| 【発明の名称】 |
電気車両システム |
| 【発明者】 |
【氏名】小笠 正道
【氏名】山本 貴光
【氏名】山下 道寛
【氏名】渡邉 朝紀
|
| 【要約】 |
【課題】回生パワーの制限等により架線に変換できない余剰の回生エネルギーをバッテリまたはコンデンサに蓄積し、高速域での力行時に、バッテリまたはコンデンサからのパワーアシストを行って、効果的にエネルギーを利用する電気車両システムを提供する。
【解決手段】本発明の電気車両システムは、直流電圧を制御する昇降圧チョッパ12とインバータ13とを備えるPAM制御方式昇降圧主回路20と、主電動機群14と、入力部16と、応速度ブレーキ力パターンμに基づいてPAM制御方式昇降圧主回路20を制御する制御部17と、電源を蓄積及び供給するバッテリ22(またはコンデンサ)と、バッテリ22(コンデンサ)に至る経路上に接続されたブリッジ型可逆チョッパ21と、を備え、昇降圧チョッパ12及びブリッジ型可逆チョッパ21は、4つ以上のゲート回路12aで構成することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 交流電圧の印可を受けて該交流電圧に対応したトルクを車軸に与える主電動機と、電源を蓄積及び供給するバッテリまたはコンデンサと、入力された直流電圧を交流電圧に変換して、前記主電動機に変換した交流電圧を印可するインバータと、前記インバータに接続され、前記インバータに入力する直流電圧を制御する昇降圧回路とを有する電圧制御回路と、前記電圧制御回路の前記インバータと前記昇降圧回路の間の経路上から分岐して、前記バッテリまたはコンデンサに至る経路上に接続された変換器回路と、を備える、ことを特徴とする電気車両システム。 【請求項2】 前記電圧制御回路は、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御方式の回路である、ことを特徴とする請求項1記載の電気車両システム。 【請求項3】 前記昇降圧回路は、DC/DC双方向チョッパの構成である、ことを特徴とする請求項1又は2記載の電気車両システム。 【請求項4】 前記昇降圧回路は、4象現可逆チョッパまたは2並列2象現直流可逆チョッパの構成である、ことを特徴とする請求項1又は2記載の電気車両システム。 【請求項5】 前記昇降圧回路は、直流区間では昇降圧チョッパとして機能し、交流区間ではPWM(Pulse Width Modulation)コンバータとして機能する、ことを特徴とする請求項4記載の電気車両システム。 【請求項6】 前記変換器回路は、DC/DC双方向チョッパの構成である、ことを特徴とする請求項1乃至5記載の電気車両システム。 【請求項7】 前記変換器回路は、高周波トランス回路の構成である、ことを特徴とする請求項1乃至5記載の電気車両システム。 【請求項8】 前記変換器回路と前記バッテリまたはコンデンサの間に、前記バッテリまたはコンデンサの過充電を防止する保護回路を設けた構成である、ことを特徴とする請求項7記載の電気車両システム。 【請求項9】 前記昇降圧回路は、電流可逆チョッパの構成である、ことを特徴とする請求項1記載の電気車両システム。 【請求項10】 前記変換器回路は、電流可逆チョッパの構成である、ことを特徴とする請求項9記載の電気車両システム。 【請求項11】 さらに、前記電圧制御回路を所定の粘着ブレーキパターンμに基づいて制御する制御手段を備える、ことを特徴とする請求項1乃至10記載の電気車両システム。 【請求項12】 前記粘着ブレーキパターンμは、車両速度をVt[km/h]としたとき、μ=b/(Vt+a)、の関数で示され、前記係数a及びbは、前記関数で示される反比例曲線上の任意の2点での値によって決定される、ことを特徴とする請求項11記載の電気車両システム。 【請求項13】 前記係数aは、約78であり、前記係数bは、約15.84である、ことを特徴とする請求項12記載の電気車両システム。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、交流モータ等を用いて鉄道車両(以下、単に「車両」ともいう)を加減速させる電気車両システムに関する。特には、回生パワーの制限等により架線に変換できない余剰の回生エネルギーをバッテリまたはコンデンサに蓄積し、高速域での力行時に、バッテリまたはコンデンサからのパワーアシストを行うことができる電気車両システムに関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、交流モータ等を用いて車両を加減速させる電気車両においては、駆動電動機を発電機として電流を発生して車軸にトルクを与え車両を加減速させる。即ち、車両の発進又は加速時には駆動電動機を発電機として電流を発生して車軸に駆動トルクを与え、逆に、車両の減速又は停止時には、電気ブレーキとして車軸に制動トルクを与えて車両の減速又は停止を行っている。 【0003】また、電気車両のブレーキシステムとしては、電気ブレーキのほか摩擦ブレーキや流体ブレーキなどが使用されている。摩擦ブレーキは、圧縮空気や油圧などによって機械的に制輪子を車軸やブレーキディスクなどに押し付けて摩擦力を発生させ車両を減速及び停止させるものである。また、流体ブレーキは、油などの流体を回転翼などで攪拌し、その際の抵抗力をブレーキ力として車両を減速及び停止させるものである。 【0004】一般に、電気車両のブレーキにおいて、高速域での電気ブレーキ力が低速度域に較べて低下することから、所要ブレーキ力を満足できない部分は機械ブレーキにより補足している。 【0005】この高速域での機械ブレーキ分担が増えることは、車輪やデイスクヘの熱的負荷の増大やブレーキシュー・ライニングの摩耗の増大を伴い、近年、特に運行時分短縮のために高減速度の要求される機会が増えているため、車輪踏面亀裂や凹摩耗などが発生する場合もある。 【0006】このため、ブレーキ力の機械ブレーキ分担分をなくし、電気ブレーキのみで賄うことも考えられる。この場合には、高速域での電気ブレーキ分担分を増加させることで実現可能となる。 【0007】図10は、近郊電車における常用最大ブレーキ設定を示す図である。図10に示すように、最近では、車種によって、中速度〜高速度にかけて簡単な応速度ブレーキ力パターンを持たせて、高速域での期待粘着係数(摩擦係数)μ’を若干緩和したものもある。 【0008】ここで、期待粘着係数μ’とは、駆動伝達力と車軸重量の比であり、<式1>期待粘着係数μ’=駆動伝達力/車軸重量で示される。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の電気車両では、主電動機への印加電圧が架線電圧相当の印加電圧で頭打ちになる速度(以下、単に「定格速度」ともいう)より高速域の弱磁束領域・特性領域において、主電動機の制御特性上、定トルク領域に較べて電動機トルクが速度とともに急激に低下する。これは、架線電圧上限値相当以上の電圧を主電動機に印加できないからである。 【0010】このため、直流き電区間では、回生失効時や回生パワーの制限等により、回生ブレーキ時の回生エネルギーを全て架線に返すことが困難であるという問題があった。また、所要のブレーキ力が得られない場合には、機械ブレーキを使用したり、発電抵抗器で回生エネルギーを消費したりしていた。このため、エネルギーの無駄な消費が生じ、エネルギー効率に無駄が生じる場合があった。 【0011】このような場合、インバータにかかる電圧を上昇させる方法があるが、この場合、力行及び回生の両方向に対応可能な昇降圧チョッパを設ける必要があるが、架線返還できるパワーには限界があるため、回生ブレーキ力を増加させても処理できない余剰パワーを生じる場合があった。 【0012】本発明はこのような背景の中でなされたものであって、回生パワーの制限等により架線に変換できない余剰の回生エネルギーをバッテリまたはコンデンサに蓄積し、高速域での力行時に、バッテリまたはコンデンサからのパワーアシストを行うことにより、効果的にエネルギーを利用することができる電気車両システムを提供することを目的とする。 【0013】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明の電気車両システムは、交流電圧の印可を受けて該交流電圧に対応したトルクを車軸に与える主電動機と、電源を蓄積及び供給するバッテリまたはコンデンサと、入力された直流電圧を交流電圧に変換して、主電動機に変換した交流電圧を印可するインバータと、インバータに接続され、インバータに入力する直流電圧を制御する昇降圧回路とを有する電圧制御回路と、電圧制御回路のインバータと昇降圧回路の間の経路上から分岐して、バッテリまたはコンデンサに至る経路上に接続された変換器回路と、を備える、ことを特徴とする。 【0014】ここで、電圧制御回路は、PAM制御方式の回路にするとよい。このとき、昇降圧回路は、DC/DC双方向チョッパの構成にすることもでき、4象現可逆チョッパまたは2並列2象現直流可逆チョッパの構成にすることもできる。このとき、直流区間では昇降圧チョッパとして機能し、交流区間ではPWMコンバータとして機能する、こともできる。 【0015】また、変換器回路は、DC/DC双方向チョッパの構成にすることができ、高周波トランス回路の構成にすることもできる。このとき、変換器回路とバッテリまたはコンデンサの間に、バッテリまたはコンデンサの過充電を防止する保護回路を設ることもできる。 【0016】また、昇降圧回路は、電流可逆チョッパの構成にすることができる。このとき、変換器回路は、電流可逆チョッパの構成にするとよい。 【0017】さらに、電圧制御回路を所定の粘着ブレーキパターンμに基づいて制御する制御手段を備える、ことができる。このとき、粘着ブレーキパターンμは、車両速度をVt[km/h]としたとき、「μ=b/(Vt+a)」の関数で示され、係数a及びbは、関数で示される反比例曲線上の任意の2点での値によって決定される、ようにするとよい。また、係数aは、約78であり、係数bは、約15.84にするとよい。 【0018】上述の本発明の電気車両システムにおいては、回生パワーの制限等により架線に変換できない余剰の回生エネルギーをバッテリまたはコンデンサに蓄積し、高速域での力行時に、バッテリまたはコンデンサからのパワーアシストを行うことにより、効果的にエネルギーを利用することができる。 【0019】 【発明の実施の形態】以下本発明の電気ブレーキの制御方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。 【0020】図1及び図2は、本発明の電気車両システムの実施の形態の一例を示すブロック図である。ここで、図2(A)は、直流区間における電気車両システムの実施の形態の一例を示すブロック図であり、図2(B)は、交流区間における電気車両システムの実施の形態の一例を示すブロック図である。また、図3は、本名発明の電気車両システムにおける母線電圧と車両速度の関係を示す図である。図1〜図3において、この電気車両システムは、パンタグラフ11から入力された架線18からの直流電圧を制御する昇降圧DC/DCコンバータ(以下、単に「昇降圧チョッパ」ともいう)12とDC/AC変換器であるインバータ13とを有するPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御方式昇降圧主回路20と、PAM制御方式昇降圧主回路20からの電圧に応じて車輪15の車軸(図示せず)に電動機トルクを与える三相交流電動機(以下、単に「主電動機群」ともいう)14と、力行信号やブレーキ信号を入力する入力部16と、入力部16からの信号に応じて、予め設定された応速度ブレーキ力パターン(粘着パターン)μに基づいて、PAM制御方式昇降圧主回路20を制御する制御部17と、電源を蓄積及び供給するバッテリ22と、インバータ13と昇降圧チョッパ12の間の経路上から分岐して、バッテリ22に至る経路上に接続された変換器回路であるブリッジ型可逆チョッパ(DC/DC双方向チョッパ)21と、を備えている。 【0021】ここで、インバータ13は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって直流を交流に変換する電力変換装置を使用するとよい。さらに、このPWM制御(パルス幅変調制御)を使用したインバータ13には、PWM制御(パルス幅変調制御)VVVF(Variable Voltage Variable Frequency)インバータとするとよい。このPWM制御(パルス幅変調制御)VVVF(可変電圧可変周波数)インバータは、PWM制御(パルス幅変調制御)によって正負2レベルまたは3レベルのパルス電圧を出力し、平均電圧として目的の振幅と周波数を持った交流電圧を得ることができる。 【0022】また、昇降圧チョッパ12は、4つのゲート回路12aで構成されるDC/DC双方向チョッパで構成されている。また、ブリッジ型可逆チョッパ21は、4つのゲート回路12aで構成することができる。ここで、昇降圧チョッパ12及びブリッジ型可逆チョッパ21は、2並列2象現直流可逆チョッパとすることもできる。 【0023】以下、制御部17においてPAM制御方式昇降圧主回路20を制御する期待粘着ブレーキパターンμについて説明する。 【0024】期待粘着ブレーキパターン(駆動伝達力/軸重比)μが速度Vt(Velocity of Train)に反比例するパターンを設定し、<式2>μ=b/(Vt+a) を満たす関数とする。 【0025】ここで、係数a、bは,反比例曲線上の2点A(Vt_a、μa)、B(Vt_b、μb)を設定すれば一意に決まり、以下の式で計算することができる。 <式3>a=(μb×Vt_b−μa×Vt_a)/(μa−μb) b=μa×μb(Vt_b−Vt_a)/(μa−μb) Vt_a≦Vt_bμa≧μb【0026】ここで、2点A、Bの与え方を変えることで、いろいろなμパターンが作成できる。例えば、新幹線における計画粘着式はこのような反比例近似を用いており、<式4>μ=13.6/(Vt+85) が用いられている。 【0027】また、在来線は車種別、乾燥・湿潤別の計算式もある一方で、平均値として、<式5>μ=32.74/(Vt+187) が用いられている。 【0028】例えば、A(10[km/h]、0.18)、B(120[km/h]、0.08)とすると、<式6>μ=15.84/(Vt+78) となる。 【0029】図4は、期待粘着ブレーキパターンμが式6のときの粘着パターン変更による設計減速度(常用最大ブレーキ設定)を示す図である。図3に示すように、式6に示した期待粘着ブレーキパターンμは、現状の動力分散列車の粘着性能に適した値であるといえる。なお、速度10[km/h]以下をフラットなパターンにしてもよい。 【0030】次に、<式6>の場合の減速度・停止距離の算出を示す。電気ブレーキで負担するブレーキ力をFe_t[N]、電気ブレーキで分担する減速度をβe[Km/h/s]とする。いま、編成全体両数k[両]、電動車数n[両]、1両当たりの満車荷重を17.0[ton/両]とし、簡単のために電動車質量(空車)M0[kg/両]、付随車質量(空車)T0「kg/両」、荷重載荷時の電動車質量ML[kg/両]とすると、編成全体の最大質量M’[kg]は、<式7>M’=n×(M0+17000)+(k−n)×(T0+17000) =n×M0+(k−n)×T0+17000×kとなる。 【0031】このとき、列車編成としての並進系運動方程式は、<式8>(M’/3.6)×(dVt/dt)=n×μ×ML×gとなる。 【0032】また、動軸1軸当たりの慣性モーメントJw[kgm2]、車輪の回転角速度ωw[rad/s]、車輪半径rw[m]、車輪への印加トルクτw[Nm]、車輪周引張力fw[N]とすると、動軸の回転系運動方程式は、<式9>Jw×(dωw/dt)=τw−μ×(ML/4)×g×rwまたは、並進系に換算して、<式10>Jw/rw2×(dVt/dt)×(1/3.6)=fw−μ×(ML/4)×g但し、Jw/rw2は、慣性質量[kg]となる。 【0033】上述の<式7>〜<式10>より、μの項を消去すると、<式11>|βe|=dVt/dt =3.6×(4×n×fw)/(M’+4×n×Jw/rw2) となり、編成全体としての減速度βeが算出できる。 【0034】次に,編成全体の印加電気ブレーキカFe_t[N]は、<式12>Fe_t=4×n×fw =(M’+4×n×Jw/rw2)×|βe|×3.6となり、電動車1軸当たりの期待粘着ブレーキパターン(粘着係数)μ(=駆動伝達力/軸重比)は、<式13>μ=M’/(n×ML)×|βe|/(3.6×g) となる。 【0035】いま、<式2>の期待粘着ブレーキパターンμならば、この<式2>を<式13>に代入して、<式14>|βe|=3.6×g×n×ML/M’×b/(Vt+a) =b’/(Vt+a) 但し、b’=3.6×g×n×ML/M’×bを得ることができる。 【0036】このとき、速度Vtは以下の微分方程式を満足する。 <式15>|βe|=―dVt/dt=b’/(Vt+a) Vt×(Vt+a)=−b’【0037】ここで、<式15>を時刻0[秒]―>t1[秒]まで定積分すると、<式16>(1/2)×{Vt(t1)2―Vt(0)2}+a×{Vt(t1)−Vt(0)}=−b’×t1となり、<式16>をVtの次数ごとに整理し、実数かつVt(t1)≧0の条件より、Vt(t1)をt1の関数としてVtを求めると、<式17>Vt(t1)=−a+√{a2+Vt(0)2+2×a×Vt(0)−2×b’×t1} となる。 【0038】従って、Vt(0)―>Vt(t1)までの減速時間t1[秒]は、<式18>t1={Vt(0)−Vt(t1)}×{2×a+Vt(0)+Vt(t1)}/(2×b’) 走行距離l[m]は、<式17>及び<式18>より、<式19>l=∫t10{Vt(t1)/3.6}dt ={Vt(0)2×{3×a+2×Vt(0)} ―Vt(t1)2×{3×a+2×Vt(t1)}} /(3.6×6×b’) となる。 【0039】ここで、速度0までの時間t0と距離l0は、Vt(t1)=0を代入して、<式20>t0=Vt(0)×{2×a+Vt(0)}/(2×b’) l(t0)={Vt(0)2×{3×a+2×Vt(0)}/(3.6×6×b’)} となる。 【0040】編成全体としての平均減速度βavr[km/h/s]は、<式21>βavr=Vt(0)/t0=2×b’/{2×a+Vt(0)} であり、電動軸の平均期待粘着係数(平均期待粘着ブレーキパターン)μavrは、<式22>μavr=βavr/(3.6×g) =(2×b×n×ML/M’)/{2×a+Vt(0)} となる。 【0041】次に、ブレーキ力(引張力)、編成パワー、及び運動エネルギーについて説明する。時刻t1[秒]での印加力Fe_tは、<式12>及び<式14>より、<式23>Fe_t=n×ML×g×(M’+4×n×Jw/rw2)/M’×b /(Vt(t1)+a) =n×ML×g×kj×b /√(a2+Vt(0)2+2×a×Vt(0)−2×b’×t1) 但し、慣性係数kjは、kj=(M’+4×n×Jw/rw2)/M’となる。 【0042】ブレーキ初速における編成全体のブレーキ力は、<式24>Fe_t(t1=0)=n×ML×g×kj×b/(Vt(0)+a) となる。 【0043】時刻t1[秒]後の編成パワーP[W](車輪周基準)は、<式25>P(t1)=Fe_t×Vt/3.6 =n×ML×(g/3.6)×kj×b×Vt(t1) /(Vt(t1)+a) =n×ML×(g/3.6)×kj×b ×{1−a/√(a2+Vt(0)2 +2×a×Vt(0)−2×b’×t1)} で表され、Vt(t)≧0の範囲において、0≦a≦bなるいかなるa、bの値を与えても、時刻t1の増加に伴ってP[W]が単調減少することを示している。 【0044】すなわち、いかなる反比例μパターン(粘着パターン)を与えても、最高速度におけるμパターンの設定値で最大パワーが決定される。 【0045】編成全体の最大パワーPmax[W]は、<式26>Pmax=P(t1=0) =Fe_t(t=0)×Vt(0)/3.6 =n×ML×(g/3.6)×kj×b×Vt(0) /(Vt(0)+a) となる。 【0046】ここで、時刻0[秒]−>t1[秒]までに編成全体で吸収すべき運動エネルギーE[J]は、<式27>E=∫t10{Pt(t)}dt =n×ML×(g/3.6)×kj×b ×∫t10{1−a/√(a2+Vt(0)2 +2×a×Vt(0)−2×b’×t1)} =n×ML×(g/3.6)×kj×b ×{t1+a/b’×√(a2+Vt(0)2 +2×a×Vt(0)−2×b’×t1) −a/b’×(a+Vt(0)} となる。 【0047】次に、本発明の電気車両システムの電機容量計算を行う。以下においては、簡単のために電気機器の効率・損失等を無視することとする。 【0048】いかなる反比例のμパターンを与えても、編成としての最大パワーが最高速度時になることは、<式25>により明らかである。これはつまり、最高速度まで電気ブレーキのみで所要ブレーキ力を期待する以上は、主電動機群14の制御特性上、定電力域から特性域への移行速度を最高速度に設定しなければならないことを意味する。 【0049】これを通常の架線電圧に直接繋がったインバータで実現するならば、架線電圧で規定される主電動機への最大電圧と主電動機電流の積の定数倍がパワーであることから、大電流主電動機が必要になる。このとき、実際の車両に大電流主電動機を搭載することも考えられるが、そうすると現状の主電動機に対して大幅な設計変更を余儀なくされる上、電流値に見合った大電流インバータの設計も必要となる。 【0050】これを回避するために、本発明の電機ブレーキシステムにおいては、主電動機群14への印加電圧を任意に選定できる主回路として、PAM制御方式昇降圧主回路20を採用し、このPAM方式により最大パワー時でも主電動機群14の電流最大値を増加せさずに回生ブレーキ力増大を行うことができる。 【0051】以上のように、本発明の電気車両システムの電気ブレーキにおいては、高速域での総合ブレーキ力を下げて電気ブレーキの分担分を大きくし、低速域で電気ブレーキのかかる車軸の軸数を増加させるような粘着ブレーキパターンμを適用することにより、常用最大ブレーキの要件である「最高速度から600[m]以内でY信号速度である55[km/h]〜45[km/h]まで減速すること」を満足することができる。これにより、常用最大ブレーキを電気ブレーキのみで賄うことができる。 【0052】ここで、PAM制御方式昇降圧主回路20は、現状の直流電車における架線18に接触するパンタグラフ11と主電動機群14の間に設けられている。このPAM制御方式昇降圧主回路20としては、DC/DC双方向チョッパである4象限チョッパの昇降圧チョッパ12とPWMインバータ13の組合せ、または2並列2象現直流可逆チョッパの昇降圧チョッパ12とPWMインバータ13の組合せを適用している。 【0053】これにより、ごく低速では一定電圧印加による非同期PWM制御を行い、その後、1パルスモードで駆動しながら直流中間回路電圧を速度とともに上昇させ、最高速度で最高電圧を主電動機群14に印加するように制御することができる。 【0054】また、本発明の電気車両システムにおけるPAM制御方式昇降圧主回路20の昇降圧チョッパ12は、4象限チョッパまたは2並列2象現直流可逆チョッパを使用している。このため、PWMコンバータと同一の単相ブリッジ主回路構成となり、主変圧器を準備すれば交流及び直流の両用車両として使用することができる。即ち、直流区間では昇降圧チョッパとして機能し、交流区間ではPWMコンバータとして機能するため、特に、交流車両の既存主回路の変更を伴わずに、交流車両が直流き電区間にそのまま乗り入れることができ、且つ、高速域での力行トルク、回生トルクを増大することができる。 【0055】以上述べた通り、本発明の電気車両システムによれば、主電動機最大電流を抑制しながら最高速度からμパターンに添った電気ブレーキ力を実現できる。また、弱磁束(定電力)領域を持たせないこともでき、その場合には、すべり周波数を定トルク域と同じ値に固定できるため、電動機効率を高く維持することができる。また、低速度から1パルスモードで駆動することが可能であり、主電動機群14やインバータ13の発生熱的に有利になる。 【0056】また、架線側変換器のスイッチング周波数を一定にできるため、架線または帰線に流出する高調波の抑制対策が容易になる。さらに、高周波トランスを用いることもでき、その場合には、架線18側と絶縁することも可能となる。また、速度0から最高速度まで直流中間回路電圧を最大電圧に固定し、従来どおりのPWM制御を行うこともできる。 【0057】次に、架線18へ返らない余剰回生パワーの処理について説明する。上述のように、本発明の電気車両システムにおいては、常用最大ブレーキを電気ブレーキのみで賄うことが可能なことが明らかになった。例えば、最高速度130[km/h]からの車両では、電動車10[両]が要求されるが、最高速度120[km/h]であれば電動車8[両]と付随車2[両]又は車両重量次第では電動車7[両]と付随車3[両]でも十分可能である。 【0058】実際には、連結器の座屈強度の制約から、遅れ込め制御によるノンブレーキ軸の割合が制限されるため、電動車7[両]と付随車3[両]程度が電動車Mと付随車Tの比率(以下、単に「MT比率」ともいう)の下限と考えられる。最高速度からの常用最大ブレーキにおける所要ブレーキ力をμパターン設定によって下げることができるが、電気ブレーキ力自体は、かなり大きくなっている。 【0059】例えば、図10で示した従来の通勤電車3の定トルク域終端のパワーは、編成全体で約5000[kW]であるが、図4のμパターンどおりに電気ブレーキをかける場合、編成全体の最大パワーは、電動車満車10[両]編成の場合には、例えば、約15000[kW]程度にもなる。 【0060】このような最大パワーの増加に対して、本発明の電気車両システムでは、インバータ13と昇降圧DC/DCコンバータ(昇降圧チョッパ)12の間の経路上から分岐して設けたDC/DC双方向チョッパ21で、余剰パワー相当の回生エネルギーを電池電圧に変換してバッテリ22に蓄積することができる。 【0061】一方、高速域での力行時には、電動機トルクが低下する場合に、バッテリ22からパワーをアシストすることで、架線18から得られるパワー以上のパワーを主電動機群14に供給することができ、高速域における力行時間短縮が可能になる。 【0062】図5、図6、図7、図8及び図9は、本発明による電気車両システムの他の実施の一形態を示す図である。図5においては、図1のブリッジ型可変チョッパ21の替わりに、高周波トランス回路41を使用している。また、高周波トランス回路41とバッテリ22の間には、バッテリ22の過充電を防止するための保護回路42が設けられている。ここで、高周波トランス回路41は、双方向にそれぞれ4つのゲート回路12aを構成している。 【0063】また、図6においては、図1の昇降圧チョッパ12が電流可逆チョッパとして設けられており、ブリッジ型可変チョッパ21の替わりに、電流可逆チョッパ52を使用している。ここで、電流可逆チョッパ12、52はそれぞれ、2つのゲート回路12aで構成することができる。 【0064】また、図7においては、昇降圧チョッパ12では、2つの2象現直流可逆チョッパ71、72がバッテリ22a、22bの昇降圧用チョッパとして設けられている。図7(A)に示すように、直流区間では、直流中間回路電圧を固定したときの大電流インバータ13による2並列2象現直流可逆チョッパ71、72での、バッテリ22a、22bへのエネルギーの蓄積を可能としている。また、図7(B)に示すように、交流区間では、2つの2象現直流可逆チョッパ71、72が1つのPWMコンバータ73として作用する。 【0065】また、図8においては、昇降圧チョッパ12には、2つの2象現直流可逆チョッパ81、82が設けられており、2象現直流可逆チョッパ81は、直流中間電圧昇降圧用として作用し、2象現直流可逆チョッパ82は、バッテリ22の昇降圧用チョッパとして作用する。図8(A)に示すように、直流区間では、PAM方式の2象現直流可逆チョッパ82での、バッテリ22へのエネルギーの蓄積を可能としている。また、図8(B)に示すように、交流区間では、2つの2象現直流可逆チョッパ81、82が1つのPWMコンバータ83として作用する。 【0066】また、図9においては、昇降圧チョッパ12には、3つの2象現直流可逆チョッパ91、92、93が設けられており、2象現直流可逆チョッパ81は、直流中間電圧昇降圧用として作用し、2象現直流可逆チョッパ92は、エネルギ蓄積用のコンデンサC1の昇降圧用チョッパとして作用し、2象現直流可逆チョッパ93は、バッテリ22の昇降圧用チョッパとして作用する。図9(A)に示すように、直流区間では、2象現直流可逆チョッパ92での、コンデンサC1へのエネルギーの蓄積を可能とし、2象現直流可逆チョッパ93での、バッテリ22へのエネルギーの蓄積を可能としている。また、図9(B)に示すように、交流区間では、2つの2象現直流可逆チョッパ91、92が1つのPWMコンバータ94として作用する。 【0067】以上のように、図5〜図9に示した回路構成においても、図1と同様の効果を得ることができる。 【0068】以上本発明の電気車両システムについて説明したが、上述のバッテリ22、22a、22bの代わりに所定の容量のコンデンサを用いることができる。 【0069】 【発明の効果】以上述べた通り、本発明の電気車両システムによれば、き電抵抗制限による架線へ変換できる以上の回生パワーをバッテリまたはコンデンサで蓄積することができるようになった。このため、回生失効を防止することができ、信頼度の高い電気ブレーキを実現することができるようになった。 【0070】また、バッテリまたはコンデンサの利用により、停電などのき電停止時の場合にも、車両の移動が可能になり、非電化区間への乗り入れもできるようになった。 【0071】また、高速域での力行時には、電動機トルクが低下する場合に、バッテリまたはコンデンサからパワーをアシストすることで、架線から得られるパワー以上のパワーを主電動機に供給することができ、高速域における力行時間短縮が可能になった。 【0072】また、き電回路やバックパワーなどの地上設備の増強を行うことなく、運転時間の短縮が可能になった。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000173784 【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
|
| 【出願日】 |
平成13年6月12日(2001.6.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100100413 【弁理士】 【氏名又は名称】渡部 温 (外2名)
|
| 【公開番号】 |
特開2002−369308(P2002−369308A) |
| 【公開日】 |
平成14年12月20日(2002.12.20) |
| 【出願番号】 |
特願2001−177155(P2001−177155) |
|