量%以上であり、しかも、ケイ酸分を2〜3ヶ月間に渡って徐々に、継続的に供給し続け、更に作業性に富んだ粒状の稲作用に好適なケイ酸質肥料が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
【0024】即ち、本発明のケイ酸質肥料は、D90が0.6〜3.0mmでD50が37μm以上のケイ酸質組成物の粉末に、水への溶解速度が(50%/5分)以上の有機質結合材を添加して造粒してなるケイ酸質肥料であり、イオン交換法で測定した時の1ヶ月以内のケイ酸分溶出量が16質量%以上であることを特徴としているので、施肥直後から多量のケイ酸を植物に提供でき、本発明の目的を達成できる特徴があるし、更にそのケイ酸溶出量が従来公知の肥料では達成できないほどに高いので、施肥する土壌の質、気象条件、水田への水の供給状況などにより異なるが、必ずしも追肥することなく従来よりも稲等の作物の発育を助長することができる。
【0025】本発明の実施態様として、前記ケイ酸質組成物が、主成分がMgO、SiO2、CaO、P25からなる非晶質の粉末であって、しかもMgOを1〜20質量%、SiO2を30〜50質量%含有することが好ましい。
【0026】ケイ酸質組成物の主成分は、MgO、SiO2、CaO、P25から構成され、その合計量は87質量%以上、好ましくは90質量%以上あれば良い。従来公知のケイ酸溶出性を有するものの多くは、例えばケイ酸カリ肥料の如くに、カリウムを主成分として含有するのに対し、本発明の無機組成物はこれを主成分として有していないという特徴がある。これにより、製品価格が高くなる、製造設備の炉材を浸食する、操業しにくい等の欠点を解消することが出来る。
【0027】ケイ酸質組成物は、SiO2含有量が30質量%以上である。これより少ないと、十分なケイ酸溶出量が確保できないことがあるし、ケイ酸質資材或いは肥料としての価値が減少する。50質量%を越えると大幅にケイ酸溶出性が下がり、中性に近い領域での溶出性が悪くなる。32〜43質量%が好ましい範囲である。
【0028】MgOは、ケイ酸質組成物の溶融温度を下げる効果やケイ酸溶出率を増大させる効果があり、また肥料成分としても有効なので、適当量含有させる必要がある。1質量%以下ではこれらの効果が十分ではなく、20質量%をこえると施用した植物の肥効成分の吸収性に拮抗作用を生じ、不都合が生じることがある。上記バランスから、1〜20質量%、好ましくは7〜18質量%の範囲がよい。
【0029】また、ケイ酸質組成物について、P25量が1〜16質量%であることが好ましい。P25は、1質量%以下では溶融物の融点が上昇しケイ酸の溶出率が低くなりやすくなると共に、ケイ酸分とのバランス上リン分が不足するためリン肥料を混合散布する必要が生じることがある。一方、16質量%を越えると、ケイ酸の必要量を散布するとP25の適切な施用量を超える場合が生じることがあり好ましくない。ケイ酸の溶出率を高くし、リン肥料の混合散布を必要とせず、更に適切なP25の施用量を維持できるということから前記範囲が選択され、4〜12質量%の範囲が一層好ましい。
【0030】また、ケイ酸質組成物について、モル換算した(CaO+MgO)/(SiO2+P25)比が1.2〜2.5であることが好ましい。前記比が1.2より小さくなるとケイ酸溶出量が減少する一方、2.5を超えるとSiO2含有量の低下や融点の上昇とケイ酸溶出性の低下が起こることがある。1.3〜2.0が好ましい範囲である。
【0031】ケイ酸質組成物において、主成分を構成する前記の成分の他に、微量成分として有効な硼素やマンガンを含有させることもできる。硼素やマンガンの存在は、後述する製造方法において溶融温度の低下や溶融物の流動性の増加の効果があるし、得られるケイ酸質組成物の非晶質化を促し、ケイ酸の溶出性を助長する効果もある。また、不可避的に混入する鉄酸化物やアルミニウムの酸化物などが含まれてもよい。しかし、アルミニウムについては、肥料効果が無く、有効成分の含有量を低下させ、また、量が多くなるとケイ酸分の溶出性に悪影響を及ぼすので、Al23の量は2質量%以下に抑制することが好ましい。
【0032】本発明におけるケイ酸質組成物は、ケイ酸の溶出性を高めるために非晶質である。非晶質の程度については、本発明者らの実験的検討結果によれば、NMR−29Siの半値幅が13ppm以上23ppm以下を示せば充分である。NMR−29Siの測定方法は、特願平10−205258号明細書に記載したとおりである。
【0033】またケイ酸質組成物の粉末について、その一次粒子の粒度分布は、D90が0.6〜3.0mm、D50が37μm以上であることが好ましい。ここで、粒度分布は、フルイで測定すればよい。例えば、JIS Z 8801に記載されたフルイを重ねて、試料を最も上のフルイ上に乗せ、タップ振動機にセットする。一定時間の後、各フルイ上に残った粉体の質量を測定し、百分率で表し、粒度分布とする。D90、D50は、累積質量%がそれぞれ90%、50%の時の粒度を示す。
【0034】D90が前記範囲より大きい場合には、D50の大きさにも影響されるが、イオン交換法で測定したときに、1ヶ月以内のケイ酸分溶出量が16質量%以上であるという本発明の目的を達成できないことがある。また、D50が37μm未満の場合には、前記目的は達成しやすいものの、粒度が細かいために長期に渡ってケイ酸分を溶出することを確保できないことがあるし、施肥後に粉末の微粉部分が雨等により流失されることがあるし、更に、粉砕にコストがかかるので好ましくないからである。
【0035】また、前記粒度分布を選択することで、イオン交換法で測定したときに、1ヶ月以内のケイ酸分溶出量を20質量%以上にも高めることができるからである。本発明のケイ酸質肥料は、イオン交換法の溶出率が2.5ヶ月後で80%以上に達するので、田植え後の追肥として使用するのに好適である。また、粒度分布が窒素、カリなどの他の肥料との混合や造粒に適しているので、容易に所望の組成の複合肥料とすることもできる。
【0036】また、本発明は前記の粒度分布を有するケイ酸質組成物の粉体に、上記の通りに、特定な有機質結合材を加えて造粒してなるケイ酸質肥料である。ケイ酸質組成物の粉体を構成している一次粒子が施肥の早い時期に水と接触してケイ酸イオンとして溶解されることを目的として造粒されているので、短期に多量の可溶性ケイ酸分を提供できる効果が得られる。
【0037】結合材としては、肥料に用いられている従来公知のものならば、基本的には使用が可能であるが、ケイ酸質組成物粉体の水への溶解性を損なうことなく造粒する一方で、施肥以前の保管時には空中の湿気等により崩壊しないこと等の理由から、一次粒子を覆いつつ二次粒子を形成できる結合材が選択され、前記結合材中の少なくとも1つの主成分が水に溶解し易い性質を有する有機質結合材が選択される。この様な、水に溶解しやすい性質を有する有機質結合材として、蔗糖、廃糖蜜、デンプン等が知られている。
【0038】本発明においては、前記の有機質結合材として、水への溶解速度が(50%/5分)以上の非常に溶解性に富むものを選択する。この溶解速度に満たない結合材を用いてる場合には、施肥直後におけるケイ酸質組成物の一次粒子と水との接触が充分に確保できないことがあり、その結果、ケイ酸の植物への充分な供給が確保できなくなることがある。
【0039】本発明において、有機質結合材として、蔗糖並びに廃糖蜜が好ましく選択される。然るに、いずれも安価で、入手しやすいし、デンプン等のように使用に際して前処理をする必要もない。蔗糖、廃糖蜜は混合して用いても構わない。更に、有機質結合材中に、前記の蔗糖或いは廃糖蜜が含まれていれば、その機能を損なわない限り、他の成分が存在していても構わない。
【0040】尚、有機質結合材の水への溶解速度の測定は、水分を含まない状態の有機質結合材を得ることから始めるが、造粒する前のものは容易に評価できることは勿論、造粒後であっても次に述べる操作を経ることで容易に評価できる。即ち、製品としての肥料は、乾燥状態で使用することが多いので、有機質結合材の水溶液は蒸発乾固しておく必要がある。この際、採取した有機質結合材の乾燥状態での成分重量を量っておく。また水への溶解性は固体の表面積などにより大きく影響するので表面積を一定にしておく必要がある。表面積測定装置などで予めその値を求めておいても良いし、簡便には、予め底面積を求めておいたビーカーなどに蒸発乾固しおけばよい。この場合、蒸発乾固は時間を掛けてゆっくり行い、乾固物の表面積が底面積よりも大きくなる様な乾固物のひび割れを防止するようにすることが重要である。
【0041】また溶解する水の温度も溶解速度に影響するので、一定温度にする必要がある。肥料を使用する水田の水温に近いことが望ましいが、気象条件、昼夜などの日内変動、地域差などにより温度は変化幅が大きい。しかし本発明者の検討結果に基づけば、水の温度は20℃程度から25℃程度の温度範囲に制御すれば十分である。
【0042】評価実験においては、一定温度で一定容量の水を、予め表面積と採取量の判った乾燥状態の有機質結合材に加える。撹拌せずにそのまま水温と同じ温度に制御した室内に放置する。一定時間間隔毎に一定量の水を試料として採取し、水中の有機質結合材量を他の分析手段で測定し、水への溶解速度を測定する。また、試料の採取に当たっては、その度に撹拌し溶液内濃度を一定にしてから採取する。試料採取後は静置する。水に溶解した有機質結合材の濃度の測定には、様々な分析方法が採用できるが、簡便にはTOC(全有機炭素測定装置)などにより測定するのが迅速で便利である。
【0043】本発明において、有機質結合材の水への溶解速度は5分で50%以上が溶解する速度であれば良いが、上述した通りに、蔗糖並びに廃糖蜜は比較的早く、これを満足することができ本発明の実施態様となる。本発明において有機結合材の水への溶解速度は60%以上であることが好ましい。この様に高い水への溶解速度を持つ有機質結合材を用いて造粒されたケイ酸質肥料は、水中での崩壊性が比較的良好で、迅速に崩壊し粉体状となる。そして、この性質を有するが故に、粉末状のケイ酸組成物小粒子の水へ接触するまでの時間が短くなり、ケイ酸イオンが速やかに水中へ溶解し、その組成物の機能が設計通りに発現されることになるからである。
【0044】一方、ケイ酸肥料の使用目的によっては、徐放タイプが望ましい場合、例えば秋施用であって農閑期、越冬して春に最適なる肥効を発現させるような場合など、結合材としては比較的水への溶解性が遅いほうが好ましい。この様に肥料の使用目的により結合材の水への溶解性を変える必要があるが、どの結合材を選択するか、あるいは複数の結合材を組み合わせるかは、前記した水への溶解性試験を行い、最適に選択或いは組み合わせればよい。
【0045】組み合わせ可能なその他の有機質結合材は、例えば、ポバール、メチルセルロース、リグニン誘導体、でんぷん、が挙げられる。本発明に於いては、組み合わせ可能な結合材は前記のいずれか一種以上を含有していれば良いが、このうち、リグニン誘導体はパルプ廃液として安価に入手できるので都合がよい。また、でんぷんは、コーンスターチなど安定した品質のものが入手できるので好ましい。
【0046】また、本発明の珪酸質肥料は、イオン交換法で測定して、2.5ヶ月以内のケイ酸分溶出量が当初含まれていたケイ酸分の60%以上であるケイ酸質肥料であることが好ましい。この機能を有するとき、少量の施肥であっても追肥することなく長期に渡ってケイ酸可溶分を供給することができ、稲の発育促進に寄与することができる。
【0047】また、本発明の珪酸質肥料は造粒されていて、その粒度は0.5〜5mmであることが好ましい。前記粒度範囲に整えられた粒は、必要量を採取する分取時或いは機械への投入時、更に保管中に吸湿しにくく、型くずれしない等、多くの利点がある。粒度分布は、造粒方法やその後の分級方法などにより影響されるが、前記目的を達成するためには、なるべく粒度分布幅は狭い方が好ましく、より具体的には、1〜4mmであることが好ましい。
【0048】本発明のケイ酸質肥料の製造方法を、以下に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】原料として、燐鉱石、蛇紋岩、ケイ石、石灰石、生石灰、硬焼生石灰、フェロニッケル鉱滓、フェロマンガン鉱滓、各種高炉滓、各種製鋼滓、製リンスラグ、フライアッシュ等のP25、CaO、MgO、或いはSiO2を含有する通常の原料類を利用することができる。上記原料の中にはアルミナ分(Al23)を含むものもあるが、Al23の存在は得られる稲作用肥料のケイ酸溶出率を悪化させ、またAl23含有量が増加すると他の成分の含有量が実質的に減るので、Al23含有量の増大は好ましくない。Al23が含まれていない原料を使用するか、またはAl23が含まれている原料は少量に限定して使用し、得られる無機組成物中のAl23量が2質量%以下とすることが好ましい。
【0050】前記原料を、揮発分の量等を考慮し、生成物が所望組成となるように、即ち、MgOを1〜20質量%、SiO2を30〜50質量%含有するように、好ましくはP25が1〜16質量%、モル比(CaO+MgO)/(SiO2+P25)が1.2〜2.5となるように、更に好ましくはP25が4〜12質量%、モル比(CaO+MgO)/(SiO2+P25)が1.3〜2.0となるように配合し、高温で溶融する。
【0051】前記溶融に用いる炉(溶融炉)は、外熱式電気炉、アーク炉、高周波加熱炉等の電気炉、或いは平炉を初めとするいろいろな燃焼ガス炉等が使用できる。溶融温度は、組成にもよるが1350℃以上が望ましい。目標とする組成を有する原料が完全に溶融する温度より、およそ150℃以上高い温度で溶融すると、溶融温度から結晶化の進まない温度までの間で十分な冷却速度がとれるので好ましい。前記溶融炉のうち、後述するとおりに、溶融液を急冷することができ、非晶質化した無機粉体を容易に得ることができることから電気炉、並びに平炉が好ましく選択される。
【0052】溶融液の急冷は、得られる無機組成物の非晶質化を達成し、ケイ酸の溶出性を高めるために必須である。急冷は、一般には、炉から抜き出した溶融液に溶融液の20〜40倍の質量の水を吹き付ける方法や、多量の水中に浸漬する方法等を適用することによって行われる。本発明の無機組成物を得る際の冷却方法としては、溶融温度から100℃までの所要時間は20秒以下好ましくは10秒以下とすることがよく、特に、原料が完全に溶融する温度の上下200℃の間を5秒以内とする事が望ましいので、このため、ジェット水流を当てて冷却する方法が好ましい。更に、ジェット水流を用いる冷却方法は、溶融液より砂状物を直接に得られ、後工程としての粉砕を省略することもできるという効果も得られる。
【0053】砂状物の粒度は、ジェット水圧、水量などにより制御でき、この操作のみで、粒度がD90で0.6〜3.0mm、D50で37μm以上である無機粉体を得ることもできるが、更に、必要に応じて、粉砕して、更に必要ならば分級操作を組み合わせながら、粒度分布をD90で0.6〜3.0mm、D50で37μm以上とすれば良い。
【0054】前記粉砕操作には、ロールクラッシャー、スタンプミル、ローラーミル、ボールミル、ジェットミルなどの各種粉砕機を用いることができる。また、造粒操作には、ペレタイザー、転動造粒機などの各種造粒機を用いることができる。
【0055】造粒操作は、以下の手順で例示するとおりに、混合機と造粒機とを併用して2段階で操作することがある。即ち、主原料となる粉体100質量部に対して、固形分を40質量%含む廃糖蜜を12質量部添加し、万能混合機で混合する。これを皿型造粒機に移し、回転させながら水を噴霧する。取り出された水分を含む造粒品を乾燥機で乾燥し、1〜4mm程度に造粒された粒状の肥料を得る。
【0056】
【実施例】以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
【0057】〔ケイ酸質組成物の粉末の作製〕りん鉱石(中国産)1tに対して、蛇紋岩1.5t、フェロニッケル鉱滓0.3t、ケイ石0.9t、生石灰1.1tを混合粉砕し、平炉に供給して加熱溶融した。平炉から流れ出る湯にジェット水流をぶつけ、ケイ酸質組成物の粉末を得た。
【0058】前記ケイ酸質組成物の粉末は、非晶質で、P25、SiO2、MgO、CaOをそれぞれ9.2質量%、35.0質量%、16.1質量%、35.3質量%含んでいた。従って、モル比(CaO+MgO)/(SiO2+P25)は1.59である。また、粒度分布を篩いを用いて測定したところ、2mm以上が0.4質量%、2mm未満〜1mm以上が9.7質量%、1mm未満が89.9質量%、44μm以下が3.2質量%であった。
【0059】〔実施例〕前記ケイ酸質組成物の粉末100質量部に、廃糖蜜(固形分40質量%)を12質量部を加えながら、パン型造粒機に分級機を連動させた装置により、造粒し、粒子径が1〜4mmに制御されたケイ酸質肥料を作製した。
【0060】前記ケイ酸質肥料について、ケイ酸の水への溶出量の経時変化を、前述のイオン交換法のより評価した。また、廃糖蜜について、前記の方法で、水への溶解速度を測定した。これらの結果を表1、表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】〔比較例〕廃糖蜜に代えて水に可溶化した化工デンプン(12質量%)を1.5質量部を用いたこと以外は実施例と同じ操作をしてケイ酸質肥料を作製し、実施例と同じ評価を行った。また、化工デンプンの水への溶解速度も測定した。これらの結果を表1、表2に示した。
【0064】
【発明の効果】本発明のケイ酸質肥料は、土壌中への可溶性ケイ酸を多く含み、施肥後1月以内に16質量%以上もの可溶性ケイ酸を供給できるという特徴を有し、しかも燐酸分を含んでいる特徴を有しているので、従来公知のケイカルに比べて、施肥量を少なくできるし、燐酸質肥料とケイ酸質肥料との混合が不要であり、農家における省力化に有用である。また、水に速やかに溶解する有機質結合材を用いて造粒されているので、その取り扱いにも優れている。
【0065】更に、本発明のケイ酸質肥料は、ケイ酸質の吸収性が良いので、作物の病虫害発生が抑えられること、稲が倒れにくくなること、緩効性であるから肥あたりを起こさないこと、雨水に流亡せず肥料散布の回数を減らせること、等の数々の利点を有する特徴を持つ。更に、その組成中にはカリウム等のアルカリ金属元素を含有しないので製造しやすい、カリ含有肥料に比べて安価に製造できるという特徴を有し、産業上有用なものである。
【出願人】 【識別番号】000003296
【氏名又は名称】電気化学工業株式会社
【識別番号】398002204
【氏名又は名称】日之出化学工業株式会社
【出願日】 平成12年8月25日(2000.8.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−68871(P2002−68871A)
【公開日】 平成14年3月8日(2002.3.8)
【出願番号】 特願2000−254930(P2000−254930)