| 【発明の名称】 |
セメントクリンカーの製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】岡林 茂生
【氏名】田坂 行雄
【氏名】平泉 恵子
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、クリンカーの品質に悪影響を与えること無く、クリンカー中の水溶性六価クロム量を低減する方法の提供を目的とする。
【解決手段】窯前あるいはクーラー部への石灰石の投入が水溶性六価クロムの生成抑制に極めて有効であるとの知見を得、本発明を完成した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】セメントキルンのメインバーナー焼点部から窯前部に至る範囲、またはクリンカークーラー部に、石灰石を投入することを特徴とする、六価クロムの生成が抑制されたセメントクリンカーの製造方法。 【請求項2】クリンカー100質量部に対し、粒度が20mm以下の石灰石を0.25〜5質量部投入することを特徴とする、請求項1に記載のセメントクリンカーの製造方法。 【請求項3】請求項1に記載の方法で製造されたクリンカーにせっこうおよびセメント混合材を添加することを特徴とするセメントまたはセメント系固化材の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、有害な六価クロムの生成が抑制されたセメントクリンカー製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】セメントクリンカー製造時には、原燃料に由来するクロム(多くの場合三価クロムの形態で存在)が加熱処理により空気酸化され、微量(約5から20ppm)の水溶性六価クロムが生成することがあり、生成六価クロムはセメントに含まれることになる。従って、この様なセメントを使用すると、セメントスラリー、フレッシュコンクリートあるいはセメント系固化材による改良土からの六価クロムの溶出が起こる。これに対する対策としては、セメントやセメント系固化材に種々の還元性物質(第一鉄塩、高炉スラグ、硫黄化合物等)を添加し、セメントの使用段階で溶出して来る六価クロムを三価に還元し無害化する方法がある。 【0003】しかし、水溶性六価クロム量の低減されたセメントを製造すること、すなわち製造段階でこの六価クロム量を低減することが好ましいことは言うまでも無いことであり、少数ではあるが幾つかの技術が開示されている。例えば、キルン窯尻やクーラー部のクリンカーに可燃性物質を添加する方法(特開平11−100244号公報)、セメントクリンカーの焼成工程で可燃物を供給する方法(特開平11−189442号公報)、クーラー部のクリンカー温度850〜1000℃の領域に可燃物を供給する方法(特開2000−319050号公報)が例として挙げられる。 【0004】これ等は何れも、可燃物を高温のクリンカー部分に供給し、可燃物を燃焼させることによってクリンカーを還元性ガスに曝し、水溶性六価クロムの生成を抑制することを意図したものである。しかし、この方法では、可燃物の燃焼とクリンカー周辺ガスの還元化とのタイミングやバランスが取り難く、得られるクリンカー中の水溶性六価クロムの含有量が変動し易い。また、本来は、クリンカーが急冷されなければならない工程であるにもかかわらず、同時並行的に可燃物が徐々に燃焼するため、クリンカーの急冷が不十分となり、クリンカー品質が低下するといった問題があった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、クリンカーの品質に悪影響を与えること無く、クリンカー中の水溶性六価クロム量を低減する方法の提供を目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】発明者は、セメントクリンカー焼成工程において、実機キルン窯前からクーラー部に落ちる高温クリンカー(1300℃以上)を採取し、その水中急冷品について水溶性六価クロムを定量した。その結果、水溶性六価クロムはほとんど含有されていないことを知見した。このことは、水溶性六価クロムの大部分がクリンカー冷却過程で生成することを示しており、この工程で何等かの対策を講じれば、水溶性六価クロムの生成の抑制が可能な事を示している。 【0007】そこで、窯前あるいはクーラー部に石灰石を吹込み、得られたクリンカーについて水溶性六価クロム含有量の定量およびセメントの物性や固化材としての特性を試験した。これらの一連の実験により、石灰石の投入が水溶性六価クロムの生成抑制に極めて有効であるとの知見を得、本発明を完成した。すなわち、本発明は、セメントキルンのメインバーナー焼点部から窯前部に至る範囲、またはクリンカークーラー部に、石灰石を投入することを特徴とする、六価クロムの生成が抑制されたセメントクリンカーの製造方法に関する。更に、本発明は、上記方法で製造されたクリンカーに、せっこうおよびセメント混合材を添加することを特徴とするセメントまたはセメント系固化材の製造方法に関する。また、本発明は、その好ましい実施態様がクリンカー100質量部に対して粒度が20mm以下の石灰石を0.25〜5質量部投入することである、六価クロムの生成が抑制されたセメントクリンカーの製造方法に関する。 【0008】 【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。クリンカー冷却工程に投入された石灰石は、高温クリンカーと接触して熱分解し、その際、発生する炭酸ガスによりクリンカー周辺ガスの酸素濃度が大幅に低下し、水溶性六価クロムの生成が抑制されると推察される。さらに、石灰石の熱分解が吸熱反応であることから、クリンカーの急速冷却を促進し、セメントの品質安定化にも寄与すると推察されることから、これらの効果が最大限発現されるように石灰石投入条件を設定するのが当然好ましい。 【0009】石灰石の投入位置は、石灰石の熱分解効果を高めるため、メインバーナー焼点部から窯前の、所謂キルン冷却帯に設定する。石灰石は、クリンカー流表面に落下し、その後はクリンカーと共に移動する。この場合、石灰石投入箇所におけるクリンカー温度は1200℃以上、好ましくは1350℃以上であるのが望ましい。 【0010】使用する石灰石は、品質的に限定されるものではない。例えば、ドロマイトも使用できる。石灰石は、大きすぎると石灰石の熱分解が不十分となり、クリンカー中に残存する未分解石灰石量が多くなりすぎることから、その粒度は、20mm以下とするのが好ましい。また、粒度は、投入位置によって変えるのが好ましく、例えば、窯前部への投入では、細か過ぎるとクーラーから取込まれる燃焼用二次空気流により飛散し、クリンカー周辺部での石灰石の熱分解が効率的に行われないことが生じることから、5〜20mmであるのが好ましく、一方、窯前部より温度が低く、風量のより少ないクーラー部に投入する場合には、石灰石の粒度を細かくした方がより効果的である。 【0011】クリンカー100質量部に対する石灰石の投入量は、0.25〜5質量部とするのが好ましい。0.25質量部より少ないと石灰石の十分な投入効果が得られず、一方、過多になると、分解反応が吸熱反応であることから、燃焼用二次空気の温度上昇が低くなり、全体の燃料原単位が増加するからである。 【0012】投入石灰石の熱分解で生成した酸化カルシウムの大部分は、石灰石粒から分離し、粉体となって燃焼用二次空気によってキルン焼成帯やプレヒーター部に飛散し、クリンカー生成反応に関与し、クリンカーに取込まれる。投入位置によっては、例えば、クーラー部への投入において、生成酸化カルシウムがクリンカーに遊離石灰量として付着することがあるが、その量が1.5質量%を越えるとセメントの安定性が失われるため好ましくない。一方、石灰石の熱分解が完全に終了する必要はない。すなわち、未分解の石灰石が残存することには品質上の問題はなく、むしろ1〜2質量%程度の残存は、セメント物性面で好ましい効果をもたらす。 【0013】また、石灰石の投入により、当然のことながら産出されるクリンカー中のカルシウム成分が増加する。それのセメント物性への影響の程度は、未分解の石灰石の残存で軽減されるが、必要に応じて、プレヒーター部(NSPタワー)に送入する原料の成分調整によって制御する。 【0014】本発明で得られるクリンカーには、従来のクリンカー同様、せっこうを添加して各種セメントやセメント系固化材等が製造される。セメントの製造においては、クリンカー、せっこう、あるいはさらに70質量%以下のセメント混合材(高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石、シリカフューム等)を添加して混合粉砕するか、または粉砕されたセメントに微粉のセメント混合材を添加・混合することができる。得られたセメントは、土木・建築分野でコンクリートとして、また、コンクリート二次製品に使用することができる。この場合、水溶性六価クロム含有量が低減されていることから、コンクリートミキサー、アジテーター車、型枠等の洗浄排水の排水処理を軽減することができる。 【0015】セメントにさらに、せっこう、高炉スラグ、生石灰や消石灰等を添加して、土質や地盤改良用固化材を製造することができるが、この場合も、本発明のクリンカーを使用することによって、固化処理土からの六価クロムの溶出量を大幅に低減することができる。以下では、具体的例を示して、本発明を更に詳しく説明する。 【0016】 【実施例】図1は、クリンカー製造装置の構成を示す図である。NSP型実機キルンで普通クリンカー焼成時に、粒径5〜20mmの石灰石をクリンカーに対し投入量を変えて吹込んだ。投入は、窯前からメーンバーナー3に並行させて設定した投入パイプ4で行い、石灰石は窯前5のキルン端部から約6m奥の位置のクリンカー流表面に投下した。該石灰石投入箇所のクリンカー温度は、1400℃以上であると推定される。石灰石投入時間は一条件当たり5時間であり、投入終了30分前にクーラー部6からベルトコンベアで搬出されるクリンカーを採取し、六価クロム、遊離石灰および未分解の石灰石(炭酸カルシウム)量を定量した。 【0017】水溶性六価クロムは、セメント協会標準試験方法「セメント及びセメント原料中の微量成分の定量方法」I−51−1981により定量した。遊離石灰は、セメント協会標準試験方法「遊離酸化カルシウムの定量方法」I−01−1981により定量した。又、未反応石灰石(炭酸カルシウム)は、セメント協会標準試験方法「普通ポルトランドセメント中の高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ及び石灰石の含有率の推定方法」I−60−1982によって定量した。分析結果を表1に示す。 【0018】 【表1】
【0019】石灰石の投入により、クリンカー中の水溶性六価クロム量は大幅に減少している。また、クリンカー中の遊離石灰と未反応炭酸カルシウム含有量の合量(炭酸カルシウム換算)は、石灰石投入なしの場合より大となっているが、投入石灰石量に比べて減少していることから、石灰石の熱分解によって生成した酸化カルシウム(生石灰粒子)は、二次空気によってキルン内部に逆流し、クリンカー構成化合物の生成反応に関与していると推察される。 【0020】次に、上記表1に示したNo.1、No.4及びNo.7のクリンカー(SO30.3〜0.4質量%)について、せっこう(2水せっこう:セメント中のSO3基準で0.4質量%、半水せっこう:セメント中のSO3基準で1.3質量%)を添加し、試験ミルでブレーン比表面積3450±40cm2/gを目標に粉砕し、セメントを調整した。これらのセメントについて、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」によりモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表2に示す。 【0021】 【表2】
【0022】石灰石を投入したクリンカー(No.4及びNo.7)の圧縮強さは、石灰石を投入しない場合(No.1)に比べて遜色はなく、クリンカーNo.7に見られるようにある程度の未分解石灰石が残存するほうがむしろ好ましいことが分かる。 【0023】さらに、上記表1に記載のクリンカーNo.1(石灰石投入なし)およびクリンカーNo.6に2水せっこう(セメント系固化材中のSO3基準で1.8質量%)、及び無水せっこう(セメント系固化材中のSO3基準で5.5質量%)を添加して、試験ボールミルで粉砕し、セメント系固化材を調整した。固化材のブレーン比表面積は3820〜3930cm2/gの範囲にあった。この固化材を種々の軟弱土に添加してホバートミキサーで3分間混練し、セメント協会標準試験方法L−01−1990に準拠して、φ5×10cmの円柱供試体を作成した。この供試体を20℃で7日間密封養生し、環境庁告示46号「土壌環境基準」に規定の方法により、固化処理土からの六価クロムの溶出量を測定した。この結果を表3に示す。 【0024】 【表3】
【0025】石灰石を投入したクリンカーから調整したセメント系固化材[B又は(B+高炉スラグ)]では、固化改良土からの六価クロムの溶出量が大幅に低減されている。また、固化改良土からの六価クロムが溶出し易い関東ロームの場合、高炉スラグを補助的に使用すると、通常の固化条件(固化材添加量)において、土壌環境基準(0.05mg/L以下)をクリアできることがわかる。 【0026】 【発明の効果】本発明の方法では、クリンカー製造時の冷却過程で石灰石を投入する簡単な方法により、セメント特性に悪影響を及ぼすことなく、六価クロムの生成を抑制することができる。すなわち、本発明は、セメント、コンクリート、セメント系固化材さらにはその構造物や固化処理土からの六価クロムの溶出を大幅に抑制できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000206 【氏名又は名称】宇部興産株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年4月12日(2001.4.12) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2002−316843(P2002−316843A) |
| 【公開日】 |
平成14年10月31日(2002.10.31) |
| 【出願番号】 |
特願2001−113581(P2001−113581) |
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